「私が死んだあと、大切なペットはどうなるのだろう?」
「ペットの面倒を見てもらう方法ってどんなものがあるの?」
「ペットを任せる際の注意点は?」
相続時にペットをどうするかということは、あまり考えたことがない問題なのではないでしょうか。
一般的に相続財産といえば家や土地などの不動産、預貯金や有価証券などの債権、車などの動産、という感じだと思います。
今は昔のように大きな家で人が集まって住む、ということもなくなっています。
ですので、相続人の借りている物件がペット禁止のところなど、場合によってはペットを受け入れるのも難しいケースだってあります。
今回はそんな相続におけるペットの問題についてお話したいと思います。
相続におけるペットの扱い
そもそもの問題としてペットは相続されるのか、ということがあると思います。そして結論は、ペットも故人の財産扱いなので相続されることになります。
法律上ペットは動産として扱われる
あくまでも法律的にはペットは動産、つまり車や楽器などと同じように扱われています。
家族同然の命ある生き物で、少し悲しい気がしますが、法律上区分するためにやむを得ないということでしょう。
改正動物愛護管理法によって終生飼育が義務付けられている
とはいえ普通の動産と違うことは、飼い主にはペットが死ぬまで面倒を見る努力義務があるということです。
動物の愛護及び管理に関する法律 第7条4項 動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。
安易に飼育を始め、捨ててしまうというケースが増えたためです。つまり、ペットを相続財産として受け取るとしても、それにはそれ相応の責任がやはりあります。
命をあずかるのですから、当たり前なのかもしれません。
ペットに財産を相続させることはできない
逆に、愛するペットが住む家を確保してあげたいなどの理由で、ペットに遺産を遺したいという方もいるかもしれませんが、ペットは遺産を受け取ることはできません。
ですので、ペットが心配ならば自身の死後ペットの面倒を見てもらう人を見つけて、約束をして、ペットの生活を守る必要があります。
以下、ペットを相続でどうするかにつき、いくつか方法を検討します。
遺言書でペットについて書く
さきほども述べたようにペットは故人の持っていた動産の扱いになります。
ですから、遺言書にペットを相続させたり遺贈する旨を書いて、誰か信頼できる人に任せるという方法をとることができます。
合わせて読みたい:自分亡き後のペット問題は負担付遺贈の遺言書で対策!注意点や書き方を行政書士が解説
自分亡き後に相続人が確認してくれる
遺言書にペットについて記載をすれば、自分が死亡した後にすぐ確認されることになります。
ペットが誰に遺されたか、ということが非常にわかりやすいです。
相続放棄の可能性|注意点
しかし相続は放棄することができます。相続財産を見て、これほどに負担が多いのなら、いっそ受け取らないと選択することです。
確かにペットは可愛いものかもしれませんが、故人が老後独り暮らしになってからペットを購入し、小さいころからずっと飼育し愛護してきたとします。
その場合、あまりペットのことを知らない相続人ではペットに対する愛着が違うため、ペットの面倒をみるのが大変という理由で相続放棄をする可能性もあります。
結局誰もペットを受け取るつもりがないのなら、多くの場合、保健所でそのペットをあずかることになります。
「遺言書で書いたから一安心」というわけでもないのです。
合わせて読みたい:相続放棄とは?遺産相続で負債がある場合の対処法を行政書士が解説!
