銀行の相続手続き等の遺産整理業務は行政書士が活躍している分野の一つです。
しかし、数年前までは書類作成でもないのに、なぜ行政書士が遺産整理に絡むのかという声も各所であったそうです。
そこで、今回は、行政書士の仕事内容と遺産整理業務のかかわりがテーマです。
行政書士が遺産整理業務をできる理由について、2023年に発表された総務省見解の背景と解釈のもと、
「クイズ形式」で楽しく学んでいきましょう。
本記事は、通常の法律の文章は難しいことから、楽しくわかりやすくお伝えするためにクイズ形式にしています。そのため、法律的な表現が少し変、厳密に言うとこうだ!等あるかと思いますが、そこは温かい心で読んでいただきつつ、ぜひご参考にして頂ければと思います。
では、クイズ形式で出題しますので、家族やご友人とチャレンジしてください。さあ、あなたのまわりで、行政書士クイズ王になるのは誰だ⁉
今回も、司会の私と、解説の行政書士長岡さんでお届けしいたします!長岡さん、よろしくお願いします!
ではさっそく第1問です!
Q:行政書士の前身であった、明治時代の制度はどんな制度?
A)代理人制度
B)代打人制度
C)代書人制度
法律で定められている行政書士の業務
正解はCの「代書人制度」です。実は、行政書士のような仕事は、明治時代にすでにありました。依頼人に変わって書面を書き、報酬をもらうという仕事が、行政書士のルーツであったようです。
さあ、長岡さん。明治時代から時を経て、現在は令和。近年ではより国民の生活に密着した法務サービスが求められていますよね。
行政書士の仕事も時代により変化している
長岡「ええ、ですので行政書士の仕事も時代に即して変化してきているんです」
そもそも、行政書士にどんな仕事を依頼できるのか、具体的なイメージを持っている人は少ないですよね?
長岡「そうなんです。日本行政書士会連合会のホームページによると、大きく分けて3つの仕事に分かれます」
- 官公署に提出する書類の作成とその代理、相談業務
- 権利義務に関する書類の作成とその代理、相談業務
- 事実証明に関する書類の作成とその代理、相談業務
官公署に提出する書類の作成
長岡「では詳しく解説していきましょう。まずは『官公署に提出する書類の作成とその代理、相談業務』ですね」
これはわかりやすいですよね。行政書士しかできない独占業務です。
長岡「まさしく。この印象が強いので行政書士といえば、書類作成というイメージを持たれている方は多くいらっしゃいますね」
官公署に提出する書類といってもさまざまですよね。例えばどんなものがありますか?
長岡「実はこれがなかなか返答に難しい質問でして。というのも、日本の許認可申請の種類は1万以上あると言われているんです」
い、1万?
長岡「あえて代表的なものを挙げるならば、不動産関係、営業許可関係、建設業許可関係の申請書類になりますね」
例えば、私が飲食店を開業したいと思ったら、飲食店営業許可申請をしなくちゃいけませんが、それを頼めるというイメージですか?
権利義務に関する書類の作成
長岡「そうです。では次に『権利義務に関する書類の作成とその代理、相談業務』ですね」
権利…ということは、遺言書などでしょうか?
長岡「素晴らしい、よくご存じですね! 売買契約や贈与証書、内容証明など、権利を発生、変更、存続、消滅させる意思表示をもつ書類全般を作成することができます」
例えば、何かありますか?
長岡「相続でよく聞く遺産分割協議書などは代表例です。締結されるとすべての相続人が遺産分割協議書の内容に従って遺産を分ける義務を負うことになりますから、とてもしっかり権利が守られる書類ですよね」
合わせて読みたい:公正証書遺言の作成に必要な書類は?作成の流れを行政書士が解説!
事実証明に関する書類の作成
長岡「そして最後が『事実証明に関する書類の作成とその代理、相談業務』です」
事実を証明する書類というのは…なんだろう?
長岡「例えば実地調査に基づく各種図面(位置図、案内図、現況測量図)や相続関係図などが挙げられます」
あれ? このあたりって自分で作成する人もいますよね?
長岡「ご自身で作成もできますが、行政書士が作成すると書類に社会的信用が付きますから、交渉事などもスムーズなんですよ」
なるほど。ありがとうございます。でも、この3つの中のどこにも遺産整理の「い」の字も出てきませんよね? いったいどこに紐づくんですか?
遺産整理業務と行政書士
遺産整理業務に役に立つ相続関係図を例にすると、この書類は「亡くなった人と相続人の関係を示す事実証明」に関する書類となります。
戸籍を取り寄せながら個別に関係を確認して書面に書き起こしていく作業は大変ですが、行政書士であれば戸籍を読み解くことに慣れているので、任せやすいのです。
行政書士ができる相続業務は多種多様
長岡「先ほどの遺産分割協議書も権利義務に関する書類になるんですよ」
遺産分割協議書は、確か遺言がない場合に、相続人全員で遺産の分け方を話し合って、「合意しました」という内容をまとめた書類ですよね。確かに、相続人の遺産に関する権利につながってる!
長岡「もしも相続人同士で争いが起きてしまったら、行政書士は代理して交渉することはできませんが、士業同士の繋がりで弁護士の紹介もできますから、いわばトラブルを回避しやすくなるんです」
なんて心強い!
長岡「また、遺産の範囲を確定させるために重要な財産目録というものもあります。これは、被相続人の財産が存在するという事実を証明する書類です」
合わせて読みたい:遺産分割協議とは?流れとポイントを行政書士が解説
行政書士は遺産整理業務に密接に関連している
前述した通り、行政書士は遺産分割協議書、相続関係図、財産目録の作成を含め、これに関する戸籍請求、金融機関に対する残高証明書の請求などが出来ることから、遺産整理業務に密接に関連しており、従来より業務として出来ると解釈されて来ました。
金融機関の相続手続きは従来から行政書士が対応してきましたよね?むしろ、遺産整理に行政書士が入らない理由が見つからないほど密接しているじゃないですか! いやあ、勉強になりすぎて、うっかりクイズを出すのを忘れていました…。ではここで問題です!
Q:実務レベルの混乱を解消するため、2023年に行政書士に関する見解を発表したのは何省?
A)総務省
B)財務省
C)あんたが大省
遺産整理業務について総務省が通知を出した
正解はAの「総務省」です。実はしれっと冒頭にも答えが書かれていました(笑)
「行政書士は書類を作成するだけの仕事」という誤解から、実務の現場では遺産整理業務に行政書士が関わるのは業務範囲として適切なのかという声もありました。
そこで日本行政書士連合会の要望により、総務省が「遺産整理業務を含む財産管理業務や成年後見人等は行政書士の業務範囲である」という見解を示したのです。
参考:行政書士が業として財産管理業務及び成年後見人等業務を行うことについて
長岡「ですので、行政書士が財産管理業務(遺産整理業務を含む)及び成年後見人等業務を行うことには支障がないという結論に至ったのです」
銀行の相続手続きも行政書士にお任せください
もっとも独占業務というわけではないから、相続人自身でも他の士業でも銀行の相続手続きを含めて遺産整理業務を行うことはできる…わけですか。
長岡「はい。でも、行政書士は街の法律家と言われるくらい、身近な専門家です。相続は亡くなる前から準備しておけばおくほど円滑に進みますので、まずは身近な行政書士に相談するのが、安心ですよ」
長岡さん、ありがとうございました!
この記事を詳しく読みたい方はこちら:行政書士が遺産整理業務を出来る理由を総務省の通知等から解説!