「父が亡くなり、相続手続きを進めている。預貯金口座をいくつか持っていたようだけど、どのように調べるの?」
「亡くなった家族の相続財産を調べているけど、知らない預貯金があったらどうしよう」
ご家族が亡くなられ、相続財産の調査を始める場合、被相続人が有していた財産を特定する必要があります。相続財産にはさまざまな種類がありますが、「預貯金口座」は代表的な相続財産の1つです。
しかし故人がどこの銀行で口座を持っていたか、完璧に把握できているとは限りません。
そこでこの記事では、相続手続に欠かせない預貯金の調査方法について、横浜市で相続手続をサポートしている行政書士が解説します。
亡くなった方の預貯金口座の調査方法
故人の保有する銀行を一括して調査できないか、気になる方もいるでしょう。
実は故人が、預貯金口座にマイナンバーを付番(登録)していた場合には、「相続時預貯金口座照会」という制度を使って、情報を取得することが可能です。
しかし実際には、保有する預貯金口座にマイナンバーが登録されているとは限らないため、この照会制度だけで預貯金口座の調査が完結することはありません。
このような背景をふまえ、故人の預貯金口座を調べる方法として、次の5パターンについて見ていきましょう。
- 相続時預貯金口座照会
- 通帳・キャッシュカード
- 銀行名のあるタオルなどの粗品
- アプリ
- 郵便物
それぞれどのようなポイントを重点的にチェックすべきなのか、詳しく見ていきましょう。
相続時預貯金口座照会
相続時預貯金口座照会とは、被相続人(亡くなった方)を名義人とする「マイナンバーが紐づけされた預貯金口座」の情報を取得できる制度です。
従来は、思い当たる金融機関へ、相続人や行政書士が一件ずつ問い合わせて調べていく必要がありました。
しかし2025年4月から、この相続時預貯金口座照会制度が始まったことで、マイナンバーが紐づけされたものに限られるものの、一括で亡くなった方の預貯金口座を調べることができるようになったのです。
なお、相続時預貯金口座照会で分かる情報は、次のとおりです。
- 金融機関名
- 支店名
- 口座種類
「残高」までは通知されないため、残高証明書は、照会結果をもとに各金融機関へ追加する必要があります。
通帳・キャッシュカード
先述したとおり、相続時預貯金口座照会で分かるのはマイナンバーが紐づけされた預貯金口座に限られます。
マイナンバーは、口座名義人本人からの申請があった場合のみ紐づけられるものであるため、実際のところ、相続時預貯金口座照会で故人の預貯金口座すべてが見つかる可能性は低いでしょう。(とくに数十年前から使っているような口座は、マイナンバーとわざわざ紐づけていないケースが多いはずです)
そのため相続時預貯金口座照会制度を活用するとしても、被相続人が所有していた、通帳やキャッシュカードを調べ、どこの金融機関・支店に口座があるのか探していく作業は不可欠です。
銀行名のあるタオルなどの粗品
銀行の取引があると、景品でタオルやポケットティッシュなどの粗品をもらうことがあります。銀行名のあるグッズがあったら、取引先かもしれませんので問い合わせてみましょう。
アプリ
近年はネットバンキングの利用者も多く、通帳を持たない人も増えています。スマホやパソコンに、ネットバンキング名のアプリがある場合には、取引をしている可能性があります。
また、ネット銀行の場合も通帳がありません。スマホに口座のアプリがある可能性があるため、もしも画面上で確認出来たら、ネット銀行側に問い合わせるようにしましょう。
関連記事:相続時にネット銀行やネット証券の口座はどう見つける?通帳がない場合の調査方法を行政書士が解説!

郵便物
定期性預金の満期など、銀行からは定期的に郵便物が届いていることがあります。
被相続人宛に銀行からの郵便物が保管されている場合は、被相続人名の口座がある可能性が高いため、調査しましょう。過去にネット銀行から届いたはがきに問い合わせたら1000万円近く残高があったことがあります。
預貯金口座の相続手続をスムーズに進めるためのコツ
相続時預貯金口座照会ですべての預貯金口座を見つけるのが難しいとしたら、どう調査を進めればいいのでしょうか。ここからは、預貯金口座の相続手続をスムーズに進めるために意識したい実務的なコツを紹介します。
- シェア率の高い地方金融機関も確認する
- 転勤先にある地方銀行なども確認する
- 金融機関からの借り入れ状況も把握する
- 銀行が統廃合されている可能性も考慮する
- 休眠口座となっている可能性も考慮する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
シェア率の高い地方金融機関も確認する
まず、各地域でシェア率の高い地方金融機関については、口座を持っている可能性が高いと考え優先的にチェックしてみてください。
たとえば横浜市の方であれば、「横浜銀行」「横浜信金」はチェックしておきたいところです。エリアによっては「川崎信金」「湘南信金」なども調べてみてください。
関連記事:横浜銀行の相続手続はどう進める?必要書類や注意点を行政書士が解説

関連記事:横浜信用金庫の相続手続はどう進める?必要書類や注意点を行政書士が解説

転勤先にある地方銀行なども確認する
被相続人が過去に転勤や通学などの理由で、今とは違う場所に暮らしていた場合、その地域で使いやすい銀行に口座を開設していることがあります。
相続人にはあまり馴染みのない地方銀行にも、預貯金が残されていることがあるため、心当たりがある場合は調べてみると良いでしょう。
金融機関の借り入れ状況も把握する
相続財産には債務も含まれるため、預貯金口座の調査を進める際には、金融機関から借入の有無も、合わせて確認するようにしましょう。たとえば次のような借入があるなら、口座も持っている可能性が高いです。
- 住宅に関するローン(住宅ローン・リフォームローン・不動産担保ローンなど)
- 車のローン
- 教育ローン
- カードローン
銀行が統廃合されている可能性も考慮する
銀行は統廃合があり、現在は違う名前となっている場合があります。見つかった通帳やカードが、心当たりがない名前の場合にはインターネットを活用して、現在はどこに統廃合されているのか調べてみましょう。
「一般社団法人 全国銀行協会」にアクセスすると、平成元年以降の提携・合併の歴史がリスト化されています。以下ご参照ください。
参考URL 一般社団法人 全国銀行協会 「最近の銀行の合併を知るには」
休眠口座となっている可能性も考慮する
相続の実務では、何年も使っていない古い銀行口座が見つかることもあります。このようなケースでも、相続手続を進めることは可能です。
しかし古い通帳が見つかった場合、現在「休眠口座」となっている可能性があります。休眠口座とは、長期間口座から預金・出金を行わないまま放置している状態の口座を指します。
2018年1月、休眠口座については「休眠預金等活用法」が施行され、2019年1月以降に発生する休眠預金は民間における公益的な活動に活用することになりました。銀行・ゆうちょ銀行における以下の口座は対象となるため、今後の相続時にも注意が必要です。
| 休眠預金の対象となる口座 | 対象にならない口座 |
|---|---|
| 普通預金 貯蓄預貯金 通常預金 定期預金 定額預金 定期預貯金 当座預金 | 外貨預貯金 仕組預貯金 財形貯蓄 |
関連記事:相続から数年後に見つけた銀行預金(古い通帳)はどうする?行政書士が手続方法を解説!
預貯金口座の相続手続の流れ
それでは故人の預貯金口座を調査し、実際に相続する際の流れを見ていきましょう。
- 「相続時預貯金口座照会」を申し込む
- 金融機関に相続発生を連絡する
- 必要な書類を確認する
- 払い戻しをうけるか、取引を継続する
「相続時預貯金口座照会」を申し込む
まず、記事前半で紹介した「相続時預貯金口座照会」を申し込むところから始めます。
| 項目 | 内容 |
| 申込みできる人 | 相続人(包括受遺者を含む)、またはその代理人 ※他の相続人全員の同意は不要 |
| 申込先 | 預金保険機構から受付事務の委託を受けた金融機関 ※故人や相続人の取引がなくても、預金保険機構委託先なら照会してもらえます ※具体的な申込方法は、窓口・電子的手段・郵送など、金融機関により異なります |
| 手数料 | 申込み1件につき 5,060 円(消費税込)(2026年8月時点) 結果通知の内容によらず、申し込み後は返金不可 |
| 必要書類(例) | 相続時口座照会申込書(各金融機関所定の様式) 被相続人の死亡が確認できる書類(住民票の除票の写し、戸籍の附票の除票の写し、認証文付き法定相続情報一覧図の写しなど) 相続人・被相続人の身分関係が確認できる書類(被相続人の戸籍謄本、認証文付き法定相続情報一覧図の写しなど)(包括受遺者の場合は遺言書を用意) 申込む相続人の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など) |
参考:預金保険機構|相続時預貯金口座照会のお申込みにあたって
被相続人のマイナンバーについては、預金保険機構が住基ネットから取得するため、提示不要とされています。
申し込みから結果が通知されるまでの期間は、1か月程度です。
また、必要書類の例でふれた「法定相続情報一覧図」を用意しておくと、この後の手続もスムーズに進めやすいため、ぜひ準備を検討してみてください。
関連記事:法定相続情報一覧図の作成を行政書士に依頼できる?依頼前に知っておきたいポイント

