換価分割時の税務上の注意点とは?遺産分割協議書に記載すべき内容について税理士が解説!

相続税・贈与税

相続財産の中に不動産が含まれている場合、相続人の間で「現物のまま分けるのは難しい」というケースは少なくありません。

そんなときに利用されるのが「換価分割(かんかぶんかつ)」です。

換価分割とは、相続財産を売却して現金化し、その売却代金を相続人で分け合う遺産分割の方法をいいます。

関連記事:遺産分割時の換価分割とは|押さえておきたい4つのポイントを行政書士が解説

換価分割は公平に分けられる便利な手続きですが、実は遺産分割協議書の書き方を一歩誤ると、思わぬ贈与税や所得税の問題に発展することがあります。

そこで今回は、横浜市で行政書士と連携しながら、相続手続をサポートしている税理士として、換価分割時の税務上の注意点を紹介します。遺産分割協議書に記載すべき内容について詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の執筆・監修者
大岡 俊明(税理士)

税理士。神奈川県横浜市のクロスウィード税理士事務所代表。メンターキャピタル税理士法人で13年間実績を積み、2024年にクロスウィード税理士事務所を開業。相鉄線沿線を対象に、相続税申告のなかでも遺産総額が1億円以下の相続税申告に特化していることが特徴。

長岡行政書士×大岡税理士 対談記事|横浜での相続のエキスパートとして

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換価分割時に注意すべき贈与税リスク

換価分割で最も注意したいのが、贈与税の対象となってしまうリスクです。

たとえば、相続した土地を換価分割するために、いったん長男名義で相続登記したうえで売却し、その代金を兄弟で分け合ったとします。

このとき、遺産分割協議書に「換価分割であること」がきちんと書かれていないと、税務署から次のように見られてしまう可能性があります。

「長男がいったん単独で相続した不動産の売却代金を、長男から弟に贈与したのでは?」

このように判断されると、受け取った側の相続人(今回の例でいえば弟)に、贈与税が課税されてしまいます。

本来、相続税で完結するはずだった手続きに、追加で贈与税まで発生してしまうのです。

このような換価分割時の贈与税リスクを防ぐポイントは、協議書に次の3点を明記することです。

  • 売却を前提に相続登記すること(便宜上の単独名義であること)
  • 売却代金を相続人間で分配すること
  • 各相続人への分配割合

国税庁の質疑応答事例でも、共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その換価代金を適切に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはないとしています。

贈与と判断されないよう、遺産分割協議書で「換価分割であること」を明らかにしておきましょう。

換価分割時の所得税(譲渡所得)で注意すべきポイント

不動産などを売却すれば、その売却益には所得税・住民税(譲渡所得税)が課税されます。

これは換価分割のために不動産を売却した場合も同様です。もし売却で利益が出たら、その利益に対して譲渡所得税がかかります。

ここで注意すべきポイントは、次の2点です。

  • 取得費および取得時期
  • 譲渡所得税が課される人

取得費および取得時期

換価分割した財産の取得費と取得時期は、亡くなった方(被相続人)のものをそのまま引き継ぐという点です。

実は不動産を売却したときの所得税率は、不動産を売却した年の1月1日時点で所有期間が「5年以下」か「5年超」かで、大きく異なります。

  • 5年以下の短期譲渡所得:39.63%(所得税30.63%、住民税9%)
  • 5年超の長期譲渡所得:20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

たとえば、お父様が30年前に購入した土地であれば、相続人が換価分割で売却する際も長期譲渡所得(税率が軽い区分)として取り扱われるため、税負担を抑えられます。この点は覚えておきましょう。

また、要件を満たせば、次のような特例を各相続人それぞれが適用できる可能性があります。

  • 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除
  • 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例(相続税の一部を取得費に加算)
  • 空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除

特例の適用可否は要件が細かいため、売却前に税理士へ確認しておくと安心です。

譲渡所得税が課される人

換価分割のために不動産を売却した場合、誰が譲渡所得税を払うのか?といった点に疑問を感じる方もいるかもしれません。

換価分割の場合、譲渡所得の申告は、便宜上単独名義となった人のみでなく、「換価分割により売却代金を取得する相続人」が、それぞれの取得分に応じて行うことになります。

たとえば、相続した土地を、相続人Aさんが単独名義で相続して3,000万円で売却し、相続人AさんとBさんで2分の1ずつ分けた(換価分割した)とします。

この場合、AさんとBさんがそれぞれ1,500万円分の譲渡所得を計算して、自分の確定申告で申告することになる、ということです。

「これまで確定申告なんてしたことがない!」という人も多いと思いますが、もし不安に感じる場合は、相続税申告を依頼した税理士へ、ご自身の確定申告についても相談してみてください。

換価分割時の遺産分割協議書の例

それでは、贈与税リスクを排除し、譲渡所得の取り扱いにも整合する遺産分割協議書のひな形をご紹介します。

第○条(換価分割)
被相続人 ○○○○(令和○年○月○日死亡)の遺産のうち、下記不動産については、相続人全員の合意により換価分割するものとし、相続人 △△△△ が代表して相続登記を行ったうえで、第三者に売却し、その売却代金から売却に要した一切の費用(仲介手数料、登記費用、譲渡に係る公租公課その他の諸経費)を控除した残額を、下記の割合により各相続人に分配する。

【物件の表示】
 所 在 神奈川県横浜市○○町○丁目
 地 番 ○番○
 地 目 宅地
 地 積 ○○○.○○㎡

【分配割合】
 相続人 △△△△ ○分の○
 相続人 □□□□ ○分の○
 相続人 ◇◇◇◇ ○分の○

なお、本物件の相続登記を便宜上 △△△△ の単独名義とするのは、換価分割の手続きを円滑に進めるためのものであって、他の相続人に対する贈与の趣旨を含むものではない。

このひな形のポイント
冒頭に「換価分割するものとし」と明記している
代表相続人による単独登記は「便宜上」であることを明記している
分配割合を具体的に記載している
「贈与の趣旨を含むものではない」と確認している

ただし、上記はあくまでも一例です。実際の相続手続の際は、万全を期すためにも、行政書士・税理士へ相談することをおすすめします。

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換価分割時は遺産分割協議書の書き方を配慮する!

換価分割は、不動産など分けにくい財産を公平に分配できる便利な方法です。

一方で、遺産分割協議書の書き方を誤ると、本来発生しないはずの贈与税が課税されたり、譲渡所得の申告が複雑になったりするリスクもあります。

「換価分割であること」「分配割合」「便宜上の名義であること」をきちんと書面に残すことが、税務リスクを避ける最大のポイントです。

実際の手続きや、各種特例の適用判断にあたっては、ぜひ相続税専門の税理士や、相続手続に精通した行政書士へ相談してみてください。

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