日本では同性カップルは法律上の「配偶者」と認められていないため、相続税において男女の夫婦に優遇されている「配偶者の税額の軽減」が使えません。
また、同性カップルが遺産を取得した場合には「相続税額の2割加算」の対象となり、男女の夫婦と比べて相続税額を多く納めなければなりません。
関連記事:相続税額の2割加算とは?対象者や計算方法について税理士が解説!
よって男女の夫婦と比べて、同じ遺産額でも相続税の負担が大きくなるという現実があります。
しかし、なんとなく不安に感じているものの、同性パートナーに遺言書などで財産を残した場合、実際どのくらいの相続税がかかるのか想像もつかないという方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、同性カップルの遺産額が3,000万円、5,000万円、1億円だった場合、それぞれ相続税額がどのくらいになるのかを試算してみようと思います。
なお、試算の前提条件は以下4点とさせていただきます。
- 法律婚ではないため 配偶者の税額の軽減なし
- 遺産を受け取るのは同性パートナー1名のみ
- 基礎控除は3,000万円
- 税率は相続税法の速算表を使用
遺産額3,000万円の同性カップルの相続税
まずは遺産額3,000万円の同性カップルの相続税について見てみましょう。
「3,000万円なんて、うちには関係ない」と思われるかもしれません。しかし、もしマイホームに暮らしているなら、遺産額が3,000万円となる可能性は十分にあります。
なぜなら、相続財産には不動産の評価額も含まれるからです。たとえば築年数の経った中古マンションであっても、立地によっては評価額が2,000万円を超えることも珍しくありません。これに預貯金や車などを加えれば、総額3,000万円はそれほど高いハードルではないのです。
課税価格
3,000万円 − 基礎控除3,000万円 = 0円
相続税額→ 0円
遺産額が3,000万円なら、相続税の基礎控除(3,000万円+法定相続人の数×600万円)の範囲内のため、計算上は相続税は課税されません。
しかし遺産額が3,000万円を超えるかどうかギリギリのラインの場合は注意が必要です。
相続財産の評価は想像以上に複雑で、自分で計算した遺産額が3,000万円以下になったとしても、実は3,000万円を超えているケースもあるためです。
適性に申告手続をするためには、念のため税理士へ相談することも検討してみてください。
関連記事:相続財産評価を税理士に依頼すると何をしてくれる?対応内容を解説!
遺産額5,000万円の同性カップルの相続税
遺産額5,000万円の同性カップルの相続税を計算してみましょう。
課税価格
5,000万円 − 基礎控除3,000万円 = 2,000万円
税率
1,000万円超〜3,000万円以下 → 15%(控除額50万円)
相続税額
2,000万円 × 15% − 50万円 = 250万円
2割加算
250万円 × 120% = 300万円
遺産額5,000万円の場合、男女の夫婦であれば「配偶者の税額の軽減」を適用することで、相続税が0円になります。
しかし同性カップルはこの優遇税制が使えないため、300万円の税負担が生じるのです。
5,000万円というと富裕層の話に聞こえるかもしれませんが、東京・横浜などの都市部でマイホームを所有している場合、決して珍しい金額ではありません。やはり税理士へ相談するのがおすすめです。
遺産額1億円の同性カップルの相続税
最後に、遺産額1億円の同性カップルの相続税を計算します。
課税価格
1億円 − 基礎控除3,000万円 = 7,000万円
税率
5,000万円超〜1億円以下 → 30%(控除額700万円)
相続税額
7,000万円 × 30% − 700万円 = 1,400万円
2割加算
1,400万円 × 120% = 1,680万円
遺産額が1億円あっても、男女の夫婦であれば「配偶者の税額の軽減」を適用して相続税が0円になります。
しかし同性カップルの場合は、1,680万円もの大きな税負担が発生することを考慮しておくべきでしょう。
とくに都心部で不動産を所有しており、さらに退職金などを受け取ったタイミングで相続が発生した場合は要注意です。
同性カップルの相続対策は税理士・行政書士に相談!
同性カップルは法律婚ができないため、相続税の優遇税制が使えないという制度上の不利益が存在してしまいます。
特に遺産額が大きくなるほど、男女の夫婦との税負担の差は顕著になるため注意しなければなりません。事前に対策することで影響を少なくすることができる可能性がありますので、相続税専門の税理士に相談することを推奨いたします。
関連記事:同性カップルの相続税はどうなる?現行制度における不利な点について税理士が解説
また、そもそも同性カップルがパートナーに財産を残したい場合、「遺言書」を用意しなければなりません。そして遺言書は、形式に不備があると認められないことがありますので、作成するときは行政書士などの専門家へ相談することをおすすめします。




