不動産などを相続すると、多額の相続税が発生することがあります。
しかし納税に必要な現預金も同時に相続していない場合、相続税を支払えないケースがでてきます。
そのようなケースでは、相続税の「延納」という手続きを取れる可能性があります。
今回はその相続税の延納の手続きについて解説していきたいと思います。
相続税の「延納」とは
国税は、金銭で期限までに一括納付することが原則です。
しかし、相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供することにより、年賦の方法(年払い)で納付することができます。
これを延納といいますが、この延納期間中は利子税の納付が必要となります。
延納の要件
先ほど文章内で一気に紹介しましたが、延納の要件について改めて見てみましょう。
- 相続税額が10万円を超えること
- 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること
- 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること
- 延納申請に係る相続税の納期限または納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること
このすべての要件を満たす場合に、延納を申請することができます。
ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。
また、4番目の条件をさらに細かく考えると、延納申請期限は次のようになります。
- 期限内申告の場合:申告期限
- 更正又は決定の場合:当該通知が発せられた日の翌日から起算して1か月を経過する日
- 期限後申告又は修正申告の場合:申告書の提出の日
延納で提供できる担保の種類
さて、延納の担保として提供できる財産の種類は、次に掲げるものに限られます。
- 国債および地方債
- 社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
- 土地
- 建物、立木、登記される船舶などで、保険に附したもの
- 鉄道財団、工場財団など
- 税務署長が確実と認める保証人の保証
なお、延納申請時に担保とできる財産は、相続または遺贈により取得した財産に限りません。相続人の固有の財産や、共同相続人または第三者が所有している財産であっても担保として提供できます。
税務署長が延納の許可をする場合において、延納申請者の提供する担保が適当でないと認めるときには、その変更を求めることとなります。
担保提供関係書類の提出期限
納期限または納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して提出する必要があります。
ただし、延納申請期限までに担保提供関係書類を提供することができない場合は、担保提供関係書類提出期限延長届出書を提出することにより、1回につき3か月を限度として、最長6か月まで担保提供関係書類の提出期限を延長することができます。
延納の許可までの審査期間
延納申請書が提出された場合、税務署長は、その延納申請に係る要件の調査結果に基づいて、延納申請期限から3か月以内に許可または却下を行います。
なお、延納担保などの状況によっては、許可または却下までの期間を最長で6か月まで延長する場合があります。
相続税の延納を申請しても現金での納税が難しい場合はどうする?
延納の許可を受けた相続税額について、その後に延納条件を履行することが困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、分納期限が未到来の税額部分について、延納から物納への変更を行うことができます。
これを特定物納といいます。
特定物納の申請をした場合には、物納財産を納付するまでの期間に応じ、当初の延納条件による利子税を納付することとなります。
なお、特定物納に係る財産の収納価額は、特定物納申請書を提出した時の価額となります。
上記については、平成18年4月1日以後の相続開始により財産を取得した場合に適用されます。
なお、平成18年3月31日以前の相続開始により財産を取得した場合には、改正前の相続税法が適用され、上記の担保提供関係書類の提出期限、延納の許可までの審査期間および特定物納制度の適用はありません。
相続税の延納は税理士へ相談
相続税の延納については以上のように規定されています。
延納するには、担保の設定や利子税が発生してしまうことにより出来れば避けたいです。
ただし、延納する金額が10~100万円であれば担保の設定も無いので、納付するのが困難な理由があれば延納制度を積極的に利用しても良いかと思います。
できれば延納することが無いような相続が理想ではありますので、生前から相続対策をしておくことが何より大切かと考えます。
いずれにしても、相続税にどのように対処するかは、専門家である税理士へ相談したほうが安心でしょう。