負担付死因贈与を使う
他の財産と違い、ペットはそれ相応の責任のある相続財産であり、だからこそ譲り渡す人、受け取る人、の双方でしっかりと話し合いをした方がいいでしょう。
そしてそれを書面にして契約することで、安心してペットを預けることができます。
具体的にその時に使う契約を負担付死因贈与契約といいます。
負担付死因贈与契約とは
これは、一定の義務を果たすことを条件として財産を贈与する契約です。
たとえば、家を贈与するけどそのローンは支払ってほしい、というような当事者間の契約をいいます。
そして負担付死因贈与契約の場合は、それが契約者の死亡をきっかけに起こる、ということになります。
自分が死んだらこの家をあげるけど、ローンは支払ってくださいね、という感じです。
遺言書との違い
さきほど遺言書でペットを誰かにあずかってもらう、という話をしました。
しかし遺言書で行われる相続や遺贈という法律行為は、それを作った人の意思によってのみ成立する法律行為です。
法的な要件を満たしていれば一方的な意思表示で成立します。つまりそれだと、受け取る人、遺す人、の間の合意は必要ではなく、契約ではありません。
そのため、放棄をする、という選択肢が受け取る人たちには残されているのです。
負担付死因贈与は契約だから相互に調整ができる
ペットの飼い主が変わる際、そのお世話や環境など、様々な要因が絡んできます。
したがって、一方的に「あなたに任せる」という風にするよりは、負担付死因贈与契約などの契約を当事者間で結んで、しっかりと書面に残しておいた方が安心です。
その契約の中で、
- 主に誰がペットの世話をするか
- 餌や病院代など、ペットの費用はどうするか
- その費用のために遺す財産
- 契約解除の条件
など主要なポイントはすべて整えておくとよいでしょう。
もちろん手間はかかりますが、この方がペットの面倒をしっかりと請け負ってくれることでしょう。
注意点|チェックがしにくい
契約内容がしっかりと行われているかは、契約締結者同士でチェックをするのが一般的です。
しかし死因贈与の場合は、一方が死亡しているため通常の契約と違ってチェックができません。
もしかしたら、ペットをちゃんと世話していない、あるいはペットのためのお金を違う目的に使ってしまうということも起こってしまうかもしれません。
ペット信託という手段もある
遺言書に書いたり、負担付死因贈与のほかに、ペット信託という手段が最近では使われるようになっています。
これは万が一の時のため、ペットのためのお金を信頼できる人に預けておき、適正な飼い主に飼育してもらう仕組みになります。
それぞれの不安な点をカバーしてくれるのがこのペット信託という制度です。
信託契約とは
ペット信託は、その名の通りペットに関する信託契約です。そして信託契約とは、「何のための財産か」という目的を定めて、財産等の管理を信頼できる人に任せるものです。
たとえば、投資をやっている方なんかは投資信託を想像してもらってもいいでしょう。
委託者、受託者、新たな飼い主で定める
委託者とは、財産の管理をまかせる人です。ペット信託の場合、元々の飼い主のことになります。
受託者とは、財産の管理をまかせられる人です。ペット信託の場合、元々の飼い主から財産を預けられた信頼できる第三者(多くの場合、家族や友人です)になります。
そして新たな飼い主とは、受託者があずけた財産をペットのために使い、ペットを飼育してくれる人(たとえばペットを飼育してくれる施設など)になります。
この三者で契約を結ぶことになります。
信託監督人も設定できる
そして契約がしっかりと行われているかをチェックする人として、信託監督人も設定できます。
ですので、死後だとしてもチェックが行き届きやすくなります。
費用が高額になりやすい|注意点
ペットのための飼育費用などを事前に準備しなければならないのはもちろんのこと、信頼できる受託者を見つけることが大変なこともあります。
ペット信託サービスをしている団体もありますが、それにも費用がかかることがあります。
また信託監督人にも費用がかかるため、高額になりやすいでしょう。
信託をやっている専門家が少ない|注意点
上記で見てきたように、確かに信託でペットの飼育を任せることも選択肢としてあります。
しかし、実は信託というものを扱っている専門家が非常に少ないのです。
これは信託の制度自体が民法の遺言制度と違い、昔からある制度ではないこともありますし、
一番は制度自体の設計が難しいことから専門家が敬遠している一つと言えると思います。
もし信託をご利用される際は、信託を専門でやっている士業事務所を探すことが望ましいでしょう。
愛するペットのために、専門家の助けを借りるのもいい
家族同然にずっと暮らしてきたペット。そのペットがずっと幸せでいてほしいものですよね。
その幸せを確実にするには、やはり行政書士などの専門家に相談してみることをおすすめします。
契約書は公正証書の方がいい
私たち民間人から依頼を受けて、役場で公証人が作成した書類を公正証書といい、公的な書類となります。それはペット信託契約などでも作成することができます。
自分が亡くなったあとのことを想定してペット信託契約を結ぶのなら、より契約の確実性を高めるため、公正証書で作成したほうがいいでしょう。
現実的には遺言書の作成がベスト
遺言書でペットのことを書く場合、その遺言書の内容が大切になります。また、遺言書が無効にならないよう、形式もしっかりしたものでなければなりません。
そうしなければ、ペットの世話を結局誰が見るのかわからない時間が長く続くことになってしまいます。
また、遺言書は自分の意思表示のみで可能ですので、現実的にペットの将来を考るとしたら遺言書がベストでしょう。
合わせて読みたい:遺言書とは~効力と種類について行政書士が詳しく解説!
いつでも当事務所にご相談ください
相続に関しては、単に相続の手続きをするだけではなく、他にもよりよい選択肢を熟知していることが大切になります。
ペットに関しても、遺産として遺すか、負担付死因贈与か、ペット信託か、それぞれのメリットとデメリットを把握し、より自分に合った方法にするのが大切でしょう。
もちろんそれには確かな知識や経験が必要になります。もしペットのことでお悩みならぜひ長岡行政書士事務所にご相談ください。