配偶者居住権は放棄できるのか?制度の概要から注意点までを行政書士が解説!

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「配偶者居住権はいいことばかりだから放棄なんてする必要があるの?」  
「母が住んでいる家を売りたいんだけど、そんなこと可能なんでしょうか」  
「父が認知症になってしまいましたが、放棄は周りの人間でもできるのでしょうか」 

配偶者居住権という言葉を聞いた事がありますか? 

この配偶者居住権は2018年の民法及び家事事件手続法の改正時に成立したばかりの比較的新しい権利で、夫や妻が亡くなってしまった後もその配偶者が引き続き元の家に住み続けることが可能になりました。 

自動的に取得する権利ではないため遺言や相続人間の協議(=遺産分割協議)や裁判所の審判によって権利設定される必要がありますが、家の所有権(=家を持っている人)と居住権(=家に住むことができる人)を分けることでより配偶者に望ましい環境を整えることができるようになりました。 

「でも、配偶者が元の家に住み続けるって当たり前じゃないの・・・?」といまいち釈然としない方もいらっしゃるかもしれません。 

実際の相続ではそうもいかないことがあり、これまで問題が発生することも多々ありました。 

本日は配偶者居住権の解説と、その配偶者居住権を放棄したい理由とそれが可能かどうかの解説を行いたいと思います。 

配偶者居住権のメリットとは 

まずはメリットの観点から配偶者居住権を見ていきましょう。 

例を用いて説明していきたいと思います。 

残された配偶者が家に住み続けることができる 

まず何といってもメリットは配偶者が元の家に住み続けることができるという事です。 

相続が発生した時に既に夫婦が高齢になっていることも多いです。 

伴侶を亡くした高齢者が、更に住み慣れた家を出なければいけない事態は好ましくありません。 

例えば夫が亡くなり妻と子二人の家族がいて、家で一方の子の家族と同居していたとします。 

子の家族と折り合いが悪いような場合、相続でもめてしまうと妻は子から「この家には私の権利もあるのだから、出て言ってくれ」と言われてしまう可能性があります。 

相続の分け方によっては家が妻と子の共有になったり、子の所有になってしまう可能性もあり今まではこのような立ち退き要求がされると制度として防ぐことが困難でした。 

妻に配偶者居住権があれば、家が子に相続されても「私には住み続ける権利がある」と主張してそのまま家に住み続けることができます。 

配偶者は将来の生活の原資を確保できる 

相続の後も生活は続き、生活にはお金がかかります。 

配偶者が家を相続して住み続けることができても、そのせいでお金を相続できなかったらどうなるでしょうか。 

家の補修や介護などで費用がかさみ、年金だけでは生活が立ち行かなくなってしまうかもしれません。 

例を用いてより理解を深めてみましょう。 

ここに遺産総額が6,000万円で、家がそのうち3,000万円を占めている相続があったとします。夫が亡くなり、妻と子二人が相続人になりました。遺言がないので遺産分割協議を行い、法律に則った遺産の分け方をします(=法定相続)。 

このケースの場合は妻が遺産の二分の一である3,000万円、残り二分の一を子二人で分け合うのでそれぞれ四分の一の1,500万円ずつとなりますが、家は物理的に分割することができません。 

妻は3,000万円の家を相続することができますが、残りの3,000万円はすべて子二人が相続するので妻には現金が残らないことになります。 これでは、せっかく元の家に住み続けられることになった妻も不安ですよね。 

