後見人は死後事務について可能?後見制度の概要と緊急時の対応について行政書士が解説

後見人は死後事務について可能?後見制度の概要と緊急時の対応について行政書士が解説 相続に関連する法制度
相続に関連する法制度

認知症などによって判断能力が低下した方を支援をする成年後見制度。対象者の日常生活や医療、介護、福祉の面でサポートなど、その支援内容は多岐に渡ります。しかし、死亡後の手続きとなるとどうなのでしょうか? 
今回はご本人死亡後に後見人は手続きはできるのかを「童話風」に解説いたします!
このコラムを読めば後見人と死後事務の関連性について理解が深まるでしょう。

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

2人の飼っていた愛犬、シロが「ここ掘れわんわん」と小判を探り当て、2人はすっかり大金持ち。

その姿を見ていた神様が、ご褒美にシロを人間にしてくれました。

おじいさんとおばあさんが天国へと旅立ったあと、遺されたシロは、なんと行政書士に!

さて、今日も村人たちの相談がシロのもとへと…。

河童「おうい、シロ! 相談にのってくれよ、かっぱっぱ~」

シロ「おや、村はずれの池に住んでいる河童ちゃんじゃないか。どうしたんたい?」

河童「実はな、父ちゃんがもうボケちまって、頭の皿をこすりながら『オイラ、DJ KAPPA! ブリン・バン・バン、ブリン・バン・バン♪』とか言い出したんだよ」

シロ「…ずいぶんと皿違いだね。それって笑いを取るほうのボケじゃないよね?」

河童「目がバッキバキにキマってたから本気。だからさ、成年後見制度を使いたいんだけど、よくわかんねえんだ」

シロ「OK、じゃ説明しようか。あ、きゅうりは間に合ってるから、お礼に出さなくていいよ」

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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成年後見制度とは?

成年後見制度は、判断力が低下して成年被後見人であると判断された方に、本人に代わって財産管理や契約行為、法的手続きほかサポートを行う成年後見人をつける制度のこと。判断能力が不十分と判断された人が不利益を被らないように支援していきます。
弊所監修書籍:図解ポケット 成年後見制度がよくわかる本

河童「そもそも成年後見人っていう人は、父ちゃんにどんなことしてくれんだ?」

シロ「まずは成年後見制度は、法定後見制度任意後見制度というものに大きく分けられるんだよ」

河童「法定っていうくらいだから、法律で決まっているわけだな?」

シロ「そう。法定後見制度では、本人の判断能力に応じて後見人、保佐人、補助人という助っ人がつくと思っていいよ」

河童「なるほど」

シロ「で、その助っ人がどんな権限を持っているか。ちょっとまとめてみたよ」

法定後見人の権限

法定後見人に与えられる権限どんな権限?誰に与えられる?
取消権 被後見人の不利益になる場合、一定の法律行為を後から取り消す権限後見人、保佐人、補助人
代理権一定の法律行為を代理する権限後見人、保佐人、補助人 ※身分行為(結婚や相続等)など一定の法律行為は代理できない
同意権被後見人の法律行為をあらかじめ了承する権限保佐人、補助人

シロ「権利が与えられる人が違うのは、被保佐人や被補助人は後見人とは違い、本人に判断能力がもう少しあるから、より本人の意思決定を尊重してるからなんだ」

任意後見人の権限

河童「ふうん。任意後見人に与えられる権限ってどんなものなんだい?」

シロ「任意後見制度というのは、本人と受任者との間で任意後見契約を結んで、将来本人の判断能力が低下したときに備える方法なんだよ」

河童「契約ってことは、どんな内容でもお願いできるのかな?」

シロ「いや、任意後見契約によって定められるのは本人の生活、身上監護、財産管理に関する後見事務についてだけ。なんでもかんでもってわけじゃないよ」

河童「任意後見契約にも取消とか同意とかの権限はあるの?」

シロ「任意後見人には取消権・同意見はないんだ。なぜなら、本人の自己決定権を尊重するのがこの制度の理念だから、本人が自由に法律行為を行なえるようにしようと言う考えがあるからなんだよ」

成年後見人の義務

成年後見人は被成年後見人の生活に関わるため、善管注意義務、身上配慮義務という厳しい義務が課せられています。
あくまでも被後見人の利益に資することを行うのが後見人の役割です。

河童「厳しい義務か…ちゃんとやってくれなきゃ、本人も困るもんね。ところで善管注意義務、身上配慮義務って何なんだい?」

シロ「ざっとまとめると次のようなことだよ」

善管注意義務とは?                                     被後見人の財産管理業務を委任された人の能力、職業、社会的地位などから考えて一般的に期待される注意義務。通常の注意義務に比べて要求される注意義務の程度はかなり高くなる。
 ▼
成年後見人が、善管注意義務を怠ったために被後見人に不測の損害を与えた場合には、被後見人に対して損害賠償を負う可能性がある。また、成年後見人を解任される場合も。

