相続分の譲渡とは?自己の法定相続分の譲り方【異説・花咲かじいさんに学ぶ!】

相続分の譲渡とは? 自己の法定相続分の譲り方【異説・花咲かじいさんに学ぶ!】 相続に関連する法制度
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遺産相続が起こった際に自分が財産を受け取るかどうかを考えると思います。

相続は、法定相続分というものがあり、各相続人に法律で定まっている相続分が存在します。

では、自分は財産を受けと取らない時にこの自己の相続分だけを他の相続人等に渡すことはできるのでしょうか。

今回はこの相続分の譲渡について「昔話風」にお話しいたします。

・・・・・

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

2人の飼っていた愛犬、シロが「ここ掘れわんわん」と小判を探り当て、2人はすっかり大金持ち。

その姿を見ていた神様が、ご褒美にシロを人間にしてくれました。

おじいさんとおばあさんはシロの成長を見守りながら幸せに暮らし、やがて天国へと旅立っていきました。

遺されたシロは、おじいさんの遺言書がきっかけとなり、なんと行政書士になりました!

実家を事務所に改装し「シロ行政書士事務所」として、今日も村人たちの相談に乗っています。

今日は、先日父親を亡くしたお金持ちの村人・金之助さんが相談に来ているようです…。

シロ「どうしたんですか、金之助さん。そんなひしゃげた顔をして」

金之助「…ひしゃげてるんじゃなくて、落ち込んでるんだよ」

シロ「先日お父さんが亡くなったばかりですものね。ご愁傷様です」

金之助「そのことなんだよ、シロ。遺産分割って面倒だから、相続放棄をしようかなと思っててさ。かくかくしかじか…」

合わせて読みたい:相続放棄とは?遺産相続で負債がある場合の対処法を行政書士が解説!

シロ「なるほど。要するにこういうことですね」

  • 相続人は母と兄2人、金之助の4人
  • 家族とはなかなか折り合いが合わず、何年も会っていなかった
  • 父の遺産と言われてもピンとこない
  • 金之助自身もお金には困ってないので遺産は必要ない
  • 遺産分割はどうにも面倒だと思っている
  • 相続放棄も考えている
  • でも高齢の母が心配なので、金之助の相続分を母に譲りたい

金之助「できんのかい、そういうこと?」

「相続分の譲渡」で特定の誰かに相続分を譲渡する

相続人が持っている、遺産全体に対する相続権の持分割合(相続分)。相続人は、相続開始時から遺産分割が成立するまでの間であれば、自分の相続分を他の人に譲渡することができます。

相続人の相続分は譲渡できる

シロ「できるっちゃーできますね」

金之助「軽いな、なんか」

シロ「まず重要なキーワードを覚えてください。これが頭に入ってないと、話が進みません」

  • 譲渡人…相続分譲渡において譲る人のこと(つまり金之助)
  • 譲受人…相続分譲渡において譲ってもらう人のこと(つまり老母)

金之助「お…おう、1文字だけ違うからややこしいけど、頭にブチ込んだぜ」

シロ「相続人が相続分譲渡を受けたら、その相続人が元々持っていた相続分に譲渡されていた相続分が加算されるんです。要するにこういうことです」

もともとの持ち分割合相続分の譲渡があったら?
金之助1/30(相続分がなくなる)
老母 1/32/3(元々の老母の持分+金之助の持分)

金之助「そりゃそうなるな。わかる理屈だ」

相続分は相続人以外の第三者にも譲渡できる

シロ「相続分の譲渡をしたら、金之助さんは相続分を失い、遺産分協議に参加することができなくなるってわけです」

金之助「こりゃ願ったりかなったりじゃねえか。そもそも遺産分割協議に参加したくねえんだから」

シロ「お母さんにとっても、楽になることがあるんです。遺産分割協議では相続分を決定するためには全員の同意が必要になるんです。でも、相続譲渡をしておくと、譲受人と残った相続人の同意を得るだけでいいんですよ」

金之助「兄弟姉妹が大勢いるときなんか、全員に同意をさせるとなると大変だから、こりゃいいかもしんねえな」

シロ「ちなみに余談ですが、譲渡は、他の相続人はもちろん、全く関係のない第三者でもできます。また、一部だけを譲渡するということもできるんです」

相続放棄と相続分の譲渡の違い

相続分の譲渡とよく似ている制度に、相続放棄があります。相続放棄は、自分の相続権を放棄して遺産を一切相続しないこと。相続分の譲渡と相続放棄は、遺産分割手続きをしなくてよいという点では共通します。

金之助「なるほど、そっくりそのまま投げ出しちまうってわけだな」

シロ「言い方に難はありますが、まあそういうことです。でも微妙な違いがありますので、ちゃんと理解してからどちらにするか選んだ方がいいですね」

相続債務の負担の有無

相続分の譲渡…マイナスの財産も譲受人に移転する(ただし、債権者の同意がない限り、譲渡人は相続債務の支払い義務は残る)
相続放棄…借金などの相続債務から逃れることができる

