相次相続控除とは?10年以内に続けて相続が発生した場合に使える制度を税理士が解説!

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相続税・贈与税

相続が立て続けに発生すると、同じ財産に対して相続税が2回課税されてしまうケースがあります。

そのようなケースにおいて、2回目の相続時に一定の要件を満たしていれば、一定額相続税を控除できる制度があります。これを相次相続控除といいます。

今回は相次相続控除について、どのような条件があり、どのようにかつ浴していくのかを解説していきます。

この記事の執筆・監修者
大岡 俊明(税理士)

税理士。神奈川県横浜市のクロスウィード税理士事務所代表。メンターキャピタル税理士法人で13年間実績を積み、2024年にクロスウィード税理士事務所を開業。相鉄線沿線を対象に、相続税申告のなかでも遺産総額が1億円以下の相続税申告に特化していることが特徴。

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相次相続控除とは

今回の相続開始前10年以内に、被相続人が相続・遺贈・相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得し相続税が課されていた場合には、その被相続人から相続・遺贈・相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人の相続税額から、一定の金額を控除します。

これが相次相続控除です。

相次相続控除が受けられる人

相次相続控除が受けられるのは次のすべてに当てはまる人です。

  1. 被相続人の相続人であること
  2. その相続の開始前10年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得していること
  3. その相続の開始前10年以内に開始した相続により取得した財産について、被相続人に対し相続税が課税されたこと

※相次相続控除の適用対象者は、相続人に限定されています。相続の放棄をした人および相続権を失った人は、たとえ遺贈により財産を取得しても、相次相続控除は適用されません。

相次相続控除の計算式

相次相続控除は、前回の相続において課税された相続税額のうち、1年につき10パーセントの割合で逓減した後の金額を今回の相続に係る相続税額から控除するものです。

各相続人の相次相続控除額は、次の算式により計算した金額です。

A×C/(B-A)※×D/C×(10-E)/10=各相続人の相次相続控除額

※求めた割合が100/100を超えるときは、100/100とする

A~Eの金額は、次のように求めます。

A:今回の被相続人が、前の相続の際に課せられた相続税額

この相続税額は、相続時精算課税分の贈与税額控除後の金額です。
その被相続人が納税猶予の適用を受けていた場合の免除された相続税額、ならびに延滞税・利子税・加算税の額は含まれません。

B:今回の被相続人が、前の相続の際に取得した純資産価額

純資産価額とは、「取得財産の価額+相続時精算課税の適用を受ける財産(相続時精算課税適用財産)の価額-債務および葬式費用」のことです。

なお、令和6年1月1日以後の贈与により取得した相続時精算課税適用財産については、贈与を受けた年分ごとに、相続時精算課税適用財産の贈与時の価額の合計額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額となります。

関連記事:相続時精算課税制度とは?令和5年(2023年)の改正とあわせて解説【税理士監修】

C:今回の相続・遺贈・相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額

D:今回のその相続人の純資産価額

E:前の相続から今回の相続までの期間(1年未満の期間は切捨て)

出典:相次相続控除|国税庁ホームページ

相次相続控除の計算例

それでは例を用いて、相次相続控除を計算してみましょう。

このたび、父が死亡しました。
4年6か月前には祖父が死亡しており、父は1,000万円の相続税を納めています。
この場合、今回の私が納めるべき相続税額から控除できる相次相続控除はいくらになりますか。

ちなみに、父が祖父から相続した純資産価額(相続財産から債務等を引いた後の額)は1億5,000万円で、今回の父から相続する全体の純資産価額は1億8,000万円で、今回の私が相続する純資産価額は9,000万円で相続税額は950万円です。

前回の祖父の相続において、あなたの父が納めた1,000万円の税額のうち、次の算式で計算した金額(300万円)が相次相続控除となります。

(前提) 「純資産価額」とは、相続した財産から債務・葬式費用を控除した額をいいます。

  • 前回の祖父から父が相続した純資産価額 1億5,000万円(父の相続税額1,000万円)
  • 今回の父の全体の相続税の純資産価額 1億8,000万円
  • 今回のあなたの相続する純資産価額9,000万円(あなたの相続税額950万円)
  • 前回の祖父の死亡から今回の父の死亡までの経過年数 4年(4年6カ月ですが、1年未満は切り捨てます。)

相次相続控除の計算(前回の父の相続税額1,000万円のうち次の算式で求めた額)

※求めた割合が100/100を超えるため、この場合は100/100で計算します

相次相続控除が受けられない例

相次相続控除が受けられない代表的なケースについて、2年前に父が死亡し、本年母が死亡した場合を用いて解説していきます。

このたび、母が死亡しました。
2年前には父が死亡しており私は相続税を納めています。

母も相続していますが、配偶者の税額の軽減により母の相続税額はありませんでした。
私が納めた相続税額は、母の相続税の申告において相次相続控除が受けられますか。

相次相続控除は、前回の相続において被相続人が納めた相続税がある場合に、その相続税額を基に計算する制度です。

したがって、今回の被相続人(母)は、前回の父の相続において配偶者の税額の軽減により納めた相続税がないため、今回の母の相続税の申告において相次相続控除額は算出されません。

つまりこの場合、相次相続控除を受けることはできません。

出典:相次相続控除|国税庁ホームページ

相次相続控除が関係する手続きは税理士へ相談

相次相続控除の条件をおさらいします。

  1. 被相続人の相続人であること
  2. その相続の開始前10年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得していること
  3. その相続の開始前10年以内に開始した相続により取得した財産について、被相続人に対し相続税が課税されたこと

「その相続の開始前10年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得していること」というケースは、珍しいものではありません。

しかし相次相続控除の計算式は非常に複雑で、自分で正しく計算することは難しいでしょう。

相次相続控除が活用できる場合や、そもそも相次相続控除が適用されるかどうか分からない場合は、まず税理士へ相談してみてください。

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