祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度について税理士が解説

inheritance 相続税・贈与税
相続税・贈与税

現行の税制で、扶養義務者間(親子間等)で「必要の都度支払われる教育資金」は原則として贈与税は非課税とされています。しかし必要の都度ではなく、前もって多額の資金提供をすると、贈与税の課税対象になる場合があります。

しかし,教育については将来にわたり多額の資金が必要であり、「一括贈与」のニーズも高くなっています。そこで、比較的資産に余裕のある高齢世代が、子や孫のために教育資金を非課税で「一括贈与」できるように設けられた制度があります。

今回の記事では、祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度について、税理士が解説していきます。

この記事の執筆・監修者
大岡 俊明(税理士)

税理士。神奈川県横浜市のクロスウィード税理士事務所代表。メンターキャピタル税理士法人で13年間実績を積み、2024年にクロスウィード税理士事務所を開業。相鉄線沿線を対象に、相続税申告のなかでも遺産総額が1億円以下の相続税申告に特化していることが特徴。

長岡行政書士×大岡税理士 対談記事|横浜での相続のエキスパートとして

大岡 俊明(税理士)をフォローする

今、悩まれている方はお問い合わせください

長岡行政書士事務所
まずは初回0円相談でお悩み解決!

ご予約・お問い合わせはこちら

平日9:00~21:00(土日祝日予約制)

祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度とは

祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度は、平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に、受贈者(30歳未満の人に限ります)が教育資金に充てるため、金融機関等との教育資金管理契約に基づき、贈与者(受贈者の直系尊属である父母や祖父母など)から書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合などには、その価額のうち1,500万円までの価額は、金融機関等の営業所等に教育資金非課税申告書の提出をすることにより、受贈者の贈与税が非課税となる制度です。

ところで、そもそも教育資金とはどのようなものが該当するのでしょうか。

本制度では、教育資金を次のような金銭としています。

  • 学校等に直接支払われる教育資金
  • 学校等以外に直接支払われる教育資金で社会通念上相当と認められるもの

学校等に直接支払われる教育資金

1.入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料など
2.学用品の購入費、修学旅行費や学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など

※「学校等」とは、学校教育法で定められた幼稚園、小・中学校、高等学校、大学(院)、専修学校及び各種学校、一定の外国の教育施設、認定こども園又は保育所などをいいます。


学校等以外に直接支払われる教育資金で社会通念上相当と認められるもの

<イ 役務提供や指導を行う者(学習塾や水泳教室など)に直接支払われるもの>

3.教育(学習塾など)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
4.スポーツ(水泳など)又は文化芸術に関する活動(ピアノなど)その他教養の向上のための活動に係る指導への対価など
5.上記の役務の提供や指導で使用する物品の購入に要する金銭

(注) 受贈者が23歳に達した日の翌日以後に支払われる上記3〜5の金銭については、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するための費用に限ります。


<ロ イ以外(物品の販売店など)に支払われるもの>
6.先述した「2」に充てるための金銭であって、学校等が必要と認めたもの
7.通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費

非課税制度を受けられないケース

以下のような場合は、非課税制度を受けられない、又は一定額につき相続税もしくは贈与税の課税対象となるケースがあります。

  • 受贈者が30歳以上の場合(一定の場合を除く。)
  • 一括贈与を受けた日の属する年の前年分の受贈者の所得税に係る合計所得金額が1,000万円を超える場合
  • 教育資金管理契約の契約期間中に贈与者が死亡した場合(相続税がかかるケースがあります。)
  • 教育資金管理契約が終了した場合(贈与税がかかるケースがあります。)

非課税制度を受けるための手続き

本制度の適用を受けるためには、以下の手続きを行います。

  1. 教育資金口座の開設
  2. 教育資金非課税申告書の提出
  3. 教育資金口座からの払出し及び教育資金の支払

それぞれ詳しく見ていきましょう。

教育資金口座の開設

取扱金融機関等で受贈者名義の教育資金口座の開設をします。

教育資金非課税申告書の提出

上記の教育資金口座の開設を行った金融機関等の営業所等に、信託や預入などをする日(通常は教育資金口座の開設の日)までに教育資金非課税申告書を提出します。

教育資金口座からの払出し及び教育資金の支払

教育資金口座からの払出し及び教育資金の支払を行った場合には、その支払に充てた金銭に係る領収書などの書類を、次の提出期限までに金融機関等の営業所等に提出をする必要があります。

