「遺産相続のトラブルなんてお金持ちだけの話でしょ」
「遺産額ごとのにトラブルの傾向なんてあるの」
「できればトラブルは回避したいけど、いい方法ってあるのかな」
テレビドラマや映画などで、遺産相続で家族が紛糾する場面を見たことはありませんか。
大抵は大きなお屋敷が舞台で、執事が遺言を読み上げると予期せぬ人が遺産を相続することが判明し、意地悪そうな伯父さんあたりが激怒していたような気がしますが・・・
さて、実際のところ、相続は遺産が多いとトラブルも多いのでしょうか。
それとも遺産額と相続トラブルの間には関連はないのでしょうか。
このコラムでは、統計を基に遺産額と相続トラブルの関連について説明し、その原因について解説を致します。
相続トラブルは富裕層だけの問題ではない
令和4年中に全国の裁判所が取り扱った家事に関する裁判統計として、司法統計年報があります。
この司法統計年報第52表を見ると、どの遺産額でどのくらいの件数が家庭裁判所に持ち込まれたか、つまり相続トラブルになったかがわかります。
相続トラブルのうち8割超が5000万円以下
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データをグラフ化してみると、相続トラブルの内遺産額が1,000万円以下が38%、5,000万円以下が48%と、この2つを足すとなんと86%に達することがわかります。
つまり、ほとんどの相続トラブルは遺産額5,000万円以下の家庭で発生してることになります。
では、この遺産額5,000万円以下の家庭というのは日本の全人口の中でどれくらいの割合を占めるのでしょうか。
日本の9割超が資産5000万円の世帯
野村総合研究所の2021年の統計によると、日本の世帯を総資産ごとに分けると以下の通り
![](https://yokohama-souzoku.com/wp-content/uploads/2024/05/tokei2.jpg)
マス層とアッパーマス層を足すと91.39%、つまり、ほぼすべての日本の世帯は保有金融資産が5,000万円以下ということになります。
これら2つの統計から読み解けることは、日本の多くの世帯が保有金融資産が5,000万円以下であり、相続トラブルがこの世帯で多く発生している、つまり、
「相続トラブルは一部のお金持ちだけの問題ではなく、我々の身近な問題である」という事になります。
富裕層が相続トラブルの少ない理由
資産が多いほどそれを分ける相続時のトラブルが多そうですが、どうもそういうわけではなさそうです。
いったいなぜでしょうか。
富裕層は相続対策をしている
あくまで一般論ですが、富裕層は相続に関心が高く、生前から遺言を書いたり専門家に相談したりするケースが多いと言えます。
相続税は最高55%にも達するので、なにも節税等の手を打たないと遺産の半分以上がとられてしまう可能性があるからです。
自衛のためにも、法律に日ごろから馴染んで行く中で相続に気を配っているのかもしれません。
ここで少し話がそれてしまいますが、アメリカで富裕層の余暇活動のなかでナンバーワンは豪華客船で世界一周する、ではなく、「税務の専門家にアドバイスを受ける」です。
(トマス・J・スタンリー著 「なぜ、この人たちは金持ちになったのか」より)
一概に相続イコール税務とは言えませんが、専門家のサポートを利用して資産を維持しようという意識の高さがうかがえます。
資産が多ければ相続時の選択肢が多い
また、もう一つの理由として、富裕層の方が資産が多いので、遺産相続の時に選択肢が多いということが挙げられます。
例えば家や土地といった不動産以外にも預貯金や証券といった流動性の高い資産があれば、いざ相続人の間で分割するときにAさんは家、Bさんは預貯金というように相続することができます。
対して資産が家だけしかないと、家は物理的に分割できないのでAさんが家を相続したら、Bさんは相続するものがなくなってしまいます。
遺産額5000万円以下の世帯に相続トラブルが多い原因
それでは、資産額5000万円以下の世帯に相続トラブルが多い原因は何でしょうか。
先ほど述べた富裕層とは逆の理由となります。
相続対策の準備をしていない
法律の知識の有無により、相続は大きく変わってきます。
よくある例として、親の介護をしたから相続を多くもらえるはずだ、と「思い込んでしまう」パターンが挙げられます。
実は、介護した人が相続で多くもらえる、というはっきりした法律はありません。
むしろ、「普通に」親の療養看護をしていただけでは相続分を増やしてもらえる理由にならないのです。
法律には「寄与分」という考え方があり、ざっくりというと、亡くなった方(=被相続人)の財産の維持又は増加について特別な寄与をしたと認められないと寄与分として多めに相続を受け取ることができないのです。
先の療養看護も、外部サービスに頼らず家族の人間が行う事で通常の範囲以上の財産の流出を防ぐことができたとか、またその領収書が保管してあるといった事情があれば寄与分が認められる可能性も高まります。
しかしそのような法律知識がないと、もらえるものだと思い込んだままいざ相続になって愕然とする、という事態になりかねません。
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また、息子の嫁のように子の配偶者が義父・義母の介護を頑張ってもそもそも血のつながりがないので相続人になれず、上の寄与分も認められません。
そのような事態に対応するために2019年に民法の改正があり、「特別寄与料」という制度ができました。
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このような制度も、知ってなければ主張することもあらかじめ準備することもできません。
自分が法律の専門家になる必要はありませんが、法律のアドバイスをしてくれる専門家を身近に置いておくべきであると言えます。
不動産が資産の大部分というケース
先ほども例として挙げましたが、不動産は物理的に分割できないのでいざ相続で分ける段になりトラブルに発展するケースがあります。
解決策の一つとして「清算型遺贈」といういう方法がありますが、これは不動産を売却して現金を相続人の間で分ける方法なので、仮にその不動産に愛着があり売ることに反対してる相続人がいたり、何らかの事情でその家に住み続けないといけない人がいる場合は相続が難航する可能性もあります。
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他にも代償分割といい、1人が不動産を相続する代わりに他の相続人に金銭を対価として支払いバランスをとる方法もありますが、この場合は不動産の相続人が金銭を準備する必要があり、場合によっては大きな負担になる可能性があります。
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このように、分ける財産が限られていたりすると、かえって相続が難しくなってしまう可能性があります。
資産額に関係なく相続の準備は入念に行う
試算額が少ない世帯ほどむしろ相続の準備が必要なのは分かったけど、うちは家族仲がいいし・・・と思われる方もいるかもしれません。
むしろ仲がいい家族ほど、相続の準備は必要です。
どんなに仲のいい家族でもお金がからんでくると別の話になってくるからです。
また、仲がいいからこそ、はっきりと言えずグレーなまま済ませている部分もあるはずです。
加えて、子の配偶者といった血の直接の繋がりがない人の視点も入ってくると、例えば親子仲が良くても子の配偶者が反対したりする事態も考えられます。
生前に相続の事を考えるのは不謹慎かと感じる方もいるかもしれませんが、相続はいずれ来る身近なもの、専門家のサポートをを得て準備をしておきましょう。
長岡行政書士事務所は相続の経験が豊富にあり、印鑑一つで済む相談者様の負担が少ない相続を目指しています。
少しでも不安や不明点がある場合は、是非、横浜市の長岡行政書士事務所にご相談ください。