「家族が亡くなりお墓を管理する人がいなくなった。誰が承継すればよい?」
「お墓を相続する人は法律で決まっているの?」
「実家のお墓や仏壇を承継するが、知っておくべき方法や注意点はある?」
日本では亡くなられた方を見送った後、お墓に納骨をすることが一般的です。全国には形状や宗派は違えども、多くのお墓があります。では、お墓は誰が相続するものでしょうか。今回の記事ではお墓の相続について方法や注意点を行政書士が詳しく紹介します。
お墓は誰が相続する?祭祀承継者とは
先祖代々が静かに眠っているお墓は、相続時にはどのように扱われるのでしょうか。この章ではお墓の相続について、祭祀承継者を詳しく解説します。
祭祀承継者とは
祭祀承継者とは、お墓や仏壇など信仰にまつわるものを引き継ぐ人を意味します。日本では墓石で作られたお墓や仏壇を使って、祖先を祀っていることが多いですが宗教や宗派、地域によって、方法は異なっています。
都市部ではマンションなどの集合住宅の大きさに合わせてミニマルな仏壇が多いですが、地方には形も大きく、何代にもわたって引き継がれている仏壇もあります。祭祀にまつわるものが傷んだり破棄されたりしないように、祭祀承継者となる方は大切に保全をしていくことになります。
祭祀承継者の決め方
では、祭祀承継者はどのように決めるのでしょうか。まず祭祀に関係する財産は「祭祀財産」と呼び、原則として相続財産の対象にはなりません。法定相続人が承継する義務もなく、民法第897条第1項および第2項によって、以下のように定められています。
第1項
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。第2項
民法第897条第1項および第2項
前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
そして、祭祀財産を承継する人は、以下のようにまとめられます。
・慣習にしたがって承継する
・被相続人の指定(遺言や口頭)に従って承継する
・慣習が分からない際には家庭裁判所が決める
一般的にはお墓や仏壇の管理は暗黙の了解で、被相続人と同居していた家族や、慣習にしたがって長男・長女が引き継ぐことが多いでしょう。原則1名が祭祀を主宰する人としてすべての祭祀財産を引き継ぎますが、複数の祭祀財産を分けて承継することも可能です。
祭祀承継者が家族内で決まらない場合は、家庭裁判所で決められます。
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相続放棄をしても祭祀承継者になれる?
先に触れたように、祭祀財産については相続財産には含まないため、相続放棄をしても承継できます。被相続人に債務があり、放棄をする場合はお墓や仏壇も相続放棄しなければいけないのか、と不安な方も多いでしょう。墓地や代々使用してきた数珠なども相続財産ではないため、相続放棄後も祭祀承継者として引き継げます。
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お墓は相続財産に含まない|相続時の注意点
お墓などの祭祀財産は相続財産には含みません。被相続人が生前に、「自身のお墓や仏壇は内縁の方に管理してほしい」と遺言書を残した場合、内縁の方でも祭祀財産を承継できます。では、その他の相続と合わせて手続きを進めていく際には、一体どのような注意点があるでしょうか。
お墓は遺産分割の対象外
祭祀財産は相続財産の対象ではない以上、相続人間で遺産のゆくえを話し合う「遺産分割協議」からも対象外となります。たくさん財産を相続する方が祭祀承継者となることもできれば、相続放棄をした方が祭祀承継者となることもできます。
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お墓には承継の手続きが必要となる
墓地や寺院などによって手続き方法は異なりますが、お墓を承継する際には一般的に墓地の管理者に対して引き継ぎの手続きを行う必要があります。
祭祀承継が決定したら今後は誰が墓地を含むお墓を管理するのか、書類などを提出する必要があるのです。所有者の名義変更手続き、墓地の使用許可証、承継理由(被相続人の死亡がわかる書類の提出)などを行う必要があります。
近年墓石・墓地とは異なりマンション型の納骨堂なども登場していますが、基本的な承継手続きは同じです。
相続財産に含まない祭祀財産一覧
相続財産に含まない祭祀財産とは具体的にどのようなものでしょうか。詳しくは以下です。
・仏壇
・墓地や墓石
・家系図や家系譜
・位牌 など
祭祀財産には3つの種類があります。系譜・祭具・墳墓です。
