夫婦共同遺言書を見つけたら相続はどうする?夫婦で書く遺言書は無効な理由と対処法を行政書士が解説!

夫婦で書く遺言書は無効?その概要と対策方法を行政書士が解説! 遺言書
遺言書

「父の相続手続をしようと思ったら、母と共同で書いた遺言書が見つかりました。この遺言書は有効なのでしょうか?」
「夫婦で書く遺言は無効になるって聞いたんだけど、いったいなんでなの?」 
「夫婦共同遺言書を見つけたら、相続手続はどうすればいいのでしょうか。できれば親の希望を叶えてあげたいと思うのですが、、

病める時も、健やかなる時も、からスタートした二人。 

最後の事も一緒に考えたいと思う夫婦も多いのではないでしょうか。 

そのため、ご夫婦が揃って遺言書を書くこともあります。ただ、遺言書の要件に気をつけないと、夫婦二人で書いた遺言は無効になってしまいます。  

このコラムでは夫婦で書く遺言がなぜ無効になるのかという理由と、もし夫婦共同遺言を見つけてしまったら相続手続はどうすればいいのか、その対策を横浜市で相続手続をサポートしている行政書士が解説いたします。 

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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共同遺言(2人で一枚の紙に書く遺言)は禁止されている

遺言を書く時、どうせ二人で築いてきた資産だしお互いに隠すこともないからと、夫婦二人で一枚の紙に遺言を書いた方が合理的だよねと考える方もいるかもしれません。 

でもこれ、ダメなんです! 

法律の言葉で二人以上の人が同一の遺言を遺すことを「共同遺言」といい、共同遺言は禁止されています。 

該当する法律の条文を見てみましょう。 

975条 共同遺言の禁止 

遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。 

この条文をみると、夫婦に限らずそもそも遺言は複数人で書いてはいけないということがわかります。 

これはいったいなぜでしょう。 

先程の例のように、本人達が共に築いた財産であるから・・・と納得していれば別にいいような気もしますが。 

さて、ここで遺言の撤回に関する条文を見てみましょう。 

1022条 遺言の撤回 

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。 

この通り、遺言は書いた人がいつでも撤回することができます。 

作成するのも撤回するのも自由意志に基づいて、ということですね。 

あわせて読みたい>>>財産処分によって遺言は撤回される?生前処分による遺言の一部撤回について行政書士が解説

しかし複数人で遺言を書くと、撤回するときに1人で撤回できるのかという問題が生じてしまいます。 

また、二人で遺言を書いたとすると後から書いた人が前の人の遺言内容を見てしまうので、本当に本人の自由な意思に基づいて遺言を書くことができなくなってしまう可能性があります。 

更に可能性として、もう一方の人間に強制されて書いた遺言ではないかと疑われたりすることもあり、完全な自由意志で書いた事が担保できません。 

これら理由により、法律では共同遺言を禁止しています。 

無効になる共同遺言のパターン3種

実は共同遺言にも3種類あります。 

  1. 単純共同遺言  
  2. 双方共同遺言  
  3. 相関的共同遺言 

      これらどのパターンでも「一枚の紙に書いている」という事が共通しています。 

      では、具体的に無効になる共同遺言のパターンを見ていきましょう。 

      単純共同遺言 

      単純共同遺言とは、一枚の紙に複数人で遺言を書くパターンです。 

      例えば、夫Aと妻Bで一枚の紙に遺言を書き、Aは自分たちの資産のうち不動産について書き、Bは預金について書く、といった具合です。 

      AとBで同じ資産に関して書いているわけではないので内容はお互いに独立していますが、遺言としては無効であると判断されています。 

      双方的共同遺言 

      双方的共同遺言は、一枚の紙に複数人が遺言を書き、お互いに遺贈しあうという内容のパターンです。 

      夫婦だと、先に死亡した方が残った方に遺産を相続させる、というような内容が考えられます。 

      こちらも共同遺言なので無効となります。 

      相関的共同遺言 

      相関的共同遺言とは、一枚の紙に複数人が遺言を書き、互いに相手の遺言を条件とするような内容のパターンです。 

      夫婦だとすると、先に夫Aの遺言が何らかの理由で失効したら、妻Bの遺言も失効する、といった内容が考えられます。 

      こちらも共同遺言として無効です。 

      共同遺言になるかどうかの具体例を解説

      「一枚の紙に書いている」という事が共通している各種共同遺言ですが、1枚の紙に書かれていたら必ず無効になってしまうのでしょうか。

      また、夫婦二人で一緒に考えた遺言書だとしても、別々の紙に書けば遺言としてはOKだと言えるのでしょうか。 

      色々なパターンが考えられるので、これより具体例を用いて検討してみましょう。

      実は共同遺言と言ってもすべてが無効となる訳ではありませんので、具体的に見ていきましょう。

      • 同一の紙に書いてあるけど実質一方の財産に関してのみ 
      • ひと綴りになっているが、ページによって名義が違う 
      • 共同遺言で一方の遺言に形式違反がある

      同一の紙に書いてあるけど実質一方の財産に関してのみ 

      (東京高裁昭和57年8月27日判決) 

