報道の最前線から法務の現場へ
相続という専門性が問われる手続きには、知識だけでなく、最後までやり遂げる粘り強い「現場力」が不可欠である。
その力を支える一人が、事務職員の保﨑由佳氏だ。
実は彼女、かつて事件の真相を追い、スクープを競う「報道記者」だったという異色の経歴を持つ。
報道の最前線で培われたのは、一度断られても諦めない交渉力、膨大な情報から本質を見抜く整理能力、そして人の心の機微を察する冷静な観察眼だ。
これらのスキルが、複雑な相続手続きを確実かつ迅速に進める礎となっていることは想像に難くない。
今回は保﨑氏の歩み、そして業務への想いを通じて、長岡行政書士事務所の確かな仕事ぶりの一端を紐解いていく。
(取材・文:新田哲嗣)

法律の世界への扉を開いた「裁判員裁判」
―まずは、保﨑さんのキャリアからお聞かせいただけますか?
大学卒業後、報道の世界へと飛び込み、下積みを経てテレビ記者となりました。日々さまざまな事件を取材し、まさに朝から晩まで走り回るような毎日でした。法律の世界へ入るきっかけとなったのは、「裁判員裁判」です。私が記者をしていた頃に、ちょうどこの制度が始まりました。
それに伴って裁判取材の機会が格段に増えたのですが、そこで「知識」という大きな壁にぶつかりました。裁判官や検察官の方々と話をするには、法律の知識が不可欠であり、浅い知識だとまともに取材ができないほどでした。
―確かに、専門用語も多い世界ですものね。仕事上の必要性が、新たな道を開いたと?
まさに「話す言語が違う」という感覚でした。このままではだめだと、仕事のために法律の勉強を始めたのが、この世界に興味を持った最初のきっかけです。そして、実際の事件裁判を傍聴するうちに、「法律を知らないと、これほど理不尽な結果や深刻な不利益を被ることになるのか」と痛感する場面に何度も出くわしました。
法律は、時として武器にもなりますが、何より自分自身を守ってくれる大切な知識なのだと、現場で強く感じたのですね。そこから「法律に関わる仕事がしたい」という想いが芽生え、報道の仕事を離れる決意をしました。
少数精鋭の事務所で磨かれる「人間力」と「責任感」
―報道記者から、次はどのような道へ進まれたのですか?
まずは弁護士事務所で、法律事務の専門職として働き始めました。弁護士の所長のサポート役として、法律事務に特化した業務を8年ほど経験しました。
その後、出産と育児で一度仕事から離れることになり、子どもが幼稚園に上がったタイミングで、再び社会復帰を考えたんです。そのときに長岡行政書士事務所の募集を見つけました。
―以前の法律事務所と、現在の長岡行政書士事務所とで、働き方に違いは感じますか?
全く違いますね。以前の事務所は規模も大きく、完璧なマニュアルがあって、自分の担当業務に集中するというスタイルでした。つまり役割分担が明確にあり、組織的な効率を重視している事務所でした。そのスタイルはそのスタイルで良いと思います。

一方で、長岡行政書士事務所では担当制ではなく、案件ごとに自分で考えて対応するというスタンスを採用しています。
その分、柔軟な判断力や総合的な視点が求められますし、日々の業務を通じて学びが多く、一つひとつの仕事に対する責任感も一層強くなっていくのがよくわかります。
まさに今、「人間的にも育てていただいている」と実感していますね。それに、報道記者時代に培った経験が、意外な形で役立っているんですよ。
―報道記者の経験の中で、特にどんな経験が、いま生きているのでしょう?
例えば、相続手続きの場面では、思い通りに申請や届け出が進まないことも少なくありません。
そうした場面で、一度「できません」と言われても、簡単には引き下がらず、「どうすれば前に進められるか」「別の方法はないか」を探りながら交渉する粘り強さは、記者時代に培ったものかもしれません。
ただ書類を持ち帰るのではなく、必ず次につなげるという意識は常に持っていますね。
相続の重荷を共に背負い、心を軽くする存在
―保﨑さんから見て、長岡行政事務所の雰囲気はいかがですか?
本当に家族のようです。仕事中は厳しいですが、おやつの時間を設けたり、みんなでランチに行ったりと、息抜きの時間も大切にしてくれます。
少人数だからこそ、コミュニケーションを密にとって、お互いを理解し、助け合うという文化が根付いていますね。
実は以前、家庭の事情で長期のお休みをいただいたことがあったんです。もう復帰は難しいだろうと思っていたのですが、長岡所長が「戻る気があるなら、席はちゃんと残してあるから」と電話をくださって。その一言が、どれだけ心強かったか…。
休むことへの不安や気まずさを、その言葉がすべて和らげてくれました。「もう一度、この場所で頑張ろう」と心から思える場所ですよ。
―なるほど。厳しい指導の裏に、深い信頼関係があるということですね。
私たち職員から見て、所長ご自身も、常に成長しようとされているのがよくわかります。
私がここに入った3年前と比べても、指導の仕方がより深くなられたと感じていますね。
そうした変化を間近で見ていると、私も年齢や経験にあぐらをかくことなく、常に謙虚な気持ちで学び続けなければいけないと、身が引き締まる思いです。

―保﨑さんにとって、この事務所でのご自身の役割とは、どのようなものだとお考えですか?

相続手続きには、銀行での手続きなど、時間がかかり、手間になる作業が多くあります。
私がそうした業務を引き受けることで、所長がお客様とのご相談や、より専門的な業務に集中できる時間を作ることが、私の大切な役割だと思っています。
事務所全体のパフォーマンスを上げるための、縁の下の力持ちでありたいですね。
この事務所で働きながら、自分自身の目標を見つめ直す機会ももらえていて、心から感謝しています。
実はいま、法律だけでなく英語も勉強しているんです。色々な国の人とコミュニケーションをとって、多様な価値観に触れながら生きていきたい。そのために、今は仕事と勉強を両立させる充実した時間を過ごせています
―素敵な将来になるといいですね。最後に、相続手続きで悩んでいる読者の皆様へメッセージをお願いします。
大切な方を亡くされ、深い悲しみや心の負担を抱えている中で、煩雑な手続きが次々と押し寄せてくるのが相続です。けれども、故人が残してくださった大切な財産だからこそ、きちんと向き合わなければなりません。
私たちは、その煩雑な作業から皆様をお守りし、故人との思い出をゆっくりと心に刻む時間を取り戻していただけるようお手伝いします。
どうか一人で抱え込まず、どんな些細なことでもご相談ください。事務所に足を運んでいただくだけでも、心が少し軽くなるはずです。私たちはいつでも、温かい雰囲気でお待ちしています。
