「遺産分割協議書に『捨印』を押しても問題ないの?おかしな修正はされない?」
「法律の専門家に作ってもらった遺産分割協議書に捨て印箇所があった。捨印にはどのような意味があるのか」
「捨て印を押した遺産分割協議書を作ったけど、知っておくべき注意点はある?」
遺産分割協議書は、捨て印を押す箇所が作られていることがあります。
捨て印は一般的に軽微な誤りを修正する際に押しますが、相続手続に使う「遺産分割協議書」にも有効なのでしょうか。
この記事では遺産分割協議における捨て印の意味と注意点を、、横浜市で相続手続をサポートしている行政書士が紹介します。
遺産分割協議書に押す「捨印」の効果
そもそも「捨印」とは、文章の余白に印鑑を押しておくことで、原本の所有者側だけで軽微な誤りや訂正を修正できるようにするためのものです。この「捨印」が遺産分割協議書に押されていると、本人印なしで軽微な誤字を修正できるようになります。
遺産分割協議書は、時に非常に多くの財産を記載します。また、相続人が複数いる場合は、1人ひとりの氏名も記載します。この時、ささいな記載ミスが起きてしまうことも珍しくはありません。
銀行や証券の解約や相続登記の場面などでは、戸籍や登記簿謄本、遺産分割協議書との間に情報の相違が無いか、一言一句厳しく確認しており、ミスがあると修正を求められてしまいます。
そのような場合、捨て印があれば、遺産分割協議書を作り直したり、再度相続人全員から実印をもらったりしなくても修正できるため、メリットが大きいのです。
ただし、遺産分割協議書に「相続人全員の捨印」が押されていない場合は、修正することはできません。遺産分割協議書の相続人欄と同様に、捨て印欄にも全員の押印が必要です。
「捨て印」「訂正印」「割印」の違い
遺産分割協議書や業務契約書など、重要な書類を作成する場面では捨て印の他に、訂正印や割印を求められることがあります。
では、捨て印・訂正印・割印は、一体どのように異なっているのでしょうか。この章で詳しく解説します。
捨て印は原本所有者が軽微な訂正をするためのもの
捨て印は先に触れたように、軽微な訂正を後から原本を所有する方が訂正できるように押すものです。書類の隅に押印のための枠が設けられていることが多いでしょう。
なお、遺産分割協議書が複数ページにわたって作られている場合、捨て印はすべてのページに押しておく必要があります。
訂正印は本人が訂正するためのもの
訂正印とは、文字の上から印鑑を押して訂正をするものです。
訂正したい箇所に二重線を引き、その上から印鑑の持ち主本人が、押印することが一般的です。
割印は差し替え・改ざんを防ぐためのもの
割印も遺産分割協議書に多く活用されています。複数の書類にまたがるように印鑑を押すことで、ホチキスなど留めていたものが外れても、差し替えや文章の改ざんができないよう押印します。
遺産分割協議書は複数枚の用紙を使い、冊子のように完成させることが多いため、ページとページがまたがる箇所に割印します。
「捨印」の必要性
軽微な誤りがあった場合、捨て印があったほうがスムーズに相続手続を進められることは事実です。
しかし、捨て印には法的な義務はないため、押したくなければ押す必要はありません。
捨て印を押すまえに知っておきたいこと
捨て印は「軽微な修正なら、別の方におまかせします」という同意を示すものです。
そのため遺産分割協議書のような大きな財産が動くかもしれない場面で押すことに、ためらいを感じる方もいるでしょう。
捨て印を押すことは怖い、と感じる人もいます。では、実際に使用する際に押さえておきたい注意点とはどのような点でしょうか。以下で詳しく解説します。
- 大掛かりな修正には使われない
- 捨て印は同一の印鑑(実印)を使う
- 意図しない修正が起こる可能性はある
大掛かりな修正には使われない
遺産分割協議書には不動産や預貯金、現金など、非常に重要な情報が多く記載されています。もしもこうした大切な財産の金額や価値が、捨て印だけで修正できてしまうと考えると、相続人が不安になるのも当然です。
捨て印は、基本的に軽微な修正にしか使われておらず、住所の番地ミスの修正など誤記や書き損じ程度の修正に留まっています。
捨て印は同一の印鑑(実印)を使う
捨て印を押す場合、書類の枠外に押すため、相続人の氏名の横に押す実印とは別に、認印を押してしまうケースもあります。しかし、捨て印は協議書に押した実印を押すようにしましょう。
意図しない修正が起こる可能性はある
住所の番地ミスや、金融機関名などの誤記修正に使用されることが多い捨て印ですが、それでも相続人の方が意図していない修正が起こる可能性は、ゼロではありません。
修正に厳密なルールがあるわけではないため、原本を預ける際には、修正前に連絡をもらうようにすることがおすすめです。
ただし、自分で押す訂正印とは異なり、修正を依頼できるメリットがあります。特に遠方から遺産分割協議に参加する場合、捨て印があると、手続はスムーズでしょう。
「捨て印」では修正できないこともある
捨て印はすでに文中で触れたように、軽微な修正を本人の訂正印無しでも行うものです。そのため、あまりにも大掛かりな修正は、訂正印の限度を超えると考えられます。
たとえば、相続をする不動産の住所で番地だけではなく所在全体の表記に大きなミスがあった場合は、遺産分割協議書を再度作り直すほうが望ましいでしょう。
また、預貯金や証券の存在が後から発覚した場合は、遺産総額が変動します。誰が相続するのか協議そのものをやり直す必要があるため、捨て印による補記ではなく遺産分割の再協議と協議書の再作成がおすすめです。
捨て印は万能な修正方法ですが、「どこまで修正できるのか」明確な基準があるわけではありません。軽微な修正、と言っても感じ方は個人差があります。
わずかな修正であっても不安がある場合には、できる限り遺産分割協議時に書類にミスが無いか確認を何度も行い、捨て印を回避することも検討できるでしょう。
修正時のヒント
訂正印を使う場合でも、あらかじめ相続人間で、どこまで修正するか決めておくと良いでしょう。
遺産分割協議書は行政書士に相談しながら作りませんか?
今回の記事では、遺産分割協議書に使われる「捨て印」について、訂正印や割り印についても触れながら詳しく解説を行いました。捨て印は遺産分割協議書以外の場面でも見かけることがありますが、押印する義務があるものではありません。しかし、書類を用いた手続きをスムーズに進めるなら、欠かせないものでもあります。
そして遺産分割協議書はネット上にも多数のひな形があるため、家族で作成することも可能です。ただし、自分で作成する際は以下の注意点があります。
大きなミスがあると金融機関の解約などの際に使用できず、作り直す可能性がある
捨て印や訂正印、割印の知識を持たずに作成すると、相続人間でトラブルになるおそれがある
遺産分割協議書は、さまざまな相続手続に必要となる重要な書類です。ミスがあると相続手続全体が遅延するため、安全に作成するためには行政書士等の専門家に相談して作ることがおすすめです。
横浜市の長岡行政書士事務所でも遺産分割協議書の作成をはじめ、相続手続全般をサポートしています。相続手続をスムーズに進めたい方は、ぜひお気軽にご連絡ください。