「内縁関係の配偶者の遺産って、特別縁故者になればもらえるの?」
「特別縁故者ってどんな人がなれるの?」
「特別縁故者になるため、何か特別な手続きは必要?」
「特別縁故者」と呼ばれる人が相続するケースがあることをご存知でしょうか。特別縁故者と言われても、普段あまり聞きなれない言葉で具体的にどういう人なのか、わからないと思います。
一体どのような人が特別縁故者になるのか、どのようなときに特別縁故者と認めてもらえるのか、相続実務に精通した行政書士が解説していきます。
特別縁故者とは
特別縁故者とは、被相続人(亡くなった方)に「法定相続人」がいない場合、家庭裁判所の許可を得て、遺産を取得できる人のことです。
特別縁故者というとなんだか少し難しい感じがしますが、 相続においては「亡くなった方と特別親しい関係にあった者」のようにイメージしてください。
基本的には以下の3つが特別縁故者にあたると言われています。
- 被相続人と生計を同じくしていた者
- 被相続人の療養看護に努めた者
- その他被相続人と特別の縁故があった者
ではこの3つを見ていきましょう。
被相続人と生計を同じくしていた者
被相続人と生計を同じくしていた方は、特別縁故者として認められる可能性があります。
たとえば婚姻届を提出していないけれどお互いに生計を同じくし、夫婦同然の生活をしている内縁関係の男女は、お互いに「特別親しい関係」にあったと判断できますよね。
こちらはほとんど家族のような関係、というイメージで大丈夫でしょう。
被相続人の療養看護に努めた者
被相続人の療養看護に努めた方、たとえば老人ホームや病院に通って、献身的に介護をした人は特別縁故者になることがあります。
たとえば、老人ホームに毎日看護しに来てくれてお葬式までしてくれた長年の友人などです。
看護師など報酬を得て療養看護を行っている方については、この条件には基本的に該当しません。しかし判例は報酬以上の働きがあれば看護師も特別縁故者になることがあると述べています。
神戸家審昭和51年4月24日判時822号 被相続人から報酬を得て稼働していた付添看護婦であっても、雇用契約を超えて被相続人のために尽くした等の特別の事情があるときは特別縁故者と認めるのが相当である
つまり、自分の意思で故人のために誠心誠意看護してくれた人、という感じです。
その他被相続人と特別の縁故があった者
たとえば、故人から特別の信頼を受けてずっと相談にのっていた人などはこれに該当する可能性があるでしょう。
その他にも金銭を援助したり、故人の生前に献身的に尽くしてくれた人、という感じです。
また、故人との関わりが深い法人も特別縁故者になることがあります。
たとえば、故人が創設した学校などは特別縁故者にあたることがあります。
特別縁故者が遺産を受け取れる条件
相続において特別縁故者がなぜ取り上げられるかというと、特別縁故者は遺産を受け取れる可能性があるからです。
本来相続人の範囲は、次のとおりです。
- 婚姻届を提出している配偶者
- 子
- 父や母などの直系尊属
- 兄弟や姉妹
つまり「法律上の家族」と認められている人だけが、遺産を受け取ることが原則です。この人たちは「法定相続人」であるため、特に遺言などで指定がなくても、法律に沿って財産を相続することができます。
法律上、特別縁故者は家族ではなく、特に関わりの深い人というくくりにすぎません。ですからやはり家族に優先することはできません。
たとえば内縁の配偶者に遺産を遺したい場合、遺言書にしっかりと書いて遺贈という手段を使って遺産を贈与する、という手段などをとることになります。
たとえほとんど夫婦のように生活していても家族のように当たり前に遺産がもらえるわけではないのです。
しかし場合によっては身寄りがなく、相続人がいないということもあります。
その場合民法は、特別縁故者が存在するのなら、その人に遺産を与えることができると述べています。
民法第958条の2 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる
(※ 前条とは相続人がいないと判断された場合です)
特別縁故者は、遺産を受け取る人がいないときの最終的な選択肢となっています。
もし特別縁故者すらいない、あるいは特別縁故者が遺産をもらい受けなかったら、故人の財産は国のものになります。
特別縁故者として認められるための手続き
相続人がいない時、当然に特別縁故者となるわけではありません。特別縁故者は例外的な事例のため、そのためにいくつかのステップを踏まなければなりません。
- 相続財産清算人の申し立てと選任
- 公告をして相続財産の債権者などを探す
- 相続人を探す
- 特別縁故者として財産分与を申し立てる
- 裁判所の認定により特別縁故者となる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続財産清算人の申し立てと選任
相続人がいない場合、故人の財産を管理する人がいない状態になってしまいます。またそれを清算(適正に処理)する人も不在です。
そのためまずはその財産を管理し、清算してくれる人を選任してくれるよう、裁判所に申し立てします。
基本的には弁護士や司法書士などの法律の専門家が相続財産清算人となります。
合わせて読みたい:相続財産清算人とは?相続人がいない場合等の手続きの概要と注意点を行政書士が解説!
公告をして相続財産の債権者などを探す
故人が借金をしていることもありますので、その借金を優先的に返してあげます。
あるいは、遺言により財産をもらえるのにそれを知らない人もいるかもしれないので、その人たちにも機会を与えます。
これは公告といって官報やインターネットに情報を記載することで行います。
「こんなことがありました。借金を返してもらえてなかった人、もらえるはずの財産があった人は、連絡してくださいね」
と公に知らせるのです。
そして、該当する人がいれば、相続財産管理人が適時処理をします。
二カ月間これを行います。
相続人を探す
上の捜索が終わったら、次は六カ月間以上の期間を定めて、相続人を探します。これも同じように公告で行います。
もしかしたら行方不明の相続人がいるかもしれません。自分が相続人だとわかっていなかった、という方もいるかもしれません。
遺産はやはり相続人に与えるのが原則ですから、裁判所は最後の最後に確認をするのです。
特別縁故者として財産分与を申し立てる
裁判所が定めた期間内に相続人が見つからなければ、それから三か月以内に、特別縁故者に対する財産分与の申し立てを行います。
手続き、期間を最後にまとめます。
手続き | 債権者等捜索 | 相続人捜索 | 特別縁故者として申立 |
期間 | 二カ月 | 六カ月以上の期間 | 三カ月以内 |
裁判所の認定により特別縁故者となる
あとは裁判所が具体的な状況を考慮して、申し立てた人が特別縁故者に該当するかどうかを判断します。
最初に述べた次のいずれかに該当すると判断された場合、特別縁故者として財産を受ける可能性があります。
- 生計を同じくしていた
- 療養看護に努めた
- その他特別の縁故があった
特別縁故者として相続財産を譲り受けるには多くの手続きが必要
相続人がいない場合、この記事で紹介した特別縁故者が遺産を受け取れる可能性もあります。
しかし、まずは「相続人がいないこと」をハッキリさせなければならないため、戸籍謄本を集め、色々と調査する必要があります。
また、裁判所に関する申し立ては本人、弁護士または司法書士などの専門家が行います。必要であれば当事務所も提携している専門家をご紹介いたします。
相続を専門とする横浜市の長岡行政書士事務所にぜひご相談に来てくださいね。