生前贈与の持ち戻しとは?2024年の改正を含め解説!【税理士監修】

生前贈与の持ち戻しとは 改正内容や注意点を行政書士が解説! 相続税・贈与税
相続税・贈与税

「生前贈与は知っているけど、持ち戻しとはどのようなものなの?」
「生前贈与は2024年に法改正があったと聞いた。詳しく知りたい。」
「相続対策に生前贈与を検討しているが、注意点はある?」

相続対策のために生前贈与を行っている方は多いです。しかし「持ち戻し」という仕組みがあることはご存じでしょうか。

2024年1月1日以降は、生前贈与の持ち戻しに関する法改正があったため注意が必要です

そこで、今回の記事では生前贈与の持ち戻しについて、暦年贈与における法改正の内容や注意点を行政書士がわかりやすく解説します。

この記事の執筆・監修者
大岡 俊明(税理士)

税理士。神奈川県横浜市のクロスウィード税理士事務所代表。メンターキャピタル税理士法人で13年間実績を積み、2024年にクロスウィード税理士事務所を開業。相鉄線沿線を対象に、相続税申告のなかでも遺産総額が1億円以下の相続税申告に特化していることが特徴。

長岡行政書士×大岡税理士 対談記事|横浜での相続のエキスパートとして

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生前贈与の持ち戻しとは?

相続について調べていると、生前贈与の持ち戻しというキーワードに出会うことがあります。

生前贈与の持ち戻しとは、暦年贈与で贈与していた財産が相続開始後に「相続財産に上乗せされ、相続税の課税対象となる」という仕組みです。

せっかく相続税対策のために贈与していたのに相続税の課税対象となるなんて…と思う方も少なくありません。

そもそも本来なら、贈与した財産は贈与を受けた受贈者のものになります。

しかし、生前贈与の持ち戻しでは、被相続人が亡くなる前に行われた贈与について、被相続人が所有していた相続財産に「持ち戻し」をして相続税の計算を行います。

2024年1月1日以降の生前贈与の持ち戻しの対象期間

生前贈与の持ち戻しは、これまで「被相続人が亡くなる前、3年以内」に行われていた暦年贈与が対象でした。

しかし、2024年1月1日以降の贈与は法改正によって、「被相続人が亡くなる前、7年以内」に持ち戻し期間が延長されました。

ただし、7年への延長は段階的に行われます。2024年から段階的に7年間へ延長されるため、7年になるのは2027年以降です。加算時期のスケジュールについては国税庁が以下のように整理しています。

■2024年1月1日法改正以降の相続財産加算対象期間 国税庁以下URLより、西暦並列表記に修正)

被相続人の相続開始日加算対象となる期間
①2024(令和6年)年1月1日~2026(令和8年)年12月31日相続開始前3年間
②2027(令和9年)年1月1日以降~2030年(令和12年)12月31日 2024(令和6年)年1月1日~相続開始日まで※詳しくは下記を参照
③2031年(令和13年)1月1日以降相続開始前7年間

たとえば、被相続人が亡くなり2028年(令和10年)10月1日に相続が発生した場合、相続財産に加算する期間は2024年(令和6年)1月1日から相続開始日の2028年(令和10年)10月1日までの生前贈与です。

7年間の加算期間に完全に移行されるのは、2031年1月1日以降です。

7年間の加算期間に完全に移行されるのは、2031年1月1日以降です。

参考URL  国税庁 令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし

生前贈与のメリット

法改正により、「生前贈与の持ち戻し」は以前よりも相続時に重い負担となってしまうため、これでは生前贈与はしない方がいいかも…と思ってしまうかもしれません。しかし、生前贈与には以下のメリットがあります。

  • 贈与したい方が、誰に財産を渡すか決めることができる
  • 生前贈与には暦年贈与以外にも、相続時精算課税制度や夫婦間の不動産贈与(おしどり贈与)などさまざまなしくみがあり、有効に活用すれば相続税対策になる
  • 早く始めることで、相続税制度の改正によるダメージを減らせる

