「亡くなった父がネット証券の口座を複数持っていたようだ。どのように相続すればいいだろう」
「ネット証券口座は店舗がないし、どのように相続するのか詳しく知りたい」
日本国内では証券会社は大きく2つに分けられます。1つは従来の店舗型、そしてもう1つが店舗を持たないネット型です。ネット証券はインターネット上で口座の開設や運用などを行うため店舗を持たず、手軽に運用できるため人気があります。
では、もしもネット証券の口座をお持ちの方が亡くなられた場合、相続手続はどのように進めるのでしょうか。本記事では基本的な手続きの流れやよくある疑問を行政書士がわかりやすく解説します。
ネット証券の相続手続の特徴とは
ネット証券の相続手続には、以下の特徴があります。
- 店舗がないためネットや電話で問い合わせる
- 郵送で書類を送ることが基本
まず、ネット証券上の口座を相続する際には、原則対面での手続きができません。分からないことがあっても、担当者に面と向かって聞けないため、手続に慣れていない方は戸惑うこともあるでしょう。
また、ネット証券は、株式取引などはスマートフォンだけで完結することが多いものの、相続手続はオンラインで完結しません。戸籍謄本や印鑑証明書など必要書類は、郵送を求められるケースも多いです。
このため、ネット証券の相続手続には、意外と手間・時間がかかるケースが多いのです。実際、手続がスムーズに進まず、困っている方もいるのではないでしょうか。
ネット証券の相続手続で必要となる書類
さて、ネット証券の相続手続でとくに混乱しやすいポイントが、「必要となる書類が多い」ことです。
また、相続の状況によって、特別に必要とされる書類もあります。
そのため、「証券会社のホームページを見たけどよく分からない」と感じてしまうかもしれません。
ここからは、ネット証券の相続手続でどのような書類が必要になるのか、全体像を把握しましょう。
基本的に必要となる書類
ネット証券の相続手続では、会社や状況を問わず、基本的に提出を求められる書類があります。たとえば次のような書類です。
- 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの一連の戸籍謄本等
- 法定相続人全員の戸籍謄本
- 法定相続人全員の印鑑登録証明書(発行から6か月以内)
ただし、法務局で「法定相続情報一覧図」を取得していれば、大量の戸籍謄本類の代わりにこの書面1枚を提出するだけで済むケースがほとんどです。とくに他の金融機関の手続きも
並行して行う場合は、「法定相続情報一覧図」を用意しておくと便利です。
参考:法定相続情報一覧図とは?作成方法(申請方法)やメリット・注意点を行政書士が解説!