では、配偶者居住権を使用した場合はどうなるでしょうか。 

配偶者居住権の計算の概要

配偶者居住権には価値があり、その計算方法は、 

「建物や敷地の現在価値」-「負担付所有権の価値」 となります。 

詳しい計算の仕方はここでは割愛いたしますが、配偶者居住権が不動産の価値より上になる事はありません。 

より詳しく学ぶには>>>国税庁ホームページ 配偶者居住権等の評価 

・配偶者居住権を使った相続の具体例

配偶者居住権を使った相続で、例えば下記のような分け方はどうでしょう。 

妻:配偶者居住権(評価額:1,000万円)と、現金500万、そして子Aから差額の1,500万円を受け取り計3,000万円 

子A:3,000万円の家を相続し、差額の1,500万円を妻に払う 

子B:現金1,500万円を相続する 

家は子Aのものになりますが、妻には配偶者居住権があるので今後も家に住み続けることができ、更に現金が2,000万円あるので安心して老後が過ごせます。 

子Aは急ぎで現金が必要でもなかったので家を相続して、いずれ妻が亡くなった後は自分たち家族が住むかもしくは売却して現金化することができます。 

子Bは急ぎで現金が必要だったので元の相続分1,500万円を受け取りました。 

このように、配偶者居住権を使う事でより自由度の高い相続が達成できるようになります。 

配偶者は代償金の支払いを避けることができる 

不動産のような分割しにくいものを受け取る代わりに、他の相続人に支払って埋め合わせをするお金のことを代償金と言います。 

・代償金を支払うパターン

例えば本当は3,000万円しか相続できないのに4,000万円の家を相続した場合は、差額の1,000万円を他の相続人に支払う事で公平な相続にします。 

配偶者が代償金の支払いを避けられるとはどういうことでしょうか。 

先ほどの例で、遺産が6,000万だが家が4,000万円、配偶者居住権が1,000万円相当だとします。 

妻と子二人は変わらないので妻の相続分は3,000万円ですが、家を相続してしまうと妻は差額の1,000万円を子二人に払わないといけません。 

1,000万円もの現金の準備するのは大変ですし、下手したら妻が家を相続できなくなってしまいます。 

・代賞金を回避するパターン

ここで、配偶者居住権を妻が利用した場合は以下の様な相続分にすることができます。 

妻:1,000万円に相当する配偶者居住権と、現金2,000万円で計3,000万円を相続 

子A:4,000万円から配偶者居住権1,000万円分減価され3,000万円になったを家を相続し、現金1,500万円を子Bに払う、差し引き1,500万円を相続 

子B:子Aから1,500万円を受け取る 

妻は代償金を払う事なく元の家に積み続けてしかも現金を手に入れることができます。 

このように、配偶者居住権を使う事で代償金の支払いを免れ、配偶者の今後の生活を守ることができます。 

配偶者居住権のデメリットとは

ところが、一見メリットだけに見える配偶者居住権にもデメリットが存在します。 

家が売りにくくなってしまう可能性がある

家に住み続けることを可能にする配偶者居住権ですが、将来配偶者が高齢になり老人ホームに入ったり病気で入院したりと、配偶者がもう家に住み続けることができなくなる場合があります。 

家の所有権であれば事情に応じて売却したり譲渡をすればいいのですが、配偶者居住権はその名の通り配偶者がその家に住み続ける権利なので売却や譲渡をすることができません。 

特に問題になるのは配偶者が認知症になってしまった場合です。 

配偶者が認知症になると法律行為ができなくなるので、自分で配偶者居住権の放棄をすることもできないし、周りが放棄を手伝っても無効となってしまいます。 

つまり、家から配偶者居住権を外すことが困難になるのです。 

配偶者居住権がついたままの家は売却すること自体は可能ですが、買手からすると自分の知らない誰か他の人が住む権利を保持する物件を買うという事になります。 

仮にその人が既に認知症で家に戻ってくる可能性が低くても、あまり心象がいいものではありません。 

相場より相当安く売らざるを得なくなるか、売買自体が困難になる可能性があります。 

所有者は家の税金を払わないといけない 

不動産を所有すると税金を払う義務が発生します。 

家にかかる固定資産税は通常所有者に対して発生しますが、改正後の相続法では「配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する」と規定しており、家にかかる固定資産税も通常の必要費に含まれていると考えられています。 

よって家の所有者は固定資産税を払った場合は、家に住んでいる配偶者に請求できることになります。 

それでは土地への固定資産税はどうなるでしょうか。 

土地は上記相続法が規定する居住建物には含まれていませんので、土地の固定資産税は所有者が負担することになる可能性が大きいと言えます。 

その場合、土地と家を相続した所有者は自分の住んでない家が建っている土地の固定資産税を払い続けないといけなくなります。 

特に土地の評価額が高い都心に近いエリアでは固定資産税が大きな負担になりますので、配偶者居住権を設定した際に税金の支払いについても取り決めておくべきです。 

配偶者居住権は放棄できるか? 

メリットだけでなくデメリットもあることを説明しましたが、それでは配偶者居住権は放棄できるのでしょうか。 

配偶者居住権は放棄できる

結論から言うと可能です。 

配偶者の意思表示により一方的に破棄することもできますし、建物所有者と双方合意の上破棄することも可能です。 

ただ、前述の通り問題となるのは配偶者が認知症になってしまった場合です。 

あわせて読みたい>>>認知症の相続人がいる場合に遺産分割協議はできるの?対策と手続きを行政書士が解説!

配偶者居住権の抹消登記には建物所有者と配偶者の2名の申請が必要なので、配偶者に成年後見人をたてて合意解除をしてもらう必要があります。 

この成年後見人の手続きは、家庭裁判所に申し立ててから後見の開始まで2-3カ月かかり、成年後見人が配偶者居住権の合意消滅や放棄を行う場合は家庭裁判所の許可が必要となります。 

緊急で配偶者居住権を放棄してもらわないといけない事情がある場合、例えば家を速やかに売却して現金が必要な際は注意が必要です。 

同じ「放棄」でも相続放棄とは違う 

同じく放棄という言葉を使う法律行為には「相続放棄」があります。 

配偶者居住権の放棄と比較して一番の違いは、相続放棄は相続自体を自分の意思で放棄するものなので、相続放棄すると配偶者居住権も失うということです。 

あわせて読みたい>>>相続放棄とは?遺産相続で負債がある場合の対処法を行政書士が解説! 

また、家の所有者は配偶者居住権の放棄が起きると家が売りやすくなったりして価値が上昇するので、経済的な利益を受けたとして贈与税を払う可能性もあることに気をつけてください。 

将来の配偶者の住まいを考える際には専門家のアドバイスを 

元々この配偶者居住権は、配偶者が相続で住み慣れた家を出なければいけないような事態を避けるために設立されました。 

メリットも多いが、家が売りにくくなったりといったデメリットも存在します。 

できれば相続が発生する前に専門家に相談し、配偶者にとっても、他の相続人にとってもベストな方法を考えておくべきです。 

例えば遺言という方法であれば故人の意思を強く反映させることができるので、残された配偶者の住まいや生活の保障や他の相続人への配慮も盛り込むことができます。 

長岡行政書士事務所は相続の経験が豊富にあり、相談者様に寄り添った相続を目指しています。 

もしお困りの点や不安がありましたら、是非当事務所にご相談ください。 

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この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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