教育資金を支払った後にその実際に支払った金額を口座から払い出す方法を選択した場合

領収書などに記載がされた支払年月日から1年を経過する日

上記以外の方法を選択した場合

領収書などに記載がされた支払年月日の属する年の翌年3月15日

教育資金口座に係る契約が終了するとき

教育資金口座に係る契約は、次の(1)〜(5)の事由に応じ、それぞれに定める日のいずれか早い日に終了します。

  契約の終了事由 終了日
(1) 受贈者が30歳に達したこと(学校に在学しているなど金融機関等の営業所等に届けた場合を除く) 30歳になった日
(2) 受贈者(30歳以上の方に限ります。(3)に関して同じです。)がその年中のいずれかの日において学校等に在学した日があることなどを、金融機関等の営業所等などに届け出なかったこと その年の12月31日
(3) 受贈者が40歳に達したこと 40歳に達した日
(4) 口座の残高が0(ゼロ)になり、かつ、その口座に係る契約を終了させる合意がこと 合意に基づき終了する日
(5) 受贈者が死亡したこと 死亡した日

(1)〜(4)の事由に該当したことにより教育資金口座に係る契約が終了した場合、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額があるときは、その残額が終了の日の属する年の受贈者の贈与税の課税価格に算入されます。

一方、(5)の場合には、贈与税の課税価格に算入されるものはありません。

その結果、その年の贈与税の課税価格の合計額が基礎控除額を超えるなどの場合には、贈与税の申告期限までに贈与税の申告を行う必要があります。

金融機関等との契約期間中に「贈与者」が死亡したらどうなる?

金融機関等との契約期間中に贈与者(祖父母など)が亡くなってしまうケースも考えられます。

契約期間中に贈与者が死亡した場合において、次に該当するときは、贈与者が死亡したことを金融機関等の営業所等への届出が必要となります。そして一定の事由に該当する場合を除き、管理残額が相続等により取得したものとみなされます。

  • 令和3年4月1日以後にその贈与者から贈与を受け、この非課税制度の適用を受けた場合
  • 平成31年4月1日から令和3年3月31日までの間にその贈与者から贈与を受け(その死亡前3年以内に限ります。)、この非課税制度の適用を受けた場合

なお、受贈者が贈与者の死亡日において、以下のいずれかの場合には、相続等によって取得したものとはみなされません。

  • 23歳未満である場合
  • 学校等に在学している場合※
  • 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合※

※その旨を明らかにする書類を届出と併せて提出した場合に限ります。

ただし、令和5年度税制改正(下記に記載)により、令和5年4月1日以降の非課税制度の適用を受けた贈与については、上記のいずれかに該当する場合でも、その贈与者の相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、相続等によって取得したものとみなされますので注意が必要です。

令和5年度税制改正のポイント

祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度は令和5年度に改正が行われましたので、主な改正事項の内容を見ていきます。ポイントは次の

  • 適用期限の延長(納税者有利の改正)
  • 相続等によって取得したとみなされるものについての改正(納税者不利の改正)
  • 贈与税の一般税率の適用(納税者不利の改正)

まず、適用期限が令和8年3月31日まで3年間延長されました。

相続等によって取得したとみなされるものについて、贈与等があった日から教育資金管理契約の終了の日までに贈与者が死亡した場合に、その贈与者の相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、受贈者が23歳未満である場合等であっても、その贈与者の死亡の日における管理残額を、その受贈者がその贈与者から相続等によって取得したものとみなされることとされました。納税者不利の改正だといえます。

また、教育資金管理契約が終了した場合において、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額に暦年課税の贈与税が課されるときは、一般税率を適用することとされました。これも納税者不利の改正だといえます。

出典:国税庁ホームページ

教育資金の一括贈与も相続に影響することがある

祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度については、ご覧のとおり複雑な制度となっています。

そして相続に影響することもあるため、やはり実施するときは、相続税・贈与税に詳しい税理士へ相談したほうがいいでしょう。

横浜市の長岡行政書士事務所は税理士事務所とも提携しておりますので、ご要望がある場合は実績ある税理士をご紹介いたします。LINE・お電話などでお気軽にご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました