民法改正の嫡出推定制度や再婚禁止期間の撤廃等とは何か?行政書士が解説!

民法改正の嫡出推定制度や再婚禁止期間の撤廃等とは何か?行政書士が解説! 相続に関連する法制度
相続に関連する法制度

嫡出推定という制度や再婚禁止期間があるのを知っていましたか? そしてそれがどのように適用され、どんな問題を起こしていたかを正確に知っている人はなかなかいないと思います。

今回は、そんな嫡出推定制度や再婚禁止期間がなぜ2024年に変わったのかを「探偵小説」風に解説していこうと思います。

・・・・・

こんにちは。ぼくは名探偵として知られる明智小五郎先生の助手、小林です。

明智先生は、永遠のライバルである怪人三十面相との闘いの日々……と思われがちかもしれません。

もちろんたまに怪人三十面相の予告が届くことはありますが、そんなに毎日毎日出没させちゃさすがに働かせすぎです。

ですから、暇なときは、ぼくがやっている行政書士のほうでの依頼をこなし、先生は居眠りをしたり、茶々を入れてきては暇をつぶしているというわけです。

まあ、犯罪が起きないのはいいことではあるんですけどね。

ということで、今日も事務所に小さな赤ちゃんを抱いたご婦人が相談にやってきまして…。

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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2024年に法律改定の離婚後300日問題とは?

法律で、夫婦の離婚後300日以内に生まれた子供は、元夫との間の子供であると推定されると定められています。なぜなら、父親が自動的に推定されれば、戸籍上父親がいない子供が存在しなくなるという考えがあったから。

しかし、反対に子供にとって不利益が生じる重大な問題が隠れていました。この「離婚後300日問題」を受け、2024年に民法が改正。今回はその改正点について詳しく見ていきます。

小林「なるほど。ご相談をまとめると…民法上の規定で、この子が前の夫の子だと推定されてしまったわけですね」

ご婦人「そうなんです。非嫡出時にはさせたくないのに…小林さん、これはいったいどういうことなんでしょう?」

合わせて読みたい:嫡出子と非嫡出子の法定相続分はどうなるの?注意点を行政書士が解説!

小林「では順を追って、この離婚後300日問題をお話していきましょう」

嫡出推定とは?

民法上「婚姻の成立の日から200日を経過した後、または婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子」と規定されており、これが嫡出推定と呼ばれています。

小林「嫡出推定という言葉を知っていますか?」

ご婦人「いいえ」

小林「妻が婚姻中に懐胎したら、その子は夫との間の子と推定される、というものです」

ご婦人「婚姻中…再婚も含まれるのかしら?」

小林「含まれます。離婚後300日以内に生まれていれば、再婚後にできた子どもであっても、血縁上の父は元夫の子として扱われることになるんです」

再婚していたら推定が及ばなくなった

後ほどもまた説明しますが、再婚後出産した場合はもう前の夫の推定は及ばないことになりました。

ご婦人「でも結婚後、いえ、婚姻の成立の日から200日を経過したら、今の夫の子であるというわけなのですね」

小林「そうです。で、令和6年4月1日の改正後は、「再婚している場合、離婚から300日以内に生まれた子どもでも今の夫と推定する」という内容に変更されたんです」

ご婦人「つい先日の話ですね。改正されたのは、何が一番の理由だったんですか?」

背景には無国籍児童の問題

このように変わった理由には、今の日本が抱える悲しい現状が関係しています。

小林「300日問題、つまり無戸籍者の問題ですよ」

ご婦人「無戸籍…戸籍がないということ?」

小林「ええ。本来、子どもが生まれたら、14日以内に自治体に出生届を提出しなければなりません。出生届を提出すると、子どもが戸籍に記載されます」

ご婦人「ええ、それは知ってるわ」

小林「でも、場合によっては『この男を、赤ちゃんの父親にしたくない』というケースもあるのです。例えば、DVを受けていたり、ストーカー被害にあっていたり」

ご婦人「そういうひどい話も世の中ありますものね…」

小林「このとき、その相手を『子どもの戸籍上の父親にしたくない』という理由で、出生届を提出するのをためらうことも考えられます」

ご婦人「つまり、生まれた子どもは戸籍がない…無戸籍者になる?」

小林「ご明答。でも、戸籍がなければパスポートやマイナンバーカードなどの身分証が発行できませんし、銀行口座なども作れません。しかも就職ができない、学校にすら行くことができないなど、子どもの社会生活上、大きな不利益が生じてしまうんです」

ご婦人「今回の改正は、弱き人がジレンマを抱えたまま、不利な選択をしなくて済むようなことだというのですね」

小林「そう考えて良いでしょうね。では嫡出推定制度の改正ポイントをもう少し詳しく見ていきましょう」

嫡出推定制度の改正ポイントは?

