今回は相続税の計算で忘れてはならない、各種の税額控除等の一部について解説していきます。
税額控除とは名前の通り、支払う相続税を減らすことができる制度になりますので、適用できるかどうか必ず確認して相続税の負担を少しでも軽減していきましょう。
今回の記事では、「未成年者の税額控除」と「障害者の税額控除」と「相次相続控除」の3つを解説していきます。
未成年者の税額控除
相続人が未成年者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引くことができます。これが「未成年者の税額控除」です。
未成年者控除が受けられる人
未成年者控除が受けられるのは次のすべてに当てはまる人です。
①相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)
又は
②相続や遺贈により財産を取得したときに日本国内に住所がない人でも、次のいずれかに当てはまる人
a.日本国籍を有しており、かつ、その人が相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人
b.日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人(被相続人が、外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)
c.日本国籍を有していない人(被相続人が、外国人被相続人、非居住被相続人または非居住外国人である場合を除きます。)
相続や遺贈で財産を取得したときに18歳(注)未満である人
(注)「18歳」とあるのは、令和4年3月31日以前の相続または遺贈については「20歳」となります。
相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること。
未成年者控除の計算式
未成年者控除の額は、その未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額です。
年数の計算に当たり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。
未成年者控除の計算例
それでは実際に、未成年者控除について計算してみましょう。
未成年者の年齢が「14歳8か月」の場合は、「8か月」を切り捨て「14歳」で計算します。
この場合、18歳までの年数は4年になります。
したがって未成年者控除額は以下の計算式となります。
10万円×4年=40万円
なお、未成年者控除額が、その未成年者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引き切れないことがあります。
この場合は、その引き切れない部分の金額を、その未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。
扶養義務者とは、配偶者、直系血族および兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者をいいます。
また、その未成年者が今回の相続以前の相続においても未成年者控除を受けているときは、控除額が制限されることがあります。
障害者の税額控除
相続人が85歳未満の障害者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引くことができます。これが「障害者の税額控除」です。
実際に内容を見ていきましょう。
障害者控除が受けられるのは次のすべてに当てはまる人です。
相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)
相続や遺贈で財産を取得したときに障害者である人
相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること。
障害者控除の計算式
障害者控除の額は、一般障害者の場合は満85歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額です。
なお、特別障害者の場合は1年につき20万円となります。
年数の計算に当たっては、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。
障害者控除の計算例
それでは実際に、障害者控除について計算してみましょう。
障害者の年齢が40歳と8カ月だとします。
85歳になるまでの年数は1年未満を切り上げますから、45年となります。(85歳ー40歳8カ月=44年4カ月→45歳)
障害者控除(一般)
1年あたり10万円×45年=450万円
障害者控除(特別)
1年あたり20万円×45年=900万円
また、障害者控除額が、その障害者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引き切れないことがありますが、この場合は、その引き切れない部分の金額をその障害者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。
扶養義務者とは、配偶者、直系血族および兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者をいいます。
なお、その障害者が今回の相続以前の相続においても障害者控除を受けているときは、控除額が制限されることがあります。
相次相続控除
相次相続控除は、今回の相続開始前10年以内に被相続人が相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得し、相続税が課されていたことが前提にあります。
その被相続人から相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人の相続税額から、一定の金額を控除することができます。これが「相次相続控除」です。
相次相続控除が受けられる人
相次相続控除が受けられるのは次のすべてに当てはまる人です。
被相続人の相続人であること
この制度の適用対象者は、相続人に限定されていますので、相続の放棄をした人および相続権を失った人がたとえ遺贈により財産を取得しても、この制度は適用されません。
その相続の開始前10年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得していること
その相続の開始前10年以内に開始した相続により取得した財産について、被相続人に対し相続税が課税されたこと
相次相続控除の計算式
相次相続控除は、前回の相続において課税された相続税額のうち、1年につき10%の割合で逓減した後の金額を今回の相続に係る相続税額から控除するものです。
各相続人の相次相続控除額は、次の算式により計算した金額です。
A×C/(BーA)※1×D/C×(10ーE)=各相続人の相次相続控除額
※1 求めた割合が100/100を超えるときは、100/100とする。
A:今回の被相続人が、前の相続の際に課せられた相続税額
この相続税額は、相続時精算課税分の贈与税額控除後の金額をいい、その被相続人が納税猶予の適用を受けていた場合の免除された相続税額ならびに延滞税、利子税および加算税の額は含まれません。
B:今回の被相続人が、前の相続の際に取得した純資産価額
(取得財産の価額+相続時精算課税の適用を受ける財産(相続時精算課税適用財産)の価額-債務および葬式費用の金額)
令和6年1月1日以後の贈与により取得した相続時精算課税適用財産については、贈与を受けた年分ごとに、相続時精算課税適用財産の贈与時の価額の合計額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額となります。
C:今回の相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額
D:今回のその相続人の純資産価額
E:前の相続から今回の相続までの期間(1年未満の期間は切捨てます)
まとめ
相続税の計算では、「未成年者の税額控除」「障害者の税額控除」「相次相続控除」などの控除を活用することができますが、その計算は複雑で、自分で計算することは難しい場合が多いでしょう。
しっかりと計算するためにも、やはり相続税を取り扱っている税理士へ相談することをおすすめします。