自宅などの不動産が相続財産であるように、私道も相続財産です。
では私道はどのように相続すればいいのでしょうか。
また、遺言で私道部分の相続について触れられていないことが分かったら…いったい、どう対処したらいいのでしょうか?
完璧というのは難しいもので、何度も見直した遺言でも、記載漏れが発生することはよくある話。
記載漏れが発覚するのは遺言を作成した人間が亡くなってしまった後ですから、もちろん遺言書の書き直しなんてできやしません。
でも、遺言書の記載漏れが発覚してしまった場合でも、私道の相続に対処しなくてはいけないのもまた事実。
そこで今回は、私道の相続手続はどうすればいいのか、遺言書に記載されていなかったときの対処法とあわせて、行政書士の監修のもと、落語調のストーリー形式で解説します。
私道の相続方法
まず最初に、私道の相続手続方法について紹介します。
そもそも土地が面している道路は、公道と私道に大別されます。
このうち市区町村などが所有・管理しているのが公道で、私有地が道路となっているのが私道です。
道路も土地であるため、土地の登記簿を確認すれば所有者が分かります。
そして私道も相続財産の一つです。
相続する方が決まれば、法務局で私道の相続登記を行います。普通の土地と同じですね。
問題となるのは、私道を相続する相続人をどうやって決めるのか、ということです。
遺言書で私道を相続する相続人が決められていたら、非常にスムーズです。
しかし遺言書に私道ついて書かれていないとなると、すぐに相続登記するわけにはいきません。ここから先も堅い文章だと分かりづらくなってしまうので、落語調のストーリー形式で見ていきましょう。
遺言書に私道を書き忘れていたらどうする?
おかみ「あんた、ちょっと聞きたいんだけどさ」
ご主人「どうしたい? 干し柿の出来具合ならまだもう少し先だぞ」
おかみ「干し柿のことじゃないよ。あたしゃそんなに食い意地張ってないさ。いやね、うちの目の前の私道があるだろう?」
ご主人「おう、私道というか、いまや我が家が皆様に使っていただいている道路だあな」
おかみ「あの相続って、どうなってるのさ?」
ご主人「は? 相続? 道路なのに?」
おかみ「バカだね、あんた。皆が使ってる道路っていったって、うちの私有地じゃないのさ。ホラ、こないだ死んだおじいちゃんが遺言残してたろ?」
ご主人「ミミズが這ったような字で読みにくいったらなかったな。だからお茶こぼしたのを拭いて捨てちまったよ」
おかみ「は?あんた何やってんだい! あの中に、うちの不動産のことが書いてあったけど、私道については何にも書かれてなかったろ?」
ご主人「どうだったっけな。でもそれがどうしたってんでい?」
おかみ「角の乾物問屋さんが言うんだよ。家を建替えたり不動産を売る段になって記載漏れが発覚したら困窮しちまうとか、近隣ともめごとに発展しちまうかもってさ…」
ご主人「そんな大げさな…」
おかみ「大げさでもないんだよ。特にうちは私道の奥に家の敷地がある旗竿地だろ? 私道がないと売るときに値崩れしちまうし、売れないことだってあるんだよ!」
ご主人「私道は私道、うちのもんだろうが。売れないなんてことが…」
おかみ「あるんだよ。だって遺言に書いてなかったんだから、あんたが正式に相続したってどうやって証明するんだい?しかもその遺言書はもうないし。まったくボンクラってのはこういうことを言うんだね」
ご主人「いや、その、そりゃあ…」
おかみ「おじいちゃんは子だくさんで、あんたの兄弟は7人、それぞれ2~3人ずつ子供がいるから、相続人はどんどん増えちまうだろ?代襲相続って言ってね、どんどん下の代に受け継がれていくので、ねずみ算的に相続人が増えちまう。つまり話し合いでまとまりにくくなっちまうんだよ」
ご主人「…で、私道の相続人がわからなかったら、うちの土地の値段が…。そりゃいけねえ! どうすりゃいいんでえ?」
おかみ「やっぱりだ。そんなこったろうと思って、そうだと思って、横浜市にある行政書士の長岡屋さんのところに使いを出したんだよ。そろそろ来てくれるはずなんだけど…ああ、長岡さん、こっちこっち!」
長岡「こんにちは。早速ですが、遺言書の書き漏らしがあったそうで」
おかみ「まったく困っちゃいますよ。いったいうちはどうしたらいいんです?」