令和6年4月1日の改正法において、大きなポイントとなるのは「嫡出推定の見直し」「再婚禁止期間の廃止」「嫡出否認の訴え」の3つです。

明智「ううーん、よく寝た」

小林「あっ、先生、いたんですか?」

明智「ここは私の事務所だ。いて悪いか?」

小林「自分の事務所にお客様が来ているのに、机の下でグースカ寝られるほうがどうかと思いますよ?」

明智「客? こちらのご婦人だな…あうう」

小林「どうかしましたか?」

明智「(な、なんと見目麗しい、品格あるご婦人だ…! こ、この胸のときめきは…!)」

小林「明智先生、お客様に、しかも、ご婦人にメンチきるのやめてもらえます?」

明智「違ぁう!初めまして、推理を愛し、推理に愛された男、空前絶後のぉ名探偵、明智でぇす、ジャスティス!」

小林「なんでサンシャイン池崎さんみたいな自己紹介になってるんですか」

明智「嗚呼、お嬢さん、ご心配無用ですよ、この明智がついておりますからね」

ご婦人「は、はあ…」

嫡出推定制度の見直し

先ほども話しましたが再婚した場合には前夫の嫡出が推定されないようになりました。しかし再婚しない場合は特に変わりはないため、その点は注意しましょう。

小林「…話を続けましょうか。まずは嫡出推定の見直しですね。民法改正後は離婚後300日以内に生まれた子であっても、出産の時点で母親が再婚していれば新しい夫の子どもであると推定されます

ご婦人「次の再婚禁止期間にも関わってきますね」

小林「そうです。ちなみに、再婚しない場合は、どうなるか?」

ご婦人「再婚していないのだから…基本変わらず?」

小林「まさしく。離婚後300日以内に生まれた子に関しては、元夫の子どもとする扱いは変わっていませんので、再婚しない母親にとっては改正の影響は少ないかもしれません」

ご婦人「再婚禁止期間の廃止があっても、誰彼構わず再婚するわけではありませんものね」

明智「ふ…しかし、あなたのように麗しきレディーを、嗚呼、ひとりでこの荒野へ置いてはおけませんな」

小林「…先生?」

明智「さあ、見上げるのです、あの夜空を! 嗚呼、またたく星と星のきらめき…私とともに、愛という銀河を生み出そうではありませんか」

小林「…宇宙旅行したいんですか? あの、話し続けますよ」

明智「まったく、君という男は、イカ天、エビ天、いや、野暮天だな」

再婚禁止期間の撤廃

以前は、女性にのみ再婚禁止期間というものがありました。こちらも合理性の問題でその期間が短縮されたりしていましたが、それがとうとう撤廃される流れとなりました。

小林「…ご婦人、再婚禁止期間の廃止の続きですが、これまでの民法では、女性にのみ離婚後100日間の再婚禁止期間が設けられていましたよね?」

ご婦人「はい。先ほどのお話では、女性が再婚した後に懐胎が発覚すると父親が重複することになってしまう…だから、子どもの身分関係が不安定とならないための規定…でしたか?」

小林「その通りです。でも、嫡出推定が変更になったため、母親が再婚していれば離婚後300日経過しなくても、新しい夫の子であると推定される。つまり…?」

明智「嗚呼、再婚禁止期間が必要なくなり、私とあなたの間の障壁は何もなくなったのです!」

小林「アホという障壁が依然残ってますけどね」

明智「うっせ。そもそも世界を見て、女性にのみ再婚禁止期間を設けているのは日本くらいなものだったのだ。そんな時代遅れな法律にいつまでも縛られてたまるか」

ご婦人「まあ! 明智先生は時代を見据えて、か弱き者のために代弁する勇士でいらっしゃるのね」

明智「ははは、いやあ至極当然ですな、もう当たり前田のクラッカー」

小林「古っ。勇士が昼過ぎまで事務所で爆睡しないでほしいですがね…」

嫡出否認を訴えることができる人が増えた

嫡出否認の裁判を起こすことができる人は、今までは父親側からでした。それが母や子からも起こすことができるようになりました。

ご婦人「小林さん、最後の嫡出否認というのは?」

小林「嫡出否認というのは、親子関係を否定するために家庭裁判所で行う手続きのことなんですよ」

ご婦人「否定? つまり、この子はこの人の子ではありません…というような?」

小林「まあ、そういうことです。これまで嫡出否認は父親側からしか訴えることができなかったんです。つまり、父親の同意や協力がなければ手続きできなかった」

ご婦人「それって、圧倒的不利ですよね」

小林「そうなんです。でも今回の改正によって嫡出否認の訴えを子や母からでも起こすことができるようになったので、ご婦人方も否定できるようになったんですよ」

ご婦人「まあ! それえは頼もしいわ!」

訴えを起こすことのできる期間も伸びた

原告の範囲が拡大したことにあいまって、訴えの期限も伸びることになりました。これにより状況をじっくりと考慮や観察をして、見極めたうえで、訴えを起こすことができるようになりました。

明智「しかも、訴えを起こすことができる期間も、今までは『子の出生を知ってから1年』でしたが、改正で『父が子の出生を知った時から3年、あるいは子が出生した時から3年』と、どどーんと延長保証!」

小林「家電みたいに言わないでください…」

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明智「ということで、この漢・明智、まわりくどいのは嫌いでしてな。この改正法を機に、お嬢さん、私と結婚いたしませんか!!!」

小林「げげーっ!」

ご婦人「拒否します」

小林「ぷぷーっ!」

明智「わ、笑うな小林くん…なんで?」

ご婦人「だって、まだ全然よく知らない人ですもの。しかもさっきからズボンのファスナー、ずっと空いてますから」

小林「これこそまさに”チャック出”否認」

合わせて読みたい:嫡出推定制度って何?民法改正に伴い相続との関係も行政書士が詳しく解説!

以上、身だしなみとしてチャックは出さないようにしましょう…、ではなく嫡出推定制度がどんなものであり、またそれがどのように変わったのか、のお話でした。

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長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
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