「亡母の相続手続を始めるが、自分で進めることは可能か知りたい」
「相続手続を家族で協力してやってみようと思うが、デメリットはあるだろうか」
相続手続は非常に種類が多く、ご自身で進められるものもありますが専門家に相談することがおすすめのケースも少なくありません。
そこで本記事では、ご自身で進める「DIY相続」のリスクについて、横浜市で相続手続をサポートしている行政書士の目線から紹介します。
自分でできる相続手続の例
自分でできる相続手続の例としては、次のようなものが挙げられます。
- 相続人調査
- 相続財産の特定
- 必要書類の収集
- 被相続人の健康保険・年金に関する手続
- 被相続人の生命保険・損害保険に関する手続
- 遺品整理
それぞれ詳しく見ていきましょう。
※なお、自分でできる可能性が高い手続を紹介しますが、決して手続が簡単というわけではありません。
相続人調査
相続を開始すると、さまざまな手続を進めていくために「誰が相続人なのか」を特定する作業が必要です。
この作業は、被相続人の戸籍謄本類を取得して進めます。
戸籍謄本類の収集は相続人自身で可能ですから、ご自身で進めるのも不可能ではないでしょう。
ただし、被相続人の生前の行動、たとえば転籍などによって戸籍が複雑化している場合、読み解くのに時間がかかることもあります。また、古い戸籍には旧字や過去の地名が書かれているため、慣れていない方には読みづらいかもしれません。
関連記事:相続人全員の戸籍謄本はどうやって集める?注意点やコツを行政書士が解説!

相続財産の特定
相続の作業の1つには「相続財産の特定」が挙げられます。被相続人の現金や預貯金、不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含め、被相続人が所有していた財産を特定する作業です。この作業は遺産分割協議や相続税申告にも欠かせない作業であり、相続人自身で行えます。
財産調査は、故人の通帳や、名寄帳などを読み解いて進めるものですが、やはり自分でやることも不可能ではないでしょう。ただし、地道な作業であるため、面倒に感じるかもしれません。また、退職金や生命保険金など、扱いに悩む財産があるケースもあります。
もしご自身で相続財産を調べてみる場合は、下記の記事を参考にしてみてください。
関連記事:相続財産の調べ方とは?遺産の探し方や注意点を行政書士が解説!

必要書類の収集
相続手続にはさまざまな書類を収集する必要があります。相続人調査に必要な戸籍謄本類などはもちろん、相続登記などで必要な書類も多く、ご自身に必要な相続手続にあわせて書類を収集します。この作業も相続人で収集可能です。
| 収集する書類の例 | 書類が必要となる主な相続手続 |
| 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本 | ・相続人調査(出生から死亡まで全ての戸籍が必要) ・不動産の相続登記 ・預貯金の解約 ・名義変更 ・相続税申告 など |
| 固定資産税評価証明書 | ・相続登記 など |
| 財産の相続に必要となる書類 ・預貯金通帳や証書、残高証明書 ・有価証券報告書、取引残高報告書 ・生命保険などの保険証書 ・負債に関する書類(借用書、ローン残高証明書など) | ・相続財産の取得 ・解約時 ・相続税計算 ・遺産分割協議 など |
※上記の書類・手続は一例です。実際の相続時にはこうした作業以外の手続も発生することがあります。
なお、これらの書類を集めるのにも、相応の手間がかかります。
被相続人の健康保険・年金に関する手続
被相続人が亡くなった際、社会保険に関する手続も早急に行う必要があります。
- 健康保険の資格喪失手続
健康保険証を返却し、健康保険料の発生を止めるために行います。被相続人が会社員だった場合は勤務先、国民健康保険に加入していた場合は市区町村役場が窓口となります。
- 年金に関する手続
被相続人が年金受給者であった場合は、受給停止が必要です。停止の手続を怠ってしまうと返還を求められることがあるため注意しましょう。
ご遺族には「遺族年金」や「死亡一時金」などが支給される可能性があります。これらは遺族の生活を支える大切な給付金ですので、受給資格があるかを確認し、速やかに請求手続を行うことが大切です。
健康保険からは「埋葬料」、国民健康保険からは「葬祭費」という名目で葬祭費用が支給されることもあるため確認しましょう。
これらは、相続人の確定・相続財産調査などと比べると分かりやすいため、ご自身で進める方が多い傾向にあります。
被相続人の生命保険・損害保険に関する手続
被相続人が生前に加入していた生命保険や損害保険に関する手続も、相続開始後に進める必要があります。
- 生命保険金の請求
一般的には、保険会社に死亡の連絡をし、必要書類(死亡診断書、戸籍謄本、受取人の本人確認書類など)を提出して請求手続を行います。保険金が支払われるまでには一定の時間がかかることがあるため、早めに手続を開始しましょう。生命保険金は受取人固有の財産となるため、遺産分割協議の完了を待たずに受領できます。
- 損害保険への請求や解約、引継ぎ
損害保険には火災保険や自動車保険、傷害保険など多数の種類があります。被相続人が所有していた建物が火災保険に加入していた場合、名義変更の手続が必要になることがあります。
また、事故で亡くなった場合は、加入していた自動車保険や傷害保険から保険金が支払われる可能性もあります。これらの保険についても、まずは契約内容を確認し、保険会社に連絡を取って必要な手続を進めましょう。
これらも、保険会社がサポートしてくれるため、ご自身で進める方が多い傾向にあります。
合わせて読みたい:故人の生命保険契約の調べ方とは?相続手続で便利な契約照会制度を行政書士が解説!

