たとえば100歳以上の高齢者の方で所在不明の方がいる場合、戸籍はどうなるのでしょうか? 平均寿命から考えると、特に120歳や150歳といった方々はすでにお亡くなりになっている可能性も否めません。
そんな時に備え、「死亡者消除(高齢者消除)」という制度があります。これによって戸籍を整理できるのですが、おなじく行方不明の方がいるときに使われる「失踪宣告」とは何が違うのでしょうか。
また、死亡者消除することで、相続手続を開始できるのでしょうか。
今回はこの「死亡者消除」について、あの「漫画風」に見ていきたいと思います。
死亡者消除とは
死亡者消除とは「戸籍上」死亡と見なす制度のことです。
行方不明だからといって、戸籍上ずっと生存しているものとしておくことは、行政上、いろんな不都合が出ることもあります。
そこで、所在不明で100歳以上の高齢者について、死亡した可能性が高い場合においては、戸籍から該当の高齢者の戸籍を削除することが認められているのです。
※市区町村長が法務局長の許可を得る必要があります
それでは物語の始まりです。
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202X年、世界の人口は増え、日本でも多くの相続が問題に直面した。
経済は枯れ、預金は裂け、あらゆる相続に負債が伴うかに見えた…。
しかし、二千年の歴史を刻み受け継がれてきた、恐るべき相続拳の伝承者が、救世主となって現れた!
一子相伝の「相続真拳」で悩める者たちの運命を切り開く、その男の名は…ケンタロウ!
弟分のミット、妹分のランとともに、宿命に導かれながら旅を続ける一行。
今この永き血の歴史が、あらたな伝説を作る!
※この物語は、どう考えてもフィクションです。現行法に則った相続について、わかりやすく知っていただくための、ちょっぴりオーバーな演出です。
ミット「おい、見ろよ! あそこで、母子が何やら困ってるぜ…」
ラン「ケン! ただ事じゃなさそうね。話を聞いてあげない?」
母「実は、隣村のおじいちゃんが行方不明になったまま戻って来ないと連絡があって…死亡者削除をするという通知が来たんです。夫はレオウ軍に対抗するレジスタンスとして旅の途中なので、誰にも相談できなくて…」
ミット「そっか。よし、安心してくれ。これからケンが死亡者削除について詳しく教えてくれるから。な、ケン!」
死亡者消除(高齢者消除)では相続が開始しない
所在不明で100歳以上の高齢者について死亡した可能性が高い場合においては、死亡者消除(高齢者消除)が認められれば、戸籍から該当の高齢者の戸籍を削除することになります。
しかしこれはあくまでも「戸籍上の整理」であり、この行方不明者が「死亡」したことを表すものではありません。
つまり、たとえ死亡者消除(高齢者消除)の手続を進めたとしても、それによって相続が開始するわけではないということです。
たとえば死亡者消除の対象者が不動産を有していたとしても、死亡者消除の旨が記載された戸籍に基づいて当該不動産の相続登記をすることはできません。
死亡者消除と失踪宣告の違い
ミット「ケン、死亡者消除って、いわゆる戸籍上の整理だよな? 別に『失踪宣告』ってのがあると聞いたけど、どう違うんだ?」
ケン「あたた、おたぁ!」
ミット「ふむふむ。失踪宣告ってのは、生死がわからない行方不明の人に対して、要件を満たした場合に法律上死亡したとみなす制度か。」
母「あの、どうして今ので言葉がわかるんですか…?」
ミット「まあ、絆ってやつかな」
ラン「死亡者消除と失踪宣告の違いは、目的や対象となる年齢、相続の開始時期、取消方法などの違いがあるってことよね、ケン?」
ケン「うむ」
目的の違い
死亡者消除の目的は戸籍の整理であり、戸籍へ死亡と記載される(ただし法律上は生存している)
失踪宣告の目的は行方不明者を死亡と扱い、行政上でも法律上でも死亡したと見なす(もちろん実際の生存真否は不明)
対象者の年齢の違い
死亡者消除の対象年齢は、次のように定められています。
120歳以上:行方不明状態での生存可能性が限りなく低いため、特段の事情がない限り調査は不要
100歳以上:親族等の調査が必要。行方不明者の親族等が見つからなければ、生存を証する資料なしとして法務局長へ許可を求める。
90歳以上、100歳未満:戸籍に残る親族がいる場合には、親族からの申し出により死亡者消除を行うことも可能
※原則として死亡者消除は100歳以上の行方不明者だが、行方不明者の親族からの申出があった場合、90歳以上の行方不明者であっても死亡者消除の対象になる
一方、失踪宣告の対象となる行方不明者に年齢要件はなく、行方不明期間を満たしていれば何歳でも失踪宣告をすることが可能です。行方不明期間は、普通失踪は7年、特別失踪は1年以上とされています。
関連記事:死亡とみなされる「失踪宣告」とは?相続人が行方不明な場合の対処法!
相続の開始時期の違い
先述したとおり、行方不明者の戸籍に死亡者消除が記載されても、それによって相続が開始されることはありません。
一方、失踪宣告によって行方不明者を死亡したとみなされれば、その行方不明者の相続を開始することができます。
取消方法の違い
死亡者消除は死亡届や失踪届などの届出によって訂正できる。
失踪宣告は、家庭裁判所に失踪宣告の取消しを申し立て、取消しの審判が確定すれば、戸籍から失踪宣告の記載を削除できる。
行方不明者の相続人がいる場合は専門家に相談を
母「なるほど、死亡者消除(高齢者消除)と失踪宣告は、同じように見えてけっこう違いがあるんですね」
ミット「死亡者消除は”あくまでも戸籍上の整理”だからね」
ラン「つい忘れがちなんだけど、死亡者消除と失踪宣告は似ているようで全く異なるの。だから、死亡者消除=相続開始ではないということだけは覚えておいてね」
ミット「あとは、複雑だからできるだけ専門家に相談していったほうが無難だな。な、ケン?」
ケン「うむ…お前はもう、相談している」
死亡者消除と失踪宣告はいずれも”死亡したとみなされる制度”です。しかし相続手続においては、まったく違う結果を生む制度であることがお分かりいただけたでしょうか。
たとえば放置されていた不動産の相続登記をするために戸籍を遡ったところ、持ち主の戸籍に”死亡者消除”と記載があればびっくりするかもしれません。
この場合、あくまでも行政手続き上”便宜的に死亡したことにした”というだけであるため、相続手続を進めるためには失踪宣告など他の手続も必要となるのです。
このような死亡者消除(高齢者消除)が関係する相続に関して、どのように手続きをしたら良いか不安な点がある場合や困りの際には、ぜひ横浜市の長岡行政書士事務所へご相談にいらしてください。初回相談は無料なので、電話やLINEでお気軽にご予約ください。