相続で、時々出てくるキーワードのひとつ、特別縁故者。
なんだか難しそうな言葉ですが、わかりやすく言うと、相続において法定相続人以外で、亡くなった方と特別に親しい関係にあった人のことです。
特別縁故者になると、相続において、「あること」ができるようになるということですが…いったいそれは何なのか。
そこで今回は行政書士の監修のもと、落語調のストーリー形式で特別縁故者について解説。どうぞ楽しみながら知識を増やしてくださいね!
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おすみ「旦那様、旦那さまってば…! しっかりしてくださいな、もうすぐ先生が来ますから」
旦那「ううう…すまないねえ、あたしもとうとうお迎えが来そうだよ。先生と死神と、どっちが早いかねえ…」
おすみ「そんな気弱なこと言わないで…、あっ、ほら、先生がお見えになりましたよ!」
長岡屋「あのう、行政書士の長岡屋でございますが…」
おすみ「あれ? 行政書士の先生? お医者の先生と呼び間違えちゃった」
旦那「なんてこったい!」
長岡屋「あのう…どういう状況でしょう?」
特別縁故者とは被相続人と特別に親しい間柄の人
特別縁故者にあたるのは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者とされています。
おすみ「うちの旦那様がね、もういい歳なもんですから、ほどなく、ぽっくりいきそうでして…」
旦那「ぽっくりって言うな」
長岡屋「なるほど、そういうわけですか、大奥様」
おすみ「奥様だなんて、やだあ! 長岡さんったら、もう!」
長岡屋「…い、痛いです、肩バシバシは痛いです…」
法定相続人以外は財産を受け取れない
法定相続人の範囲は法律で決まっており、いかに被相続人と仲が良かった、愛し合っていたとしても相続人となることはできず、遺産を受け取ることができません。
旦那「実は、妻は昔に亡くなりまして。いまは、このおすみが私の面倒を見てくれているんですよ。といっても、事実上の妻と言っていいほど、私たちは愛しあっておりましてな」
おすみ「やだあ! 旦那さまったら!」
旦那「んぐぐぐ」
長岡屋「あわわ、そんなに叩いたら、旦那様本当にお命が…!」
おすみ「あれま」
旦那「まあ…夫婦になる届を出そうとも思いまいたが、歳も随分離れていますし、実際に紙切れ一枚の違いですからな」
長岡屋「あの…つかぬことですが、亡くなられた奥様との間にお子様は?」
旦那「おりませんでな。つつましく、2人でやってきました。遠いとおーい親類はおりますがな。それがなにか?」
長岡屋「旦那様は、一代でこの問屋を大きくした大商人ですよね。もし亡くなられたら遺産はどうするんです?」
旦那「そりゃあ、おすみに残すつもりですが?」
長岡屋「…これは問題ですな」
おすみ「どういうこと?」
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内縁の配偶者は相続人ではない
長岡屋「おすみさんは法律上の夫婦ではない内縁の妻にあたります。もし他に相続人がいる場合、原則、内縁の配偶者は相続人にはなれないんですよ。親類縁者が誰もいない場合は別ですけどね」
旦那「…びっくりおったまげ」
おすみ「アッ! 旦那様の心臓が…! 旦那様、帰ってきてください!」
長岡屋「おすみさん! 往復ビンタはやめてください! 本当に逝ってしまいます!」
旦那「…危なかった。じゃあ、長岡屋さん、わしがおすみに遺産を残すにはどうしたらいいんじゃ? こうなったら忍を差し向けて親類縁者を始末…」
長岡屋「…とんでもないこと言わないでください。やり方はありますから」
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相続人以外の特別縁故者が遺産を受け取れる方法
婚姻届を提出していないものの、生計を同じくし、夫婦同然の生活をしている内縁関係の男女は、お互いに「特別親しい関係」(ほとんど家族同然)であると判断でき、特別縁故者と言いこれに該当します。
ですが、原則的に遺産を相続するのは家族であり、本来相続人の範囲は、①婚姻届を提出している配偶者、②子、③父や母などの直系尊属、④兄弟や姉妹というように、法律上家族と認められている人になります。
特別縁故者が遺産を相続する場合には、遺贈などをするのが一般的です。
遺言書を作成すること
旦那「遺贈?」
長岡屋「はい、おすみさんに遺産を遺したい場合、遺言書にしっかりと書いて遺贈という手段を使って遺産を贈与するわけです」
おすみ「夫婦のように生活していても、当たり前に遺産がもらえるわけじゃないのね」
長岡屋「相続人が誰もいないと特別縁故者が遺産を譲り受けることもありますが、ちゃんと特別縁故者に財産を遺したいなら、はっきりと自分で意思表示しなくちゃいけないんですよ」
おすみ「旦那様! はっきりきっぱりこってり、お願いします!」
旦那「こってりって…某ラーメンチェーンじゃないんだから」
おすみ「でも長岡屋さん、特別縁故者って、『私、そうです』と言うだけでなれるものなの?」
長岡屋「もちろん手続きがあります」
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特別縁故者として認められること
相続人がいない場合でも、パートナーが特別縁故者となるわけではありません。特別縁故者はあくまで例外的な事例のため、いくつかのステップを踏む必要があります。
ステップ1:相続財産清算人の申し立てと選任
故人の財産を管理し、清算してくれる人を選任してくれるよう、裁判所に申し立てる。基本的には弁護士や司法書士などの法律の専門家が相続財産清算人となる。
ステップ2:公告をして相続財産の債権者などを探す
故人が借金をしている場合は、借金を優先的に返すことになる。官報やインターネットに情報を記載し「故人から借金が未返済であった人、もらえるはずの財産があった人は、連絡してください」と公に知らせる(2ヵ月間継続)。
ステップ3:相続人を探す
公示による捜索を終えたら、同様に公示にて相続人を探す(6ヵ月間継続)。最後に、本当に相続人がいないかを裁判所が確認。
ステップ4:特別縁故者として財産分与を申し立てる
裁判所が定めた期間内に相続人が見つからなければ、それから3ヵ月以内に、特別縁故者に対する財産分与の申し立てを行う。
長岡屋「…とまあ、この4つの段階を経て、特別縁故者であると判断されたら、財産を受ける可能性が出てくるわけですね」
相続人以外のパートナーには遺言書の作成を検討
旦那「…長い旅路だのう」
おすみ「まだまだしっかりしなきゃ、旦那様! 死神なんてきたら、私が追い払っちゃうんだから!」
旦那「本当に追い払いそうだ…じゃあさっそく、長岡屋さん、詳しいことを相談できますかな?
長岡屋「もちろんです。最後にひとつ確認ですが、おすみさんのほかに、看護してくれたりとか、金銭を援助してくれたりとか、そういう人はいませんよね? あと旦那様が寺子屋(学校)を建てていたりとか」
旦那「おらんのう」
おすみ「いたら承知しないんだから!」
旦那「あわわわ…本当におらんよ! わしの推しはおすみちゃんだけじゃ」
長岡屋「わかりました。では、お2人のために一生懸命やりますね」
この記事を詳しく読みたい方はこちら:特別縁故者とは何か?相続の関わりと手続きの流れを行政書士が分かりやすく解説!
このように内縁の配偶者であっても実際に特別縁故者として認められるためには、かなりハードルが高いと言えます。そして必ず認められるとも限りません。
もし特別縁故者に準じる内縁の配偶者に遺産を遺したいと考えらえれるのであれば、やはり遺言書の作成が間違いないと言えます。
相続人以外の内縁の配偶者やパートナーに遺産を遺したいと考えられている方は、横浜市の長岡行政書士事務所までお気軽にご連絡ください。