相続時の不動産を調査する際の名寄帳とは?方法や利用時の注意点を行政書士が解説!

inheritance 相続手続の基礎
相続手続の基礎

「相続時に不動産の場所などを調べるためには名寄帳が便利と聞いたが、どのような書類?」
「名寄帳を取得したいけど、誰が請求できるの?」
「名寄帳と固定資産税評価証明書はどう異なる?」

被相続人が生前に不動産を所有していた場合、場所などを特定し漏れなく相続するためには「名寄帳」を活用すると便利です。では、名寄帳とはどのような書類で、どうすれば請求できるでしょうか。本記事で行政書士がわかりやすく解説します。

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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名寄帳とは|書類の概要と記載内容

相続時に役立つ「名寄帳」とは一体どのような書類でしょうか。この章では書類の概要や記載されている内容をわかりやすく紹介します。

名寄帳は不動産の一覧表

名寄帳とは、不動産に課税される「固定資産税」を管理するために各市区町村が作成しているもので、納税義務者(不動産の所有者)をベースに土地・家屋の情報をまとめたものです。固定資産税は地方税の1つのため、各市区町村が管理を行っています。

名寄帳は被相続人が所有していた不動産を調べるために役立ち、取り寄せることで該当する自治体にある所有不動産がわかります。

固定資産税納税通知書との違い

相続時に被相続人が所有していた不動産を把握するために、被相続人宛に生前届いていた「固定資産税納税通知書」をお手元に用意している方も多いでしょう。固定資産税納税通知書は相続時に利用することが多いもので、毎年春頃に届きます。では、固定資産税納税通知書と名寄帳の違いとはどのようなものでしょうか。

 主な特徴
・名寄帳個人の不動産のみ記載 固定資産税の対象にはならない不動産も記載されていることがある※ 証明に使うものではなく、納税義務者(不動産所有者)が所有している不動産の明細書である。私道などの非課税不動産が記載されていることがある。
・固定資産税納税通知書固定資産税(都市計画税も)が課税されている土地や家屋の所在地や納税額、不動産所有者も記載されている

名寄帳はあくまでも個人名で名寄せを行った不動産の明細書です。一方の固定資産税納税通知書は納税額を知らせるものです。

注意名寄帳は各市区町村によって記載内容が異なるため、非課税の不動産が記載されていない場合もあります!


名寄帳を請求する方法とは?

名寄帳は、個人が所有している不動産が所在している自治体別に記載されているため、被相続人が生前に所有していた不動産を把握する際に役立ちます。

毎年届く固定資産税納税通知書を使って不動産を特定する方法もありますが、名寄帳なら納税通知書には未記載だった不動産が見つかることがあります。相続時には漏れのない相続手続きのためにも名寄帳を取り寄せましょう。では、名寄帳の請求方法はどのようなものでしょうか。

取得できる場所

名寄帳はすでに述べたように、不動産が所在する市区町村役場で取得できます。横浜市、東京都(23区)の場合は以下のとおりです。

① 横浜市…横浜市では各区で土地・家屋総合名寄帳登録事項証明書が取得できます。(区で取得できる証明書には、区内の不動産のみ記載)

書類名記載内容取得できる場所取得費用
土地・家屋総合名寄帳登録事項証明書  納税義務者名、所在、地目・地積(土地)、種類・床面積(家屋)、価格(評価額)など
※非課税資産は記載されません。
資産の所在する区の
区役所税務課
1通300円

② 東京都23区…東京都23区の名寄帳は資産が所在する区の都税事務所で取得できます。(区で取得できる証明書には、区内の不動産のみ記載)

書類名記載内容取得できる場所取得費用
土地・家屋名寄帳納税義務者ごとの土地及び家屋に関する登録事項(評価額、課税標準額、相当税額、軽減・減免税額)を一覧にした帳簿  資産の所在する区の
都税事務所
所有者ごとに300円 (※都税証明郵送受付センターに申請も可能。区ごとに300円が必要)

このように各自治体によって取得方法も異なっています。不動産の所在地を管轄する自治体にまずは確認した上で名寄帳を用意しましょう。

参考URL ・横浜市 固定資産に関する証明書 
    ・東京都主税事務所 固定資産 証明・閲覧申請について 固定資産(土地・家屋) <相続人・受遺者>

取得までの流れ

名寄帳の取得までの流れは以下です。

① 不動産の所在地(不動産のある市町村役場)を特定する
(わからない場合は不動産にまつわる書類を探したり、ご家族内に知っている方はいないか確認)
② 必要書類を用意する
③ 窓口もしくは郵送での申請

■必要書類とは?
相続人が被相続人の名寄帳を取り寄せる際に必要な書類は、主に以下です。実際に取り寄せる際には各市区町村へご確認の上でご準備ください。

・申請者の本人確認書類
・法定相続情報一覧図 もしくは 被相続人が亡くなられたことがわかる書類
(住民票の除票、除籍謄本等)
・相続人であることが分かる現在の戸籍謄本、抄本

請求できる方とは

個人の大切な資産状況がわかる名寄帳は、誰でも自由に取得することはできません。原則納税者本人しか取得できませんが、相続時に必要となった場合には、所有者(被相続人)本人の相続人なら請求できます。なお、相続人の代理人も請求可能です。

