相続人が認知症のとき遺産分割協議はどうする?無効となるリスク・注意点を行政書士が解説!

認知症の相続人がいる場合に遺産分割協議はできるの? 対策と手続きを行政書士が解説! 相続トラブル・事例
相続トラブル・事例
50代 男性
50代 男性

先日父が余命宣告をされ、病床に伏しているため、父の代わりに私が相談に参りました。

仮に父が亡くなった場合、認知症と診断を受けている母と、私と弟の3人が相続人となるはずです。

認知症の場合、法的な手続きができないと父は聞いた事があるそうで、心配しています。

相続人の中に認知症の人がいた場合、相続手続きは問題なくできるのでしょうか?

もしできないことがある場合に、父が存命の間に対策できることはありますか?

 

長岡行政書士事務所:長岡
長岡行政書士事務所:長岡

今回のご相談は、お父様の相続人となるお母様が認知症を患っていらっしゃる場合に、できない相続手続きがあるのか、また生前にできる対策はあるか?といったご相談でした。

認知症の方がいらっしゃる場合、大きな問題として”遺産分割協議ができないこと”が挙げられます。

今回は認知症がの方がいらっしゃる場合に、遺産分割協議ができない理由やその問題点、事前にできる対策や手続きについてご説明します。

 

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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相続人が認知症だと遺産分割協議ができない可能性がある

人がお亡くなりになると、死亡届の提出や葬儀、お墓の手配に始まり、故人が残した相続財産をどのように分けるか決めるための遺産分割協議や不動産があれば相続登記手続きなど多くの手続きが必要となります。

これだけでも多くの手続きが必要なことがわかりますね。

この中でも大切な手続きが遺産分割協議です。

遺産分割協議は、故人の相続財産を誰がどのように引き継いでいくかということを決定する大切な話し合いです。

遺産分割協議について、詳しくは以下のリンクをご参照ください。
合わせて読みたい:遺産分割協議とは?流れとポイントを行政書士が解説

しかし、相続人が認知症であり、本人の判断能力が不十分であると判断された場合、遺産分割協議を行うはできません。

遺産分割協議が成立するためには、共同相続人全員の同意が必要となることが法律で定められております(民法970条の1)。つまり、相続人全員の同意がない遺産分割協議は、法律上無効とされてしまう可能性があります。

認知症の方は判断能力が低下している恐れがあり、遺産分割協議に必要となる意思表示ができないかもしれません。

仮に判断能力がない相続人が参加した場合、遺産分割協議に必要となる『相続人全員の同意』が成立せず、協議そのものが成立しないことになります。

ただし、認知症だからといって、遺産分割協議が「必ず無効」になるわけではありません。遺産分割協議の有効・無効は、認知症の有無ではなく、判断能力(遺産分割協議をした内容・結果について理解できる能力)の有無で決まるためです。

