祭祀承継者とは?選び方や祭祀財産の内容を行政書士が解説!

祭祀承継者とは?選び方や祭祀財産の内容を行政書士が解説! 相続手続の基礎
相続手続の基礎

「祭祀承継者という言葉を耳にしたけど、どのような人を意味するの?」
「実家にあるお墓や仏壇は、誰が相続すればいいのだろう」
「お墓や仏壇の相続時の注意点を知りたい!」

祭祀承継者とは、お墓や仏壇などの祭祀財産を承継する人を意味します。祖先からの大切な祭祀にまつわるものを守っていくためには、適切に管理できる人を決める必要があります。そこで、この記事では祭祀承継者について選び方を中心に祭祀財産の内容にも触れながら詳しく解説します。

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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祭祀承継者とはどのような役割を担う人?

祭祀承継者とは、どのような役割を担う人でしょうか。ご先祖から大切に伝わってきたお墓や仏壇など、慰霊や神事・仏事の祀りに関する物を守る人を意味します。

この章では、祭祀承継者について詳しく解説します。

祭祀財産を承継する人

冒頭に触れたように、祭祀承継者とは仏壇やお墓などを守る人を意味します。日本では広く仏教が浸透しており、ご家庭に仏壇を祀っている方が多く、亡くなられた後は仏壇に祀られ、遺骨はお墓に入ることが一般的です。

祭祀承継者は宗教や地域の慣習などで作られた「祭祀財産」を管理したり、仏事や神事などを主宰する人です。

とくにお墓(墳墓)などはご親族が葬られているものであり、大切に管理されていく必要があります。

祭祀承継者が承継する「祭祀財産」とは

祭祀承継者が大切に守り、承継していく財産のことを「祭祀財産」と言います。祭祀財産は特定の宗教に偏らず、さまざまな宗教や地域の慣習、文化などを反映したものが含まれます。この章では祭祀財産について解説します。

民法で定義されている祭祀財産とは

祭祀承継者が管理していくことになる祭祀財産は、民法で以下のように定められています。

民法897条第1項
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

祭祀承継者は民法で、系譜・祭具・墳墓の3つを挙げているのです。では、具体的にはどのようなものでしょうか。

合わせて読みたい:お墓は誰が承継する?相続との関連、方法を横浜市の行政書士が詳しく紹介!

主な祭祀財産 一覧図

系譜祖先から伝わる血縁関係が示されたもの 家系図、家系譜など
祭具仏壇や位牌、仏像など 神具やキリスト像、十字架なども含む
墳墓遺体や遺骨を葬る施設のこと お墓やお墓が設置されている墓地など

宗教、信仰、地域文化などにまつわるものを祭祀財産に含みます。仏教だけではなく、神事やキリスト教など、他宗教の祭祀にまつわるものも含まれています。

祭祀財産は遺産分割の対象にならない

祭祀財産をこれまで管理していた家族が亡くなられた後に、「誰が管理するのか」話し合う機会が持たれるかもしれません。祭祀財産は一般的な相続財産(預貯金や不動産など)とは明確に分けられており、遺産分割の対象にはなりません。

そのため、遺産分割協議で誰が相続するのか争う必要はなく、祭祀承継者になったとしても法定相続分や遺留分が減ってしまうこともありません。

祭祀承継者・祭祀財産の注意点

祭祀財産は相続財産とは異なるため、誰が祭祀承継者になるのか遺産分割協議とは別に決める必要があります。また、祭祀財産が相続財産ではない以上、「相続放棄」によって祭祀財産を放棄することもできません。相続放棄をした後も、祭祀承継者になった方は管理や祭祀を主宰する必要があります。

祭祀財産は原則として相続税の対象ではありませんが、あまりにも高額の仏具や広大な墓地がある場合、課税対象となるおそれがあります。常識の範囲内でのご購入がおすすめされるでしょう。

合わせて読みたい:相続放棄をしても受け取れるお金がある?財産の性質を踏まえて行政書士が明快に解説!

祭祀承継者はどうやって選ぶの?