関連記事:法定相続情報一覧図は銀行の相続手続きで使える?使い方と注意点を解説

なお、記事前半で触れたとおり、照会でわかるのはマイナンバーが紐づけされた口座に限られるため、通帳やキャッシュカードなども並行して調べていきましょう。
金融機関に相続発生を連絡する
口座の所在が確認できたら、次は、口座のある金融機関に相続が発生したこと、つまり口座所有者が亡くなったことを連絡します。
口座所有者が亡くなったことを知ると、銀行は口座を凍結します。口座凍結後はお金の引出ができなくなるほか、公共料金やスマホ代などの引き落としもできなくなるため注意しなければなりません。
そのため実務的には、ある程度遺産相続の内容が固まってから金融機関に連絡することをおすすめします。
関連記事:口座凍結のタイミングはいつ?相続発生後の死亡届と銀行凍結の関係について行政書士が解説!

必要な書類を確認する
預貯金口座を引き継ぐためには、金融機関側が求める書類用意しなければなりません。
相続手続に必要となる書類は金融機関によっても違いがあり、さらに遺言書で手続するのか、遺産分割協議書によって手続するのかにもよって異なるため、注意しなければなりません。
| 状況 | 必要書類 |
|---|---|
| 遺言書がある | 遺言書 亡くなった方の死亡が分かる戸籍謄本 亡くなった方との関係性が分かる戸籍(受益相続人の場合) 相続する方の印鑑証明書および印鑑 被相続人が使っていた通帳 カード 検認調書もしくは検認済証明書 (必要な場合のみ) 遺言執行者の選任審判書の謄本 (必要な場合のみ) |
| 遺産分割協議書がある | 亡くなられた方が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本や除籍謄本 相続人全員の印鑑証明書 相続人全員の戸籍謄本 遺産分割協議書 |
| 遺産分割調停・審判を経た | 裁判所が作る調停調書や審判書の謄本 相続する方の印鑑証明書および印鑑 |
| 相続人が1名である | 亡くなられた方が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本や除籍謄本 相続人の印鑑証明書 相続人の戸籍謄本 |
参考記事:預貯金口座(銀行口座)の相続手続方法を行政書士が解説!
書類集めなどを負担に感じる場合は、相続手続をサポートしている行政書士に相談してみてください。横浜市の長岡行政書士事務所でも、口座の相続手続を代行しています。
相続手続のお悩みは
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払い戻しをうけるか、取引を継続する
相続手続に問題がなければ、1〜2週間程度以内に払い戻しされます。
ただし、故人の口座の中には、現在より金利が優れている「定期性預金」があるケースもあります。このような場合は解約して払い戻しを受けるのではなく、口座契約を継続することも可能です。
預貯金口座を見つけた後の注意点
相続手続の実務としては、預貯金口座を見つけた後にも注意すべきことが存在します。
- 口座名義者の死亡を伝えると、口座は凍結される
- 口座を見つけたからといって勝手に引き出してはならない
- 口座が凍結されても「仮払い制度」は活用できる
それぞれの注意点について、詳しく見ていきましょう。
口座名義者の死亡を伝えると、口座は凍結される
先述したとおり、金融機関に対して口座名義者が亡くなったことを伝えると、その口座はただちに凍結(入出金が停止)されます。その理由は次のとおりです。
- 不正な引き出しを防ぐ
- 無用な相続トラブルを防ぐ
口座の凍結後は預金の引き出しだけでなく、公共料金などの自動引き落としや、クレジットカードの支払いもすべて停止されます。
また、株式の配当金、不動産の賃料など、入金も受け付けられなくなります。
関連記事:死亡届を提出すると銀行口座は凍結される?行政書士が詳細を解説!

