「遺産分割協議書には印鑑登録証明書が必要と知った。証明書に期限はある?」
「印鑑登録証明書は相続手続きのどのような場面で必要になるのか知りたい。」
「印鑑登録証明書を提出するにあたって、知っておくべき注意点はある?」
皆さんは、実印の証明書である「印鑑登録証明書」を取得したことはありますか。相続の手続きを進めるにあたっては、相続人の印鑑登録証明書が必要となる場面が多数あります。そこで、この記事では印鑑登録証明書の期限についての解説を中心に、不動産や銀行手続きなど、証明書使用時の注意点を行政書士が紹介します。
印鑑登録証明書とは
印鑑登録証明書とは、ご自身の印鑑を「本人の実印である」と証明する公的な書類を意味します。
キャッシュレス、ペーパーレス文化の浸透により印鑑を使用する機会は年々減少していますが、相続手続きなどにおいては、まだまだ印鑑が活躍しているため、印鑑登録証明書(以下・印鑑証明書)が必要となる場面があります。
印鑑証明書は公的な証明書であり、ご自身の印鑑をいくつも登録するものではありません。1人につき、登録できる印影は1つに限られます。
印鑑は姓と名のいずれであっても印章にできます。個人の場合、住民票のある市町村役場に登録を行うことで、ご使用中の印鑑を「実印」として証明できるようになります。
印鑑証明書の取得場所
印鑑証明書は、登録した市町村役場の証明書発行サービスに沿って、取得することが可能です。なお、法人実印は管轄が異なり、法務局にて管理されています。
マイナンバーと紐づけが完了していれば、コンビニや外部に設置された証明書発行機でも取得できる自治体が増えています。印鑑証明書は不動産の売買や賃貸契約時などでも使うため、印鑑登録時に取得できる場所を確認することがおすすめです。
なお、横浜市では、マイナンバーがあればコンビニやオンライン申請が可能です。詳しくは以下をご確認ください。(横浜市では市内に印鑑証明書を登録していればどの行政区の役所でも取得可能です)
参考URL 印鑑登録証明書|横浜市
印鑑登録の方法(横浜市の場合)
印鑑を購入したら、自動的に印鑑登録が行われるわけではありません。実印にしたい印鑑があったら、ご自身で登録を行う必要があります。
印鑑が未登録となっている場合は、以下に横浜市の例をご紹介しますので、印鑑登録を行いましょう。
免許証方式
印鑑登録申請書を横浜市電子申請・届出サービスのページ(外部サイト)からダウンロードし印刷、もしくは区役所窓口で取得します。
登録する印鑑と申請書を本人が持参し、免許証などの顔写真がわかる官公署発行の公的証明書を使って区役所にて登録します。
証明書の例
マイナンバーカード(個人番号カード)、運転免許証、日本国旅券、在留カード、特別永住者証明書など
保証人方式
印鑑登録申請書をダウンロードし印刷、もしくは区役所窓口で取得します。申請書の保証人欄に、すでに印鑑登録してある保証人が署名し、登録してある印鑑を押します。
市外で印鑑登録をしている人も保証人になれますが、発行後3か月以内の印鑑証明書も必要になります。免許証方式と同様に、顔写真の入った公的証明書が必要です。
文書照会方式
印鑑登録申請書を印刷、もしくは区役所窓口で取得し、登録する印鑑と申請書を持って、区役所に行きます。窓口に来た人の本人確認書類を提示し、本人あてに照会書を郵送します。
顔写真の無い健康保険証などの証明書しかない場合は、文書照会方式を選択しますが、1週間程度かかるため注意が必要です。
詳しくは以下をご一読ください。
参考URL 横浜市 印鑑登録について
相続手続きにおける印鑑証明書の期限
印鑑証明書は、それ自体に運転免許証のような有効期限があるものではなく、定期更新が必要なものではありません。
では、どうして有効期限に注意する必要があるのでしょうか。
実は、金融機関などは提出先側が、印鑑証明書について「発行から3か月以内」や、「発行から6か月以内」などの使用期限を設けているのです。
つまり登録日の期限ではなく、「発行日からの期限」に注意しなければならないのです。
なお、相続登記では、遺産分割協議書の印影を確認するに留まるため、被相続人の死亡日以降の発行であれば印鑑証明書の期限はありません。発行から3か月以上経過している印鑑証明書でも利用できます。
しかし、売買による所有権移転の手続きを行う場合は、発行から3か月という期限があります。
多くの相続手続きの現場では、それぞれの手続き先ごとに発行期限があるため、相続開始後すぐに取得しても手続きまでに期限を迎えるおそれがあります。
提出を要する段階になってから印鑑登録証明書を用意すると、期限切れの心配がなく安全でしょう。
印鑑証明書が必要となる相続手続き
さまざまな手続きの際に必要とされる印鑑証明書ですが、相続手続きにおいてはどのような場面で必要となるでしょうか。
いくつか例を紹介します。
- 不動産の相続登記や売却時
- 銀行手続き
- 遺産分割協議書の作成
- 相続税申告
- 株式の手続き
- 生命保険金の請求
不動産の相続登記や売却時
遺産に含まれることが多い不動産は、相続登記をする必要があります(令和6年4月1日義務化)
