喪主を任されたとき、多くの方が最初に感じるのは「何から手をつければよいのか分からない」という戸惑いです。時間の猶予がないまま、次々と判断を求められます。
喪主が決めることは、大きく2種類に分かれます。葬儀に関する決定と、相続に関する決定です。この2つは求められる知識も期限もまったく違い、担当者を同じ人にする必要はありません。
この記事では、喪主が決めることと実際に動くことを時系列で整理し、葬儀後の手続きの期限まで一覧にまとめました。喪主が相続手続きの担当者を兼ねるとは限らない、という前提を先に押さえておくと、負担の設計がしやすくなります。
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喪主とは|施主・代表相続人との違い
喪主という言葉は日常的に使われますが、似た立場と混同されがちです。役割を分けて理解しておくと、誰が何を引き受けるかを家族で相談しやすくなります。
喪主・施主・代表相続人はそれぞれ別の役割
3つの立場は、担う仕事がはっきり異なります。
- 喪主:葬儀の主宰者です。遺族の代表として弔問を受け、挨拶をし、葬儀の方針を決めます。
- 施主:葬儀費用を負担する人を指します。もともとは僧侶へお布施をする人という意味で、費用の出どころを表す立場です。
- 代表相続人:相続手続きの窓口となる人です。金融機関や役所とのやり取りを代表して行います。
個人葬では喪主と施主を同じ人が兼ねるケースが多いものの、制度上は別の役割です。高齢の配偶者が喪主を務め、費用は子が負担するという分け方も成り立ちます。代表相続人はさらに性質が違い、葬儀とは切り離して決められます。
喪主の決め方に法的なルールはない
喪主を誰にするかについて、法律の定めはありません。慣習として配偶者が務め、配偶者が高齢や体調不良の場合は子が引き受ける流れが一般的です。
故人が遺言やエンディングノートで希望を残していれば、その意向を尊重するとよいでしょう。法的な拘束力はありませんが、親族間で意見が分かれたときの判断材料になります。
喪主が決めること|葬儀の方針
喪主の負担が重く感じられる理由は、作業量よりも短時間で判断を積み重ねなければならない点にあります。そこで、あとから変更しにくい判断だけを先に整理します。次の4つを決めてしまえば、残りの実務は葬儀社と一緒に進められます。
葬儀の形式を決める
最初に決めるのは葬儀の形式です。規模はあとから広げにくいため、優先して判断すべき項目になります。一般葬は職場や近隣の方まで招く形、家族葬は親族と親しい方に限る形、一日葬は通夜を省いて葬儀・告別式のみ行う形、直葬(火葬式)は儀式を行わず火葬のみとする形です。
判断の軸は、故人の交友関係の広さと、参列を希望する方の見込み人数です。会社勤めが長く付き合いが広い方の場合、家族葬にすると後日の弔問が連日続き、かえって遺族の負担が増えることがあります。
安置先を決める
病院で亡くなった場合、霊安室に安置できる時間は数時間程度に限られるため、搬送先を早い段階で決める必要があります。選択肢は自宅か、葬儀社の安置施設です。
自宅安置は故人と過ごす時間を長く取れる一方、寝台車が入る搬入経路やご遺体を寝かせるスペース、ドライアイスの交換に立ち会う人が必要になります。集合住宅でエレベーターに入らない、日中に人がいないといった事情があれば、安置施設のほうが現実的です。
葬儀社を決める
病院で紹介された業者にその場で決めてしまうと、比較の機会を失いがちです。安置施設へ一時搬送してから、落ち着いて2社ほど見積もりを取る進め方もできます。
見積書では、総額よりも何が含まれていないかを確認してください。火葬料、式場使用料、ドライアイスの追加分、返礼品、僧侶へのお布施は、プラン料金の外に置かれていることがあります。追加費用が発生する条件を書面で示せるかどうかも、判断材料になります。
参列者の範囲と訃報連絡先を決める
