同性カップルの将来の相続について|法的な対策をパターン別に行政書士が解説!

同性カップルの将来の相続について 法的な対策をパターン別に行政書士が解説! 相続に関連する法制度
相続に関連する法制度

「同性カップルの相続は手を打っておかないと大変なことになると聞いたので不安です」          
「対策がいくつかあるなんて初めて知りました」                                                  
「それぞれの対策のメリットとデメリットを教えてください」

皆様の中には、同性カップルの相続は異性カップルと比べて「対策」が必要だと聞いた事がある方もいるかもしれません。

確かまだ同性婚は認められてないはず、でも、それがどう相続に影響してくるのでしょう。

あきらめるしかないのでしょうか。

このコラムでは、日本における同性カップルの相続の現状と、より望ましい相続を達成するための対策を解説いたします。

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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同性カップルが将来の相続で知っておくこと

同性婚は世界的に注目されているトピックです。

2024年5月の時点では世界の34ヶ国で同性婚が法律で認められており、異性カップルと同じ権利を得ることが可能になっていますが、日本ではまだ同性婚は認められておりません。

同性婚では相続人にはなれない

日本の法律で同性婚が認められてないという事は、残念な言い方になってしまいますが何年一緒にいても法律上は他人扱いということです。

なにもしないままでパートナーが亡くなってしまうと、外から法律上の相続人(=法定相続人)が現れて二人で築いた財産を持って行ってしまったり、住んでいた家が法定相続人のものとなり追い出されてしまう可能性があるのです。

パートナーシップ制度は法律上の制度ではない

近年「パートナーシップ制度」が広がりを見せていますが、これは自治体が同性カップルを婚姻に相当する関係と認め証明書を発行する制度です。

法律上の制度ではなく、各自治体独自の取り組みです。

このパートナーシップ制度は公営住宅への入居条件を満たすために使うことができたり病院への救急搬送時に家族として扱ってもらえる等の効果が期待できますが、残念ながら相続においては効力を発揮しません。

同性カップルは法律を積極的に利用して、異性婚に近い相続ができるよう行動を起こす必要があります。

同性カップルの相続のための3つの対策

では、具体的にどのような対策を講じておくべきなのでしょうか?

これより代表的な3つの対策のメリット・デメリットを解説いたします。

パートナーと養子縁組をする

パートナーと養子縁組をすることで法律上は養親と養子になり、親子関係が形成されます。

養子と実の子(=実子)は法律上同じ権利となるので、同性カップルは強力な法律上の保護を得ることになります。

例えばですが、遺言がないまま相続が発生すると相続人全員が集まり遺産の分け方を話し合う必要があり(=遺産分割協議)、話し合いで分け方を決めるか、法律に則った分け方をするか(=法定相続)を決めることになります。

養子は子として法定相続の第一順位なので、亡くなったパートナーの親や兄弟姉妹に優先します。遺産分割協議の話し合いでも法定相続人として相続分を主張できますし、法定相続になっても十分な相続分を得られることになります。

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養子縁組のメリット

また、この養子縁組では税制上のメリットも期待できます。

同性カップルのいずれかがもう一方を扶養している場合は扶養控除の適用を受けることができますし、不動産変更登記の税額も遺言による遺贈の場合と比べて5分の1で済ませることができます。

その他にも遺族年金が受給できる場合があったり、医療や介護の場面で医療従事者の方々からの理解を得やすいというメリットが期待できます。

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養子縁組のデメリット

デメリットとしては、パートナーとしての横の関係に養子縁組という縦の関係を持ち込むことになり、人によっては心理的な抵抗を感じる方もいるでしょう。

また、パートナーを解消することになった際に養子縁組をしていると離縁の手続きが必要となります。

離縁の手続きは双方の合意があればできますが、話し合いがこじれてしまうと家庭裁判所に申し立てないといけなくなる可能性があります。

加えて、過去の判例では(最高裁昭和23年12月23日)「養子縁組の届出自体について当事者間に意思の一致があったとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎないときは、養子縁組は効力を生じない」としています。

パートナーの親族が相続に納得できなかったりすると、相続目的の養子縁組は無効である、と訴えられる可能性も否定できません。

可能であれば生前から親族に同性のパートナーの紹介をし理解を得ておけば、後のトラブル回避につなげることができます。

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養親子間では離縁後に婚姻できない

最後にもうひとつ、一度養子縁組を結ぶと、離縁した後に結婚することができません。

民法第736条

「養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定(離縁)により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない」

