「遺産分割協議書を作りたいけど、AIでも作れるか知りたい」
「AIに遺産分割協議書の作成を指示したけど、これで法的な問題はないのか不安だ」
生成AI(以下、AI)はさまざまな士業も活用するようになり、遺言書作成サービスや相続税計算などにも用いられるようになりました。では、遺産分割協議書の作成にもAIを利用できるのでしょうか。
結論としては、AIで遺産分割協議書を作成するのは要注意です。この記事では横浜市で相続手続をサポートしている行政書士の目線から、遺産分割協議書をAIで作成するリスクや注意点について解説します。
AIで遺産分割協議書を作るリスク・デメリット際の注意点
AIは便利なツールですが、AIで作った遺産分割協議書には、次のようなリスクやデメリットがあります。
- 必要な書類は自分で集めなければならない
- 記載ミスがある可能性がある
- 法的なアドバイスを受けられない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
必要な書類は自分で集めなければならない
遺産分割協議書を作成する際は、戸籍謄本や固定資産評価証明書などを集めなければなりません。
行政書士などの専門家に依頼する場合は、これら書類集めも一任できます。
しかしAIで遺産分割協議書を作成する場合は、これら必要な書類は自分で集めなければなりません。
また、AIに聞けば必要書類を列挙してくれるかもしれませんが、その回答が正しいとは限らない点も要注意です。AIの回答だけを信じて遺産分割協議書作成を進めてしまうと、書類の不備や、相続人の漏れが発生するおそれがあります。
記載ミスがある可能性がある
AIは誤字や形式的な文法ミスは検出できますが、「実際の誤り」までは見抜けません。
たとえば、AIに各種情報を伝える際に、土地の地番を1桁間違えたり、銀行口座の支店名を間違えたりする可能性もあるでしょう。
しかしAIは実際の登記簿謄本や預貯金口座を確認してくれるわけではないため、間違った入力をすると、間違ったまま出力されてしまうのです。
とくに相続登記や銀行解約の場面では、遺産分割協議書の1文字の間違いで相続手続きがストップしてしまうため、これは大きなリスクといえます。
また、そもそもAIが生成する遺産分割協議書は、一般的なインターネット上にあるテンプレートに基づいたものです。
実際の相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産はもちろん、借入等のマイナスの財産も含めて遺産分割協議をする必要があり、テンプレートにはない相続財産も記載する場合もあります。
相続財産を正確に把握し、漏れなく遺産分割協議書に反映するためには、被相続人の通帳・登記簿謄本など相続財産の調査を行った上で遺産分割協議書を作成しなければならないため、必ずしもAIを使ったからといって、すぐに遺産分割協議書を作れるわけではないのです。
さらに、AIは文章をそれらしく整えて出力しますが、「代償分割」「換価分割」などの専門用語を正しく記載していない可能性があります。実際の金額や条件を誤記してしまうと、将来的にトラブルを生む可能性が高くなるため、AIに丸投げして遺産分割協議書を作成するのはリスクの高い行動なのです。
法的なアドバイスを受けられない
AIは法的判断を行うことはできません。相続はご家族によって抱えている悩みや財産状況などが異なっており、丁寧に遺産分割を協議することが望ましいでしょう。
「この分け方は将来的にトラブルに発展したりしないか」「代償分割にした場合のトラブルリスクは?」といった質問に回答はするものの、AIの出力はあくまで参考に過ぎません。
また、AIが作成した遺産分割協議書が形式的には整っていても、相続人全員が遺産分割内容に合意しなければ、その協議書は無効です。
一部の相続人の署名(記名)・押印が欠けている場合、遺産分割協議書は効力を持ちません。最終的には相続人全員の署名(記名)と実印の押印が必要です。(※)
(※)遺産分割協議書は法的に定められた書式はなく、相続人全員の押印が必要ですが、「署名」と「実印での押印」も必須ではありません。「記名」と「認印での押印」であっても、遺産分割協議書としては有効です。
しかし、相続登記や金融機関での口座解約などの手続きでは遺産分割協議書の実印と印鑑証明書を確認するため、実際には「署名と実印の押印」がスムーズな相続手続きへとつながっています。
AIは、このような実務的なアドバイスはしてくれないため、やはりスムーズに相続手続を進める観点からすると、デメリットが大きいといえるでしょう。
遺産分割協議書の作成を行政書士などの専門家へ相談すべき4つの理由
遺産分割協議書はさまざまな相続手続きに活用するだけではなく、遺産分割内容を正しく理解し、相続人全員が合意した証拠として保管する大切な書類です。
AIは完成度が高い文章を作成できるものの、「親族間の微妙な心理」「今後起こり得る対立」まで予見することは難しいため、作成時には法的知識を持つ、行政書士などの専門家への相談がおすすめです。
とくに下記4点に魅力を感じる方は、ぜひ当事務所へご相談ください。
- 相続トラブルを予想して作成できる
- 必要書類の収集・相続財産の調査も依頼できる
- 記載漏れやミスを防げる
- 口座の解約などもまとめて依頼できる
1.相続トラブルを予想して作成できる
遺産分割協議書について専門家へ相談すると、現在の家族構成や人間関係などを詳しくヒアリングしたうえで、トラブルを未然に防ぐ文案を作成します。
AIにはできない個別事情をヒアリングした上での作成のため、安全性が高い内容に仕上げることが可能です。
2.必要書類の収集・相続財産の調査も依頼できる
専門家に相談すると協議書の作成だけでなく、戸籍・評価証明書・登記簿謄本など、遺産分割時に必要となる書類の収集も依頼できます。さらに、相続財産の調査を依頼することも可能です
3.記載漏れやミスを防げる
専門家が遺産分割協議書を作成する場合、よくある記載漏れや誤字脱字、相続人の記載順序や日付の不一致といった細かなミスまで丁寧に確認したうえで完成させます。
例として、行政書士は法的な書類作成のプロであり、相続関係説明図や遺産の詳細なども含め、丁寧に確認しながら仕上げています。
特に、不動産や預貯金、株式など複数の財産がある場合は、1つでも記載漏れがあると後にトラブルとなるおそれがあります。こうしたリスクを防ぐためにも専門家に依頼し、安心できる協議書を作成することがおすすめです。
4.口座の解約などもまとめて依頼できる
行政書士等の専門家に遺産分割協議書の作成を依頼する場合は、銀行口座の解約手続など、相続手続き全般を丸投げできます。
「相続手続の負担を減らしたい」と考えている方こそ、AIではなく、行政書士などの専門家に依頼してみてください。
遺産分割協議書の作成は行政書士へ依頼するのが安心
遺産分割協議書の文章はAIに指示することで作成できますが、「それらしい内容」が出力されたとしても、それが法的に正しい内容になっているとは限りません。
もしAIが出力した遺産分割協議書の内容に誤りや漏れがあると、相続登記や預貯金の解約・相続税申告などの手続きが滞るだけでなく、親族間のトラブルに発展するおそれもあるため、細心の注意を払う必要があります。
また、遺産分割協議書の作成に必要な相続財産の調査や必要書類の収集などはAIにはできません。
行政書士に相続手続きを依頼する場合、法律に基づいた正確な文面の作成はもちろん、相続財産調査のサポートや必要書類の収集なども可能です。
スムーズな相続手続きのためにも、遺産分割協議の作成はお気軽に横浜市の長岡行政書士事務所へご相談ください。初回相談は無料で対応しています。

