遺産相続における財産の分割って、ややこしいイメージがありますよね。とくに現金・預貯金はどう扱えばいいのか、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
相続財産のなかでも、現金は扱いに迷いやすい財産です。不動産のように登記があるわけでもなく、預貯金のように金融機関の記録が残るわけでもありません。そのぶん、誰が保管するのか、いつ分けるのかで、相続人の間に不信感が生まれやすい財産でもあります。
そこで今回は、遺産相続における現金・預貯金の保管方法や分割方法について、横浜市で相続手続をサポートしている行政書士が解説します。
遺産分割における預貯金と現金の違い
現金と預貯金は混同されがちですが、法律上は性質の異なる財産として扱われています。違いは、「実物であるか、権利であるか」という点です。
現金は、目の前に実物が存在します。一方、預貯金は銀行の口座に記録されているだけで、モノとして手元にあるわけではありません。通帳に記載された残高の正体は、「金融機関から引き出せる権利(債権)」といえます。
この違いは、かつて相続の場面で大きな意味を持っていました。現金は遺産分割の対象となる一方、預貯金は対象にならない(相続開始と同時に当然分割する)とされていたのです。
実は平成28年12月以前、預貯金は可分債権(分けられる債権)であるから、他の相続人との相談も合意もなく、それぞれが法定相続分に従って自動的に取得することができ、さらに銀行などから払い戻しを受けることも、制度上は可能とされていたのです。
※銀行実務では、実際に各相続人からの個別の請求に応じていたことは多くないと思われます。私、長岡も直面したことはありません。
しかし、遺産分割は相続人間の公平を図るためという趣旨であるにもかかわらず、そのような従来のルールでは、不公平が生じる可能性がありました。そこで現在ではルール変更がなされ、預貯金も当然に分割するのではなく、遺産分割の対象とする扱いになっています。
つまり現在においては、遺産分割における預貯金と現金の「分け方の違い」は、ほとんどないといえます。
しかし、実務上の扱いには違いがあります。
預貯金は、金融機関に記録が残っているため、残高証明書を取得すれば、亡くなった時点でいくらあったのかを客観的に示せます。
一方、現金には明確な記録がありません。故人の手元(金庫やタンスなど)にいくらの現金があったのかは、その現金を最初に見つけた人や、保管を引き継いだ人、たとえば同居家族の申告に頼ることになります。
この点が、相続人の間で不信感を生む原因になりやすいところです。
相続が発生したあとの現金の扱い方
被相続人がお亡くなりになると相続が開始されますが、遺産分割の手続きが終了するまで、相続財産は、相続人全員の共有財産であると規定されています。(民法898条1項)
では、相続が発生したあと、現金はどう扱えばいいのでしょうか。共有財産なら、相続人の一人が少しくらい使ってもいいのではと思うかもしれません。
しかし、共有財産だからこそ、相続人の一人が勝手に使うことはできません。また、たとえば自分の相続分が4分の1だからといって、現金の4分の1を自由に使っていいわけでもありません。
遺言書がない場合、誰が何を取得するかは、遺産分割協議で決まります。それまでは、現金は共有、つまり相続人全員のものであって、特定の誰かのものではない状態だと考えてください。
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「どうせ自分の取り分になるから」「葬儀費用に充てただけだから」といった理由があっても、他の相続人の同意なく使えば、後から精算を求められる可能性が高いです。他の相続人が許してくれるケースもありますが、やはり無用なトラブルを避けるためにも、相続人が複数立ち会って金額を確認し、その場で写真やメモを残し、しっかり管理しておくことが大切です。
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なお、現金を保管していない相続人は、保管している人に対して、いくらあるのかを明らかにするよう求めることができますし、保管方法について意見を述べることも可能です。
では、故人が残した現金は、いつ受け取れるのでしょうか。
もし遺言書がない場合、現金を手にできるのは、遺産分割協議が成立し、誰がいくら取得するのかが決まったときです。
ただし、遺産分割協議が成立した後も、一人で金庫から現金を持ち出すようなことをすると無用なトラブルを招きかねませんから、他の相続人が立ち会ったうえで取り出したほうがいいでしょう。
相続が発生したあとの預貯金の扱い方
預貯金も現金と同じく遺産分割の対象となるため、原則として、遺産分割が終わるまでは引き出せません。
金融機関は、口座の名義人が亡くなったことを把握すると、その口座を凍結します。相続人の一人が勝手に引き出すことを防ぎ、遺産分割が適切に行われるようにするためです。
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ただし、それでは困る場面もあります。葬儀費用の支払いや、故人が生計を支えていた家族の当面の生活費など、すぐにお金が必要になることもあるためです。
そこで設けられているのが、遺産分割前の預貯金の払戻し制度です。
この制度を使えば、遺産分割が終わる前でも、相続人が単独で一定額を引き出せます。1つの金融機関から各相続人が引き出せる金額の上限は、家庭裁判所の判断を経ない場合、「相続開始時の被相続人の預貯金額×1/3×払い戻しを希望する相続人の法定相続分」もしくは「150万円」の低いほうです。(預金がどれだけ多くても、引き出せるのは150万円まで、ということです)
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なお、この制度で引き出したお金は、その相続人が遺産の一部を取得したものとして扱われます。あとの遺産分割で精算されることになるため、「もらえるお金が増える」わけではない点に注意してください。
遺言書に「現金」が書かれているかも注意すべき
遺言書がある場合は、その内容に沿って相続手続きを進めます。しかし、遺言書に現金の記載がないケースは、意外と少なくありません。
たとえば遺言書に「預貯金を相続させる」とだけ書かれている場合、預貯金は「この金融機関から引き出せます」という権利であり、現金ではありませんから、「遺言書に現金の記載がない」という扱いになります。
また、「金融資産(預貯金債権、信託受益権、有価証券等)を相続させる」とは明記されているものの、現金について記載されていない場合、「金融資産」に現金を含むか否かはグレーです。
そして記載のない財産は、遺産分割の対象となります。つまり「遺言書はあるものの、現金については相続人全員で話し合って分け方を決めなければならない」ということもあるのです。
この場合は、記事前半で触れたとおり、遺産分割が終わるまで、その現金は相続人全員の共有財産です。誰かが勝手に使うことはできませんし、金額を明らかにして適切に保管する必要があります。
現金・預貯金の相続手続に迷ったら行政書士へ相談!
遺言書で指定がない場合、現金も預貯金も遺産分割の対象です。どちらも遺産分割が終わるまでは相続人全員の共有財産であり、誰かが勝手に使うことはできません。
そして、預貯金は金融機関に記録があるのに対し、現金には記録がありません。そのぶん、金額をめぐって相続人の間に不信感が生まれやすい財産です。故人と同居していた方は、とくに疑われやすい立場といえるでしょう。
無用なトラブルを防ぐためにも、早い段階で相続人全員で現金がどのくらい残されているかを共有し、保管方法まで話し合っておくのが大切です。
横浜市の長岡行政書士事務所では、相続財産の調査から、遺産分割協議書の作成、預貯金の解約や名義変更まで、相続手続き全般をサポートしています。また、現金を含めた財産目録を作成し、相続人全員が財産内容を確認できる形に整えることも可能です。
現金・預貯金の相続手続に迷った際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