身上配慮義務とは?                                    成年後見人が、被成年後見人の財産管理や身上保護を行うに当たって、被後見人の意思を尊重し、被後見人の心身の状態や生活状況に配慮する義務。成年後見人は、代理権・同意権・取消権を使い、被後見人の利益を保護していく。
 ▼
権限の行為が被後見人の自己決定権に対する制約や否定になることもあるたため、権限を行使する際に、被後見人の自己決定権の尊重と現在どれくらいの判断力を有しているかを考慮する必要がある。

被後見人死亡と死後事務の関係性

被後見人(本人)が亡くなった時点で成年後見人としての事務は終了し、成年後見人の権利や義務も消滅します。ただし、後見が終了しても、成年後見人は一部義務が残ります。
この章では本人死亡後の後見人の事務について見ていきましょう。

被後見人が亡くなった後の義務

・死亡届の提出
死亡した成年被後見人の死亡届を提出。同居の親族等が行ってもよい。

・家庭裁判所への報告・終了登記の申請
成年被後見人が死亡した事実を家庭裁判所へ報告。また法務局に対して、成年後見終了の登記を申請。

・管理計算義務
成年被後見人の死亡から2ヶ月以内に管理の計算をする。後見人在職中の収入および支出を明確にした管理計算書と任務終了時の残余財産額を確定させた財産目録を家庭裁判所に報告。

・相続人への財産引渡し義務
成年被後見人の財産を承継した相続人に対して、速やかに財産を引き渡す。
相続人が複数いる場合には、相続人全員に対して引き渡す必要がある。

応急処分義務とは

後見が終了しても、急迫の事情がある場合には、成年後見人は遺体の引き取りや葬儀の手続き等の死後の事務をしなければならない場合もあります。

シロ「ちなみに、応急処分義務はよっぽどの事情であって、普通は成年後見人は死後手続きができないんだよね。後見業務は被後見人の死亡時までだから」

河童「なんでだい? ここまでお世話してきたんだから、最後の最後まで同じ人がやったほうが都合がいいんじゃないか?」

シロ「でもさ、被後見人が亡くなると、本人の意思を確認する術はないよね。成年後見制度の2大テーマは、「本人の保護」と「自己決定権の尊重」だから、それに反しちゃうでしょ」

河童「それもそっか」

シロ「あと、本人の意向がわからないことや職務権限が与えられていないこともあるから、後々トラブルになりかねないんだよね」

河童「なるほど。でも、なんだかモヤモヤするなあ。もっとスマートなやり方がありそうだけど…」

法改正により成年後見人に一部死後事務が認められた

シロ「ということで、実は平成28年に法改正が行われて、一定の死後手続きができるようになったんだ。ただし、要件を満たした場合のみね。一覧にまとめてみたよ」

合わせて読みたい:死後事務委任契約とは?法的な根拠から手続き方法まで行政書士が解説!

成年後見人ができる死後手続き
・相続財産の保存に必要な行為(被後見人の自宅の屋根の修繕など)
・被後見人の借金の返済や入院費用、公共料金等の支払い
・被後見人の火葬や埋葬に関する契約
・遺体の引き取り

成年後見人が死後手続きを行うための要件
・成年後見人がその事務を行う必要がある
・被後見人の相続人が相続財産を管理できない状況にある
・成年後見人が死後事務を行うことが被後見人の相続人の意思に反していない

成年後見制度のご利用は行政書士にご相談ください

河童「そっかあ。やっぱり事前にちゃんと勉強しておいた方がよかったよ。あっ、もうこんな時間だ!」

シロ「これからお出かけかい?」

河童「DJ KAPPAがレイクサイドパーティでメインDJ務めるから、プロデューサーとして行かなきゃいけないんだよ…。何しでかすかわからないから、そばにいなきゃ。かっぱっぱ~」

シロ「うーん、これって新しい形の後見制度…?」

今回は成年後見制度と死後事務について見てきました。
被後見人死亡後は原則は後見人の役割は終了です。しかし、法改正により一部死後の事務が認められるようになり、実務上の混乱は多少緩和されました。

もし、自分の将来のこと、自身亡き後の死後の事務にご不安がある方は事前に任意後見契約や死後事務委任契約を結んでおくことも大事です。

任意後見や死後事務にご不安がある方は、横浜市の長岡行政書士事務所までご相談ください。

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この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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