「遺言には何を書くことができるの?」
「自分の気持ちを遺言に書いてもいいの?」
「遺言の付言事項って何?どんなことを書けばいいの?」
遺言は法的な行為であって、定められた形式に沿って行う必要があります。また、書くことのできることも決まっています。
しかし、では一体何を書くことができるのかはあまり実際に把握されていないのではないでしょうか。
例えば、遺言には自分の気持ちを書くこともできるのでしょうか。
今回はそんな遺言書にはどんなことまで書けるのかというお話をしたいと思います。
遺言書の法的効果
遺言書には書くことによって法的に効果を発揮するものと、法的に効果を発揮しないものがあります。
つまり、書くことによって権利義務が決定してしまうものとそうでないものが分かれている、ということです。
最初に、遺言のうち法的に効果のあるのはどの範囲かを確かめてみたいと思います。
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相続に関する事項
例えば相続分を指定したり、遺産分割の仕方を指定したり、あとは例えば自分に対して虐待などをした相続人を廃除したりと、誰が相続するか、どう相続するかを決めることができます。
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相続以外の財産の処分に関する事項
相続以外では、やはり遺贈が一番有名だと思います。「相続人以外の人でもお世話になったから、遺産を受け取ってほしい」と遺産を家族でもない第三者にあげてしまうのが遺贈です。
こちらも記入することによって法的な効力を発揮します。
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身分に関する事項
たとえば遺言によって「ある人を自分の子と認める」認知という行為ができたりします。
相手の身分を認めてあげると、それで子となり、相続に影響がありますから重要な行為だといえます。
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遺言の執行に関する事項
遺言があっても、現実にそれを実現する人が必要です。
そうやって遺言内容に沿って現実に土地を売ってお金を相続人に分配したりする人を遺言執行者と言いますが、遺言でその執行者を指定することができます。
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法定遺言事項以外は付言事項
大まかに言えば遺言書の付言事項とはそうやって権利義務に直接関わることではなく、いわば単なるメモ書きやメッセージのようなものになります。
決定的な違いは法的効果がない
先ほどまで見てきた事項と付言事項の決定的な違いは、法的効果がないことです。書いてあるからといって、それが何か相続人やそれ以外の人の権利義務に影響を与えるわけではありません。
これが一番大きな違いとなります。
付言事項は任意に書ける
付言事項によく書かれるのは、やはり家族に対する気持ちや葬儀やお墓に関することなどです。
どちらかといえば、現在の気持ち、あるいは自分が亡くなったあとの事実関係をどうするか、という感じです。
付言事項の書く内容は任意なので、特に所定の記載方法がある訳ではありません。
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シンプルかつ明確に書く
遺言書の重要な点は、やはり相続に関するものなど法的効果がある部分です。ですので、あまり長く付言事項ばかり書いてあると、遺言書自体が長くて、感情的、かつ曖昧なものになってしまい、わかりづらい遺言書になってしまいます。
付言事項がつけられるからといって思ったままに書くのもよくないかもしれません。
エンディングノートと付言事項
最近ではエンディングノートというものも流行っています。遺言書の付言事項とエンディングノートは、権利義務に直接関係のないことを記していく、という点では変わりがありません。
それでも両者とも性質の違いがありますので、少し比べてみましょう。
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付言事項は付け加えて書くという感覚
付言事項はどちらかといえば付け加えて書いておくという感覚です。遺言の主役はやはり、相続や遺贈、または遺言執行者に関することであって、多くの場合は付言事項ではないでしょう。