遺品整理
遺品整理は、被相続人の持ち物の整理を通して大切な人との思い出を偲ぶための作業です。形見分けの作業につながるため相続人が行うことが多いでしょう。しかし、不要品の仕分け作業などは重労働をともなうことも多いため、外部に委託することもできます。
合わせて読みたい:遺産整理と遺品整理の違いとは|相続放棄への影響について行政書士が解説!

DIY相続のメリット
ご自身で相続手続を進める「DIY相続」には、次のようなメリットがあります。
- 費用を抑えられる
- 次の相続への備えになる
- 気持ちの整理につながる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
費用を抑えられる
自分で相続手続を進めれば、専門家に依頼する費用がかかりません。これはDIY相続ならではのメリットです。
次の相続への備えになる
自身で手続を進めれば、相続に関する知識や経験が身につきます。
結果として、次の相続や自身の相続対策にも役立つことも、DIY相続のメリットといえるでしょう。
気持ちの整理につながる
被相続人の財産や書類などを整理・確認し、手続を進める作業は、大切な方を失った悲しみを整理する作業でもあります。
ご逝去直後はつらいお気持ちを抱えて悩む方も多いですが、相続手続を進める中で気持ちが落ち着くことも少なくありません。
じっとしていると辛いから、あえて忙しくしたい、という場合も、自分で相続手続を進めることを検討してみてください。
相続手続を自分でやるリスク
ここまで紹介したとおり、相続手続は、必ず専門家に依頼しなければできないものではありません。実際に、ご自身で最後まで終えられる方もいらっしゃいます。
しかし、相続手続を自分でやることには、次のようなリスクがあることも事実です。
- 相続人を見落としてしまう
- 遺言書の確認を飛ばしてしまう
- 相続財産の把握漏れが生じる
- 書類不備を各機関から指摘され手続が進まない
- 平日日中の時間を奪われる
- 期限を過ぎて選べたはずの選択肢を失う
- 先延ばしにしている間に次の相続が起きる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続人を見落としてしまう
DIY相続では、相続人を見落としてしまうことがあります。「相続人は自分と弟の2人だけだから、見落とすはずがない」と思う方もいるかもしれません。
しかし戸籍を遡ると、想定していなかった相続人が現れることもあります。たとえば次のようなケースです。
- 被相続人が過去に結婚しており、その相手との間に子がいた
- 被相続人が認知した子がいた
さらに、こうした「前妻との子」などが亡くなっており、その子(故人から見たら孫)が相続人になる可能性もあります。
こうした事情は、ご家族の間で語られないまま時間が過ぎ、ご本人が亡くなったあとに、戸籍を通してはじめて分かるわけです。
そして遺言書がない場合、相続手続は、基本的に「相続人全員が合意していること」を前提に進めなければなりません。
その代表が遺産分割協議です。遺産分割協議は相続人全員が参加して成立するものであるため、1人でも欠けていれば、その協議は無効になります。
自分と弟の2人だけが相続人だと思い、二人で遺産分割協議書を作ったものの、それを戸籍とともに銀行に提出したら、窓口で「相続人がもうひとりいらっしゃいますね」と指摘され、手続が進められない、といった可能性もあるのです。
そのため、「相続人を調べる自信がない」「そういえば、離婚したことがあると父から聞いた気がする」といった場合は、行政書士などの専門家へ相談して、相続人を調査してもらったほうが安心でしょう。
関連記事:遺産分割協議後に相続人が見つかったらどうなる?無効を防ぐための事前準備を解説!

関連記事:相続人はどう確定する?調査方法や戸籍収集方法を行政書士が紹介!

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遺言書の確認を飛ばしてしまう
DIY相続では、遺言書があるかどうかを確かめないまま、遺産分割協議を始めてしまうことがあります。
しかし、遺言書がある場合は、その内容に従うのが、相続手続の基本です。
たとえば、生前お世話になった方や、ご縁のあった団体などへの遺贈が、遺言書に書かれている可能性もあるでしょう。
そのため、「遺言書を残していたか分からない」という場合は、いきなり遺産分割協議を始める前に、行政書士などの専門家へどうすべきか相談したほうが安心でしょう。
関連記事:遺言書の有無はどう調べる?遺言書の探し方と遺言検索システムについて行政書士が解説
関連記事:遺言がある場合の遺産分割協議はどうすればいい?手続き方法や注意点を行政書士が解説

