相続時の「小規模宅地等の特例」とは?土地の評価額が最大80%減額される制度を税理士が解説

相続時の「小規模宅地等の特例」とは?土地の評価額が最大80%減額される制度を税理士が解説 相続税・贈与税
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多くの方が「土地」を所有しており、これは相続財産となりますが、土地は財産評価が難しく、かつ、相続税額を大きく左右する財産です。

この土地の評価に関して、一定の土地については「小規模宅地等の特例」という特例制度があり、土地の相続税評価額を最大で80%減額することができる場合があります。

亡くなった人が所有していた土地を相続して土地を財産評価する場合には必ずこの「小規模宅地等の特例」を適用できるか検討する必要があります。

今回はこの小規模宅地等の特例について解説していきます。

この記事の執筆・監修者
大岡 俊明(税理士)

税理士。神奈川県横浜市のクロスウィード税理士事務所代表。メンターキャピタル税理士法人で13年間実績を積み、2024年にクロスウィード税理士事務所を開業。相鉄線沿線を対象に、相続税申告のなかでも遺産総額が1億円以下の相続税申告に特化していることが特徴。

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小規模宅地等の特例とは

小規模宅地等の特例とは、前述した通り相続が発生し亡くなった人(以後、被相続人という。)が所有していた一定の土地については、相続税評価額を最大で80%減額することができる特例制度です。

「小規模宅地等の特例」の対象となる土地

対象となる一定の土地とは、一般的には被相続人が所有していた以下の4パターンの土地です。

種類概要
特定居住用宅地等被相続人等の居住の用に供されていた宅地等
特定事業用宅地等被相続人等の事業(一定のものを除く)の用に供されていた宅地等
特定同族会社事業用宅地等被相続人等が所有していた一定の法人の事業(一定のものを除く)の用に供されていた宅地等
貸付事業用宅地等被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等

「小規模宅地等の特例」の限度面積と減額割合

小規模宅地等の特例が適用できる土地については上記の通り4パターンありますが、特例が適用できる土地の面積についてはそれぞれ限度面積が定められていて、かつ、それぞれ減額割合が設定されています。

種類限度面積減額割合
特定居住用宅地等330㎡80%
特定事業用宅地等400㎡80%
特定同族会社事業用宅地等400㎡80%
貸付事業用宅地等200㎡50%

「小規模宅地等の特例」が適用される主な要件

小規模宅地等の特例を適用するには様々な要件があり、今回の記事では代表的な要件のみ見ていきます(被相続人と生計を一にしていた親族の居住用や事業用に供されていた宅地等の場合の要件なども触れていません)。

実際に適用を検討する場合は細部まで確認が必要になるため、税理士に相談することを推奨します。

こちらのサイトからご連絡いただければ、相続税に詳しい税理士を紹介いたします。

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特定居住用宅地等の要件

以下のいずれかの要件を満たすこと。

  • 被相続人の配偶者が相続すること
  • 被相続人と同居の親族が相続して、その後も相続税申告期限まで居住し保有すること
  • 配偶者も同居していた相続人もいない場合で、相続開始前3年以内に本人またはその配偶者・親族などが所有する家屋に居住したことがない一定の親族(以後、家なき子という。)が相続して、相続税申告期限まで保有すること

特定事業用宅地等の要件

以下の全ての条件を満たすこと。

  • その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税申告期限までに引き継ぐこと
  • その事業を相続税申告期限まで営んでいること
  • その宅地等を相続税申告期限まで有していること

※ただし、相続開始前3年以内に新たに事業用に供された一定の宅地等は除く

特定同族会社事業用宅地等の要件

以下の全ての条件を満たすこと

  • 相続税申告期限において、その法人の役員であること
  • その宅地等を相続税申告期限まで有していること

貸付事業用宅地等の要件

以下の全ての条件を満たすこと

  • その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税申告期限までに引き継ぎ、かつ、その相続税申告期限までその貸付事業を行っていること
  • その宅地等を相続税申告期限まで有していること

※ただし、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された一定の宅地は除く

小規模宅地等の特例に必要な書類

小規模宅地等の特例に必要な書類についても見ていきましょう。

まず共通で必要となる書類は次のとおりです。

書類概要
戸籍謄本被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(相続開始から10日以上経過後に作成されたもの)
法定相続情報一覧図の写し子の続柄が実子または養子のいずれか分かるように記載されたもの
(養子がいるケースは、その養子の戸籍謄本か抄本の提出も必要)
③遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し対象となる土地を相続することについて相続人全員が合意したことを証明するために必要。

遺産分割協議書に押印した相続人全員の印鑑証明書も必要になります。

①と②はいずれか1つで問題ありません。

なお、相続税の申告期限内に遺産分割が行われていない場合は、税務署に「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出が必要です。ここは重要な点でもあるので後述します。

