2023年4月の民法改正で相続制度はどうなった?今までと何が違うか行政書士が解説!

相続法改正について今までとは何が違うのかを行政書士が解説!2023年4月改正編 相続に関連する法制度
相続に関連する法制度

「相続法が改正されたって聞いたけど、具体的に何が変わったの?」
「改正が自分とどう関係があるのだろう?」
「どうしてそんな改正をしたのだろう?」

2023年の4月に、相続法が改正されました。それに伴って相続において注意するべきポイントが変化しています。

とくに自分で相続手続きを進めようとしている方は、改正ポイントを知らなければならないでしょう。

今回は相続法改正により現実的にどうやって相続が変わったかを具体例を交えながらお話し、どのようにしていけばいいのか指針を示すことができれば幸いです。

(この記事を読んだ結果、改正された相続手続きがよく分からないという場合には、ぜひ横浜市の長岡行政書士事務所へご相談ください)

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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2023年に相続ルール(民法)が改正された理由

まずはなぜ2023年に相続ルール(民法)の改正があったのか、その理由を説明していきます。

大枠で見て、今こんなことが起こっていて、だからこんな改正になったんだ、ということがわかるようになると思います。

もっとも大きな理由は、所有者不明の不動産問題を解決するためだと考えられるでしょう。

近年所有者がわからない家や土地が多くなっています。

所有権者かわからないと様々な問題が起こってきます。

たとえば管理が行われないまま不動産が放置されると、周辺環境・治安が悪化してしまうでしょう。さらに防災対策のために工事が必要でも、所有者が分からなければ、工事を進められません。

公共事業・都市開発などのための用地買い取りも交渉できず、土地を有効活用できなくなってしまうことも問題点です。

なぜ所有者不明の不動産問題が相続と関係してくるかというと、所有者不明の原因が相続登記されていないことにも起因するためです。

たとえば相続をしても登記の変更や名義変更をせずにそのまま放置して、結局誰のものかわからなくなってしまう、ということが起きています。

今回の改正では、権利関係を早めに確定させるような方向性に相続ルール全体が動いています。

一部の遺産分割協議(具体的相続分)に期限が設けられた

それではさっそく具体的な変更点を提示していきます。

故人が死亡した時から、相続が発生します。このときの遺産分割方法は次の2パターンです。

  • 故人が遺言などで相続を指定➡指定相続分
  • 特に指定がない➡法定相続分

そして「遺産分割協議」といって、相続人全員で話し合って相続の内容を決定することも可能です。

合わせて読みたい:遺産分割協議とは~知っておきたいポイントと注意点を解説

この遺産分割の決め方について、期限ルールが決められました。

たとえば生前故人に献身的に尽くしてくれた人などは、その分の遺産を多く譲り受けることができます。

そういった個別具体的な事情も相続には影響し、これを寄与分といいます。

合わせて読みたい:親の介護を頑張った!相続の時には寄与分として考慮されるの?

また、他の人よりも多く故人の財産を受け取った人は、その分だけ相続分が減るということもあります。

たとえば、事業をしようとしている息子に多額の開業資金を故人が生前贈与した場合などです。

これを特別受益といいます。

合わせて読みたい:特別受益とは?生前に親から多額の援助を受けた場合は相続に影響するため注意

この、寄与分や特別受益というのは法定相続分や指定相続分と関係なく、遺産分割中に個別の事情を勘案して決まります。

これらの個別具体的な事情によって増減する相続分を具体的相続分と呼びます。

これまで不動産などの遺産分割はいつでもすることができました。たとえば相続開始から10年以上経っても、まだ個別具体的な事情を主張して、相続分を変更することができたのです。

