大切な配偶者に財産を遺す場合に遺言書を書くことはよくある話です。そんな遺言書を作成した後に離婚した場合はどうなるのでしょうか?
離婚をした後に遺言書を書き直さずに死亡することはあり得ることでしょう。離婚した配偶者に財産を渡す、などと書かれた古い遺言書が見つかったら、いったいどうしたらいいのでしょうか。
今回はこの配偶者に遺す旨を遺言書で書いた後に離婚した際の遺言書の効力を、難しい話になりすぎないよう「取材風」に解説していきます。
皆様、こんばんは。社会の構図をわかりやすくお届けするニュース番組「報道小路」のお時間です。アナウンサーの綾小路遺子です。
この綾小路がさまざまな現場を徹底的に取材しており、この合成皮の手帳、通称、白革の手帳にまとめておりますのでご期待ください。本日の特集は「離婚した配偶者に財産を渡すと書かれた古い遺言書が見つかったらどうなる」です。
「遺言を書いた後に状況が変わってしまってどうしたらいいか」というようなご相談は当番組にも多く寄せられますので、興味深いですね。
本日はコメンテーターとして、尾分澄夫さんにお越しいただいております。
では、早速まいりましょう。いつものセリフでスタートです。
「私、調べましたけど!」
遺言書作成後に配偶者と離婚をした場合の遺言書の効力
遺言書を作成した後に離婚をしたとしても、遺言書自体は原則として有効です。。離婚・離縁をしたとしても、遺言書が直ちに無効になるわけではありません。
知っておくべきポイントは次の2つです。
- 遺言書自体は有効の可能性がある
- 前遺言と後遺言の抵触する部分は無効となる可能性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
遺言書自体は有効の可能性がある
ただし、遺言書を作成した後の離婚や離縁が遺言書に抵触する事実とみなされ、その部分について遺言書が無効とされることもあります。
遺子「まずはわかりやすいように、被相続人が以下の内容の遺言を書いたという想定で検証してみましょう」
《遺言書の内容》
- 不動産を妻に与える
- 1000万円を長男に与える
- 800万円を養子(妻の連れ子)に与える
《作成後の状況》
- 遺言書を作成した後に被相続人は妻と離婚
- 養子とは養子縁組を解消して離縁
遺子「さて、尾分さん。離婚や離縁に関係なく遺言は有効なままなので、まずこの離婚や離縁とは関係のない「1,000万円を長男に与える」という部分は問題ないですね」
尾分「そうですね」
前遺言と後遺言の抵触する部分は無効となる可能性がある
遺子「ですが、このままだと離婚した妻が不動産を取得し、離縁した養子が800万円を取得する可能性がありますね」
尾分「ですので…」
遺子「抵触する部分は撤回となる可能性があるわけですね。わかりました」
尾分「(…これが噂のコメントつぶし…ひとりでずっとしゃべっているというコメンテーターいらずの…)」
ただし離婚や離縁が遺言書に抵触する処分と認められるかどうかは、様々な事情を考慮して判断されます。
離婚した配偶者に財産を渡すと書かれた遺言書が見つかったら専門家に相談する
遺言者が生きている間であれば、離婚した配偶者に財産を渡すと書いた遺言書を破棄したり、新しく遺言書を作ったり、さまざまな対策を取れます。
しかし既に遺言者が亡くなったあと、離婚した配偶者に財産を渡すと書かれた遺言書が見つかったときは、いったいどうすればいいのでしょうか。
遺子「尾分さん、離婚や離縁をした相手に財産を譲りたくないという考えを持つ方がいたとしましょう」
尾分「はい」
遺子「元妻や連れ子はどうしても金銭が必要なときは裁判を起こすかもしれませんね」
尾分「そうですね」
遺子「もし裁判で「離婚をしたかどうかなんて関係ない! 亡くなった被相続人は、相手に遺産を渡したい意思があったとしか考えられない!」と判断されたら、元妻や連れ子は、故人の遺志と反する形で遺産を取得できる可能性があるんですよね」
尾分「ありますね」
実際のところ、見つかった遺言書の内容が有効なのか無効なのかは、ケースバイケースで異なります。
先述したとおり離婚や離縁が遺言書に抵触する処分と認められ、別れた配偶者に財産が渡されない可能性もある一方、遺言書のとおりに財産を取得できる可能性もゼロではありません。
そのため離婚した配偶者に財産を渡す、などと書かれた古い遺言書が見つかったら、一度専門家に相談してみてください。
横浜市の長岡行政書士事務所も相続手続・遺言執行を承っています。初回相談は無料なので、まずはお気軽に来所予約をご連絡ください。