      一枚の紙に夫婦共同名義で遺言が書かれていたケースです。 

      一枚の紙に書かれていたというだけでもう共同遺言になり無効なのかと思ってしまう方もいるかと思いますが、このケースでは妻がまったく遺言の作成に関与していませんでした。 

      つまり、夫が勝手に妻の名義も使って夫婦名義で遺言を書いたのです。 

      また、遺言の内容も夫の資産に関してのみであり、実質的には夫のみの単独の遺言として扱っても問題なしとの判決が下りました。 

      ひと綴りになっているが、ページによって名義が違う 

      (最判平成5年10月19日) 

      例えば全部で10枚遺言書がホチキスなどで一つに留められていて、1-5枚目までが夫の遺産、6-10枚目までが妻の遺産、というふうに枚数によって分かれているケースです。 

      この場合は切り離すことができるので共同遺言にあたらず、それぞれ夫、妻の遺言として有効となります。

      「切り離すことができれば有効」なので、例えば一つの封筒に夫の遺言書と妻の遺言書が入っていて封筒に封がされていても、共同遺言には当たりません。 

      共同遺言で一方の遺言に形式違反がある 

      (最判昭和56年9月11日判決) 

      では最後に、一枚の紙に書かれた共同遺言でも一方の遺言に形式の不備があった場合を考えてみましょう。 

      共同遺言に当たりそうな場合でも、それが当然に無効になるのではなく内容により判断をするとお話しいたしました。

      今回は夫Aと妻Bで一枚の紙に遺言を書きましたが、妻Bが書いた内容に不備があったとします。 

      遺言には形式が厳しく決められており、不確かな内容、例えば「私の預金の大部分を子にまかせる」と書くと、 

      • 複数の金融機関に預金口座があった場合どの預金の事を指すのか 
      • 大部分とは具体的にどのくらいの割合なのか 
      • 子が複数いた場合、遺産を相続させるのは長男なのか、次男なのか 
      • まかせる、とは処分をしてもらうという意味か、預金を譲る、という意味なのか 

      ざっとみただけでもこれだけの不明点があり、この一文をもって妻Bの遺言は無効となります。 

      それでは、同じ紙に書いていたにしろ妻Bの部分が無効になったので夫Aの遺言のみが有効となり、共同遺言で無効になる事が回避できたと考えてもいいのでしょうか。 

      判例ではこの場合でも共同遺言に該当し、夫Aの部分も無効になると判断しています。 
      (先ほどの東京高裁昭和57年8月27日判決では、夫のみの単独の遺言として夫の自由意志はあったということでした。※妻側はそもそも夫が勝手に妻名義を書いたため無効)

      結果として、妻Bの部分のみの無効があっても、(夫Aの遺言は有効でも)夫Aと一緒に書いた以上、夫Aが本当に自由意志に基づいて書いたかがわからないからです。 
      (実際には妻が氏名を自署していない方式違背がありました)

      夫婦共同遺言が見つかったら相続手続はどうすればいい?

      さて、夫婦共同遺言は無効だと紹介してきましたが、「父の相続手続をしようと思ったら、母と共同で書いた遺言書が見つかってしまった」という場合もあるかもしれません。

      できれば親の希望を叶えて相続手続を進めたいと思う方も多いでしょう。

      夫婦共同遺言書を見つけたら、相続手続はどうすればいいのでしょうか。

      まずはその遺言書が本当に無効なのかどうか判断しなければなりません。先述したとおり、一見「夫婦共同遺言」に見えるとしても、実は有効だということもあります。もし遺言書が有効だと判断されたら、その遺言書に沿って手続しなければなりません。

      一方、「夫婦共同遺言」として遺言書が無効になった場合はどうなるでしょう。すべての相続財産を法定相続分どおりに分割する場合には、その割合に従って相続手続を進めます。

      法定相続分どおりに分割しない場合には、相続財産の分け方を遺産分割協議によって決めます。

      関連記事:遺産分割協議とは|目的や条件・注意点を行政書士が解説!

      遺産分割協議では、相続人全員が合意すれば、自由に財産の分け方を決められます。

      そのため無効と判断されてしまった「夫婦共同遺言」の内容を、相続人に合意のもとに実現していくことも不可能ではありません。(もちろん相続人が話し合って、「夫婦共同遺言」の内容に従わない内容としても問題ありません)

      ※ただしこの場合、遺言書がない場合の相続手続となるため、相続人調査や遺産分割協議の作成など、さまざまな準備が必要となります。

      夫婦共同遺言が見つかった場合も行政書士に相談できる

      これまで学んだ通り夫婦が一枚の紙に遺言を書くと常に無効になるわけではないですが、無効になってしまう不確かさが残り、相続人にとって負担になる可能性があります。 

      夫婦共同遺言が見つかってしまい、相続手続はどう進めればいいのか分からず困っているという方は、ぜひ横浜市の長岡行政書士事務所に一度ご相談ください。

      相続手続の進め方を確認することはもちろん、遺産分割協議書の作成なども承っております。初回相談は無料なので、お気軽に来所予約をご連絡ください。

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      この記事の執筆・監修者
      長岡 真也(行政書士)

      長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
      23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
      当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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