相続財産から控除できる債務等の種類について税理士が解説!

相続税・贈与税

相続税の課税対象となる「課税遺産総額」を計算する際、まず、相続や遺贈によって取得した財産の価額(遺産総額)から、「控除できる債務など」を差し引いて、遺産額を算出します。

控除できるものは、次の3つが代表的です。

  • 債務
  • 葬式費用
  • 非課税財産

ただし、債務や葬式費用であれば、どのような費用であっても控除できるわけではありません。

今回はこの債務、葬式費用、非課税財産について、具体的にどのような費用が含まれるのか見ていきましょう。

なお、遺産総額については、相続時精算課税の適用を受けた贈与財産(相続時精算課税適用財産)がある場合、その相続時精算課税適用財産の贈与時の価額を加算した金額となります。

(令和6年1月1日以後の贈与により取得した相続時精算課税適用財産については、贈与を受けた年分ごとに、相続時精算課税適用財産の贈与時の価額の合計額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額を加算します)

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この記事の執筆・監修者
大岡 俊明(税理士)

税理士。神奈川県横浜市のクロスウィード税理士事務所代表。メンターキャピタル税理士法人で13年間実績を積み、2024年にクロスウィード税理士事務所を開業。相鉄線沿線を対象に、相続税申告のなかでも遺産総額が1億円以下の相続税申告に特化していることが特徴。

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債務

それでは最初に、相続財産から控除できる債務、控除できない債務について見ていきましょう。

控除できる債務

相続財産から差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務(借入金や未払金など)で、確実と認められるものです。

被相続人に課される税金で、被相続人の死亡後相続人などが納付または徴収されることになった所得税などの税金については、被相続人が死亡したときに確定していないものであっても、債務として遺産総額から差し引くことができます。(ただし、相続時精算課税適用者の死亡によりその相続人が承継した相続税の納税に係る義務は除きます)

なお、相続人などの責任に基づいて納付したり徴収されることになった延滞税や加算税などは、遺産総額から差し引くことはできません。

控除できない債務

「被相続人が生前に購入したお墓の未払代金」など、非課税財産に関する債務は遺産総額から差し引くことはできません。

(非課税財産とはどのようなものが該当するかについては後述します)

葬式費用

葬式費用は債務ではありませんが、相続税を計算するときは遺産総額から差し引くことができます。

葬式費用とは通常、次のようなものを言います。

  • 葬式や葬送に際し、またはこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用)
  • 遺体や遺骨の回送にかかった費用
  • 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(お通夜にかかった費用など)
  • 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
  • 死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用

参考までに、葬式費用に含まれないものは次のものを言います。

  • 香典返しのためにかかった費用
  • 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
  • 初七日や法事などのためにかかった費用

債務や葬式費用を遺産総額から差し引くことができる人

債務などを差し引くことのできる人は、次の1または2に掲げる人で、その債務などを負担することになる「相続人」や「包括受遺者」です。(相続時精算課税の適用を受ける贈与により財産をもらった人を含みます)

1、相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)

2、相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がない人で、次のいずれかに当てはまる人


・日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人

・日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人(被相続人が、外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)

・日本国籍を有していない人(被相続人が、外国人被相続人、非居住被相続人または非居住外国人である場合を除きます。)

包括受遺者とは、遺言により遺産の全部または何分のいくつというように遺産の全体に対する割合で財産を与えられた人のことをいいます。

なお、相続人や包括受遺者であっても、上記の1または2に該当しない人は、遺産総額から控除できる債務の範囲が限られ、葬式費用も控除することはできません。

相続税がかからない非課税財産

そもそも相続税が課税されない「非課税財産」というものも存在します。非課税財産の一覧を見てみましょう。

  1. 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物(ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります)
  2. 宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で、公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
  3. 地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人またはその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利
  4. 相続によって取得したとみなされる生命保険金等のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
  5. 相続によって取得したとみなされる退職手当金等のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
  6. 個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの(相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件)
  7. 相続や遺贈によって取得した財産で、相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によって取得した金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの

この中で「生命保険金」「退職手当金」については関係する方が多いポイントであるため、さらに詳しく見ていきましょう。

生命保険金等

被相続人の死亡によって取得した生命保険金や損害保険金(偶然な事故に基因する死亡に伴い支払われるものに限られる)で、その保険料の全部または一部を被相続人が負担していたものは、相続等により取得したとみなされて、相続税の課税対象となります。

この死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません)である場合、すべての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません。

法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。

法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。

退職手当金等

被相続人に支給されるべきであった退職手当金や功労金などを受け取ったときは、これも相続税の課税対象になります。

被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった「退職手当金」「功労金その他これらに準ずる給与」、つまり「退職手当金等」を受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続または遺贈により取得したものとみなされて相続税の課税対象となるのです。

死亡後3年以内に支給が確定したものとは、次のものをいいます。

・死亡退職で支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
・生前に退職していて、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの

退職手当金等とは、受け取る名目にかかわらず実質的に被相続人の退職手当金等として支給される金品をいいます。したがって退職手当金等には、現物で支給された場合も含まれます。

ただし、相続人が受け取った退職手当金等は、その全額が相続税の対象となるわけではありません。

すべての相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません)が取得した退職手当金等を合計した額が、非課税限度額以下のときは課税されません。

非課税限度額は、次の式により計算した額です。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

なお、相続人以外の人が取得した退職手当金等には、非課税の適用はありません。

法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。

法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。

まとめ

相続税の計算では、相続財産から債務、葬式費用、非課税財産などを差し引くことができます。

しかし具体的にどのくらいの費用を差し引き、その計算が正しいのかどうかについては、税理士に相談したほうが安心です。

葬式費用や生命保険金などについては多くの方に関係する項目であるため、一度税理士に相談してみてください。

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