「遺産分割協議っていつまでできる?」
「遺産分割協議が遅くなったらどんな不都合があるのだろう」
「具体的にはどんな期限があるの?」
大切な人が亡くなったら、その人の財産、権利や義務を遺族や関係者で分け合う相続が発生します。
そして相続をする際に、全員で話し合って合意に達するための遺産分割協議が行われます。
相続というのは民事の話であり、より具体的にいえば個人の権利義務の話です。
ですので、話し合いによって決めるというのは確かに大切なことかもしれませんが、いつまでも話し合いをすることができるのか、という疑問が生まれます。
今回はそんな遺産分割協議の期限についてお話したいと思います。
遺産分割協議とは?
期限以外にも遺産分割協議にはいくつか注意しておくべきポイントがあります。
とはいえ、そもそも遺産分割協議とは具体的にどんなものなのでしょう。それを先に説明します。
相続人同士で話し合って相続内容を決める場
たとえば遺言書がなく故人の意思がよくわからないこともあります。そういった場合に、誰がどの遺産をどのくらい受け取るのか、ということを決めなければなりません。
遺産分割協議とはこのように相続人同士で意思疎通をして、遺産をどうするのかを決める場面になります。
合わせて読みたい:遺産分割協議とは~知っておきたいポイントと注意点を解説
遺産分割協議には相続人全員の同意が必要
そして遺産分割協議には相続人全員で同意することが必要になります。ひとりでも反対したならば、協議はまとまりません。ですので、遺産分割協議が長引くこともあります。
必ずしも遺産分割協議が必要であるわけではない
遺言書などで故人の意思が明確に示されていて、相続内容が指定されているのなら遺産分割協議は特にしなくても構いません。
ただその場合でも、状況によっては相続内容を変える必要が生じるときがあります。そういった場合にも遺産分割協議は行われます。
遺産分割協議には期限はない|原則
遺産分割協議には原則的に期限というものは存在しません。
さきほども話した通り、相続人同士の話なので、相続人が話し合って決めるのなら、相続内容を変更することはいつでもできます。
相続税、具体的相続分、不動産登記|例外
しかし、いくつかの領域において、実質的に遺産分割に期限が定められていると考えてもよいでしょう。
その代表的なものとして、
- 相続税
- 個別具体的な相続分の主張
- 相続不動産の登記
が挙げられます。以下、それぞれ詳しく説明していきます。
相続税申告上の期限はある
遺産分割協議自体には期限がないとしても、相続税に関しては注意が必要です。
相続税の申告は相続発生日の翌日から10カ月以内
相続税を申告するのには10カ月以内という期間が定められています。10カ月以内に相続税の申告が行われないと、いくつかデメリットが生じます。
- 配偶者の税額の軽減など、相続税の特例措置が使えなくなる
- 納税の遅延などによって追徴課税が課せられることがある
などのデメリットです。
相続税の申告と遺産分割協議
遺産分割協議が終わらなければ誰がどの財産を相続するのか不明な状態のままであり、一体誰がどのくらいの相続税を支払うかが明確にはなりません。
申告のために、早めに遺産を整理する必要があるのです。
個別具体的な相続分の主張に期限が設けられた
最近の話ですが、令和5年に民法が大幅に改正されました。それに伴って相続も様々に変わりました。
そしてその中で、遺産分割協議における個別具体的な相続分の主張には期限が設けられました。
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個別具体的な相続分を主張できる期限は10年以内
相続開始から10年が経つと、個別の事情を遺産分割協議で主張できなくなります。
個別の事情とは具体的には、以下のようなものです。
特別受益|多くの財産をもらい受けた人の相続分
相続には特別受益という考えが存在します。
たとえば故人から教育費用として多額のお金を生前贈与されていた場合に、その分を考慮してもらった人の相続分を減らす、といった内容です。
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寄与分|生前故人に尽くした人へのお礼の意味の相続分
たとえば故人を献身的に看護したり、故人にとってかけがえのない相談相手になっていたりした場合は、その人にその働きに応じて多く遺産が与えられることがあります。
特別受益、寄与分などの個別具体的な状況を考慮した相続分のことを具体的相続分といいます。
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相続開始後10年経つと法定相続分か指定相続分で決まる
これらの具体的相続分が相続開始から10年経つと主張できなくなってしまうということは、つまり10年経過後は法律で決められた相続分(法定相続分)、遺言などで指定された相続分(指定相続分)で決まってしまう、ということになります。
遺産分割協議はこれらのあらかじめ決まっている相続分を話し合いで変更していく作業であるため、遺産分割協議自体の意味が10年経つとそれほどなくなってしまうということにもなります。
令和6年4月からは相続した不動産を登記する義務がある
さらに、これから不動産を相続した際に、不動産の名義変更が義務づけられることになりました。
相続の際に行う手続きが増えたのです。
相続した不動産の登記は3年以内にする必要がある
これは以下のいずれかの時から3年以内に必要があります。
- 相続が発生し、自分が不動産を相続したことがわかったとき
- 遺産分割協議が終わり、それが成立したとき
厳密には遺産分割の期限というわけではありませんが、不動産が自分に相続されたとわかったときなどはなるべく早く登記をするようにした方がよいでしょう。
期限が過ぎた際はペナルティもある
上記の期限から3年以内に登記をしなかった場合、10万円以下の過料を支払うことになるかもしれません。
遺産分割をするには様々な期限を考慮する必要がある
今のところ、遺産分割協議自体には期限はありません。
しかし相続税のことも考えなければなりませんし、ここ最近の民法や不動産登記法の改正など、相続にまつわる期限が次々と新しく定められています。
遺産分割協議には期限がないからといって、放置しておくのは得策ではないでしょう。
新しい期限が定められている理由
遺産分割協議は実質的に10年、不動産の所有者が決まったら登記は3年。どうしてこのように新しい期限が定められているのでしょうか。
それは住んでいる人の死亡によって空き家となった家が日本中に増えているからです。だから法律はその所有者を特定させ、空き家の管理や処分を促すために期限を設けているという背景があります。
遺産分割協議は早めに終わらせた方がやはりよい
そもそも遺産分割協議が必要ないのなら問題ないかもしれませんが、そうでない場合、遺産分割協議はなるべく早めに終わらせた方がよいでしょう。
特に相続税の申告などはペナルティも多額になってしまう可能性があります。
また、遺産分割協議をスムーズに進めるために、基本的な環境を作るのもよいでしょう。
- 故人の財産を正確に把握しておく
- 相続人間で連絡がとれるように共有の連絡グループを作る
- 証拠となる書面として遺産分割協議書は作成する
など基本的な状況をあらかじめ整えておくとよいでしょう。
遺言書で相続分を指定するのもよい
故人の立場で有効な手段は、やはり遺言書などで相続分を先に指定してしまうことでしょう。
それでも遺産分割協議が行われることはやはりあるため、そのときのために遺言執行者という、遺言内容に沿ってそれを実現してくれる人を決めておき、協議の調整役として置いておくという手段をとることもできます。
遺産分割協議自体に期限がないからこそ注意しよう
逆に言えば、遺産分割協議に期限がないからこそ、問題が生じやすいともいえます。相続の話し合いは大変ですし、その後の手続きも慣れなければやはり疲れてしまいます。
その結果、期限がないからと放っておくと、今回紹介したような様々なデメリットを被ってしまうことになってしまいます。
最適な相続内容を実現するためには、新しい法律や相続法のことまで総合的に判断できる専門家の助けを借りることがよいと思います。
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