それでは土地の種類ごと、必要となる書類についても紹介していきます。

特定居住用宅地等で必要となる書類

相続人である配偶者または同居親族が適用を受ける場合、マイナンバーを有していれば別途必要となる書類はありません。

しかし以下のケースだとそれぞれ別途必要な書類があります。

  • 家なき子の場合
  • 被相続人が養護老人ホーム等に入所していた場合

まず、相続人である家なき子が適用を受ける場合には、以下の書類が必要です。

➀借家の賃貸借契約書等相続開始前3年以内に居住していた家屋が、自己、自己の配偶者、三親等内の親族又は特別の関係がある一定の法人の所有する家屋以外の家屋である旨を証する書類が必要です。
②相続開始時に居住していた家屋の登記簿謄本等相続開始の時において自己の居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないことを証する書類が必要です。

つづいて、被相続人が養護老人ホーム等に入所していたことなど一定の事由により、相続開始直前に被相続人の居住の用に供されていなかった宅地等について適用を受ける場合には、以下の書類が必要です。

➀被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始の日以後に作成されたもの)
②施設入所契約書の写しなど
③介護保険の被保険者証の写しなど

特定事業用宅地等で必要となる書類

特定事業用宅地等の場合には原則、別途必要な書類はありません。

特定同族会社事業用宅地等で必要となる書類

特定同族会社事業用宅地等については以下の書類が必要です。

➀特例の対象となる法人の定款の写し
②特例の対象となる法人の相続開始の直前における発行済株式の総数や被相続人等が有する株式の総数等を記載した書類(その法人が証明したものに限る)

貸付事業用宅地等で必要となる書類

貸付事業用宅地等が相続開始前3年以内に新たに被相続人等の貸付事業の用に供されたものであるときには、被相続人等が相続開始の日まで3年を超えて特定貸付事業を行っていたことを明らかにする書類が必要です。

➀過去の所得税確定申告書
②貸付事業で締結された賃貸借契約書など

相続財産が分割されていないと「小規模宅地等の特例」はどうなる?

相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に、税務署に対して行うことになっています。

相続税申告は、相続財産が分割されていない場合であっても上記の申告期限までにしなければなりません。残念ながら分割されていないということを理由に相続税の申告期限が延びることはありません。

そのため、相続財産の遺産分割協議が成立していないときは、各相続人が法定相続割合によって財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告と納税をすることになります。

この場合、相続税の特例である小規模宅地等の特例や配偶者の税額の軽減の特例などが適用できない申告になりますので注意が必要です。

ただし、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出することで、申告期限から3年以内に分割された場合には、その後に手続きを行うことによって特例の適用を受けることができます。

そのため、相続財産の分割が行われ、その分割に基づいて計算した税額と既に申告していた税額が異なるときは、実際に分割した遺産分割協議書に基づいて修正申告または更正の請求をすることができます。

更正の請求は、分割が行われた日の翌日から4か月以内であれば行うことができます。

上述した通り、「申告期限後3年以内の分割見込書」を当初の相続税の申告書に添付して提出しておくことで、原則として相続税申告期限から3年以内に分割された場合には、修正申告または更正の請求において小規模宅地等の特例や配偶者の税額の軽減の特例の適用を受けることができます。

相続税申告期限までに遺産分割がまとまらない場合には「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出するようにしましょう。

まとめ

「小規模宅地等の特例」で対象となる土地、限度面積と減額割合、要件を整理すると、次のようになります。

種類概要限度面積減額割合要件
特定居住用宅地等被相続人等の居住の用に供されていた宅地等330㎡80%被相続人の配偶者が相続すること
or
被相続人と同居の親族が相続して、その後も相続税申告期限まで居住し保有すること
など
特定事業用宅地等被相続人等の事業(一定のものを除く)の用に供されていた宅地等400㎡80%被相続人の事業を承継すること
and
相続税申告期限まで、その事業を営むこと
and
その宅地等を相続税申告期限まで有すること
特定同族会社事業用宅地等被相続人等が所有していた一定の法人の事業(一定のものを除く)の用に供されていた宅地等400㎡80%相続税申告期限において、被相続人が所有していた法人の役員であること
and
その宅地等を相続税申告期限まで有していること
貸付事業用宅地等被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等200㎡50%相続人が引き続き貸付事業を相続税申告期限まで行うこと
and
その宅地等を相続税申告期限まで有していること
※詳細な要件は別途ありますので必ずご確認ください。

やはり複雑な制度であると思いますので、実際に適用を検討する場合は細部まで確認が必要になるため、税理士に相談することを推奨します。

こちらのサイトからご連絡いただければ、相続税に詳しい税理士を紹介いたします。お気軽にご相談ください。

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