相続税の申告を税理士に依頼したいものの、報酬を「誰が、いつ、どのように払うのか」気になる方も多いのでないでしょうか。
とくに相続人が複数いる場合、「全員で割り勘するのか」「代表者がまとめて払うのか」という点が分からず、税理士への依頼を躊躇してしまう方もいるかもしれません。
そこで今回は、、税理士報酬の支払義務の考え方や、実務上の支払い方法・タイミングについて、わかりやすく解説します。
税理士報酬は相続人全員が当事者
税理士報酬の支払い義務は、法律上、税理士と委任契約を結んだ人が負います。
そう聞くと、代表者一人が税理士報酬を支払うように感じるかもしれません。
しかし相続税の申告は、通常、相続人全員が連名で一人の税理士(または税理士法人)に依頼します。
この場合、相続人全員が連帯して報酬を支払う義務を負います。
つまり、報酬の支払いについては「誰か一人が払えばよい」というものではなく、相続人全員が当事者という位置づけです。
※ただし実務上、支払い方法は当事者間で自由に決めることも可能です。
相続税申告の税理士報酬は誰が払う?
税理士報酬の支払い方法は実務上、次の3パターンに分けられます。
- 代表相続人がまとめて立て替え払い→相続人同士で精算
- 各相続人が持ち分に応じて税理士へ支払う
- 相続財産(遺産)から支払う
それぞれの支払い方法ごとに、メリット・デメリットを見ていきましょう。
代表相続人がまとめて立て替え払い→相続人同士で精算
最もよく見られる支払い方法は、代表相続人がまとめて立て替え払いし、その後、相続人同士で精算するパターンです。
なお、代表相続人とは、相続人の中で手続きを主導する人で、多くの場合は配偶者や長男・長女が担います。
関連記事:代表相続人とは?相続時に定める意味と代表的な業務を行政書士が解説!

メリット
事務手続きがシンプルで、税理士への支払いがスムーズ
注意点
後から精算するときに揉めないよう、相続人間で費用の分担について、あらかじめ合意しておく必要があります
各相続人が持ち分に応じて税理士へ支払う
相続人の取得財産の割合(法定相続割合や遺産分割の割合)に応じて、各自が税理士へ直接支払うことも可能です。
相続人が複数いてそれぞれの住所が離れている場合などに、この方法が取られることがあります。
しかし税理士側の管理が煩雑になるため、実際には少数派です。
相続財産(遺産)から支払う
相続財産の中から報酬を支払い、残った財産を相続人で分ける方法です。
遺産の中に預貯金があり、相続人全員が同意している場合に取られます。
実質的には、全員が按分して負担することと同じ結果になります。
注意点
遺産分割協議が整う前に預金を動かすことになる場合、金融機関の手続きが可能なのか、確認が必要です
費用の分担はどう決める?
相続人の間で、税理士費用をどう分担するか、法律上の決まりはありません。つまり、当事者間で自由に決めることができます。実務上よくある分担方法は以下の通りです。
- 法定相続割合で分担
- 実際に取得した遺産の割合で分担
- 均等割り
- 代表相続人が全額負担
それぞれ、どのような分担となるのか、詳しく見ていきましょう。
法定相続割合で分担
税理士報酬を法定相続割合で分担するのは、最もシンプルで公平感のある方法といえます。
たとえば税理士報酬が90万円で、相続人が配偶者(1/2)と子ども2人(各1/4)の場合、以下のようになります。
| 相続人 | 法定相続割合 | 負担額 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 1/2 | 45万円 |
| 子どもA | 1/4 | 22.5万円 |
| 子どもB | 1/4 | 22.5万円 |
実際に取得した遺産の割合で分担
遺産分割の結果として多くの財産を受け取った人が多く負担するという考え方です。
現実の取得割合が法定相続割合と異なる場合、たとえば財産の大部分である自宅を長男が取得するなどは、この方法のほうが当事者間で納得感を得やすいことがあります。
均等割り
財産の大小にかかわらず、相続人の人数で均等に割る方法です。
全員が同じ額を負担するためわかりやすい半面、取得財産の多い人と少ない人とで公平感が出ない場合もあります。
代表相続人が全額負担する
手続きを主に担った相続人が全額負担するケースもあります。
特定の相続人が多くの財産を取得し、手続きも主導したような場合に選ばれることがあります。
支払いタイミングはいつ?
税理士報酬の支払いタイミングは、事務所によって異なりますが、主に以下の3つのパターンがあります。
- 着手時(依頼時)に全額を支払う
- 申告書提出時(または完了時)に支払う
- 着手金+完了時の分割払い
着手時(依頼時)に全額を支払う
税理士事務所によっては、相続税申告の依頼を受けた時点で、報酬の全額を請求します。
費用感を事前に確定できるというメリットがある一方、申告前に大きな支出が発生する点は、依頼者としてはデメリットでしょう。
申告書提出時(または完了時)に支払う
申告書が完成し、税務署への提出が完了したタイミングで報酬を支払う方法です。
成果物の納品を確認してから支払えるため、依頼者にとっては安心感があります。
多くの相続税専門事務所がこのタイミングを採用しています。
着手金+完了時の分割払い
依頼時に着手金(例:報酬の30〜50%)を支払い、申告完了時に残額を支払う方法です。
事務所側のリスクヘッジと、依頼者の支払い負担のバランスを取った形です。
相続税申告費用をめぐるトラブルを防ぐコツ
相続税申告の費用をめぐって、相続人間でもめるケースも少なくありません。
無用なトラブルを防ぐためには、税理士へ依頼する前に、相続人同士で以下を明確にしておくと安心です。
- 代表して契約・連絡する人を決めておく
- 費用の分担割合を決めておく
- 支払い方法(支払い口座)を決めておく
代表して契約・連絡する人を決めておく
代表相続人を決め、窓口を一本化することで手続きがスムーズになります。
なお、代表相続人は配偶者や長子ではなく、時間が自由になる方(平日の昼間に自由に動ける方)や、法制度に抵抗のない方、事務手続きに強い方が務めて問題ありません。
費用の分担割合を決めておく
報酬の見積もりが出た段階で、分担方法を相続人全員で確認しておきましょう。
後から「そんな取り決めはしていない」とならないよう、LINE・メールなど文書に残しておくと安心です。
支払い方法(支払い口座)を決めておく
代表者が立て替えてから精算するのか、各自が直接支払うのか、遺産から支出するのかも事前に決めておきます。
支払い方法が決まっていないと、最後の最後に相続人同士で揉めてしまう可能性があるためです。
相続税申告報酬の支払い方法・支払い時期は税理士へ事前確認!
相続税申告の税理士報酬は、法律上は相続人全員に支払い義務がありますが、実務では代表相続人が一括払いして後精算するか、遺産から支払うケースが多い傾向があります。
費用の分担方法に法律上の決まりはなく、法定相続割合・取得割合・均等割りなど、相続人全員が納得できる方法を話し合いで決めることができます。
また、支払いタイミングは事務所によって異なりますが、申告書提出完了後の一括払いが最も一般的です。
費用について不透明な点は依頼前に確認し、相続人間でも分担方法を事前に合意しておくことが、スムーズな相続手続きの第一歩となります。申告報酬の支払い方法を含め、相続税申告・相続手続について何か分からないことがある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。