連絡する範囲を先に決めておかないと、後日「知らせてもらえなかった」という行き違いが起こります。親族、故人の友人・知人、勤務先、近隣という4つの区分で名簿を作り、それぞれ「通夜・葬儀に案内する」「事後に報告する」のどちらかを割り振ると整理できます。
家族葬にする場合は、訃報の文面に参列や香典を辞退する旨を明記してください。書き添えておくことで、相手に判断を委ねる負担をかけずに済みます。
喪主がやること|時系列チェックリスト
ここからは、実際の流れを3つの段階に分けて確認します。項目の先頭に[喪主]と[葬儀社]の区分を付けました。喪主本人が動く必要があるものと、葬儀社が主導するものを見分けるための目印です。
臨終直後〜24時間以内
- [喪主]医師から死亡診断書を受け取る
- [喪主]葬儀社を決めて連絡する
- [葬儀社]寝台車を手配し、安置先へ搬送する
- [喪主]近親者へ訃報を伝える
- [喪主]菩提寺へ連絡し、僧侶の都合を確認する
- [葬儀社]死亡届を提出し、火葬許可証を受け取る(代行できる場合が多い)
- [喪主]葬儀の形式・日程・式場を決める
- [喪主]遺影に使う写真を選ぶ
この段階でつまずきやすいのは、菩提寺への連絡です。僧侶の都合が葬儀日程を左右するため、式場の空き状況と並行して確認を進めてください。
通夜・葬儀当日
- [喪主]受付と会計の担当を親族に依頼する
- [喪主]弔問を受け、参列者へ挨拶する
- [喪主]通夜と出棺前の挨拶を述べる
- [葬儀社]式の進行、返礼品と料理を手配する
- [喪主]僧侶へお布施を渡す
- [喪主]火葬場へ同行し、収骨に立ち会う
当日の喪主は、席を離れられない時間が長く続きます。受付と会計は必ず別の親族に任せ、現金の管理は2人以上で行う体制にしておくとよいでしょう。
葬儀後〜四十九日
- [喪主]葬儀費用を精算する
- [喪主]香典を集計し、香典返しを準備する
- [喪主]勤務先や関係先へ挨拶する
- [喪主]四十九日法要の日程と会場を決める
- [喪主/葬儀社]納骨の準備を進める
区分を見比べると分かるとおり、手を動かす実務の多くは葬儀社が担います。喪主が本当に抱えるのは、判断と挨拶、そして親族への役割の割り振りです。
喪主が葬儀費用を負担するときの注意点
費用の話は、相続と絡むと判断が難しくなります。ここでは要点だけを押さえます。
葬儀費用は誰が払うのが原則か
葬儀費用の負担者について、法律に明文の規定はありません。慣習としては喪主または施主が負担し、相続人で分担するケースもあります。
葬儀費用は死亡後に発生した債務であるため、原則として相続財産そのものではないと整理されています。ただし相続人全員の合意があれば、遺産から支出したうえで遺産分割協議書に記載する方法も取れます。
詳しくは葬儀費用は遺産分割協議書に記載できると葬儀代は遺産から払えるのかの解説をご覧ください。
故人の預貯金から出す場合と相続放棄の注意
故人の口座は死亡が金融機関に伝わった時点で凍結されます。遺産分割前でも一定額を単独で引き出せる仮払い制度(民法第909条の2)があり、上限は預貯金額×3分の1×法定相続分と1金融機関あたり150万円のいずれか低い額です。
注意が必要なのは、相続放棄を検討している場合です。社会的に相当と認められる範囲の葬儀費用であれば単純承認には当たらないと解されていますが、身分不相応に盛大な葬儀は判断が分かれます。
事案ごとの評価になるため、領収書と明細を必ず保管し、支出前に専門家へ確認してください。判断基準は遺産から葬儀費用を払うと相続放棄できないのかで詳しく解説されています。
喪主と相続手続きの担当者は分けてよい
喪主を引き受けた人が、そのまま相続手続きまで抱えてしまう例は少なくありません。しかし両者は切り離せます。
代表相続人とは何をする人か
代表相続人は、法律で定められた役職ではありません。相続人が複数いる場合に、手続きを円滑に進めるため便宜上置く窓口です。
担うのは、金融機関での払戻し手続き、固定資産税の納税通知書の受け取り、相続税申告の取りまとめ、相続登記の段取りなどです。手間が増えても相続分は変わらず、相続放棄をした人は代表相続人になれません。