相続財産の把握漏れが生じる
DIY相続では、相続財産をすべて把握できないまま、遺産分割協議を進めてしまうことが少なくありません。
しかし、協議を終えたあとに別の財産が見つかれば、その財産について改めて話し合う必要があります。そのたびに、相続人全員から署名と押印をもらい、印鑑証明書も用意し直すとなれば、多大な手間がかかります。
ただし、遺産分割協議書に「本協議書に記載のない遺産および後日新たに判明した遺産については、相続人横浜太郎が取得する。」 などと記載しておけば、改めて話し合う必要はありません。
実務的には、このような一文を入れるケースが多いです。そうはいっても、協議後に隠れた多額の財産が見つかったら、「知っていれば違う分け方をしていた」などと主張する相続人が現れるかもしれません。
関連記事:遺産分割協議書に記載がない財産を新たに発見したら?後日判明した遺産の扱い・手続を行政書士が解説!

また、先述したとおり、「借金」もマイナスの財産です。遺産分割協議が済んで協議書も完成している場合、基本的には相続を「承認した」とみなされるため、もし協議後に借金が判明した場合、基本的には返済する責任が生じます。
関連記事:遺産分割協議後に借金が見つかったらどうする?対処方法を行政書士が解説!

これらの点をふまえると、無用なトラブルを防ぎたい場合、専門家にしっかりと相続財産を調査してもらったほうが安心かもしれません。
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書類不備を各機関から指摘され手続が進まない
DIY相続では、必要書類を揃えたつもりで窓口へ行ったものの、不備を指摘されて出直すことになるケースもあります。
たとえば遺産分割協議書は、様式が法律で決まっているわけではありません。しかし、「誰が何を取得するのか」を明確に読み取れる内容になっていなければ、手続には使えないのです。
そのため、「協議書の書き方に自信がない」「相続人が各地に散らばっているから、作り直しは避けたい」といった場合は、行政書士などの専門家に遺産分割協議書の作成を依頼したほうがいいでしょう。
遺産分割協議書の作成も
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平日日中の時間を奪われる
DIY相続で意外と負担になるのが、平日日中の時間を奪われることです。
戸籍謄本を取得する市区町村役場も、預貯金の手続を行う金融機関も、基本的に平日の日中しか対応していません。お仕事をしながら相続手続を進めるとなれば、そのたびに休みを取る必要があり、これが大きな負担になるのです。
そのため、平日に何度も休むのは難しい場合には、行政書士などへ委託することをおすすめします。
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期限を過ぎて選べたはずの選択肢を失う
相続には、いくつもの期限が設けられています。代表例は次のとおりです。
- 相続放棄:自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月
- 相続税の申告・納付:被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月
- 相続登記:不動産を取得したことを知った日から3年
これらの期限は、誰かが知らせてくれるわけではありません。ご自身で進めていると、期限が迫っていること自体に気がつかず、選べたはずの選択肢を失ってしまうこともあるのです。
とくに相続放棄の3か月は、財産調査が終わっていなくても進んでいきます。借金の有無がはっきりしないまま期限を過ぎてしまえば、負債も含めて引き継ぐことになりかねないため注意してください。
関連記事:遺産分割協議に期限はない!ただし10か月以内の手続きが望ましい理由を行政書士が解説!

先延ばしにしている間に次の相続が起きる
DIY相続では、手続が思うように進まず、そのまま何年も放置してしまうことがあります。
しかし、手続を終えないうちに相続人のどなたかが亡くなると、遺産分割協議に参加しなければならない人がどんどん増えてしまうため、注意しなければなりません。
たとえば、被相続人の子3人(A・B・C)で分ける予定だった相続を放置している間に、そのうちのひとりAさんが亡くなったとします。Aさんに配偶者と子が2人いれば、協議に参加すべき人は、3人(子3人)から5人(子B・C+Aの配偶者&子2人)に増えるのです。
さらに時間が経てば、面識のない相続人と話し合わなければならないことにもなりかねません。会ったこともない相続人の連絡先を調べるところから始めることになり、手続はいっそう重くなります。
そのため、「自分でやろうと思っていたけど、相続手続が途中で止まったままになっている」という場合は、早めに行政書士などの専門家へ相談することをおすすめします。
関連記事:放置していた相続手続は何から対処すべき?行政書士が解説!

DIY相続に不安を感じるなら行政書士などの専門家へ相談!
ご自身で相続手続を行うと費用を抑えられるなどのメリットがある一方で、致命的なミスや家族間のトラブル、そして何より膨大な時間と労力がかかるデメリットも存在します。
相続手続は、大切なご家族の思いを受け継ぎ、家族が新たな一歩を踏み出すための大切な節目です。不安を感じたり、少しでも疑問が生じたりした場合はまずは専門家へご相談ください。
横浜市の長岡行政書士事務所では、ご依頼者様の状況に合わせた最適な手続方法を提案し、スムーズな相続をサポートしています。初回相談は無料なので、まずはお気軽にお尋ねください。