長岡「遺言書に私道を書き忘れていたら、次のような流れで相続手続を進めるといいですよ。
- 既存の遺言書で漏れた私道の相続登記が可能かどうかを調べる
- 既存の遺言書で対応できない場合は遺産分割協議を実施する
それぞれ詳しく見ていきましょう」
既存の遺言書で漏れた私道の相続登記が可能かどうかを調べる
長岡「今回のように記載漏れが発覚した場合、まずは遺言の記載内容のままで漏れた部分の相続登記が可能かどうかを調べるところから始めます」
ご主人「盗賊陶器?」
おかみ「そうそう、かの太閤殿下が愛用した異国の陶器を盗賊が奪っていくから盗賊陶器…ってバカ! 石川五右衛門じゃないんだよ。相続、で、登記。相続登記」
ご主人「お前ものってたじゃねえかよ…」
長岡「もしも当時の遺言書が公正証書遺言で作成されていれば、原本が見付からなくても公証役場で遺言公正証書の再発行ができます」
おかみ「再発行をしてもらって、どんな書き方になっていたか調べるんだね?」
長岡「そうです。遺言書の内容が包括的な解釈ができたり、元の遺言書のままで漏れていた私道部分の相続登記が可能であれば、それで一件落着です」
既存の遺言書で対応できない場合は遺産分割協議を実施する
ご主人「でも、残された遺言書で漏れた私道の相続登記ができなかったら、そうすれば?」
長岡「その遺言内容で対応できない場合は、改めて遺産分割協議で対応せざるを得なくなります。相続権がある親族全員で」
おかみ「ってことは、ひいふうみい…いったい何人になるんだい。うちにそんな大勢は入りきりゃしないだろ。湯飲み茶碗だって足りやしないよ」
参考:遺産分割協議とは|目的や条件・注意点を行政書士が解説!
長岡「まあまあ、場所はともかく。地方や海外に居んでいる相続人がいますか?」
ご主人「…大勢いるな。こないだもジョン万次郎と一緒にメリケンに行くって、何人か行っちまったよ」
長岡「親族の居場所が分からなくなっていたりは?」
ご主人「…するな。秘境を超えて黄金を探しに何人か行って、もう何年も帰って来てねえ」
おかみ「あんたの一族はインディ・ジョーンズかい?」
長岡「状況はなかなかに複雑ですね。地方や海外に居んでいる相続人がいると、連絡したり書類のやり取りに手間と時間がかかりますし、親族の居場所が分からなくなっていれば、所在調査から始めることになります」
合わせて読みたい>>居場所の分からない相続人の住所はどう調べる?調査方法を行政書士が解説!
ご主人「そりゃ困ったな…。専門家に任せちまうことはできねえのかい?」
長岡「たとえば行政書士に遺産整理業務を依頼する場合、その一環として相続人調査を依頼することができますよ!もちろん、長岡行政書士事務所でも対応しているので安心してください。」
相続人調査のお悩みも
横浜市の長岡行政書士事務所へ
対応エリア:横浜市・神奈川県全域・東京23区
平日9:00~21:00(土日祝日予約制)
長岡「あと、相続人の中に認知症や病気により判断能力が著しく低下している方はいますか?」
おかみ「あ、そりゃウチの旦那ですよ。いつもぼけーっとしてるし、肝心な時に優柔不断だし」
ご主人「おい! …でもそれもいるな」
長岡「判断能力が著しく低下している相続人がいる場合、法的に有効な遺産分割協議ができない可能性があります。ただし、これはこれで成年後見人を就けることで対処可能です」
ご主人「成年後見人? そういえば、どっかでそんな本を読んだな…、おおこれだこれだ! 『図解ポケット 成年後見制度がよくわかる本』(長岡真也監修/秀和システム)。こいつで成年後見制度のことはバッチリ頭に入ってるぜ」
長岡「それなら何よりです(笑)」
参考:成年後見制度は相続手続と関係がある?相続人に成年後見人がついている場合について行政書士が解説!
遺言書から私道が漏れていても相続手続を進める方法はある!
長岡「本当は遺言書を作る段階から行政書士に依頼していれば、記載漏れなどを防げるのですが、自分で書かれていることも多いですからね。
ただし遺言書から私道が漏れていても、遺産分割協議書を作成するなど、相続手続を進める方法はあるので、ぜひ専門家に相談してみてください」
横浜市の長岡行政書士事務所でも、相続手続全般を代行しています。もし遺言書が残されているものの、その遺言書だけで相続手続を進められるかどうか分からない場合はお気軽にご相談ください。