系譜には家系図などが挙げられ、祭具には仏壇や位牌類などが挙げられ、祠や鳥居など、移設が簡単ではないものも含まれます。墳墓とはお墓のことを意味し、墓石や墓地を指します。宗教が仏教以外でも祭祀財産に含まれます。たとえば、キリスト教の場合はイエス像や十字架、家庭内の祭壇などが祭祀財産となります。
お墓が不要となった場合
お墓が不要となった場合には、どのように扱うべきでしょうか。相続財産に含まれない以上、後述しますがお墓が不要となった場合でも、相続放棄をすることはできません。
お墓は新しい祭祀承継者へと名義変更をしていないと管理者が不在となってしまうため、一定の期間を開けて撤去される可能性があります。遺骨も行き場を失うため、合祀されてしまいます。
お墓が不要となった場合、基本的には「墓じまい」をする必要があります。墓じまいとは墓石を撤去し、使用していた墓地を管理者側へ返還する手続きです。
お墓が祭祀承継者の近くに立地しておらず、管理の手が行き届かない場合は墓じまいを行い、お近くにお墓を新設したり、納骨堂へ移設することがおすすめです。専門家に相談しながら進めると良いでしょう。
お墓は相続放棄できない
お墓はいらない、と思っていても相続財産に含まない以上は裁判所における相続放棄によって破棄することはできません。慣習によって承継した方は、お墓の管理に悩んだら墓じまいを検討する必要があります。
祭祀財産全般が相続放棄できないため、維持管理や処分は祭祀承継者を中心に今後どうするべきか話し合う必要があります。
長男・長女が祭祀財産を継ぐ、というような風潮は徐々に薄れつつあるため、祭祀財産については遺産分割協議とセットで話し合い、管理・処分をどうするのか決めることが多いでしょう。
お墓を円満に承継する3つのコツ
お墓を円満に承継するためには、知っておきたい3つのコツがあります。詳しくは以下のとおりです。
あらかじめ祭祀承継者を決めておく
祭祀財産は、長年大切にしてきた家系図や位牌なども含まれます。複数の親族で祭祀財産を管理すると、飛散や破損などが心配される場合は、あらかじめ終活の一環として遺言書を使い祭祀承継者を決めておくこともおすすめです。
祭祀承継者は誰でもなれます。ご近所に住まわれている親族や、内縁の方なども可能です。
管理・処分の方法を家族で話し合う
近年お墓や仏壇は管理が難しいと感じる人が多く、墓じまい以外にも仏壇処分を検討する人も多くなっています。しかし、長年大切にされてきた祭祀財産を処分することには、反対の意見を持つご家族も多いでしょう。
そこで、墓じまいをはじめとする祭祀財産の管理や処分の方向性については、早めに家族で話し合うことがおすすめです。管理者が1名だと負担が多い場合は、複数の親族の協力を依頼したり、仏壇を入れるスペースがない場合は買い替えも検討してみましょう。
祭祀財産は相続税の課税対象ではないため、生前にお墓や仏壇を買い替えることは、相続税の節税効果もあります。
ただし、過度に高い祭祀財産の購入は相続税が課税されるおそれもあるためご注意ください。
お墓の移転も検討する
お墓は維持したい、でも遠すぎて管理が難しい…このような場合には、お墓の移転も考えてみましょう。お墓は手続きを行うと移転できる場合があります。遺骨の移転をともなう場合は行政機関への手続きを要する場合があるため、早めに調べておくことがおすすめです。
埋蔵・収蔵されている遺骨などを、他の墓地・納骨堂に移す行為は「改葬」と呼ばれており、「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」の規定に従い、「改葬許可申請」という手続きが必要です。
行政書士は「改葬許可申請」を扱えますので、横浜市の長岡行政書士事務所にお気軽にご連絡ください。
なお、横浜市の場合、新しく墓地を購入するなど改葬先を決めた上で手続きを進める必要があります。詳しくは以下リンクをご一読ください。
参考URL 横浜市 改葬(遺骨の移動)の手続き
遺言書やお墓じまいは長岡行政書士事務所にご相談ください
この記事ではお墓の相続について、祭祀承継者や祭祀財産についても触れながら詳しく解決を行いました。お墓などの祭祀財産は相続財産には含まれないため、相続放棄をしても承継できる一方で、放棄をすることができません。適切に管理をしていくためにも、早めにご家族で話し合いをしておくことが望ましいでしょう。
祭祀承継者は遺言書で指定をすることもできます。大切な先祖代々の財産を、未来へつなぐためにも、あらかじめ遺言書で承継者を決めることも検討しましょう。
詳しくはお気軽に横浜市の長岡行政書士事務所にお問い合わせください。