役割の詳細は代表相続人とはの解説が参考になります。
喪主が高齢・遠方の場合の分担例
実務では、名目上の喪主と実務担当を分ける形がよく機能します。
たとえば80代の配偶者が喪主として挨拶と弔問対応を務め、同居する長男が代表相続人として金融機関と役所の手続きを進め、次男が葬儀費用の精算と香典の集計を受け持つ、という分け方です。
分担を決めたら、誰が何を担当するかを簡単な書面に残してください。口約束のままだと、後になって費用負担や進捗の認識がずれ、親族間の不信につながります。
葬儀後の手続きと期限
葬儀が終わってからの手続きには、それぞれ期限があります。起算日が「死亡日」のものと「相続の開始を知った日」のものが混在するため、一覧で確認しておくと取りこぼしを防げます。
- 7日以内:死亡届を提出します(戸籍法第86条。死亡の事実を知った日から起算)
- 10日以内:厚生年金の受給権者死亡届を提出します
- 14日以内:国民年金の受給権者死亡届、国民健康保険証の返却、世帯主変更届を行います
- 2年以内:葬祭費・埋葬料を申請します(横浜市の国民健康保険は5万円。葬祭を行ってから2年で時効)
- 3か月以内:相続放棄または限定承認を家庭裁判所へ申述します(自己のために相続の開始があったことを知った時から起算)
- 4か月以内:準確定申告を行います(相続の開始があったことを知った日の翌日から起算)
- 10か月以内:相続税を申告・納付します(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から起算)
なお年金については、日本年金機構にマイナンバーが収録されている方であれば、受給権者死亡届の提出は原則として不要です。未支給年金の請求は別途必要になります。
実質的な最初の山は3か月の相続放棄です。四十九日を終えた頃には残り2か月を切っているため、葬儀が済んだ段階で相続の見通しだけでも立てておくと安全でしょう。財産と債務の全体像がつかめない場合は、家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てる方法もあります。
喪主のやることに関するよくある質問
喪主は一人でなければいけませんか
一人が原則ですが、複数で務めることもできます。子が兄弟で連名の喪主となるケースは実際にあります。
その場合は、挨拶を述べる代表者と、会葬礼状に名前を載せる順序を先に決めてください。当日の判断を誰が下すかを明確にしておかないと、進行が止まる場面が生じます。
香典返しをしないとどうなりますか
香典返しに法的な義務はありません。四十九日の忌明け後に贈るのが一般的ですが、当日に会葬御礼と合わせて渡す方法も広く行われています。
先方から香典を辞退された場合や、故人の遺志で寄付に充てる場合は、お礼状で報告するだけでも失礼にはあたりません。
菩提寺が分からない場合はどうすればよいですか
まず親族に確認し、仏壇の位牌や過去帳、お布施の控え、墓地の管理者名を手がかりに調べてください。
それでも分からないときは、葬儀社に僧侶の手配を依頼できます。ただし後から菩提寺が判明すると、納骨や戒名の扱いで折り合いがつかなくなることがあります。手配を頼む前に調べ切っておくほうが安全です。
まとめ
喪主がやること・決めることを整理すると、次の5点に集約されます。
- 喪主は葬儀の主宰者であり、費用を負担する施主、相続手続きの窓口となる代表相続人とは別の役割です
- 先に決めるべきは、葬儀の形式、安置先、葬儀社、参列者の範囲の4つです
- 当日の実務は葬儀社が主導するため、喪主が抱えるのは判断と挨拶、役割の割り振りです
- 故人の預貯金から葬儀費用を出す場合は、相続放棄との関係に注意が必要です
- 葬儀後は3か月・4か月・10か月という相続の期限が続きます
葬儀は葬儀社が支えられますが、相続は専門家の領域です。相続放棄の判断や遺産分割協議書の作成でお悩みがあれば、早い段階で相続の専門家へご相談ください。