口座を見つけたからといって勝手に引き出してはならない
入院費や葬儀費用を支払うために、「口座が凍結される前に、現金を引き出しておこう」と思う方もいるかもしれません。
しかし他の相続人に無断で、勝手に故人の口座から現金を引き出すと、無用なトラブルの原因となりえます。
なんらかの事情があり、凍結前に現金を引き出したいと考えている場合は、少なくとも全ての相続人から同意を得ておくべきでしょう。
とくに、故人が個人事業主で、家族が経理担当をしていたような場合も、勝手に出金することは避けるのが無難です。
関連記事:個人事業主の事業用口座を相続する方法|確認事項と手順を行政書士が解説!

口座が凍結されても「仮払い制度」は活用できる
実は2019年7月から「仮払い制度」が開始されているため、無理に凍結前に現金を引き出す必要はありません。
払い戻し方法には、以下2つがあります。
| 相続人が単独で払い戻しができる額 | |
| 家庭裁判所の判断が不要 | 同一の金融機関からの払い戻しの上限は150万円 相続人単独で払い戻しができる額は預金額×3分の1×相続人の法定相続分 |
| 家庭裁判所の判断が必要 | 家庭裁判所が取得で認めた額 ※共同相続人の利益を害さない範囲程度 |
仮払い制度については、下記の記事でも解説しています。
相続時の預貯金払戻し制度とは?遺産分割前に預貯金を引き出す方法・注意点を行政書士が解説!
故人の銀行口座の調査・相続手続は行政書士に依頼できる
今回は相続時に触れることが多い被相続人の「預貯金口座」について、相続財産の調査の視点から詳しく解説を行いました。
「相続時預貯金口座照会」制度が開始されたとはいえ、マイナンバーが付番(登録)された口座しか探せないため、実務上は思い当たる金融機関へ、相続人や行政書士が一件ずつ問い合わせる必要が完全になくなったわけではありません。
預貯金口座は身近な銀行だけではなく、今お住まいの地域以外の場所に開設しているケースもあるため、被相続人のライフヒストリーに沿って丁寧に洗い出すことがおすすめです。
また、故人の口座を見つけた後、金融機関ごとに相続手続をしていくのは、なかなか手間のかかる作業です。そのたえ銀行口座の調査・相続手続を面倒だと感じる方は、ぜひ横浜市の長岡行政書士事務所にご相談ください。
預貯金口座だけではなく、相続手続全般について一貫してサポートいたします。初回相談は無料なので、まずはお打ち合わせをご予約ください。


