「家族が遺した自宅を相続するけど、どのような注意点がある?」
「亡くなった父には、遠方に所有している田畑があったはず。どうやって調べる?」
「兄弟で不動産を相続するけど、相続方法にはどのような方法があるか知りたい。」
現金や預貯金とは異なり、相続時には不動産だからこそ知っておきたい注意点があります。特に複数名の相続人で1つの不動産を相続する場合、相続の方法には慎重な検討が必要です。この記事では、遺産相続における不動産の相続について、注意点を中心に解説します。
遺産相続に不動産は含まれる?不動産の調査方法とは
被相続人が遺した財産の中には、「不動産」も含まれます。戸建やマンションのような住まいから、田畑などの土地なども含むため、遺産相続の調査を行う際には丁寧に不動産がないか、調査を行う必要があります。では、不動産はどのように調査すれば良いのでしょうか。
被相続人名義の固定資産納税通知書を確認
多くの不動産は課税対象となっているため、被相続人が不動産を所有している場合には、「固定資産税」を納付している可能性が高いでしょう。
そのため、被相続人宛に届いていた「固定資産税納税通知書」を確認すると、被相続人が所有していた不動産が分かります。ただし、すべての不動産が記載されているわけではないため、注意が必要です。
先代宛に来ている固定資産税納税通知書も確認を
固定資産税通知書は、すでに被相続人よりも前に亡くなられている家族宛てに届く場合もあります。不動産の所有者あてに届くため、鬼籍に入られている方宛でも、所有者が変更されていなければ届くことがあるのです。先代宛などに来ている固定資産税の納税通知書も被相続人が以前に相続していた不動産である可能性が高いため、必ず確認しましょう。
固定資産税が課税されない不動産の調査方法とは
不動産によっては、固定資産税が課税されない不動産もあります。課税されない不動産については固定資産税の納税通知書には記載されないため、別の方法で調べる必要があります。
①名寄帳
各市区町村では、課税対象となる不動産を調べることを目的に作られた、「名寄帳」と呼ばれるものが保管されています。名寄帳は相続人であれば取り寄せることができる資料で、課税対象とならない不動産(例・私道や山林など)が掲載されていることがあります。
②非課税証明書
各市区町村で取得できる「非課税証明書」も役立ちます。固定資産の所有者や所在、地積(土地)、種類・構造などが記載されています。
不動産登記権利情報も探しておこう
不動産の有無を調べるにあたっては、「不動産登記権利情報」も役立ちます。(平成17年3月6日以前は権利証が発行されていました)
亡くなった方の不動産の所在がわからない、あるいは不動産の権利証が見当たらない場合には、不動産登記識別情報が発行されている可能性があります。
■共同担保目録も確認を
不動産を調べる際には、「共同担保目録」も調査することが大切です。複数の不動産が抵当権や根抵当の担保となっている場合に作られている目録で、把握していない不動産が掲載されていることがあります。
不動産相続の方法と注意点とは
不動産が無事に特定できたら、今度は不動産を次の世代の方が所有・管理していくために、相続手続きを進める必要があります。そこで、この章では不動産相続の方法について、注意点も踏まえながら詳しく解説を行います。
不動産の相続方法
不動産の相続を進めるにあたっては、以下の方法が考えられます。メリット・デメリットも踏まえて紹介しますのでご一読ください。
相続 方法 | メリット | デメリット |
共有 | 法定相続分通りに相続できるため、話し合い時間が短く住む | 活用や売却がしにくい。 将来の相続時に共有がさらに細分化されるおそれがある。 |
代償 分割 | 不動産を取得しなかった人は金銭などで代償を得られる。 | 不動産を取得する人は代償分の資金を用意する必要がある。 |
換価 分割 | 不動産を売却し、得られたお金を分割できるため揉めにくい | 売却時には手数料や税金が発生する。 |
不動産を共有する場合は注意が必要
相続が開始されると、不動産は「共有状態」となります。共有状態は相続の細分化などのリスクが大きいため、相続時には相続人全員で話し合いを重ねておくことがおすすめです。不動産の価値が上がり、今すぐ売却しようと思っても共有者全員の同意がなければ売却もできません。
代償分割、換価分割における注意点とは
代償分割や換価分割は、共有者が多く相続の細分化が起きやすい共有状態は避けることができますが、注意点もあります。
■代償分割
代償分割は、特定の相続人が不動産を取得する代わりに、本来得られたはずの相続分を、金銭などで支払って解決する方法です。この方法は不動産を取得する相続人にとって、重い負担となりやすいため注意が必要です。
■換価分割
換価分割は不要な不動産を売却して、その売却代金を分割できるメリットがありますが、大切な資産を売却によって減らすことにもつながります。また、売却時には税金なども発生するため注意が必要です。
相続登記が必要
相続する不動産は、相続登記を行う必要があります。令和6年4月1日以降に義務化され、3年以内に登記されなければ過料が科せられるおそれがあります。遺言書がある場合は不動産の所有権を取得したことを知った日から3年、遺産分割協議の場合は以下の2つに分けられます。(なお、相続登記の義務化は、法改正前の不動産も対象です)
①遺産分割協議が成立したケース
相続人であること、かつ相続財産の中に不動産があることを知ってから3年以内
②遺産分割協議がまとまらないケース
3年以内に遺産分割協議がまとまらない場合、相続人申告登記(※)をすること
※相続人申告登記とは、戸籍などを提出して、自分が相続人であることを申告するというものです
詳しくは東京法務局HPを参照:相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始)
複数の不動産がある場合は遺言書を作ろう!
複数の不動産をお持ちの場合、相続が発生すると、残されたご家族は相続手続きを進める必要があります。家族が知らない不動産があると、手続きが難航するおそれがあります。そこで、複数の不動産をお持ちなら、「遺言書」の作成がおすすめです。
不動産相続に遺言書があるメリット
遺言書を作る際には、遺言書中に不動産情報記載するか、または財産目録を作るため、どこに、どのような種類の不動産があるのか特定できます。また、不動産を誰に相続されるのかも書き遺すことができるため、円満な相続手続きに貢献できます。
たとえば、現在の住まいを引き続き妻に遺すためには、妻を相続人に指定し、その代わりに現金や預貯金を子に指定することが可能です。不動産以外の財産についても、もちろん相続人を指定できます。また、ご家族の方以外に遺贈を検討する場合も、遺言書があればスムーズな手続きが可能です。
遺言書は専門家に相談がおすすめ
遺言書の作成は自分で行うことも可能ですが、安全・安心な遺言書を作成するためには行政書士をはじめとする専門家への相談がおすすめです。ご自身で書き遺したとしても、きちんと日付が入っていなければ無効となってしまう可能性もあります。有効な遺言書を大切に保管するためにも、専門家にアドバイスを受けながら作成を進めましょう。
不動産が多い方は家族のためにも遺言書を作りませんか?
この記事では、遺産相続について「不動産」に焦点を当てて詳しく解説しました。不動産の相続は相続登記や相続税を見据えて進める必要があり、どこに、どのような不動産があるのか早急に特定を進める必要があります。ご家族が不動産の調査に翻弄されないためにも、遺言書の作成がおすすめです。
横浜市の長岡行政書士事務所では、不動産も含めた将来の相続のために遺言書の作成をアシストしています。
わかりやすいご説明を心掛けておりますので、お気軽にご相談ください。