法定相続情報一覧図は遺言執行者が請求できるのか?出来る理由と請求方法を解説!

法定相続情報一覧図は遺言執行者が請求できるのか?出来る理由と請求方法を解説! 相続に関連する法制度
相続に関連する法制度

 

相談者様:<br>50代男性
相談者様:
50代男性

知人の男性が余命宣告をされたそうで、遺言書の作成をしているそうです。

 

その一連の話の中で、私に遺言執行者になってほしいと打診されました。

とてもお世話になった方なので、ぜひとお返事をしたいところですが、資産家の方なので相続手続きが煩雑になるのではないかと心配で・・・

 

私もまだ現役で仕事をしているため、煩雑な手続きになるようであれば難しいかと思っています。

何か良い打開策はありませんか?

 

長岡行政書士事務所:長岡
長岡行政書士事務所:長岡

今回のご相談は、遺言執行者に指名される可能性があり、相続手続きが煩雑になりそうであること、簡略化することはできないか?といったご相談でした。

 

結論から申し上げますと、法定相続情報一覧図を作成、利用することで簡略化できる可能性があります。

資産を多くお持ちの場合、相続手続きの書類が多くなるなど、煩雑になりがちです。

法定相続情報一覧図を作成することで、書類を少なくすることができ、時短にもなる可能性があります。

 

しかし、法定相続情報一覧図は、個人情報の宝庫です。

家族ではない遺言執行者であっても取得することができるのでしょうか?

 

今回は、法定相続情報一覧図について、遺言執行者でも取得が可能なのか、また請求方法についてもあわせてご説明します。

 

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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法定相続情報一覧図とは相続関係が一目でわかる公的書類

法定相続情報一覧図とは、故人である被相続人と相続人との関係を一枚の表にまとめた書類のことです。

簡単にいうと、『相続関係が一目でわかる公的証明書』です。

なお、法定相続情報一覧図は戸籍情報をもとに作成します。

そのため、被相続人及び相続人が日本国籍をお持ちでない場合はこの制度を利用することができないため注意が必要です。

合わせて読みたい:法定相続情報一覧図とは?作成するメリットを行政書士が解説!

法定相続情報証明制度によって認められた書類

法定相続情報一覧図は、平成29年5月29日より法定相続情報証明制度で認められた書類です。

それまでは、被相続人の戸籍関係の書類を相続手続きのたびに提出する必要がありました。その戸籍関係の書類は、”戸籍謄本”・”除籍謄本”・”住民票”等、大量に必要とされます。

