「疎遠な相続人がいる。連絡先も住所もわからないからどうしたらいい?」
「遺産分割協議を進めたいのに、相続人である兄弟の住所も連絡先も分からず困っている。役所に行けば住所は調べられる?」
「相続が発生したのだけど、父の前妻の子の居場所がわからない。長男である自分が、父の前妻の子の住所を調べるなんて可能なのか?」
相続手続きを進める際に相続人の連絡先や住所がわからず、遺産分割が難航してしまうケースは少なくありません。
そこで、この記事では、横浜市で相続手続をサポートしている行政書士が、相続時に知っておきたい「相続人の住所の調べ方」について、わかりやすく解説します。住所判明後に送る「手紙」を書く際の注意点についてもご紹介しますので、ぜひご一読ください。
疎遠な相続人にも連絡を取らなければならない理由
「相続が発生したとして、居場所がわからない前妻の子になど連絡する必要はないのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし実は、次のような理由から、相続発生後は「相続人」に連絡を取る必要があります。
- 遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があるため
- 遺言執行者には相続人への「通知義務」があるため
- 「遺留分」は遺言書でも奪えないため
それぞれの理由について、詳しく見ていきましょう。
関連記事:相続人の範囲はどこまで?代襲相続・数次相続・再転相続も考慮して行政書士が徹底解説!
遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があるため
もっとも大きな理由は、遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があるためです。
そもそも相続手続において、遺言書がない場合、遺産の分け方は相続人による話し合い、つまり「遺産分割協議」で決めます。そして、この遺産分割協議は、相続人全員の合意があって初めて有効に成立することがポイントです。
合わせて読みたい:遺産分割協議の参加方法は?全員集合の必要性・注意点を行政書士が解説!

裏を返せば、相続人が一人でも欠けた状態で行われた協議は無効とされます。たとえば居場所がわからない・疎遠だからといった理由で前妻の子を外して、後妻とその子だけで遺産の分け方を決めても、その協議には効力が認められません。
また、ここで注意したいのは、この全員参加というルールが「連絡が取れるかどうか」に左右されない点です。たとえば、相続人調査の結果、父に離婚歴があり前妻との間に子がいることは判明したものの、その子の連絡先がわからない、というケースもあるでしょう。
しかし、連絡先がわからないからといって、その子を除いて協議を成立させることはできません。仮に後妻とその子だけで遺産の分け方を決めても、その協議は無効です。
そのため、疎遠な相続人にも、何とかして連絡を取ることが前提となります。
遺言執行者には相続人への「通知義務」があるため
ここまでは遺言書がないケースを前提にしてきました。では、「有効な遺言書があれば、遺産分割協議は不要になる。それなら、連絡の取れない相続人に連絡しなくてもいいのでは」と考える方もいるかもしれません。
たしかに有効な遺言書があれば、遺産の分け方をめぐる話し合いは原則として必要なくなります。しかし、それでも全てのケースで連絡が不要になるわけではありません。その理由の一つが、遺言執行者に課された「通知義務」です。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために、財産の名義変更などの手続きを進める役割の人のことです。ご長男・ご長女など、相続人の一人が指定されていることもあります。
そして遺言執行者は、任務を開始したとき(つまり遺言者が亡くなった後)、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。これは民法1007条2項に定められた法的な義務です。
ここでポイントになるのが、この通知は「財産をもらえない相続人」に対しても行う必要があるという点です。条文は通知の相手を「相続人」とだけ定めており、財産を取得するかどうかによって区別していません。
そのため、たとえば前妻の子に一切財産を残さない遺言書が残されているとしても、前妻の子は相続人である以上、通知の対象から外れることはないのです。
参考:遺言執行者の相続人への通知義務とは?遺留分がない者にも必要なのかを解説!
「遺留分」は遺言書でも奪えないため
遺言書があっても、疎遠な相続人に連絡が必要になるもう一つの大きな理由が「遺留分」です。
遺留分とは、一定の範囲の相続人に法律で保障された、最低限の遺産の取り分のことです。そして、この遺留分は遺言書によっても奪うことができません。たとえ「全財産を後妻に相続させる」という遺言があったとしても、遺留分を持つ相続人(たとえば前妻の子)は、侵害された分に相当する金銭の支払いを求めることができます。
関連記事:遺留分とは?割合や法定相続分との違いを行政書士がわかりやすく解説!