付言事項に書くようなことは別に、遺言書以外に記しておけばいいので、遺言書を作る際、「そういえばこれも言っておいた方がいいな」という感覚で付け加えるのが一般的です。
エンディングノートの方が自由度が高い
エンディングノートの方が自由度が非常に高いです。
例えば付言事項はあくまでも遺言書内で書くことですから、絵を描いたりすることはできません。
しかしエンディングノートなら絵を描いてもよし、詩を書いてもよし、とにかく自由に表現ができる場所になります。
本当に書きたいことがあるのなら、何冊作っても構いません。やはり人生の最期に遺すものですから、エンディングノートで納得のいくまでやってみてもいいでしょう。
伝えたいことがシンプルなら付言事項でも十分
たとえば葬儀はこうして欲しい、とか、遺産に関してこの人に多く残したのはこんな理由ですよ、とかのように伝えたいことがシンプルでそれほどの量がないのなら付言事項でも充分でしょう。
そのような点は自分の気持ちや考えと折り合いをつけて、遺言書のみでいくかエンディングノートまで作るかを決めればよいと思います。
付言事項に書かれる具体例
それでは、遺言書の付言事項は実際にどんなことが書かれるのでしょうか。
傾向的かつ一般的に考えて、こんなものが書かれる、というようなものがありますのでそれをご紹介したいと思います。
葬儀に関する事項
例えば、お葬式はどこの宗派のもので、父母の際に執り行われた形式で行って欲しい、というようなことが書かれたりします。
また、葬儀の喪主は誰にする、などを書くこともあります。
遺言内容の理由の説明に関する事項
どうして遺言に定めたように遺産を遺したいのかを説明することも多いです。例えば、遺産を特定の相続人に多く遺したような場合、他の相続人からすると少し不可解かつ不満に映ります。
その理由を遺言内で明示することによって、意図が明らかになって不要なトラブルを防ぐことができる可能性があります。
例えば「これから生活が大変になるだろう妻に多くを遺すようにしました」と説明をすれば、遺族の理解が深まります。
遺留分に関する事項
さきほどの遺言内容の理由ともリンクしますが、他の相続人よりも多くの遺産を特定の誰かに遺した場合、遺留分というものが問題になることがあります。
遺留分とは簡単に言えば、法定相続人であれば最低限もらえる遺産の範囲、になります。
これは多くを受け取った相続人に対し、「せめて最低限の遺産をください」と意思表明し、その権利を行使して初めて遺産をもらうことができます。
しかし、例えば生活に困っている妻を助けたいという理由でたくさんの遺産を遺したのに、遺留分を主張されたらあまり意味がありません。それどころか裁判などで大変になる可能性もあります。
あくまでも相続人同士の関係を考えてですが、こちらも書かれることがあります。
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付言事項を書く際の注意点
特に書くことが定まっているわけではないので、それほど神経を使わなくてよいかもしれませんが、それでもいくつか注意点があります。
相続人の気持ちを考える
たとえば感謝を伝えるのはよいと思いますが、感情的になってネガティブなことを書いてしまうこともあります。また、背景を説明したつもりが相手を嫌な思いにさせる可能性もあります。
「〇〇は今まで全然私の世話をしてくれなかった。本当に残念だった。だから遺産を遺すようなことはあえてしなかった」
と遺言内容の背景を書いたつもりでも、相手からしたらただの悪口に思えることもあるかもしれません。
特に付言事項は、法律行為というよりもコミュニケーションの一種ですから、書く内容は相手のことも考えて書いていきましょう。
遺留分に関しては注意深く
さきほど遺留分の主張をしないように付言事項で書くことがあると書きましたが、やはり付言事項なので法的な効力はありません。
逆に遺留分について書いたがゆえに、相続人のなかではその制度を遺言で初めて知って、行使をしてくるという可能性もあります。十分注意しましょう。
遺言書の付言事項記入の際は行政書士に相談する
遺言書を作成する際には、その法的な内容だけでなく、付言事項もそれぞれのケースごとに考えて作る必要があります。
その際、経験的豊富な専門家ならば状況から判断して、付言事項で書いた方がいいこと、あまり書かない方がいいこと、の判断の精度がやはり高いです。
後のトラブルを防ぎ円滑な手続きのためにも、遺言書は非常に重要なものになります。
遺言書作成の際は、横浜市の長岡行政書士事務所までご連絡ください。