遺産分割協議を行った後に、相続登記を行う場合には、相続人全員の印鑑証明書が必要です。(法定相続分どおりや、遺言書のある相続時には不要)
また、不動産を相続時に売却することにした場合は、所有権を移転するために売り主側の印鑑証明書が必要です。共有状態にある不動産を売却する場合は、共有者全員の印鑑証明書が必要となるため、ご注意ください。
銀行手続き
被相続人が遺した銀行口座に関する手続きにも、印鑑証明書が必要です。遺言書が無い場合、遺産分割協議書の有無を問わず、印鑑証明書が必要とされます。
また、家庭裁判所による調停や審判で相続内容が決まった場合は、調停調書謄本や審判書謄本とともに、相続をする方の印鑑証明書が必要です。
参考URL 一般社団法人 全国銀行協会 教えて銀行 預金相続の手続に必要な書類
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議を終える際には、遺産分割協議書の作成を行いますが、この際に押印するのは相続人全員の実印です。
遺産分割協議書は銀行や株式手続き、その他の財産の手続きなどにも必要となりますが、遺産分割協議書に押されている実印と、印鑑証明書をセットで確認します。そのため、遺産分割協議書の作成の際は、実印を確認するためにも印鑑証明書はセットで用意しましょう。
相続税申告
相続税申告の際に、遺産分割協議書を添付する必要がある場合は、セットで印鑑証明書を用意する必要があります。
株式の手続き
株式の相続手続き時も、遺言書が無い場合は銀行手続きと同様で印鑑証明書が必要となります。複数名で相続する場合は、相続する方全員の印鑑証明書が必要です。
生命保険金の請求
その他、生命保険の死亡保険金請求時などでも、印鑑証明書が求められています。このように相続手続きでは、主に遺産分割協議書があるケースや、財産を金融機関からそのまま引き継ぐ相続人は、印鑑証明書の提出を求められると覚えておきましょう。
印鑑証明書を相続手続きで使うときの注意点
相続時のさまざまな場面で必要となる印鑑証明書ですが、利用時には知っておきたい注意点があります。
- 未成年は印鑑登録できない
- 相続人が海外で暮らす場合は印鑑証明書が取得できない
- 代理人が取得するときは手順が決まっている
- 原本還付できない相続手続きもある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
未成年は印鑑登録できない
印鑑証明書の作成は、法律による年齢制限が設けられており、15歳未満の未成年は登録できません。また、未成年が相続をする際には、法定代理人もしくは特別代理人が手続きをする必要があります。
詳しくはこちらの記事もお読みください:相続人に未成年がいる遺産相続の注意点とは?ポイントと対策を行政書士が解説!
相続人が海外で暮らす場合は印鑑証明書が取得できない
海外に暮らす相続人の場合、印鑑をお持ちでないことも予想されます。また、そもそも住所が海外にある場合、現地に印鑑登録の制度はありません。
この場合、サイン証明書が、印鑑証明書の代用書類として認められています。サイン証明書や在留証明書は各国にある日本領事館や大使館で取得できます。
詳しくは外務省の在外公館における証明をご確認ください。
合わせて読みたい:海外に相続人がいる時は遺言書の用意を!海外居住者の相続手続きについて解説
代理人が取得するときは手順が決まっている
印鑑証明書が必要になっても、取得に出向くことができない場合、代理人は取得できるでしょうか。
結論から言うと、取得は可能です。
そして印鑑登録証と呼ばれるカードがある場合は、委任状が不要です。
しかし、マイナンバーカードは代理人による使用ができないため使用不可です。
さらに郵便局を介した取得はできず、各市区町村の窓口で取得したい印鑑証明書の方のお名前などを正しく記載する必要があります。
原本還付できない相続手続きもある
印鑑証明書は手続き内容によっては、提出後に「原本還付」を希望することができます。たとえば、相続登記時に添付する印鑑証明書は、法務局に原本還付を希望すれば返してもらえます。
しかし、不動産売買による所有権移転時などの場合は原本還付ができない、など手続きによって差異があります。
印鑑証明書は300円程度の価格で取得できるものです。遺産分割協議書がある相続の場合には、多くの手続きに印鑑証明書が必要となるため、取得の際には複数枚の取得がおすすめです。
相続手続きが開始されたら印鑑登録の確認を
この記事では、相続手続きの際に必要となる「印鑑登録証明書」について、期限や銀行、不動産における手続きなどにも触れながら、詳細を解説しました。
身近な公的証明書である印鑑証明書は、相続時には多数使用することがあるため、原本還付ができる手続きも多くなっています。マイナンバーの普及により、コンビニでの取得が可能な市区町村も多くなっていますので、便利なしくみは上手に取り入れましょう。
相続時の必要書類や手続きに関するご不明な点は、お気軽に横浜市の長岡行政書士事務所にお尋ねください。初回相談は無料で対応しており、相続手続きをご依頼いただければ、ご相談者様にご負担のないよう進めさせていただきます。