(※借地人などの利害関係者も名寄帳を取得できます。)

名寄帳利用時の注意点

相続時に不動産を調べる際に便利な名寄帳ですが、実際に利用する際には知っておきたい注意点もあります。詳しくは以下のとおりです。

毎年1月1日時点で所有されている不動産しか記載されない

名寄帳は該当する年度の1月1日時点の情報しか反映していないため、1月2日以降に不動産の新たな取得や売却が発生していても、すぐには反映されません。もしも相続人が不動産を取得・売却の直後に亡くなっている場合は、名寄帳には載っていない可能性があります。

不動産を多数売買している方は、こうした点も踏まえて所有している不動産がどこにあるのか、ご家族と情報を共有しておくことがおすすめです。

遠方の不動産は見落とす可能性がある

名寄帳は各市区町村に所在している不動産しか記載されていないため、遠方などにある不動産は見落としてしまう可能性があります。

もしも被相続人が生前に「〇〇市に母親の土地があった」「〇〇町に我が家の田んぼがあるはず」などの発言をしていた場合は、念のため該当する自治体に問い合わせてみることがおすすめです。

なぜ相続時には名寄帳を利用するの?

不動産の所在を特定するためには、以下の方法もあります。

・登記事項証明書(登記簿謄本)
・不動産登記権利情報
・固定資産税評価証明書
・固定資産税納税通知書 など

この他にも不動産の売買記録なども、被相続人が所有していた不動産の特定に役立ちます。では、なぜ名寄帳も相続時には利用するのでしょうか。

合わせて読みたい:遺産分割協議後に新たな財産が見つかったら?対策と注意点を行政書士が紹介!

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非課税の不動産を見逃さないため

各市区町村が作る名寄帳にもよりますが、被相続人が生前に所有していた非課税の不動産が名寄帳によって特定できることがあります。固定資産税関連の書類は課税されている不動産しか記載されていないため、私道や山林などの非課税の不動産を見落とすおそれがあります。

非課税の不動産とは?

固定資産税には以下に挙げる「免税点」が設けられています。

・土地の課税評価額が30万円未満
・建物の課税評価額が20万円未満

この免税点を下回る評価額の不動産には固定資産税が課税されません、つまり非課税不動産となります。

なお、対象については同一市区町村・同一所有者で計算が行われます。たとえば、1名の方が横浜市青葉区に2つの土地をお持ちで1つの土地の課税評価額が15万、もう1つの土地の評価額が25万円の場合は計算すると合計40万となり、課税対象となります。

参考URL 横浜市 固定資産税(土地・家屋)・都市計画税(概要)

相続登記を怠らないため

名寄帳は個人が所有する不動産を特定する効果があり、相続登記漏れを防ぐ効果もあります。2024年4月1日より相続登記の義務化が始まっており、相続で不動産を得た相続人は所有権の取得を知った日から3年以内に登記を終える必要があります。

被相続人が所有していた不動産を丁寧に調べることは、大切な手続きの漏れや遅延を防ぐ効果があるのです。

不動産を確実に相続するためには生前対策を

不動産を確実に相続するためには、名寄帳だけでは不完全です。非課税不動産の記載がない名寄帳もある以上は、生前から不動産の相続対策を進めることが大切です。以下2つに挙げる方法で、安心の不動産相続に備えましょう。

相続登記を進め、家族と情報の共有しよう

不動産の所在を調べる方法は多数ありますが、漏れが起きる可能性は否定できません。特に頻繁に不動産売買を行っている個人投資家の方は、家族に所有している不動産について情報を共有しておくことがおすすめです。

また、故人の名義のままとなっている不動産は、固定資産税の通知が故人名で届くことがあり見落とす可能性があります。たとえば、亡父が生前に亡祖父名義の不動産を相続していたものの、相続登記をしておらず固定資産税納税通知書が亡祖父名義のままとなっているケースです。

事情を知らない亡父の相続人は、今誰が所有している不動産なのかわからず、相続登記を見落とす可能性があります。

こうしたトラブルを防ぐためにも、相続登記と家族との情報共有は大切なのです。

合わせて読みたい:相続手続きは誰に相談する?金融機関と専門家の違いを行政書士が解説!

遺言書で不動産の所在を明確にしておこう

遺言書を作ると、不動産だけではなくお持ちの財産をわかりやすく財産目録という形で一覧表にできます。遺言書があればその内容に沿って相続手続きを進められるため、漏れが起きません。多数の不動産を所有している、遠方にも不動産を持っているなどの方には、特におすすめできる方法です。

合わせて読みたい:相続時に必要な財産目録とは|目的や書き方を行政書士が紹介します!

不動産の相続には遺言書のご検討を|横浜市の長岡行政書士事務所にご相談ください

今回の記事では相続時に活用することが多い名寄帳について、請求の方法や利用時の注意点などをわかりやすく行政書士が解説しました。名寄帳は便利な書類ですが、実際の利用時には非課税の不動産は未記載のこともあるため注意が必要です。

不動産を円滑に相続するためには、遺言書のご利用もおすすめです。相続人の負担を減らす効果もあります。まずはお気軽に横浜市の長岡行政書士事務所にご相談ください。

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この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
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