亡くなった親のために子が立て替えた諸々の費用、たとえば親の生活費・入院費を立て替えていたような場合、その負担額は、相続においてどのように扱われるのか、当事務所にも相談があります。
そこで今回は、故人のために立て替えたお金を相続時にどう扱うのかや、親の生活費・入院費を立て替えていた相続人がどう回収するのかについて、横浜市で相続手続をサポートしている行政書士が解説します。
立替金はマイナスの遺産
前提として、故人の「立替金」は、故人の相続において、マイナスの遺産です。
そもそも立替金とは「本来本人が支払うべき費用を、代わりに誰かが支払っている時のお金」だといえます。
つまり、親のが支払うべき費用を、子が立て替えて支払っていたとしたら、親は子に対してお金を支払う(返す)義務が生じます。これは借金などと同じ「債務」ですから、立替金=マイナスの遺産なのです。
なお、債務は、相続税の課税対象から控除されることは、多くの方がご存じなのではないでしょうか。
たとえば、プラスの財産が4,000万円、マイナスの遺産(債務)が1,000万円の場合、相続税の課税対象は差し引き3,000万円となります。
関連記事:相続財産から控除できる債務等の種類について税理士が解説!

立替金がマイナスの相続財産になる条件
「親が支払うべき費用を子が払うと、立替金としてマイナスの財産となり、結果的に相続税が安くなるなら、悪い話ではない」と思った方もいるかもしれません。
しかし、「親が支払うべき費用」を子どもが払っていたからといって、それが直ちに立替金として認められるわけではないため注意してください。
立て替えたお金が相続財産になる条件は、以下の3つです。
- 立替の事実を証明する
- 立替えた人が分かる
- 立替が扶養義務に該当しない
それぞれ詳しく見ていきましょう。(上記以外にも、状況により条件が増える可能性もあります)
立替の事実を証明する
まず、親に関する費用を支払った際に領収書を受け取るなどして、客観的にお金を立て替えたという事実を証明する必要があります。
「これまでに数百万円は払っているはず」といった曖昧な記憶では、マイナスの相続財産とすることは難しいでしょう。
立替えた人がわかるようにする
金額だけではなく、立て替えた人もはっきり証明する必要があります。
たとえば、受け取った領収書に「立て替えた子」の名前が記されていれば、明確に証明できるでしょう。
立替が扶養義務に該当しないこと
亡くなった親に経済力がなく、経済力のある子が入院費用を支払っていたのなら、この扶養義務に該当する可能性があります。
そして、もし扶養義務に該当するなら、立替金として相続時にマイナスの財産に加えることができません。これは立替金でも、親への貸付金でもなく、子の扶養義務として支払ったお金(親に対する無償の援助・贈与)とされるためです。
ただ、これは相続税の債務控除にできないというだけで、兄弟などとの遺産分割協議においては、「寄与分」として主張したり、穏便に「入院費を払ってくれていた分、多く遺産をもらう」などと調整したりすることも可能です。
関連記事:遺産はどう分ける?分割時のルール・分割方法を行政書士が解説!

「立替が扶養義務に該当するのか、しないのか」「相続人同士で調整するのか、しないのか」については、行政書士・税理士などの専門家に相談して、各家庭ごとに判断することをおすすめします。
横浜市の長岡行政書士事務所は、税理士事務所とも提携しており、各家庭ごとに最適な方法をご提示させていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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親の生活費・入院費を負担(立替)したら相続時に立替金となる?
ここまで紹介した相続時における「立替金」のルールを見ると、子が「親の生活費・入院費」を負担(立替)しても、それが立替金(マイナスの遺産)となるかどうかは微妙なラインだと思われた方もいるのではないでしょうか。
親が高齢になり、収入が減り、子が親の分の生活費(家賃や食費など)を支払うケースも珍しくはありません。
これは先述した「扶養義務」に該当するように見えますが、実は「遺された財産」が結果的にプラスであるならば、扶養義務には該当しないと考えられます。
つまり親の生活費を負担(立替)していたら、その分だけ相続税の算定額が減る可能性は、十分にあるといえるでしょう。
ただし個別具体的なケースについては、やはり相続税に詳しい税理士に相談して判断すべきです。横浜市の長岡行政書士事務所は税理士事務所とも提携しておりますので、個別事例のご相談については税理士をご紹介いたします。お気軽にご相談ください。
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立替金が問題になりやすいケース
マイナス財産承継時の要件が細かく決まっているのは、立替金により問題が起きるケースがありうるためです。いくつかの具体例を見ていきましょう。
ここまで生活費・入院費を例に挙げてきましたが、下記のような費用を子が立て替えていた場合、どうなるのでしょうか。
- ローンや借金の立替
- 葬式の費用の立替
- 専門家の費用の立替
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ローンや借金の立替
何らかの事情で、親のローンや借金を、子が自分のお金で清算することもあるでしょう。
この場合、親が子に借金をしていることになります。
そして、子供への借金も、親のマイナスの財産としてカウントされますので、相続税がかかる金額から控除されます。
葬式の費用の立替
葬儀費用を喪主である子が立替えて支払うことも多いです。
葬儀費用は厳密には相続財産ではありませんが、相続開始後発生する必要なお金であるため、葬儀費用は立替えた分、相続税の算定額からは控除されます。
関連記事:葬儀費用も遺産分割協議書へ記載できる!記載例や相続時の扱いについて行政書士が解説