生前贈与には今回紹介している暦年贈与の他にも制度があります。相続税対策や贈与について、まずは家族で税理士に相談してみることがおすすめです。

また、生前贈与は今後も法改正が行われる可能性があり、納税者にとってはつらいものになるリスクがあります。相続税対策を行うなら早めに行うことが大切です。

「相続時精算課税制度」と「生前贈与の持ち戻し」の関係

贈与方法の1つである相続時精算課税制度には生前贈与の持ち戻しはあるのでしょうか。

実はこれまでは、相続時精算課税制度を選択すると、それ以降に受けた生前贈与はすべて持ち戻しの対象とされていました。

しかし2024年1月からは、相続時精算課税制度を選択したとしても、年110万円以内の贈与であれば持ち戻しの対象とならず、さらに申告も不要となります。

そのため法定相続人(子など)への贈与については相続時精算課税制度を利用し、毎年110万円以内で生前贈与していく選択肢も生まれたのです。

あわせて読みたい:相続時精算課税制度とは?令和5年(2023年)の改正とあわせて解説【税理士監修】

持ち戻しの対象とならない生前贈与

生前贈与の持ち戻しが適用されるのは、原則として被相続人から相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人です。

これらによって財産を取得していない人が受けた生前贈与は、持ち戻しの対象外となります。

生前贈与における3つの注意点とは

実際に生前贈与をするにあたって押さえておきたい注意点があります。この章では3つの注意点を解説します。

  • 以前より早めに暦年贈与を開始する必要がある
  • 収益を生む財産なら早めの贈与が得をする
  • 孫への贈与も検討する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

以前より早めに暦年贈与を開始する必要がある

暦年贈与は広く活用されている生前贈与の手法ですが、今回の持ち戻し期間が3年→7年とされた法改正によって、以前よりも相続財産に加算される期間が長くなってしまいました。

実質増税となるため、相続税対策を進めるなら以前よりも早くから贈与を開始することがおすすめです。

先に触れたように暦年贈与以外にもさまざまな贈与方法があるため、税理士に相談しながら節税を目指しましょう。

収益を生む財産なら早めの贈与が得をする

贈与を早くすると、贈与税が心配…と感じる方もいるでしょう。しかし収益を生む財産があるなら、早めに贈与をすることもおすすめです。

たとえば、収益のある賃貸物件をお持ちなら、物件を贈与することで収益は受贈者(贈与を受けた人)のものになります。相続税対策につながるため、慎重に検討しましょう。

孫への贈与も検討しよう

将来が楽しみなお孫さんがいても、基本的に孫は相続人にはならないことが多いでしょう。祖父母の立場にある自身が亡くなった時、配偶者・子(孫の父母)が相続人となることが多いためです。

相続人ではない孫に財産を渡したい場合、生前に贈与で財産を渡すこともできます。

相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得しない孫に贈与をしても生前贈与の持ち戻しの対象外です。

生前贈与以外の相続対策

生前贈与は相続対策として有効な対策方法ですが、複雑な税のしくみを把握した上で行う必要があります。

そこで、生前贈与以外の相続対策も行っておくことがおすすめです。この章では生前贈与以外の相続対策もご紹介します。

名義預金に注意しよう

大切な孫や子などのために、贈与以外の方法で財産を遺そうとすると、孫や子の名前で通帳を開設し預金を貯めていく人もいるでしょう。

しかし、この方法は名義預金とみなされて相続財産に加算されるおそれがあります。孫や子のために預金する場合は、生前贈与の契約を交わしたり、預貯金口座を名義人自身が管理することが大切です。

合わせて読みたい:名義預金とは何か?遺産相続時に影響はあるかを行政書士が解説!

遺言書を作ろう

遺言書も相続に備えるための有効な方法です。

大切な財産を巡って相続人同士が争ってしまいそうなケースや、法定相続人以外にも財産を分けたい場合にも、遺言書に記すことができ、遺言者の思いをしっかりと次世代に繋ぐことができます。

合わせて読みたい:相続で優先する遺言書の効力と種類とは?行政書士が分かりやすく解説!

生前贈与の持ち戻しには注意!相続対策は贈与以外の方法もあわせて進めましょう

この記事では、改正された生前贈与の持ち戻しについて、改正内容や注意点をわかりやすく解説しました。

今回解説した生前贈与は暦年贈与に関するものですが、生前にできる贈与にはこの他にもさまざまな方法がありますので、税理士のアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。

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