「お墓や仏壇のある実家から離れている、祭祀承継者になったらどうしよう…」
このように感じていませんか。そこで、この章では祭祀承継者の決め方について解説します。

祭祀承継者の3つの選び方

祭祀承継者の決め方は民法で定められており、以下の3つに分類されています。

民法897条
第1項 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。 ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

第2項 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

つまり、祭祀承継者の決め方は以下のようにまとめることができます。

①被相続人が指定する遺言書や口頭、書面などで祭祀承継者になってほしい人を被相続人が指定する
②慣習に従う地域やその家ごとのしきたりに沿って決めることができる (例・〇〇家の長男)
③家庭裁判所で決める審判を申立て、誰が適任か決めてもらう

祭祀承継者になるメリット・デメリット

祭祀承継者になるメリット、デメリットにはどのような点が挙げられるでしょうか。この項でスッキリまとめましょう。
■メリット

祭祀承継者は法事や神事などを仕切る立場の人です。つまり、これまでの祭祀にまつわる行事が重い負担となっている場合は、あえて自分が祭祀承継者になることで「負担を減らす」方向へ舵を切ることが可能です。

■デメリット
祭祀財産は親族だけではなく、地域に根差しているケースもあります。(地域の祭りに関する神具を預かっている、など)

維持や管理に関してはその地域や慣習に沿って適切に行う必要があり、負担感を覚える人もいるでしょう。他の方の意向を無視できない、管理や維持に費用が掛かるといったデメリットもあります。

祭祀承継者になりたくなかったらどうする?

「仏壇などの管理は遠方に住んでいて、できない…」このような場合には、祭祀承継者になることを断ることはできるでしょうか。

被相続人から祭祀承継者に指名された場合、法律上の辞退はできません。しかし、祭祀財産は相続財産ではないため祭祀承継者が処分してしまっても、相続手続きや相続人への影響はありません。

しかし、伝統的に受け継がれたものを処分することは、祭祀承継者にとって大きなプレッシャーになるため、役割を放棄したい・財産を処分したい場合にはあらかじめ親族間で話し合いを重ねることが大切です。

祭祀承継者を被相続人が指名していなかったらどうする?

祭祀承継者を被相続人が指名していなかった場合は、「慣習に従う」ことになります。しかし、慣習とはいっても継承できる人が、結婚や就職などを理由に遠くに暮らしている場合は、慣習に従うことも難しいでしょう。

この場合も、親族間で祭祀財産を今後どのように扱うのか話し合いをすることになります。慣習にそぐわなくても親族が納得していれば、誰が祭祀承継者になっても問題はありません。

祭祀財産の処分方法とは

祭祀財産は自由に処分できますが、仏壇やお墓などを処分することはなかなか難しいものです。では、処分したい場合にはどうすればよいでしょうか。主な方法は以下のとおりです。

・墓じまい
墳墓(お墓)の管理が難しくなったら、墓じまいをすることができます。お寺、霊園や墓地管理者など、墓地の管理者に相談しながら撤去をすることになります。撤去費には費用が必要です。また、納骨先をどこに変更するか、選定しておきましょう。

・仏壇処分ができる人に依頼する
仏壇・仏具の処分は、菩提寺に依頼をしたり、仏壇・仏具の専門店に依頼する方法があります。また、遺品整理業者なども仏壇処分に対応していることがあります。

閉眼供養や魂抜きなど、ご先祖の魂を供養した上で処分することが一般的ですが、宗派によって対応は異なります。また、神棚やキリスト像などの処分も宗教が異なるため、神具などの専門店に相談してみることがおすすめです。

墓石処分時の注意点 

墓石の処分をする場合、墓石ごと引っ越しをすることもできます。この手続きは改葬と呼ばれており、立地や中に入っている遺骨の数によっても相場が変動しています。改葬には見積もりから移送、設置まで時間を要することも多いため、早めに検討することがおすすめです。

なお、改葬をする際は改葬許可申請というものを墓石のある市町村役場にする必要があり、改葬許可証が発行されれば、お墓を異動することができるようになります。

祭祀承継者選びは慎重に|家族でじっくりと話し合いを

この記事では祭祀承継者について、承継者の選び方や祭祀財産の処分方法についても詳しく解説しました。祭祀承継者は相続人とは分けて考える必要があり、相続開始前からご家族の間で話し合いを重ねておくことがおすすめです。

長岡行政書士事務所では、横浜市を中心に墓じまいや遺言書など、相続にまつわるご相談に広く対応しています。まずはお気軽にご相談ください。

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長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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