「遺産のマンションの管理費はずっと私が払っているんだけど、不公平じゃない?」
「相続が確定してないんだからまだ自分のものになるわけじゃいし、そんな遺産の管理費用は払いたくないな」
「遺産の不動産が人に貸している状態でその契約がそろそろ更新になるんだけど、俺一人で更新しちゃっていいのかな?」
・・・
遺産分割がいつもすんなり決まるとは限りません。
相続人が複数いてあまり普段交流がない場合もそうですが、交流があってもお金のことになるとなかなかすぐに決まらない場合も多いと言えます。
そして、遺産分割が決まるまでの間にも様々な費用が発生します。
例えば親がマンションを残して子が3人いる場合、決まるまでの間のマンションの管理費は誰が負担すべきなのでしょか。
私のものになるのなら管理費とか払ってもいいけど、万一マンションがもらえなかったら払った費用は返ってくるのだろうか。
そんな疑問を感じても不思議ではありません。
また、そもそも費用が発生する事を自分一人で決めていいのでしょうか。
良かれと思って行った遺産の実家の修繕が他の相続人に認めてもらえず、修繕費を払ってもらえないなんて事態が起きたことがあると耳にしました。
このコラムでは、遺産分割が完了するまでの費用負担と、どのような時に費用が認められるかの解説を行います。
管理費用は遺産から支出される
まずは民法中の関連する条文を見てみましょう。
第885条1項
相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。
先ほどの例でいくと、遺産のマンションの管理費用は遺産の中から払われるべきという事になります。
遺産が不動産以外にも現金・預金のある時は、その中から支払います。
これは、分割確定前の遺産は相続人が全員で共有しているという考え方に則っていて、皆で共有しているのだからその費用も共有の中から支払うという事です。
遺産の中に現金がなかった場合は相続分に応じて負担
不動産しか遺産がない場合は、管理費用を遺産の中から払うことができません。
そのような場合は、各相続人が相続分に応じて負担することになります。
実は相続には故人との関係によって法律で定められた相続することのできる権利(=法定相続分)が決められています。
故人が遺言書を残していれば基本的にその通りに分割されますが、遺書がないと法で決められた相続する権利のある人達(=法定相続人)が全員で集まって、話し合いでどう分割するかを決めるか、法律に則って法定相続分通りに分割するかを決めることになります。
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例えば不動産の固定資産税40万円を払う必要があり、法定相続人が故人の配偶者と子2人だとします。
法定相続分では配偶者が遺産の2分の1、子はそれぞれ4分の1を相続すると決められているので、固定資産税の負担は配偶者が20万円、子はそれぞれ10万円ずつとなります。
もし事情等で多めに支払ったり少なくしか支払ってない場合は、遺産の分割を決める協議(=遺産分割協議)の中でお互いに相殺したり遺産の中から差し引いて清算することになります。
管理費用として認められない場合もあることの注意点
さて、先ほど遺産はどう分割するかが決まる前は相続人の遺産共有状態になっていると述べましたが、共有という事は自分一人のものではないということ、良かれと思ってやったのに認めてもらえない可能性もあります。
それではすべての行為に対し、相続人全員の合意をいちいちとるべきなのでしょうか。
実は法律では保存行為、管理行為、変更行為の3種類を想定していて、各行為毎に誰の合意が必要かを定めています。
それぞれ見ていきましょう。
保存行為は相続人単独で行う事が可能
保存行為とは、遺産の原状を維持するための行為を指します。
遺産の原状を維持することでその価値を保つ事ができるので、他の相続人にとっても積極的に反対する理由はありません。
よって相続人が単独で行うことが可能となり、費用は遺産の中から提供されます。
保存行為の例としては、
- マンションの管理費の支払い
- 屋根の修繕
- 家のブロック塀が倒れそうなので補修
- 家の庭木が伸びて電線に触れそうなので枝打ち
- 遺産を理由なく占有する相手への引き渡し請求
等が挙げられます。
管理行為は相続持ち分の過半数の合意が必要
遺産である不動産の賃貸借契約の締結や解除など、遺産を利用又は改良する行為のことを管理行為といいます。
保存行為と違い、管理行為の中には相続人全員がすんなり合意できるとは限らない場合があるので、持ち分価格の過半数の合意が必要とされています。
相続の持ち分価格とは、例えば配偶者と子2人がいて子一人だけ賃貸借に反対してても、配偶者と子で家の価格の75%を押さえているので、残る一人が反対しても賃貸借契約ができるということです。
管理行為の例としては、
- 遺産の土地を駐車場として貸し出す
- アパートの契約更新を店子と行う
等が挙げられます。
変更行為は相続人全員の合意が必要
最後に、全部を処分してしまうことや土地の形状の変更など、性質や形状を変更する行為を変更行為といいます。
根本的に変えてしまうので、過半数でなく全員の合意が必要です。
変更行為の例としては、
- 遺産の不動産を売却したり、取り壊しや増改築する
- 不動産の全体に対して抵当権を設定する
- 遺産の自動車を歯医者廃車にする
等が挙げられます。
トラブルになる可能性もあるので、早めに専門家に相談を!
これまで管理費用の負担を誰がするのかと、そもそもその費用を発生させる行為がどういどういう時に認められるのかを解説してきました。
しかし実際は人の感情も入り混じり、すんなりといかない場合も散見されます。
例えば、親に介護を多く行ったとか、親の会社に就職して貢献したので遺産を多くもらえるはずだと思っていたのに他の相続人と同額しか遺産がもらえなかった相続人は、感情のもつれから管理費用の負担を渋るかもしれません。
もしくは、管理行為や変更行為に同意してくれない可能性もあります、
そうした際に第三者である法律の専門家に入ってもらうことで客観性や公平性が維持され、相続がスムーズに進みやすくなります。
横浜市の長岡行書士事務所は相続の経験が豊富にあり、相談者様の負担をなるべく軽くすべく印鑑一つで完結する相続を目指しています。
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