認知症の方に状況によって異なるため、不安に感じる方は、行政書士や弁護士などに相談し、どのように手続を進めるべきかアドバイスをもらうといいでしょう。

軽度の認知症なら遺産分割協議を進められる可能性もありますし、重度の認知症なら後述する「成年後見制度」の利用が必要になることもあります。

認知症の相続人がいるときの注意点

認知症の相続人がいるときの注意点としては、次の2つが挙げられます。

  • 勝手に代筆してはならない
  • 相続放棄や限定承認もできない

それぞれ詳しく解説します。

勝手に代筆してはならない

「相続人に認知症の人がいるけど、面倒だから手続を進めてしまおう」と考える方もいるかもしれません。しかし、そのようなことは絶対に避けるべきです。

相続人の中に認知症の方がいて遺産分割協議ができず困っているからといって、遺産分割協議書へ他の相続人が署名した場合、私文書偽造の罪に問われる可能性があります 

もちろん、偽造した遺産分割協議は無効となります。

いかに困っているからといっても、勝手に代筆してしまうと、知らず知らず犯罪に手を染めてしまう可能性があり、注意が必要です。

相続放棄や限定承認もできない

もし、認知症の相続人がいた場合、『その人に相続放棄をさせれば解決では?』と思われるかもしれません。

しかし、認知症になってしまうと正常な判断能力ができないと考えられ、判断能力を必要とする法律行為ができなくなってしまいます。

したがって、相続人が認知症の場合、『相続放棄』や『限定承認』などの行為をすることもできません。

これらの行為も遺産分割協議と同様に、判断能力が必要な法律行為であるためです。

また、本人の意思がないまま他の相続人等が代理人として相続放棄を申し立てても無効となってしまうため注意が必要です。

合わせて読みたい:相続放棄とは?遺産相続で負債がある場合の対処法を行政書士が解説!

認知症の相続人がいても「成年後見制度」を利用すれば遺産分割協議が可能

認知症の相続人がいて、判断能力が不十分な場合でも遺産分割協議をおこなうには、”成年後見制度”を利用します。

成年後見制度には、”法定後見制度””任意後見制度”の2種類があります。

法定後見制度とは、本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所によって選任された成年後見人等が本人を法律的に支援する制度です。

一方、任意後見制度とは、本人が十分な判断能力を有するときに、あらかじめ任意後見人となる方や将来その方に委任する内容を定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に任意後見人が本人に代わって委任された内容を行う制度です。

合わせて読みたい:高齢者を法律で守る委任契約・任意後見制度・遺言執行者について行政書士が解説!

相続開始時にすでに相続人が認知症であった場合は、”法定後見制度”を利用することになるかと思います。

法定後見制度では家庭裁判所が成年後見人を選任し、後見内容を決定します。

その審判が下り、所定の手続きを経ると、成年後見人による本人の財産や日常生活の支援などが開始され、同時に遺産分割協議も行えるようになります。

成年後見制度を活用するときの注意点

後見制度を利用することで遺産分割協議の問題も解消され、さらに本人の支援もしてもらえるなんていいことばかり!と思われるかもしれませんが、意外とそうでもありません。

一見メリットがあるように見える成年後見制度にも、デメリットがあります。

  • 成年後見の申立てから後見開始までに手間や時間がかかる
  • 柔軟な遺産分割協議ができない可能性がある
  • 被後見人(本人)が亡くなるまで続く
  • 後見人への報酬が発生する
  • 相続人となる親族が成年後見人になった場合は特別代理人の選任が必要

成年後見制度のデメリットについて、以下で詳しくご説明します。

成年後見人の申立てから後見開始までに手間や時間がかかる

まず、申立てから後見開始までには通常1〜2ヶ月かかると言われており、状況次第では3〜4ヶ月、それ以上もかかるケースもあるため遺産分割協議が早急にできないと言えます。

柔軟な遺産分割協議ができない可能性がある

成年後見人が決定されたとしても遺産分割協議では自由な分割はできない可能性があります。

なぜなら、成年後見人の任務は本人の財産や権利を保護することになるからです。

したがって、遺産分割協議において相続人それぞれの事情を考慮した柔軟な分割は難しいかもしれません。

被後見人が亡くなるまで続く

遺産分割協議をすることを目的として成年後見制度を利用したとしても、成年後見制度は被成年後見人、つまり認知症と診断された相続人であるご本人がお亡くなりになるまで続きます。

つまり、一度後見が始まってしまうと後見人は遺産分割協議に限らず、本人の日常生活や契約行為に関する代理権を持つことになり、被相続人が相続した財産はもちろん、すべての財産について成年後見人が管理することになるため、自由に財産を使うことができなくなる危険性もあります。

ただし、2026年5月現在、成年後見制度の抜本的な見直しに向けた法改正が国会で審議されています。これにより、遺産分割協議中のみスポット(期間限定)で成年後見人を設定するなど、終身制ではない形の後見が実現できるようになる見込みもあるため、今後の動きを注意してみてください。(当サイトでも、最新動向を改めて紹介いたします)