ちなみに、兄弟姉妹には遺留分がありませんが、遺言執行者は遺留分を持っていない相続人に対しても通知する必要があることも知っておきましょう。
※遺留分がないとしても、遺言書に記載されていない財産については相続できるため、通知が必要と考えられています。
連絡先の分からない相続人がいる場合は「住所」を調べる
ここまで見てきたとおり、相続では前妻の子を含めた相続人全員に連絡を取る必要があります。
とはいえ、疎遠な相続人の場合、電話番号もメールアドレスも住所も、連絡手段を何も知らないというケースは珍しくありません。戸籍を調べて初めて存在が明らかになった前妻の子などがいる場合、連絡先を知らなくても当然です。
「相続手続に必要なら、携帯電話会社に問い合わせて電話番号を教えてもらえないか」と考える方もいるかもしれません。しかし、契約者の電話番号や氏名は「個人情報」にあたるため、相続手続という理由があっても、携帯電話会社が情報を開示してくれる可能性はゼロに近いです。
このような背景があるため、連絡先の分からない相続人がいる場合は、相手の「住所」を調べることになります。
居場所のわからない相続人の住所は「戸籍の附表」で調べる
居場所のわからない相続人の「住所」は、他の相続人が、公的な制度を使って正規のルートで調べられます。
それが、「戸籍の附表」というものです。戸籍の附表は、戸籍とともに本籍地で発行する証明書であり、戸籍が作成されてからの住所の履歴が記載されています。現在の住民票の所在地も記載されており、そこから居住地の特定が可能です。
なお、「住民票を取得すれば、連絡先の分からない相続人の住所が分かるのでは?」と思った方もいるかもしれません。しかし住民票は、住民が住んでいる市区町村役場で取得するものであり、そもそも相続人が現在どこに居住しているかわからない場合には住民票の申請用紙に記載することが出来ず、発行をすることが出来ないことから取得できないため注意してください。
「戸籍の附表」の取得方法
戸籍の附票(の写し)は、申請書に必要事項を記載すれば、役所の窓口で取得できます。
横浜市で戸籍の附表を取得したい場合は、横浜市内各区役所の戸籍課や行政サービスコーナーで取得できます。詳しくは以下リンクからご確認ください。
(※郵送請求可能、オンライン請求は横浜市内に本籍がある本人および同一戸籍の人のみ)
参考URL: 横浜市 戸籍の附票の写し
「戸籍の附表」を請求できる人
戸籍の附表は、「戸籍に掲載されている方、祖父母・父母(直系尊属)、子・孫(直系卑属)」に該当する方が請求できます。
兄弟姉妹が相続人となることもありますが、兄弟姉妹は必ずしも同一の戸籍に掲載されているとは限りません。
では兄弟姉妹や甥・姪のお立場の方が相続人調査で戸籍の附表を取得したい場合 はどうすればよいでしょうか。
未婚の兄が亡くなり、同じく未婚の弟が「戸籍の附表」を請求する
→同一の戸籍の中に兄弟がいる場合は請求可能
未婚の兄が亡くなり、婚姻によって夫の戸籍に入った妹が「戸籍の附表」を請求する
→請求できない。しかし、相続手続き上必要であると市役所側へ証明することで可能
相続における戸籍の附表の取得については、戸籍法の以下の部分が該当するため、戸籍が別の兄弟であっても適切に証明すれば取得は認められます。
引用:戸籍法第10条第1項
戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第二十四条第二項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。
上記では、戸籍等の請求にあたっては配偶者、親や祖父母、子や孫に限られているとわかります。兄弟姉妹は該当していません。そこで、兄弟姉妹の戸籍の附表を請求の際には以下を根拠に請求します。
引用:戸籍法第10条の2第1項
“前条第1項に規定する者以外の者 は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由“
戸籍法が示す「自己の権利を行使し」とは、 相続手続きのため(遺産分割協議のため)に相続人の確定が必要であると証明する事ができれば取得できます。
しかし、請求を受ける自治体によっては自身が相続人であることを示す資料を詳しく提出するように求めるケースもあります。
もしも住所の調査にお困りでしたら、お早めに行政書士などの専門家へご相談ください。横浜市の長岡行政書士事務所でも、相続人調査に対応しております。
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対応エリア:横浜市・神奈川県全域・東京23区
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居場所の分からない相続人の住所が見つかった後の対応方法
