土地を所有すると、その近辺の私道も併せて所有することがあります。
そして私道を相続する場合、相続税評価額には注意しなければなりません。
私道の相続税評価額は、通常の土地とは異なる方法により評価されるためです。
今回は相続における「私道の評価」について解説していきたいと思います。
私道の種類
一口に「私道」といっても、次の2種類が存在します。
- 公共の用に供するもの(不特定多数の者の通行の用に供するいわゆる通り抜け道路)
- もっぱら特定の者の通行の用に供するもの(いわゆる袋小路のような行き止まり道路)
このうち、「私道の評価」の対象となる宅地は、後者に該当するものです。
私道であっても、前者に該当するものは、その私道の価額は評価しないことになっています。(評価しない私道については記事後半で詳しく紹介します)
私道の評価方法
私道の評価は、その宅地が私道でないものとして路線価方式または倍率方式によって評価した価額の30パーセント相当額で評価します。
この場合、倍率地域にある私道の固定資産税評価額が私道であることを考慮して付されている場合には、その宅地が私道でないものとして固定資産税評価額を評定し、その金額に倍率を乗じて評価した価額の30パーセント相当額で評価します。
文字だけでは難しいため、計算式を見てみましょう。
私道の価額=正面路線価×奥行価格補正率※1×間口狭小補正率※2×奥行長大補正率※3×0.3×地積
※1奥行価格補正率とは
路線価評価において、土地の形状や奥行きがその価値に与える影響を調整するために使用される割合(補正率)です。
これは標準的な奥行きを基準とした場合に、その土地が相対的にどの程度の価値があるかを反映させるための仕組みです。
奥行価格補正率の調整率表は、国税庁ホームページに掲載されています。
※2間口狭小補正率とは
路線価評価において、土地の間口(道路に接する部分の幅)が狭い場合に、その土地の利用価値が低くなる可能性を考慮し、評価額を調整するための補正率です。これは、通常の土地と比較して建築や利用が制限されることを反映させるための仕組みです。
間口狭小補正率の調整率表も、国税庁ホームページに掲載されています。
※3奥行長大補正率とは
路線価評価において、土地の奥行きが標準的な長さを大幅に超えている場合に、その土地の一部が有効活用されにくいことを考慮して、評価額を調整するために用いられる補正率です。
奥行長大補正率の調整率表も国税庁ホームページに掲載されています。
評価しない私道の具体例
私道であっても、相続評価をしないケースもあります。
それは記事前半で解説した通り、不特定多数の者の通行の用に供するいわゆる通り抜け道路など、ある程度の公共性が認められる場合です。
具体的には次のような私道といえます
- 公道から公道へ通り抜けできる私道
- 行き止まりの私道であるが、その私道を通行して不特定多数の者が地域等の集会所、地域センター及び公園などの公共施設や商店街等に出入りしている場合などにおけるその私道
- 私道の一部に公共バスの転回場や停留所が設けられており、不特定多数の者が利用している場合などのその私道
出典:不特定多数の者の通行の用に供されている私道|国税庁ホームページ
私道に沿接する宅地の評価方法
さて、路線価が設定されていない私道に沿接する宅地も存在します。
このような宅地の評価方法についても見ていきましょう。
相続税や贈与税の申告のために、路線価地域内において「路線価の設定されていない道路のみに接している宅地」を評価する必要があるときには、納税地を所轄する税務署長に「特定路線価設定申出書」を提出することができます。
この設定の申出により税務署長が特定路線価を設定した場合には、この特定路線価を路線価とみなして、その道路のみに接している宅地を評価します。
私道の関係する相続税は税理士へ相談
私道が相続税計算に関係してくる場合、まずその私道が「公共の用に供するもの」なのか、「もっぱら特定の者の通行の用に供するもの」なのかを判断しなければなりません。
そしてその判断に応じて適切に評価額を計算し、さらに私道に沿接する宅地がある場合には、その評価のための手続きも必要です。
このように私道が相続税計算に関係してくる場合、非常に手間がかかります。
私道が相続税に関係しそうなときは、一度税理士へ相談してみてください。