後見人への報酬が発生する

法定後見制度を利用する場合、誰が後見人となるかは家庭裁判所が決定します。

家族を成年後見人に指定したとしても外部の弁護士などが選任される可能性もあります。

その場合、成年後見人に対する報酬を支払う必要があります。

相続人となる親族が成年後見人になった場合は特別代理人の選任が必要

成年後見制度では外部の専門家が選ばれる事が多いようですが、申し立ての際に子や兄弟などの親戚が後見人として選任される場合もあります。

ただし、成年後見人である親族が共同相続人であった場合、その親族は自分の相続分の話し合いをしながら被成年後見人の相続分の話し合いをすることはできないため注意が必要です。

成年後見人が同時に遺産分割協議に参加することは利益相反行為になるためです。

合わせて読みたい:遺産分割協議に親は子の代理人になれる?相続における利益相反と対処法を行政書士が解説!

成年後見人である立場と、自らが相続人である立場とが重複してしまうため、成年後見人の利益を守る役割を果たす事ができないためと言われています。

このように利益相反行為となってしまう人が成年後見人となった場合、利益の相反しない第三者を”特別代理人”として選任して遺産分割協議を行う必要があります。

認知症の相続人がいる場合に検討したい生前対策

まだ相続が発生していない場合は、「遺言書の作成」「生前贈与」によって、遺産分割協議の手間を省けます。

もし、これらの生前対策がまだ可能な場合は、ぜひ検討してみてください。(当事務所にお問い合わせいただければ、サポートいたします)

遺言書を作成する

有効な対策の1つは”遺言書を作成すること”です。

遺言書を作成し、本人が亡くなった後に遺産を誰がどのように相続するのかについて指定しておけば、遺産分割協議をする必要はありません。

遺産分割協議が不要となれば、相続人に認知症の方がいたとしても大きな問題はないでしょう。

ただし、遺言書”的”なものであれば、なんでもいいわけではありません。きちんとルールに則った、有効な遺言書を用意する必要があります。

長岡行政書士事務所では遺言書の作成についてもサポートしているため、ぜひお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で対応しています。

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生前贈与をする

不動産や預貯金などの財産を生前贈与することも対策の一つといえるでしょう。

生前贈与についてもデメリットがないわけではありません。

実施する際は税金関係で注意しなければならないこともあるため、税理士に相談したほうがいいでしょう。

長岡行政書士事務所では、提携する税理士事務所を紹介することも可能です。

合わせて読みたい:生前贈与は相続財産の対象になる?特別受益と持ち戻し免除について行政書士が解説

相続人に認知症の方がいる場合は専門家へ相談!

ご家族に認知症の方がいらっしゃるような場合、様々なご不安があると思います。

この記事で紹介した「成年後見制度」についても、認知症の方を保護をできる反面、時間やコストなど、様々なデメリットがあるという事が従来より指摘されてきました。そこで、成年後見制度は以下のように見直しに向けた検討が行われているようです。

  • 本人にとって適切な時機に必要な範囲・期間で利用できるようにする
  • 一度決定したら終身的なサポートではなく更新制度にする
  • 本人が必要とする保護や意思決定支援の内容やその変化に応じて後見人を円滑に交代できるようにする

現在の成年後見制度はご本人はもちろん、親族の方にとっても負担が少ないとは言えません。成年後見制度をより利用しやすい制度にし、多くの人に利用してもらう事ができるように法改正が検討されています。

ただし成年後見制度の法改正は具体的に法改正が決定されているわけではありません。現状の基本方針としては、2026年に民法改正案を国会に提出する予定で動いているようですので、今後の改正が期待されます。

いま現在、相続人の中に認知症の方がいて困っている方は、まずは相続手続きに詳しい専門家に相談してみてください。横浜市の長岡行政書士事務所でも、後見制度や相続手続きに多々対応しているため、最適な方法をアドバイスいたします。初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
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