また、各証券会社ごとに用意されている「相続手続依頼書」も、どのような状況でも求められます。
状況別に必要となる書類
相続の状況(遺言の有無など)に応じて、上記の基本書類に加えて、追加書類を求められます。
ここからは、下記の状況別に、必要とされる書類の例を見ていきましょう。
- 遺言書があるケース
- 遺言書内で遺言執行者が指定されているケース
- 遺産分割協議を行うケース
- 後見人・特別代理人などが必要なケース
遺言書があるケース
遺言書がある場合は、遺言の形式に応じた以下の書類が必要です。
自筆証書遺言の場合: 裁判所の「検認済証明書」がついた遺言書の写し(法務局の遺言書保管制度を利用している場合は検認不要、遺言書情報証明書を添付)
公正証書遺言の場合: 遺言公正証書の写し
遺言書内で遺言執行者が指定されているケース
遺言書の中で、「遺言執行者」という、遺言の内容を実現する人が指定されていることがあります。
この場合、先述した「遺言書があるケース」で必要な書類に加えて、「遺言執行者の印鑑登録証明書」も必要となるケースが多いです。
遺産分割協議を行うケース
遺言書がなく、相続人同士で話し合い、誰がどの株式を相続するかを決めた場合は、遺産分割協議書の写し(相続人全員が実印で押印しているもの)が必要です。
後見人・特別代理人などが必要なケース
相続人の中に自分で適切な判断をすることが難しい方や、利害が対立する関係者がいる場合は、以下の証明書類が求められます。
成年後見人がいる場合: 「登記事項証明書(後見人の権限を証明するもの)」および後見人の印鑑登録証明書(発行から6か月以内)
未成年者と親権者が共に相続人となる場合: 利益相反(※)となるため、家庭裁判所で選任された「特別代理人の選任審判書」および特別代理人の印鑑登録証明書(発行から6か月以内)
利益相反とは
例として、父が亡くなり、相続人が母と未成年の子どもで、母が親権者として子どもを代理する場合を考えてみます。このとき母は「自分自身の相続人」としての立場と「子の代理人」としての立場を同時に持ちます。遺産が1,000万円ある場合、母が多く取得すれば子どもの取り分は少なくなり、反対に子どもの取り分を多くすれば母の取り分は少なくなります。母が子どもを代理して遺産分割を行うと、子どもの利益が十分に守られているかわからないため、家庭裁判所で「特別代理人」を選任する必要があります。
ネット証券の相続手続の流れ
それでは、ネット証券の相続手続の流れについて、概要を見ていきましょう。
- どこのネット証券口座を持っているか確認する
- ネット証券会社に被相続人の死亡の事実を伝える
- 郵送で必要書類を送ってもらう
- 必要書類を整えて返送する
- 引継ぎ用の証券口座を相続人が開設する
- 株式移管手続を行う
1.どこのネット証券口座を持っているか確認する
まずは被相続人がどこのネット証券に口座を持っていたかを特定します。手がかりとなるのは、自宅に届いている年間取引報告書などの郵送物、パソコン・スマホのメール履歴(証券会社からのメルマガや取引完了通知など)です。
【手がかりがない場合は「ほふり」を利用】
証券口座の有無がわからない場合は、証券保管振替機構(通称:ほふり)に対して「登録済加入者情報の開示請求」を行うことで、被相続人が口座を開設していた証券会社名の一覧を調べることができます。
ただし、振替株式等の銘柄名、取引履歴、非上場株式のうち機構取扱対象でないもの、外国株式、国債等の口座が開設されている証券会社、信託銀行等の一覧は確認できないためご注意ください。
参考:証券保管振替機構(ほふり)は相続手続でどう活用する?開示請求の流れを行政書士が解説!

2.ネット証券会社に被相続人の死亡の事実を伝える
口座が判明したら、各証券会社のカスタマーセンター(相続専用ダイヤル)や、WEBサイトの「相続手続受付フォーム」から、名義人が亡くなった旨を連絡します。この時点で、該当の口座は売買ができないよう凍結されます。
3.郵送で必要書類を送ってもらう
連絡後、数日から1週間ほどで、証券会社から「相続手続依頼書」や「手続の手引き」といった案内書類一式が自宅に郵送されてきます。
必要な書類は各証券会社によって異なることもあるため、複数の口座があった場合は特に注意しましょう。
4.必要書類を整えて返送する
届いた書類に必要事項を記入し、実印を押印します。
戸籍謄本などや印鑑証明書などの添付書類と合わせて、同封の返信用封筒で証券会社へ返送します。 漏れがあると再送が必要となってしまうので十分注意しましょう。
5.引継ぎ用の証券口座を相続人が開設する
上場株式などを相続する場合、相続人の口座を用意する必要もあります。
例として、楽天証券の場合、これまで相続人名の口座がなかった場合は、被相続人の株式等を相続するために楽天証券上で口座を開設しておく必要があります。完了に向けて、口座の開設も進めましょう。
関連記事:楽天証券の相続手続はどうする?行政書士が流れや必要書類を解説!

関連記事:SBI証券の相続手続はどうする?必要書類や流れを行政書士が紹介!