期間制限の有無

相続分の譲渡…相続開始から遺産分割が成立するまでの間であればいつでも可能
相続放棄…原則として相続の開始があったと知ったときから3ヶ月以内

裁判所での手続きの可否

相続分の譲渡…必要なし
相続放棄…家庭裁判所での審判が必要

相続分を特定の人に譲ること

相続分の譲渡…特定の相続人や相続人以外の第三者に対して譲れる
相続放棄…譲れない(放棄によって他の相続人の相続分が増加する)

相続財産のうちの一部のみを対象にできるか

相続分の譲渡…自分の相続分の一部についてのみ可能
相続放棄…一部のみを対象にはできない

相続放棄のメリットとデメリット

相続分の譲渡をすることによって得られるメリットとデメリットも明確にあります。

金之助「うーん、こうなってくるとどっちがいいかわかんなくなるな」

シロ「男らしくスパッと決めてください…なんて言いませんから、しっかり考えてください」

金之助「俺は商売人だからよ、やっぱりメリットとデメリットを比較するとわかりやすいんだけどな」

シロ「そう言うと思って、まとめてありますよ。こちらです」

相続分譲渡のメリット

  • 特定の人に譲渡できる(譲受人を指定することができる)
  • 対価を得ることもできる(遺産分割協議が長期化する際など、事前に金銭などの対価を得ることも可能)
  • 相続トラブルを避けることができる(相続人同士の対立など)
  • 相続人が減るため遺産分割協議がスムーズに進みやすい

相続分譲渡のデメリット

  • 債務の弁済を免れられない(債権者からの請求があれば弁済に応じなければならない)
  • 無償の場合、贈与の対象とされる(特別受益と見なされることも)
  • 第三者へ譲渡した場合、納得していない他の相続人から取り戻し請求をされる可能性がある
  • 第三者への譲渡は手続きが煩雑となる可能性がある(預貯金の引き出しや不動産の登記など)

金之助「なるほどなあ…。うちは債務はないし、兄弟たちもつべこべは言わねえだろうから、それを考えるとメリットのほうが大きいかもな」

シロ「そうかもしれませんね。でも預貯金の引き出しや不動産の登記などは侮らないほうがいいですよ」

金之助「なあシロ、お前、迷わせて楽しんでない?」

シロ「楽しんでなんかいませんよ。快感を得てるんです」

金之助「…ドS」

相続分譲渡に必要な手続き

相続分の譲渡について、必要とする要件や方法について定めた法律はありません。譲渡人と譲受人、双方が合意すれば譲渡の内容は当人たちで決定することができます。

相続分譲渡証明書を作成する

金之助「よっしゃ、決めたぞ! 相続分譲渡でいこうじゃねえか」

シロ「ちぇっ、もっと遊びたかったのに」

金之助「…でよ、手続きってのはどうしたらいいんだ? 口約束でいいんだったら、さっさと済ませちまうぜ」

シロ「確かに相続分譲渡は、口頭での約束でもかまいませんが、口約束ではトラブルになる可能性が心配ですよ。相続分譲渡証明書を作成することをお勧めします

金之助「なんだい、そりゃ?」

シロ「文字通り「相続分を譲渡しました」と証明する書面ですね。相続分譲渡証明書が必ず必要になる場合もあるんです。例えばこちらです」

  • 第三者である譲受人が金融機関から被相続人の預貯金を引き出す場合
  • 第三者である譲受人が不動産を相続して名義変更を行う場合
  • 遺産分割調停中の場合

金之助「なるほどな。で、その証明書を作って、そのあとは?」

相続分を譲渡したことを通知する

シロ「次は相続分譲渡通知書を作成します。これは他の相続人に「相続分の譲渡が行われましたよー」と伝えるための文書ですね」

金之助「作って、伝える…と。まあそうだな、他の相続人からしたら、勝手にされちゃたまんねえって気持ちにもなるもんな」

シロ「相続分を譲渡するときは遺産分割協議に参加する必要があり、仮に遺産分割協議に参加しなかったら、その遺産分割協議は無効となってしまうなど、混乱しちゃうかもしれないんですよ」

金之助「なるほどな。で、相続分譲渡証明書と相続分譲渡通知書には、決まった書式はあるのかい?」

シロ「特にはありませんので、わかりやすく書けば大丈夫ですよ」

相続分の譲渡に迷ったら専門家に相談する

金之助「とはいえ、素人が書くのは心配なところだな。よしシロ、代書してくんねえか?」

シロ「いいですよ。金之助さんはお金持ちだから…100億円になります」

金之助「破産するわ!」

遺産相続で相続を承認したり、放棄をしたりするのはなんとなくイメージができるかもしれませんが、
自分の相続分だけを他の人に譲渡するのを出来ることを知っている方は中々いないのではないしょうか。

相続が起きたらどのように相続したり、放棄したりと判断するかは大変難しい問題です。
相続分の譲渡を考えたらお気軽に長岡行政書士事務所までご相談ください。

この記事を詳しく読みたい方はこちら:自分の相続分を特定の人に譲ることはできるの?〜相続分譲渡を行政書士が解説〜

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この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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