さて、疎遠な相続人の居場所が分かったとして、そこがゴールではありません。住所を突き止めることは、あくまで「連絡を取るための出発点」にすぎず、実際に相手へ連絡し、相続手続きへの協力を得て、はじめて話が前に進みます。
とはいえ、相手はこれまで面識のなかった、あるいは長く疎遠だった相続人です。連絡の取り方を誤ると、警戒されて無視されてしまうこともあります。
突然訪問すると警戒されるなどトラブルになるおそれがありますから、やはり「お手紙」でのお知らせがおすすめです。
お手紙にはまず被相続人が亡くなったことを記し、相続が開始されたことを伝えます。以下を押さえて記載しましょう。
- 被相続人が亡くなった日付
- お手紙の相手が相続人になっていること
- 遺産分割協議へ参加してほしいこと(全員参加が必須であること)
- 手続きには相続人全員の合意が必要で協力が欠かせないことを伝えます。
- 折り返し連絡先、連絡期限
なお、いきなり遺産分割協議書を送ると驚かれてしまうおそれがあります。相続放棄を突然促すことも、財産を放棄するように迫っていると思われてしまう可能性が高いので、まずはお伝えしないことがおすすめです。
お手紙の文章を例で紹介します。
| 横浜 〇子 様 拝啓 突然お手紙で失礼いたします。 私の父、長岡 △男(住所 神奈川県横浜市●●区●●123、生年月日 昭和20年○月○日)は、かねて病気療養中のところ、令和○年○月○日に永眠いたしました。 父の相続手続きを進めるにあたり必要な書類を集めていたところ、長岡 ○子様も相続人であることがわかり、こちらのお手紙にてご連絡いたしました。 相続手続きには相続人全員の同意が必要であるため、長岡 〇子様のご協力が欠かせません。今後必要な手続きにつきまして、一度ご説明申し上げたいと存じます。大変恐縮ではございますが、一度私、長岡 〇美(電話番号080-××××―××××)までご連絡をお願いいたします。 同封の封筒にてご連絡先の電話番号をお知らせいただければ、私からご連絡差し上げます。お手数ですが〇月末までにはご連絡いただけますと幸いです。 ご多忙の折お手数をお掛けいたしますが、ご協力いただけますようお願い申し上げます。 敬具 令和〇年〇月〇日 郵便番号△△△―×××× 神奈川県横浜市●●区●●123 長岡 〇美 |
居場所・連絡先の分からない相続人に関するよくある質問
それでは最後に、居場所・連絡先の分からない相続人に関するよくある質問を紹介します。
前妻の子など疎遠な相続人の住所は自分で調べられますか?
はい、ご自身で調べることも、制度的には可能です。
ただし、被相続人が結婚・離婚・転籍などで何度も戸籍を移している場合、戸籍の読み解きに手間がかかります。時間や労力を抑えたい場合は、戸籍の収集と相続人調査を行政書士に任せるのがおすすめです。
疎遠な相続人と連絡がつかなかったらどうなりますか?
まず、連絡がつかない相続人がいても、先述したとおり、その人を外して勝手に遺産分割を進めることはできません。ただし「連絡がつかない」といっても、その具体的な状況によって、対応が分かれることも知っておきましょう。
一つは、住所を調べればたどり着けるケースでは、判明した住所へ手紙を送るなどして、何とか連絡を取れるよう試みます。自分での対応が難しくても、行政書士などの専門家に相談すれば、戸籍の附票による住所調査でこの段階まで進められることが多いです。
しかし、住所を調べても居住実態がなく、生きているかどうかもわからないような、本当の意味での行方不明のケースもあるでしょう。この場合、次のような手続が選択肢になります。
- 行方不明者に代わって遺産分割協議に参加する「不在者財産管理人」を家庭裁判所に選任してもらう
- 「失踪宣告」を申し立て、その人を亡くなったものとみなして手続きを進める(行方不明になってから7年以上が経過している場合)
いずれの方法で手続を進めるかどうかは、具体的な状況によって異なるため、やはり専門家へ一度相談したほうが安心でしょう。
関連記事:不在者財産管理人とは?行方不明の相続人がいる場合の手続き方法を行政書士が解説!

関連記事:行方不明の相続人がいる場合はどうする?失踪宣告による相続手続きを行政書士が解説!

居場所のわからない相続人の住所調査も行政書士に依頼できる
今回の記事では相続人の居場所がわからない時の、住所の調べ方について詳しく解説しました。
「戸籍の附表」を活用すれば相続人の住所を調べることは可能ですが、住所を見つけたら「相続が開始された」ことを伝え、さらに遺産分割協議をし、相続手続を進めていくのは、簡単ではありません。
相続人調査は想像以上に時間がかかることが多く、その後の相続手続も手間がかかり、ご家族にとって重い負担となってしまうケースがあります。
そのため、もしも連絡先や所在がわからない相続人がおり、調査に困った、自分で連絡するのは気が重いという場合は、お気軽に横浜市の長岡行政書士事務所へご相談ください。初回相談は無料です。