6.株式移管手続を行う
ネット証券会社側で提出書類の審査が完了すると、被相続人の口座から相続人の口座へと、株式や投資信託の移管データが書き換えられます。
移管が完了すればネット証券の相続手続は終了です。移管後は、相続人が自身の判断で売却して現金化することも可能になります。
ネット証券の相続手続に関するよくある疑問
ネット証券は実店舗の窓口がないため、原則担当者と対面で相談しながら手続きを進めることができません。そのため、「書類の書き方が合っているか不安」「独自のルールがあるのでは」と、戸惑いや疑問を抱えてしまう方も少なくありません。
特に初めて相続手続を経験される場合は、聞き慣れない専門用語に直面して身構えてしまうこともあるでしょう。本章では、ネット証券の相続手続において、多くの方が迷いがちな代表的な疑問をピックアップし、注意点とともにわかりやすく解説します。
ネット証券の相続手続にはどのくらいの期間がかかりますか
ネット証券の相続手続は書類を返送してから、およそ2週間〜1ヶ月程度が完了までの目安です。ただし、これは書類に不備がなかった場合の期間です。
戸籍謄本の不足や、印鑑の鮮明さ、記入漏れなどがあると、書類の再送・再提出が発生し、さらに時間がかかることがあります。また、複数の証券会社に口座がある場合は、それぞれで並行して手続きを行うため、全体の収集・管理に数ヶ月を要することも少なくありません。
相続すると株式の名義変更が必要ですか
名義変更が必要です。亡くなった方の口座名義のまま株を保有し続けたり、売却したりすることはできません。
相続人の口座へ株式を移す手続きを行う必要があるため注意しましょう。
NISA口座の名義人が亡くなったらどうすればいいですか
原則として、亡くなった時点の時価で「課税口座(特定口座または一般口座)」へと払い出されます。
非課税のメリットがあるNISA口座ですが、名義人が亡くなった場合は非課税のまま相続人が引き継ぐことはできません。また、相続人が受け取る際の取得価額(元手となる株価)は「亡くなった日の時価」となります。
手続きの際には「非課税口座開設者死亡届出書」などの書類をあわせて提出する必要があります。
関連記事:NISA口座は相続できる?亡くなった後に家族がやるべき手続きを行政書士が解説

ネット証券の相続手続を行政書士に相談するメリット
相続手続は複雑で、時間を要することも多いです。そのため、もし次の点に魅力を感じる場合は、ぜひ行政書士へ相談することも検討してみてください。
- ネット証券以外の相続手続もまとめて相談できる
- 必要書類の収集もサポートしてくれる
それぞれ詳しく解説します。
ネット証券以外の相続手続もまとめて相談できる
ご家族が亡くなった後は、葬儀の準備や法要、各種役所への届け出など、短期間にこなさなければならないことが山積みです。それに加えて、各種相続手続も進める必要があります。
また、被相続人の相続財産はネット証券だけとは限りません。銀行口座や不動産、保険など多岐にわたることが一般的です。このため、相続人がなかなか日常に戻れず、困ってしまうケースが多いのです。
しかし行政書士に依頼すると、ネット証券だけでなく、各種相続手続を一括してサポートしてもらえます。
横浜市の長岡行政書士事務所も相続手続を包括的にサポートしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。私たちの事務所で取り扱えない分野の手続は、提携している弁護士、税理士、司法書士、社会保険労務士、土地家屋調査士等をこちらの責任で手配いたします。
相続手続のお悩みは
横浜市の長岡行政書士事務所
対応エリア:横浜市・神奈川県全域・東京23区
平日9:00~21:00(土日祝日予約制)
必要書類の収集もサポートしてくれる
相続手続において手間と時間がかかりやすいのは「亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本」など必要書類の収集です。これらの書類はネット証券口座の手続き以外にも必要となります。
遠方の本籍地から郵送で取り寄せたり、古い改製原戸籍を読み解いたりする作業は、慣れていない方には大変な労力が必要です。行政書士は、職権でこれらの複雑な戸籍収集を代行できるため、集め漏れや書類不備のリスクを減らせます。
関連記事:なぜ相続手続きでは戸籍謄本が必要?理由や注意点を行政書士が詳しく解説!

ネット証券の相続手続は行政書士へ相談できる!
ネット証券の相続手続は、窓口で直接担当者に質問ができない分、書類の正確性や事前の口座開設といった手順の中で漏れがないように準備することが重要です。
しかし、慣れない手続を自分で対応するのは難しい、と思う方もいるでしょう。
横浜市の長岡行政書士事務所では、ネット証券をはじめとする複雑な金融機関の相続手続から、戸籍の収集、遺産分割協議書の作成までトータルでサポートしています。もし相続手続で何かお困りのことがある場合は、まずはお気軽にご相談ください。


