新型コロナウイルスが5類以降してしばらくの期間が過ぎ、再びグローバルな人材交流が起きはじめているようです。令和4年時点で在外法人の数は130万人を超えていましたが、今後も改めて日本企業の海外進出やグローバル化が見られるかもしれません。
相続で言えば、相続人の中に海外に居住している方がいるということも珍しくなくなってくるでしょう。そこで考えなくてはいけないのが、外国在住中に相続が発生した場合、遺産分割の手続きはどのように行うのかということです。そこで今回は「外国在住の相続人がいるときの相続手続きで必要な書類」について、クイズ形式で楽しく学んでいきましょう。
※本記事は、通常の法律の文章は難しいことから、楽しくわかりやすくお伝えするためにクイズ形式にしています。そのため、法律的な表現が少し変、厳密に言うとこうだ!等あるかと思いますが、そこは温かい心で読んでいただきつつ、ぜひご参考にして頂ければと思います。
では、クイズ形式で出題しますので、家族やご友人とチャレンジしてください。さあ、あなたのまわりで、相続クイズ王になるのは誰だ⁉
今回も、司会の私と、解説の行政書士長岡さんでお届けしいたします! 長岡さん、よろしくお願いします!
ではさっそく第1問です!
相続人が外国在住でも遺産分割協議書は必要?
遺言書で指定されている場合には遺言書が優先されますので、遺産分割協議は必要ありません。しかし、遺言書が用意されていないと、遺産分割協議が必要となるケースが多くあります。
そして遺産分割協議で合意した内容をまとめるのが、「遺産分割協議書」です。
相続人が海外にいる場合には話し合いが難しそうですが、遺産分割協議書は必要となるのでしょうか。
ということで、答えは「必要」ですね。長岡さん、解説をお願いします!
長岡「はい、たとえ相続人が海外在住だとしても遺産分割協議を実施し、その内容は遺産分割協議書として遺す必要があります。
まず遺産分割協議を行うためには相続人全員の同意が必要となります」
このあたりはもう基本中の基本と言える知識ですね。
長岡「そうですね。遺産分割協議において相続人が外国在住であったとしても、別段ルールが変わることはありません」
つまり、相続人全員の同意が必要だということに変わりがない、と。ですが、外国に在住の場合は相続人全員で集まって話し合うことが難しくもありませんか?
合わせて読みたい:遺産分割協議とは|目的や条件・注意点を行政書士が解説!
長岡「そこで不安になる方も少なくないんです。確かに何度も飛行機を乗り継がなくてはいけないような遠方だと、帰省するのも一苦労ですし、お金もかなりかかりますからね。そのような場合には、メールや電話などで話し合いをすることもできるんですよ」
コロナ過を皮切りに、オンラインコミュニケーションも一般的になりましたものね。
長岡「遺産分割協議についても、国際郵便などで順番に署名捺印をして作成することも可能です。ですから、一度も帰国することなく遺産分割協議を行うことも案外できたりするんです」
海外在住の相続人がいる場合の必要書類とは?
ではここで第2問です!
遺産分割協議を終えると、遺産分割協議書に相続人全員の署名、実印での押印、そして印鑑証明書の添付が必要になります。
しかし海外在住の場合、「印鑑証明書」がありません。
そのため通常必要とされる印鑑証明書に代わる証明書を準備する必要があります。
通常必要とされる書類に代わる証明書を準備する必要があります。
長岡「いくつか代替書類はありますが、主にはサイン証明書、在留証明書、相続証明書などです。
なるほど、海外在住や外国籍の場合は、日本と扱う書類が違うんですね。
長岡「『所変われば品変わる』ではないですが、日本と同じ感覚で手続きできないのが今回の大きなポイントの一つですね。日本と違う書類を準備するのは勝手が違いますから手間がかかることもありますし、海外から郵送するにも時間がかかりますよね」
例えば、書類をPDFにしてメールに添付して送るというのはダメなんでしょうか?
長岡「それはアリですので、できればスピーディにやりとりできるようにしたいですよね」
サイン証明書(印鑑証明書の代わり)
現地の在外公館(大使館・領事館)で、自分のサインを印鑑の代わりに使用できるよう手続きを行う。サイン証明書を受けるには、遺産分割協議書を現地の在外公館に持参し、係官の前で遺産分割協議書にサインをすると、在外公館の発行する証明書が綴じ込まれてサインが本人のものと証明される。
在留証明書(住民票の代わり)
サイン証明書と同様に現地の在外公館で発行してもらえる(サイン証明書と同時に申請するのがおすすめ)。在留証明書を発行するにあたり、「日本国籍があること」「現地に3ヶ月以上滞在し、現在も居住していること」の2つが条件となる。
相続証明書(戸籍謄本の代わり)
外国籍を取得している場合、日本に国籍がないため戸籍謄本を取得できないため、相続証明書が必要となる。相続証明書は、被相続人が死亡し、相続を開始したことや相続人であることを証明するのが目的。なお、相続証明書という書類はなく、「出生証明書」「婚姻証明書」「死亡証明書」を総じて相続証明書という。
海外在住の相続人がいても手続きをスムーズに進めるためのポイント
先ほど、海外在住の場合は、遺産分割協議でも頻繁に行き来しにくいということがありましたが、ほかに海外在住の方が、相続手続きをスムーズに進めるために気を付けておくべきポイントはあるんですか?
長岡「そうですね。預貯金の振り込みにも注意が必要です。遺産分割と相続手続きの後は、被相続人の財産を相続人で分配することになります。ですが海外送金は手数料が高く、手間もかかってしまいます」
そうですよね。海外送金は金融機関のチェックも厳しいでしょうから。
長岡「もし日本国内に口座が残っているなら、そこへ振り込むなど負担が少なく済む方法を考えたほうが得策ですね。あと、外国在住でも日本の相続税申告は必要になりますから忘れないようにしてほしいです」
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ありがとうございます。ではここで最後の問題です。
一度も帰国することなく相続手続きを完了させることはできる?
外国に相続人がいたとしても遺産分割を行うことは十分可能。相続人全員が日本にいる場合に比べると手続きは煩雑ですが、ひとつひとつ確実にクリアしていけば問題なく手続きを完了できます。
正解は「できる」ですね。
長岡「はい、要はやりようですから、正しい知識を身に着けておきたいですね。特に遺産分割協議をしなくていいよう、遺言書が残っていると、よりトラブル回避につながるでしょう。詳しくはぜひ行政書士など専門家にお尋ねくださいね」
長岡さん、ありがとうございました!
海外在住の相続人がいる場合の相続手続きの進め方も行政書士に相談できる
相続人が海外にいるとしても、もし遺言書がなければ、遺産分割協議書を作成しなければなりません。
そして「印鑑証明書」「住民票」などの書類は海外在住の場合には用意できないため、次のように代替する必要があります。
- サイン証明書(印鑑証明書の代わり)
- 在留証明書(住民票の代わり)
- 相続証明書(戸籍謄本の代わり)
相続人が一度も帰国することなく相続手続きを完了することも不可能ではありませんが、これら書類を適切に用意することは簡単ではありません。
もし相続手続きに不安なことがある方は、横浜市の長岡行政書士事務所にご相談ください。相続人が海外にいるとしても、丁寧にサポートいたします。