同性カップルの相続税はどうなる?現行制度における不利な点について税理士が解説

同性カップルの相続税はどうなる?現行制度における不利な点について税理士が解説 相続税・贈与税
相続税・贈与税

最近では、日本でも同性パートナーシップ制度を導入する自治体が増え、同性カップルの社会的認知は広がりつつあります。

しかし、相続税の分野ではこれまでと変わらず同性カップルのパートナーは法的な配偶者として扱われないため、相続税を計算するにあたって一般的な男女の夫婦に認められる優遇税制が適用されません。

その結果、同性カップルは相続税の面で不利な立場に置かれています。

今回は、同性カップルの相続税で、どのように不利になってしまうのか、また対策できることはないのかを解説させていただきます。

この記事の執筆・監修者
大岡 俊明(税理士)

税理士。神奈川県横浜市のクロスウィード税理士事務所代表。メンターキャピタル税理士法人で13年間実績を積み、2024年にクロスウィード税理士事務所を開業。相鉄線沿線を対象に、相続税申告のなかでも遺産総額が1億円以下の相続税申告に特化していることが特徴。

長岡行政書士×大岡税理士 対談記事|横浜での相続のエキスパートとして

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相続税とは

相続税はその名の通り、相続された財産にかかる税金です。

ここでいう「相続された財産」にはマイナスの財産(借金などの債務)も含まれます。

たとえば、6000万のプラス財産があるとして、借金が1,000万円あるとします。この場合、6,000万円-1,000万円=5,000万円が相続財産です。

そして相続税には、「3,000万円+法定相続人の数×600万円」の基礎控除があります。

たとえば夫が死亡し、妻と一人息子が相続人になったとします。この場合の基礎控除は、3,000万円+ 2人(妻と子)×600万円=4,200万です。

つまり上記の例では、5,000万円4,200万円=800万円が、相続税の課税対象ということです。

※実際にはさまざまな特例があり、さらに相続税負担が軽減されることもありますが、原則的な計算としてご理解ください

現行の相続税制度において同性カップルが不利な点

さて、現行の相続税制度においては、いくつか同性カップルに不利な点が存在します。

  • 法定相続人になれない
  • 配偶者の税額の軽減が適用されない
  • 生命保険金の非課税枠が使えない
  • 相続税額が2割加算される

それぞれ詳しく見ていきましょう。

法定相続人になれない

先ほど相続税には、「3,000万円+法定相続人の数×600万円」の基礎控除があると紹介しました。

しかし同性パートナーは民法上の配偶者ではないため、この法定相続人には含まれません。

関連記事:相続税の基礎控除額とは?計算方法や相続税申告が必要な例を紹介!【税理士監修】

配偶者の税額の軽減が適用されない

先ほど相続税にはさまざまな特例があると紹介しましたが、そのうちの一つが「配偶者の税額の軽減(配偶者控除)」です。

相続税における配偶者控除とは、配偶者が相続した財産については、次のどちらか多い金額までは相続税が非課税となる制度です。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

この制度は、配偶者の生活保障の観点から設けられています。

しかしこの「配偶者の税額の軽減」制度は、男女の夫婦による婚姻にのみ適用されます。同性カップルには、残念ながらこの特例がありません。

生命保険金の非課税枠が使えない

民法で定められた相続財産には含まないものの、相続税法上では相続によって取得した相続財産とみなす財産のことを、「みなし相続財産」といいます。このみなし相続財産の代表例が、「生命保険などから支払われる死亡保険金」です。

関連記事:みなし相続財産はどう相続手続きする?相続財産の違いとあわせて行政書士が解説!

そして法定相続人には、生命保険金に1人あたり500万円の非課税枠が認められています。

しかし、同性カップルのパートナーは残念ながら、この生命保険金の非課税枠も対象外です。

相続税額が2割加算される

配偶者、両親、子以外の者(被相続人の一親等の血族と配偶者以外の人)が相続する場合、実は相続税額が20%割増となります。いわゆる相続税額の2割加算です。

関連記事:相続税額の2割加算とは?対象者や計算方法について税理士が解説!

そして同性パートナーは、この2割加算の対象となります。

同性カップルが相続に備える方法

ここまで、同性カップルとって不利な点を見てきましたが、実は何も相続対策ができない訳ではありません。実務上の対応策としては、次のような例が挙げられます。

  • 遺言書
  • 養子縁組
  • 生前贈与
  • 生命保険

同性カップルが相続に備える方法について、詳しく見ていきましょう。

遺言書

同性カップルのパートナーは法定相続人になれないため、財産をパートナーへ引き継ぎたい意向がある場合には遺言書が不可欠です。

ただし遺言書には形式に不備があると認められないことがありますので、専門家へ相談することを推奨いたします。

ちなみに横浜市の長岡行政書士事務所では、同性パートナーの遺言書作成を数多くサポートしてきた実績があるため、ぜひ一度相談してみてください。

参考:LGBT(同性)パートナー向け遺言書のポイントを7つ紹介!遺言で相続対策を

参考:同性パートナーが公正証書を活用する方法とは?結婚せずに将来へ備える対策を行政書士が解説!

養子縁組

パートナーを養子にすれば、法定相続人とすることが可能です。

そして養子となると、基礎控除額の増加や一部優遇措置が適用可能になります。

ただし、他の相続人(たとえばパートナーの兄弟姉妹など)との関係に注意が必要です。

生前贈与

年間110万円までの贈与を利用して、相続発生前に資産を移転しておく方法があります。

関連記事:生前贈与した場合に遺留分は関係ある?行政書士がポイントを解説!

生命保険

生命保険金の非課税枠は同性カップルのパートナーは含まれないことはご説明しましたが、生命保険金の受取人を同性パートナーに指定することはできます。

そのため生命保険を活用すれば、確実に財産を同性パートナーに引き渡すことが可能です。

同性カップルの相続は税理士・行政書士などの専門家に相談!

同性カップルは現行制度下で相続税の面で不利な立場にあります。

  • 法定相続人になれない
  • 配偶者の税額の軽減が使えない
  • 生命保険非課税枠が使えない
  • 相続税が2割加算される

これらの不利を回避するためには、遺言書の作成・養子縁組・生前贈与といった事前準備が重要です。

社会的な制度改正を待つだけでなく、現行制度を前提にした実務的な対策を講じることが、今後の安心につながります。

未だ対策を講じていない方は相続税専門の税理士や、遺言書の作成をサポートしてくれる行政書士へ相談してみてください。

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