けれども、改正によって、10年を過ぎると個別具体的な事情では相続分を主張できないようになりました。

相続発生から長期間経過しているのに、いつまで経っても誰が所有者かわからなくなる、という問題を新しい相続法では10年という期間を設けて避けるようにしたのです。

つまり、相続開始から10年が経つと以下のようになるようにしたのです。

  • 遺言などで相続分が指定されている➡|10年経過|➡指定相続分で財産の分配が確定
  • 特に相続分の指定はない➡|10年経過|➡法定相続分で財産の分配が確定

遺産共有時の共有物分割請求が可能になった

共有物とはAさん、Bさん、Cさんでそれぞれ同じひとつの土地を所有しているという状態です。

シェアという表現が近いのかもしれません。

共有方法には次の2つがあります。

  • 通常共有
  • 遺産共有

たとえばAという方がいて、その人が友人であるBと土地を共有していたとしましょう。

これは通常共有といって、共有の一般的な状態です。多くの人が思い浮かべる共有も、きっと上記のような共有方法ではないでしょうか。

ここでAが死亡し、その長男のC、その次男のDが土地を共同で受け継いだ場合、元来Aさんの土地だった部分についてCとDが遺産として共有していることになります。

これを遺産共有といいます。

最後にこれを整理すると、CとDは遺産共有であり、CDとBは通常共有という奇妙な状態になります。

遺産共有があると、改正前の民法ではまずは遺産分割し、遺産共有の状態を解消しなければ、通常の共有状態は解除できないとされていました。

そしてそれからやっと通常の共有物の分割ができたのでした。

つまり相続とは無関係であるAの友人BはCD間の遺産分割が終わるまで、共有物を分割することもできません。

Aを信頼して土地を共有したのに、CDというもしかしたらあまり接点のない人たちとしばらく土地を共有しなければならずその間土地を売ることもできない、という状態が続く可能性があったのです。

2023年の民法改正により、相続開始から10年経過すると、Bは共有物の分割請求をすることができるようになりました。

これによってBは分割された土地を自分の土地として自由に処分することができます。

これもいつまで経っても財産が誰のものかわからない問題を解決するためのひとつの手段だといえます。

統一的な相続財産管理制度が設立された

もうひとつ大きな改正点は、相続財産の管理制度が変わったことです。

こちらも最初に述べた理由を考えると納得がしやすい論点だと思います。

相続財産管理人

相続が発生し、相続人が相続財産をすべて譲り受ける旨の意思表示(単純承継)をしたとします。

その後に遺産分割で具体的に誰が何を譲り受けるか、その割合などを決めていきます。この場合、遺産分割が終わるまで相続人は遺産を共有している状態であり、具体的に誰のものかはっきりしていません。

そして相続人にその手続きを進める意思がない場合もあり、うやむやなまま時が流れてしまうこともあります。

そうなるとたとえば、故人の家などがまったく管理されずに放置されてしまうということも起こりえます。

そんなときのために相続開始から遺産分割までの間、財産を管理する人を定めて任せることができるようになりました。これが民法改正後の相続財産管理人です。

相続財産清算人

上のケースではしばらくの期間財産を管理する人ですが、相続人がいないならばその財産を処分する人に変わります。

誰も財産を受け継ぐ人がいない場合は目的が保存や利用から、処分に変わるからです。

そのように財産を処分する人を清算人と呼びます。これも新しく設けられた制度です。

合わせて読みたい:相続財産清算人とは?相続人がいない場合等の手続きの概要と注意点を行政書士が解説!

相続放棄後の財産管理義務が緩和された

相続を放棄したあと、従来であればその財産が相続人などへ実際に引き渡されるまで管理義務がありました。

たとえば父の車に乗ったりしていた子は、相続でその車の持ち主と決まった人に引き渡すまで、注意義務を負います。

しかし改正後は、相続財産を現に占有しているとき、つまり自分の所有物のようにして持っている場合でなければその義務が適用されないようになりました。

改正された民法を引用します。

(※ 太字部分が今回の改正で加わった主たるポイントです)

民法940条1項 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない

相続を放棄しても、他の相続人の遺産分割自体は続いています。従来では、相続財産が誰かに引き渡されるまで注意義務がありました。

その分割協議がうやむやなまま長引いている間に、たとえば相続財産である土地の木が倒れたりして、トラブルが起こる可能性があります。

相続放棄をした人がそのような事態から守るために改正されたといえます。

相続法改正でご不明な点は行政書士へご相談ください

今回は2023年の相続法の改正点についてまとめてみました。

空き家が多くなっている、そして地域社会が機能していない、など現代の日本が抱える問題に対して民法が新しいアプローチを試みているのがわかるでしょうか。

やはり今回の改正で根幹となっているものは、

いつまでも誰のものかわからない財産を減らそう ➡ 相続財産の適正な管理

というひとつの大きな考え方だと思います。

そのことを念頭にしてこれから相続が変わっていくんだ、ということを感じとってくれたら幸いです。

  • そろそろ相続から10年経つけれどまだ寄与分って主張できるの?
  • 相続の関係で、もう共有相手が誰か把握していないけれど、土地の共有状態って分割請求できるの?

など、不安な点があると思います。

少しでも疑問があれば、横浜市の長岡行政書士事務所にご相談ください。ご相談者さまの個別事例に応じて、改正後のルールに則って相続手続きをサポートいたします。初回相談は無料なので、お気軽にご連絡ください。

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長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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