これが毎回・・・相当な束になってしまうことになりそうですね・・・

これらの大量な書類を手続きのたびに各機関へ持ち込むことは、相続人にとっても処理を行う機関としても負担になっていました。

この双方の負担を軽減するために活躍するのが、この法定相続情報一覧図です。

作成するためには法務局の承認が必要

法定相続情報一覧図は、被相続人である故人が生まれてから亡くなるまでの戸籍関係の書類を基に相続人や相続人の代理人となる専門家が作成することになります。

法定相続情報一覧図を作成後、法務局で承認してもらい、原本は法務局で保管されることになります。

そして、法務局の認証文つきの法定相続情報一覧図の写しが交付され、各機関へはこの写しを利用して様々な手続きを行うことができます。

法定相続情報一覧図が利用できる場面

法定相続情報一覧図を利用して行うことができる手続きは以下のようなものがあります。

  • 被相続人名義の不動産登記や有価証券の名義変更
  • 自動車の名義変更
  • 預金の払い戻し
  • 相続税の申告
  • 遺族年金など、年金手続き

不動産登記を例にご紹介しますが、被相続人が不動産を所有していた場合に必要となる相続手続きは、不動産の相続登記です。

相続人が不動産を受け継ぐときはもちろんですが、亡くなった後、すぐに他人に売却する場合であっても、一度相続登記を経る必要があります。

従来、不動産登記の手続きには相続関係の証明となる戸籍謄本等の大量の書類を提出して返却してもらう必要がありました。

いくつか手続きをする必要がある場合、返却を待ってから次の手続きを行う、あるいは、手続きの分だけ書類を一式用意する必要があり、大きな負担となっていました。

しかし、法定相続情報一覧図の利用が可能となり、手続きが非常に簡略化されました。

法定相続情報一覧図を作成するメリット

法定相続情報一覧図を利用することの最大のメリットは、相続手続きの際に必要な手続きを簡略化することができる点です。

認証された法定相続一覧図の写しが発行されることで、公的な証明書として様々な機関で利用することができるようになります。

戸籍謄本を何枚も用意して・・・となると時間もお金もかかります。

法定相続情報一覧図を用意することで手続きを効率的に行うことができるというのが最大のメリットということができるでしょう。

法定相続情報一覧図を作成するデメリット

メリットがある一方でデメリットもあります。

法定情報一覧図を作成するデメリットは、作成に手間がかかるということが挙げられます。

法定相続情報一覧図を作成することで手続きを効率的に行うことができることがメリット、とご紹介しました。

しかし、これは書類の提出先がたくさんあるというように、煩雑な手続きがたくさんある人にとってのメリットです。

名義変更の必要がない、手続きはそんなに多くないという方にとってはむしろ法定相続情報一覧図を作成する方が手間になってしまう可能性があります。

一度法定情報一覧図を作成すれば手続きを簡略化できますが、最初に作成することの方が手間となってしまう可能性もありますのでメリットばかりではない、という点にご注意ください。

法定相続一覧図が取得できる人

法定相続情報一覧図は誰でも取得できるわけではありません。

取得することができる人を詳しく見ていきましょう。

被相続人の相続人

被相続人の相続人は手続きを行う当事者ですから、できなければ困りますね。

法定代理人

法定代理人とは・・・読んで字の如く、法に定められた代理人のことです。

とはいえどのような人が法定代理人と言えるのか?ですよね。

法定代理人とされるのは、以下のような方たちです。

  • 親権者未成年後見人
  • 成年後見人
  • 相続財産管理人及び相続財産清算人

相続人が未成年であった場合には、ご両親や後見人とされる人が法定代理人に当たります。

また、判断能力が低下している人に対しては、ご自身で申し出をすることが困難な場合などがあります。

その場合、法定代理人が相続人本人に代わって手続きを行うことができます。

相続人から委任された親族

親族でも広い範囲の親族ではありません。

ここでいう親族とは、民法上の親族であって、以下のような人が該当します。

  • 配偶者
  • 6等身内の血族
  • 3等身内の姻族

相続人から委任状を貰えば、親族も申し出人の代理人となることができます。

ただし、その際には、相続人の親族であることがわかる戸籍謄本等の提出を法務局から求められることになりますので注意が必要です。

資格者代理人

資格者代理人は、以下のような人に限られます。

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 土地家屋調査士
  • 税理士
  • 社会保険労務士
  • 弁理士
  • 海事代理士
  • 行政書士

相続人が多忙で手続きができないといった場合など、上記の資格代理人にも委任することができます。

ただし、依頼する場合には相続人の委任状を代理人に預ける必要があります。

遺言執行者も法定相続情報一覧図を申請できる

では、今回のテーマである遺言執行者はどうなのか?

上記に挙げた代理人には当てはまらないため申請することはできないのでしょうか?

