「遺産分割協議が整っていなかったら、相続税の申告はしなくていい?」
「そもそも相続税の申告に期限はあるの?」
「遺産分割協議が終わっていない場合、相続税申告はどうすればいいのか知りたい」
相続人が複数いる場合、遺言書がなければ遺産分割協議が必要となります。
その際、家族間でなかなか話し合いがまとまらず、何年も決着がつかない、なんてケースもあります。
遺産分割協議が整っていないならば、誰が何をもらうかもわからないのだから、相続税なんて支払う必要はないのでは?
その認識はキケンです!相続税の申告は原則として10ヶ月がタイムリミットです!
遺産分割協議が終わらない場合の相続税申告はどうすればいいのか、詳しく解説します。
遺産分割協議とは
遺言書が残されていない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い『誰がどの財産を引き継ぐか』を決めて、相続人全員が同意する必要があります。
相続人全員が同意できず、協議書に署名捺印してもらえないことも意外と珍しくはなく、協議が長引くと預貯金の解約などもできず、相続手続きが進みません。
そして多くの場合、相続税の申告はこの遺産分割協議が確定した状態で行うことが一般的です。
関連記事:遺産分割協議とは|目的や条件・注意点を行政書士が解説!
遺産分割協議が終わっていなくても相続税申告は必要
まず、相続税は、亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告と納税をする必要があります。
しかし遺産分割協議が確定しない場合、各相続人の取り分が決まらず納税額が分からないことから、「申告出来ないのではないか」などと考えてしまう方もいるかもしれません。
もちろん、相続税の申告・納税期限までに遺産分割協議が整わない場合もあるかと思います。
しかし遺産分割協議が整わない場合でも、相続税申告は必要です。
相続税の申告・納税期限までに遺産分協議がまとまらない場合、相続財産を各相続人が民法に規定されている『法定相続分』に従って財産を取得したものと仮定して相続税を計算し、申告・納税することとなります。
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仮に、申告期限後に申告を行った場合、延滞税・無申告加算税のようなペナルティが納付すべき税額に加算されてしまいます。
遺産分割協議が整っていない場合であっても、相続税の申告期限までに申告を行いましょう。
相続税申告期限までに遺産分割協議がまとまらなかったときの手続き
遺産分割協議が整わなかった場合の相続税の申告の流れをご紹介します。
- 法定相続分で分割した申告書を作成する
- 期限後に特例を適用するため『分割見込書』を添付する
- 期限内に相続税の申告・納税を終わらせる
- 3年以内に遺産分割協議を完了する
- 遺産分割協議成立後4ヶ月以内に更正の請求をする
- 更正の請求後3ヶ月〜半年で相続税還付を受ける
それぞれのステップごと、詳しく見ていきましょう。
法定相続分で分割した申告書を作成する
先述したとおり、遺産分割協議が整わなかった場合であっても、相続税の申告は必要となります。
期限は、お亡くなりになったことを知った日の翌日から10ヶ月以内、待ったなしです!
そのため、ひとまず法定相続分で分割したことにして申告書を作成します。
期限後に特例を適用するため『分割見込書』を添付する
相続税申告期限後3年以内に遺産分割協議を整えたうえで再申告をする場合、当初の期限内申告時に『分割見込書』を提出することで、相続税の減税等の特例を受けることができます。
『分割見込書』は国税庁のHPからダウンロードすることができます。
必要事項を記載して、相続税の申告書に添付して提出します。(税理士に相談したほうが安心です)
期限内に相続税の申告・納税を終わらせる
期限内に相続税の申告と納税を済ませます。
減税等の特例が適用できないため、一時的に多額の相続税を納める必要がありますので注意してください。
3年以内に遺産分割協議を完了する
仮の申告と納税が終わったら、遺産分割協議を再開させましょう。
納税が終わってほっと一息・・・かもしれませんが、まだ遺産分割協議が残っています。
相続税申告書に分割見込書を添付した効果で、申告期限後3年以内に分割すれば特例の適用を受けられます。
一時的とはいえ多額の税金を支払っていることを考えると、早めに遺産分割協議を整えて、返金をしてもらいましょう。
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遺産分割協議成立後4ヶ月以内に更正の請求をする
遺産分割協議が整ったら、遺産分割協議が整った日の翌日から4ヶ月以内に、相続税の再計算をして「更正の請求」という手続きを行います。
この手続きが認められれば、税金が戻ってきます。
更正の請求後3ヶ月〜半年で相続税還付を受ける
「更正の請求」をしたらその内容を税務署が確認します。
この手続きには約3ヶ月〜半年ほどかかると言われています。
「更正の請求」が認められた場合、税務署から相続税の更正通知書が届き、その後に還付金が各人の指定した口座に振り込まれて完了となります。
遺産分割協議が終わらない状態で相続税申告した場合のデメリット
遺産分割協議が整っていない場合であっても、相続税の申告は必要です。
しかし、財産が未分割の状態で申告をすると財産の評価額や税額を少なくする特例や制度が適用できなくなるものがあります。
そのため、一般的には実際の税額よりも高くなる場合がほとんどです。
このように未分割で相続税の申告を行うことで生じるデメリットをご紹介します。
軽減や減額の特例が使えないため、相続税が高くなる
相続税は、適用条件に該当する場合に大幅に相続税を減税できる特例があります。
しかし、以下の特例は未分割の場合には使えません。
配偶者の税額軽減の特例
配偶者は取得した財産の1億6,000万円までと法定相続分相当額のどちらか多い金額までは相続税はかからない
小規模宅地等の特例
亡くなった方の自宅の土地などであれば、評価額を最大80%減額できる
関連記事:相続時の「小規模宅地等の特例」とは?土地の評価額が最大80%減額される制度を税理士が解説
これらの特例は、申告期限までに遺産分割が完了していること、相続税申告書を提出することが適用要件となります。
遺産分割協議が終わっていなければこれら特例を利用できないということですから、一時的であっても多額の相続税を払うことは大きなデメリットと言えます。
更正の請求の手続きが必要
遺産分割協議が整ったら、特例を適用した金額で相続税の再計算をして「更正の請求」という手続きを税務署に行います。
この手続きを行うことで、多く支払った相続税が還付されることになるのですが、手続き上の手間がかかります。
相続税の納税資金の調達に困る
配偶者の税額軽減や、小規模宅地等の特例は多くの方が利用できる特例です。
これらの特例を活用して相続税をゼロにすることも多いです。
その一方で、遺産分割協議が整わず、未分割であるがために特例を利用することができず、納税が生じる方もいらっしゃいます。
遺産分割協議が整うまでの一時的なものであり、遺産分割が整えば戻ってくるお金とはいえ、多額の納税を行うために資金調達をしなければならないということは、大きな負担となります。
遺産分割協議が終わらない状態での相続税申告は大変!
遺産分割協議は残された家族の今後の生活に影響するものですから、みんなが納得する形で終結させたいですよね。
財産が未分割の状況で相続税申告をすることもできますが、上述の通り少々複雑です。
適切な知識を持ったうえで手続きを行わないと、使えるはずの特例も使えなくなってしまう可能性もあり、相続人にとって不利な状況になりかねません。
お困りの際は、信頼できる税理士にご相談することをおすすめします。
横浜市の長岡行政書士事務所でも提携している税理士をご紹介することも出来ますので、遺産相続や相続税申告にお困りの方は是非ご連絡ください。