遺産分割協議をまとめるには、全相続人の合意が必要になります。そして協議で決まったことを書面でまとめ、合意の証拠にしていきます。
そのため、遺産分割協議完了後に問題があったとしても一般的に一度遺産分割協議で決定した内容を覆すのは、簡単なことではないと考えられています。
今回は遺産分割協議完了後に問題があった場合の一方的に解除できるのかを「報道ニュース風」に解説します。
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皆様、こんばんは。社会の構図をわかりやすくお届けするニュース番組「報道小路」のお時間です。アナウンサーの西園寺遺子です。
この西園寺がさまざまな現場を徹底的に取材しており、この合成皮の手帳、通称、白革の手帳にまとめておりますのでご期待ください。
本日の特集は「遺産分割協議は一方的に解除できるのか」です。
遺産を誰が受け継ぐのか…遺産分割協議の進み方によっては、自分が受け取る財産や、あるいは受け取りたくない借金の返済義務まで決まってしまうので、注意が必要です。
もし協議の内容に納得できなかったら「異議あり!こんな協議は認めない!」となって紛糾してしまうことになります。
そこで本日はコメンテーターとして、遺産分割協議研究家の文花キョウジさんにお越しいただき、遺産分割協議を解除することができるかどうかを調べていきましょう。
文花「よろしくお願いします」
では、早速まいりましょう。いつものセリフでスタートです。
「私、調べましたけど!」
遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、遺言書が残されていない場合、相続人が集まって遺産の配分などを決めていく協議のことです。遺産分割協議をすみやかに行わないと、相続税の支払いに悪影響が出るなどするため、注意が必要です。
遺子「そもそも遺産分割協議がどんなものかを先にお伝えしておきましょう。簡単にフリップにまとめていますので、こちらをご覧ください」
- 遺言がない場合、遺産を誰に渡していくかを協議する(遺言がある場合でも協議をすることはある)
- 相続人全員で協議し、全相続人が合意する必要がある
- 遺産分割の内容が確定するまで、遺産は相続人の共有状態にある
- 遺産分割の内容に合意できたら、遺産分割協議書を作成する
- 遺産分割協議書にしたがって遺産の名義変更を行うなど、相続内容を実行する
文花「そうですね、ここまでは一般的な遺産分割協議の流れですね。ポイントは相続人が全員で協議して決めるということでしょう。だからこそ、決定には重みがあります」
遺産分割協議は一方的に解除できるのか?
遺子「ではここで、本日のテーマである遺産分割協議は一方的に解除できるかどうかを議論していきましょう」
文花「議論も何も、原則としては解除できませんよ。そうホイホイ解除されたら、相続人も集まり損じゃないですか」
遺産分割協議は一方的に解除できない
遺子「そうなんですよね。でも、場合によっては内容に不満があるため、遺産分割協議で決まったことを実行しなかったり、協力しなかったりすケースもあるようなんです」
文花「ある種のストライキみたいなもんですね」
遺子「でも実はこれ、民法で規定があるんですよね」
民法541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
文花「この条文の意味は、やるべきことを…」
遺子「やるべきことをやらない人には、『ちゃんとやってよね』と催促し、それでもダメなら『もうあなたはどっかにいって』というわけです」
文花「…(セ、セリフ泥棒…)でもですよ、この条文、遺産分割協議の解除で使えるんですか?」
遺子「確かにこの条文だけでは、遺産分割協議の解除につなげるのは難しいです。判例はこのように述べていますから」
最高裁平成元年2月9日判決
共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであつても、他の相続人は民法五四一条によつて右遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。
遺産分割協議は相続人全員の合意で解除できる
遺子「ただし、これは一方的な解除がダメといっているだけでしてね」
文花「ん? どういうことです?」
遺子「相続人全員が合意をして解除するのなら問題ないわけなんです」
文花「なるほど、確かに遺産はそもそも共有状態になっている遺産をどうするか、という当事者問題だ。当事者全員が成立させたものを、当事者全員が解除するならわかる話ですね」
遺産分割協議の取消や無効は主張できる?
遺産分割協議では、当事者の事情によっては、取消や無効を主張できることがあります。しかし、方法によっては主張の難易度が高くなるので、注意が必要です。
遺産分割協議は取消できる
- 騙されたり、脅迫されて合意した場合→取消を主張できる
- 勘違いで合意してしまった場合→取消を主張できる
- 相続人の1人が認知症で内容を理解できていなかった→最初から協議がなかったものになる(無効になる)
文花「勘違いしてはいけないのは取消と無効の違いですね。無効の場合は最初にさかのぼって『そもそもなかった話』になりますから」
遺子「そうですね。でも解除や取消をするうえで、注意をしなくてはいけないこともあります。では、恒例のセリフ、文花さんもご一緒にお願いします」
遺子・文花「私、調べましたけど!!!」
遺産分割協議の取消をするときの注意点
遺子「遺産分割協議の解除や取消をするときに注意するポイントは、この3つです」
贈与税発生のリスク
解除後に再協議し、遺産が自分から他の相続人のものになると、相続人間で贈与や譲渡が起こったと解釈される
→金額によっては贈与税がかかることに
不動産の登録免許税
再協議によって所有権を移転した財産が不動産だったら、不動産取得税、登録免許税がかかることになる
→最初の移転と再移転で二重に登録免許税がかかることに
再度の協議によるトラブル等のリスク
協議を重ねると以前にはなかったトラブルが起きたり、新しい協議が成立しないという可能性も
遺産分割協議でお困りの方は行政書士にご相談ください
相続人全員で合意した遺産分割協議のやり直しを求めることはかなりハードルが高いです。当然、権利としては取消を主張していけるわけですが、実際に出来るかどうかは別問題です。
遺産分割協議をやり直さないためにも、初めから行政書士などの専門家に依頼することも大事です。
文花「結論的には、やはり最初にしっかりと話し合って分割をするってことになるわけですよね」
遺子「そうですね。安易に合意したり、適当に話し合うようなことはせず、法律の専門家のサポートを得ながら真摯に向き合うのが一番ですね。文花さん、ありがとうございました」
本日もお読みくださりありがとうございました、相続でお困りごとがありましたら横浜市の長岡行政書士事務所までお気軽にご連絡ください。
この記事を詳しく読みたい方はこちら:遺産分割協議は一方的に解除ができる?行政書士が内容や注意点を解説!