結論から申しますと、遺言執行者も法定相続情報一覧図の作成を申し出ることが可能です。

遺言執行者は遺言の内容を実現する人

法定相続情報一覧図は、個人情報満載の書類です。

そんな重要な書類を本人でも家族でも、専門家にも当てはまらないにもかかわらずなぜできるのでしょうか。

遺言執行者も申請できる理由は、”遺言執行者は遺言の内容を実現するために手続きを行う人”だからです。

制度が出来た当初は申出人になれなかった

法定相続情報証明制度ができた当初は、遺言執行者は申出となれる人の中に含まれていませんでした。

しかし、遺言執行者は遺言の内容を実現するために手続きを行うにもかかわらず、申出人となれないのは手続きを進めるうえやはり不便ですよね。

そのため、現在では遺言執行者も申出人となることができるようになりました。

請求の際は遺言書等が必要

ただし、手続きを行うにあたっては遺言執行者である旨を証明できる書類の提出が必要となります。

具体的には”遺言書”です。

また、家庭裁判所で選任された遺言執行者であれば、”選任審判書謄本”が必要となります。

法定相続一覧図の請求方法

次は、具体的にどのようにして法定相続情報一覧図の請求するのかをご紹介します。

取得費用・交付期間

<取得費用>

申出や取得には費用はかかりません。

手続きに必要な範囲において、たとえ何枚取得したとしても全て無料です。

また、不可分債情報一覧図の保管期間は5年ですが、この5年間の間であれば無料で交付してもらうことができます。

<交付期間>

申し出〜交付までの期間は、概ね1週間〜10日ほどかかるケースが一般的です。

早い場合は翌日に発行、なんてケースもあるようです。

詳細については、事前に管轄の法務局へご確認されると安心かと思います。

有効期限

法定相続情報一覧図自体の有効期限は特段ありません。

しかし、民間の会社や銀行などでは有効期限を設けている場合があるため詳細についてはご確認されると安心ではないでしょうか。

また、法務局での保管期限は申出日の翌日から起算して5年間です。

再交付する場合はこの5年間の間が期限となります。

法定相続情報一覧図を取得するまでの流れ

法定相続情報一覧図を取得するには、まずは必要書類と申請書を準備する必要があります。

手続きについて詳しくご紹介いたします。

必要書類を準備する

まずは必要書類を準備します。

”必ず用意しなければならない書類”と、”必要となる可能性がある書類”に分けてご紹介します。 

<必ず用意する書類>

  • 被相続人の個性謄本および除籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人の戸籍謄本または抄本
  • 申出人の氏名、住所が確認できる公的書類(運転免許証・マイナンバー等)

<必要となる可能性のある書類>

  • 各相続人の住民票の写し ⇨ 
  • 法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合に必要
  • 委任状 ⇨ 申し出を委任する場合に必要
  • 申出人と代理人が親族関係にあることを証明する戸籍謄本 ⇨ 親族が代理人となる場合
  • 資格者代理人団体所定の身分証明書の写しなど ⇨ 資格者代理人が代理人となる場合
  • 被相続人の戸籍の附票 ⇨ 被相続人の住民票の除票が取得できない場合

なお、戸籍謄本などの書類は返却してもらえます。

しかし、申出人の本人確認に使用した書類の写しなどは返却されません。

法定相続情報一覧図を作成する

必要書類を用意したら、次は被相続人の戸籍と法務局の記載例をもとに、ご自身で元となる一覧図を作成します。

<記載内容>

  • 被相続人の氏名
  • 最後の住所
  • 最後の本籍
  • 出生年月日
  • 死亡年月日

相続人に関しては、氏名・出生年月日・被相続人から見た続柄の記載が必要となります。

住所は任意ですが、記載しておくと相続人の住民票の写しが不要となる機関もあります。

もし住所まで記載する場合は添付資料として住所を記載する相続人の住民票の写しも添付する必要があります。

最後に、作成日・作成者を記載し、押印が必要となります。

詳しくは法務局のホームページをご確認ください。

<作成する際の注意点>

  • A4サイズの縦向きで記載し、用紙の下5㎝は認証文が記載されるため、空白にする
  • 手書きでもパソコンでも可能ですが、手書きの場合は判読できるよう明瞭に記載する
  • 一覧図に記載する被相続人との続柄は、戸籍に記載された通りに記載する

法務局のHPには”法定相続人が配偶者および子である場合”、”法定相続人が子のみである場合”など様々なパターンの記載例を見ることができます。

テンプレートのダウンロードも可能です。以下をご参照ください。

法務局HP:主な法定相続人情報一覧図の様式および記載例

申請書を記入し、登記所へ申出する

申請書に必要事項を記載し、準備した必要書類、作成した一覧図とともに申出を行います。

申出する登記所は、以下の管轄の登記所から選ぶことができるので、ご自身にとってご都合の良い登記所を選ばれると良いかと思います。

  • 被相続人の本籍地(亡くなった時点での本籍地)
  • 申出人の住所地
  • 被相続人名義の不動産の所在地

法定相続一覧図を作成することで相続手続きをスムーズに行うことができる

法定相続一覧図は、多くの相続財産をお持ちの場合には多くの書類を一つにまとめることができる等、とてもメリットのある書面ということができます。

一方で、相続財産はそれほど多くないといった場合には、むしろ作成する手間がかかってしまいます。

法定相続情報一覧図は、必ずしも作成しなければならない書面ではありません。

ご自身の状況に合わせて作成について検討されると良いかと思います。

法定相続情報一覧図の作成についてはもちろん、相続手続きについてご不安がある場合は、ぜひ弊所へご相談ください。

合わせて読みたい:遺産相続の際に作成する相続関係説明図とは?法定相続情報一覧図との違いも解説!

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この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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