将来の話で不確定ではありますが、日本が将来同性婚を認めるようになった時、既に養子縁組をしてる同性カップルにとってこの条文が障害になる可能性があります。

同性婚が認められた際には、既に養子縁組をしている同性カップルに対する配慮がなされることも推測されますが、あくまで一つの可能性として障害になるかもという事を留意しておくべきでしょう。

遺言を作成する

遺言は故人の最後の意志として、相続の際に優先されます。

基本的に遺言の通りに遺産は分割されますし、相続人による遺産相続会議も必要ありません。

遺留分という相続人の権利を考慮する必要がありますが、法定相続人以外にも遺産を贈ることができるので(=遺贈)、同性のパートナーに遺言により遺産を残すことができます。

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遺言は無効にならないように注意

気をつけなければいけないのは遺言には形式が決められており、書き方によっては無効になってしまう事です。

例えば日付や署名がなかったり、もしくはあっても不明瞭な場合は無効になります。

また遺言の内容も、誰が見てもわかるような明確さが求められます。

  • 「日付が2024年5月吉日」だと具体的に何日だかわからない
  • 「XXX銀行の口座にある金額をAとBに譲る」だとAとBに具体的にいくらずつなのかわからない
  • 「財産はAにまかせる」だとAに財産を譲るという意味なのか、Aに処分をお願いしている意味なのかわからない

遺言は自分で書くこともできますが(=自筆証書遺言)、上記例のように無効になってしまったりするリスクがあります。

可能であれば社会的に信用の高い公証人に遺言を書いてもらう公正証書遺言を選択することをお勧めします。

公証人が作成するため形式不備による無効リスクがほとんどなく、原本は公証役場で保管されるため紛失や改ざんのリスクもありません。

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遺言の作成の際は付言事項を活用

また、遺言には付言事項といい、法的拘束力はないもののお世話になった人への感謝や自分が大切にしてきたものへの気 持ち等をを書き添えることができます。

遺産の分割だけの記載だと納得できない相続人も出てくる可能性がありますが、この付言事項に同性のパートナーへの気持ち等を書く事で周囲に理解を求めることが可能になります。

あわせて読みたい>>>遺言書の「付言事項」について行政書士が解説!遺言者の想いを込める

死因贈与契約を使う

「自分が死んだらXXXをパートナーに譲ります」という契約を死因贈与契約といいます。

遺言と似たような印象を受けた方も多いかと思いますが、以下の点で遺言とは異なります。

死因贈与契約は財産に関することのみ|遺言との相違点①

まず、死因贈与契約は財産に関することしか決められません。

財産以外の、例えばお墓をどうしてほしいとか、過去に子がいたらその子の認知といった事は盛り込むことができません。

死因贈与契約では一度に複数の相続は不可|遺言との相違点②

さらに、死因贈与契約は一対一の契約なので、この財産はパートナーに、この財産は両親に、と複数の相続を一度に行うことができません。

既に決められた財産がありその分だけをパートナーに遺すというのであれば死因贈与契約で十分ですが、自分の死後の遺産をまとめて決める場合は死因贈与契約だけでは不十分となります。

死因贈与契約は双方の契約|遺言との相違点③

最後に、死因贈与契約は贈る側と受け取る側の双方の合意による契約である点が、贈る側からの一方通行である遺言とは違います。

遺言は一方通行であるので周囲に秘密にしたまま書くことが可能で、相続人も遺言内容が明かされた後遺産の受け取りを拒否することができます。

対して、死因贈与契約は双方の合意のもとに成立した契約なので、いざ財産の受け渡しになった時に拒否することができません。

遺産の受け取りを拒否するというところが想像しづらいかもしれませんが、実は遺産にはプラスの遺産の他に借金や未払金といったマイナスの遺産があります。

本人の死後よく調べてみたら借金の方が多かったというケースで、遺言であれば遺産の受け取りを拒否できますが(=相続放棄)、死因贈与契約では既に合意しているので拒否できません。

死因贈与契約を結ぶときには注意してください。

同性カップルの将来の相続には遺言作成を検討

これまで説明した3つの対策は一長一短ですが、やはり包括的に自分の死後の願いを表すことができるので遺言がお勧めです。

遺言を書くという事は、これまでの自分の人生の見直しや今後のパートナーの人生への想いへとつながります。

遺言を書く際には法律上のアドバイスであったり、証人の手配といったサポートが必要になります。

長岡行政書士事務所は印鑑一つで済む、相談者様に負担の少ない相続を目指しています。

少しでも疑問や不安を感じられた際は、是非横浜市の長岡行政書士事務所にご相談ください。

あわせて読みたい>>>LGBT(同性)パートナー向け遺言書のポイントを6つ紹介!遺言で相続対策を

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長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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