専門家の費用の立替
遺産分割協議書の作成や遺言執行を行政書士に依頼し、相続税の税務申告を税理士に頼んだとしたらどうでしょう。
これは葬儀費用と違い、故人が遺したマイナスの財産と評価はされにくいです。死後に発生した任意の費用として、相続人や関係者が支払う費用とされています。
関連記事:相続手続の専門家報酬(費用)は誰がいつ払う?行政書士が実務面から解説!

親への立替金でよくある質問
それでは最後に、親への立替金でよくある質問について解説します。
Q. 子が立て替えたお金は、相続時にどうやって精算する?
記事内で触れたとおり、親の支払うべき費用を立て替えた子は、親に対して、その分を返してもらう権利(債権)を持つ立場になります。
そのため、立て替えた子は、相続の際に、その立替金を相続財産から精算してもらうのが一般的です。「立て替えた相続人が、その分だけ遺産を多めに取得する」ということです。
Q.立替金の扱いは遺産分割協議書にどう記載する?
法律で決まった様式があるわけではありませんが、「誰が・いくら立て替えたのか」「それをどう精算するのか」が分かるよう記載するのが基本です。
たとえば、次のような要素を含めるのが一般的です。
「相続人 横浜一郎 が、被相続人の○○費用等として立て替えた金額○○円については、相続財産から控除する」
実際の遺産分割協議書では、さらに「控除後の残余財産をどう相続するのか」などまで記載する必要があります。
誤解の生じない正確な遺産分割協議書を作るためにも、一度行政書士などへ相談してみてください。
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Q. 領収書などの証拠がない立替金は、清算が認められない?
証拠がないと、精算のハードルは高くなります。本文でも触れたとおり、立替金として認めてもらうには、立て替えた事実と、立て替えた人がはっきりわかることが必要で、曖昧な記憶だけでは立替金として扱うのは難しいためです。
とくに、相続税の債務控除として立替金を差し引くには、客観的な証拠が求められます。
ただし、証拠がないからといって、まったく打つ手がないわけではありません。相続税の債務控除としては認められにくくても、相続人同士の遺産分割の話し合いのなかで、「親の費用を負担していた分、遺産を多めに受け取る」といった形で調整できる余地はあります。これが実務上のポイントです。
どこまでの資料があれば立替金として認められそうか、また、証拠が十分でない場合に遺産分割でどう調整するかは、ケースによって判断が分かれます。対応に迷う場合は、行政書士・税理士などの専門家に相談し、手元の資料を見てもらいながら進めると安心です。
相続における「立替金」の扱いは行政書士・税理士へ相談!
親のために立て替えた費用は、相続において「立替金」として扱われます。立て替えた人は、亡くなった親に対してその分を返してもらう立場になるためです。
一定の条件を満たせば、この立替金はマイナスの遺産(被相続人の債務)として、相続税の課税額を計算する際に差し引くことができます。(債務控除)
一方で、扶養義務に該当するなどして、相続税の債務控除としては認められない可能性もゼロではありません。ただし、その場合でも、遺産分割の話し合いのなかで、「親の費用を負担していた分を考慮して、特定の相続人が遺産を多めに受け取る」といった形で反映できる余地があります。控除できないからといって、立て替えた分がまったく報われないわけではありません。
このように、立替金は「相続税の債務控除になるのか」「ならないとしても遺産分割でどう考慮するのか」といった判断が必要で、しかもその判断は、手元にどのような資料が残っているか、他の相続人との関係はどうかなど、ご家庭ごとの事情によって変わるものです。
そのため、相続手続時に「立替金をどう扱うか?」に迷った場合は、ぜひ専門家へ相談してみてください。
横浜市の長岡行政書士事務所では、相続手続き全般や遺産分割協議書の作成をサポートしていることはもちろん、相続税に詳しい税理士事務所とも提携しておりますので、「この立替金は債務控除できるのか」「遺産分割でどう扱えばよいのか」といったお悩みもご相談いただけます。初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。



